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女の子らしさ

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5部分:第五章


第五章

「それだったら」
「女の子はね」
 優はその戸惑う彼女に対してまた言ってみせた。
「一つじゃないのよ」
「一つじゃないんですか」
「そうよ。一つじゃないのよ」
 こう茉莉也に話すのである。
「その辺りよく考えてみてね」
「女の子は一つじゃない」
「私と茉莉也って全然違うじゃない」
 今度は彼女と自分自身のことを話すのであった。
「全然ね。そうでしょう?」
「ええ、それは」
 このことは言われてもわかった。むしろ今更言うまでもないことにさえ思えるものであった。話を聞いていて内心そんなふうにさえ思う茉莉也だった。
「その通りですけれど」
「それと同じよ」
「同じなんですか」
「そう、同じよ」
 優しい笑みでの今の言葉であった。
「考えてみてね。そのこともね」
「私と先輩は違っていて」
「女の子は一つじゃないってことも」
 この二つをあえて話すのであった。
「わかったわね」
「はい」
 今日も話はわからなかった。それでも頷く茉莉也だった。
「それじゃあ」
「じっくり考えていけばわかるから」
 優はまた言った。
「そうすれば見えていなかったものも見えてくるようになるわよ」
「見えてきますか」
「私だってそうだったし」
 優は今度は自分自身だけのことを話してみせた。
「だからね。いいわね」
「はい。それじゃあ」
 先輩の言葉に赤い世界の中で頷く。今影は夕陽に照らされ長く伸びていた。それは茉莉也自身よりもずっと大きかったが紛れもなく彼女の形をしているものであった。
 そうした話もしてから暫く経って。登校した彼女の靴箱の中にあるものが入っていた。それは何と。
「嘘・・・・・・」
 ラブレターだった。それが彼女の靴箱の中に入っていたのである。
「ええと」
 すぐにそれを手に取って廊下の隅に隠れて見だした。何と名前も確かに彼女の名前でありそして好きになったとはっきりと書かれていた。そうして放課後体育館の裏に来て欲しいとあった。
「放課後って。しかも」
 その好きだと言う言葉が彼女の心に残った。ついついもう背中にかかるまでになっていてポニーテールにしてまとめている髪の毛を触った。
「嘘でしょ」
 しかし嘘ではなかった。その手紙に書いてある限りは。
 まさかと思ったがとりあえずそのラブレターを自分の鞄の中に収めてそのうえで自分のクラスに入った。しかしクラスに入ると皆早速彼女に言ってきたのであった。
「ねえ、茉莉也」
「あんた一体どうしたのよ」
「えっ、どうしたのって?」
 皆に言われてすぐに挙動不審の言葉で返してしまった。
「別に何も」
「何もって動きが異常にギクシャクしてるし」
「右手と右脚も一緒に動いてるじゃない」
 見てみればその通りだった。動きが完全におかしくなっていた。
「ロボットみたいだけれど」
「どうしたのよ」
「べ、別に何も」 
 自分ではこう言って誤魔化した。
「何もないけれど」
「いや、何もないってわけじゃないでしょ」
「どうしたのよ」
 流石に皆わかった。というよりかはそれだけおかしな動きをしていればそれこそ誰でも気付くものであった。そこまで今の彼女の動きは滅茶苦茶なものであった。
「けれど何かあったかはわからないし」
「どうしたの?目の前に雷でも落ちたの?今晴れだけれど」
「雷じゃないわよ」
 それは否定する茉莉也だった。
 
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