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swordarton-line~二度目の世界~

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転生→生活

 
前書き
小説説明にあるように内容変更&2つを1つにまとめました。
短すぎたので…。 

 
視界が暗闇に沈んでいく。意識が薄くなっていく。



―神様転生って、君は信じるか?
 ほら、あれだ。ネットでよく見る、神様がミスで自分を殺しちゃったから二次転生で勘弁してくれって奴だ。
 不思議な力を使いたければカゲロ○デイズ、魔法が使いたいなら魔法科高校の○等生、異世界にいきたければノー○―ムノーライフ等々の世界にチート付きでとばしてくれる。
 都合がよければ女神様が主人公に何の前置きもないまま惚れてついてくるという謎の行動をしたりする―そんな馬鹿げた話だ。
「読者」と作者の自分がいうのは少々烏滸がましいが、読者の皆さんは何故、そんなどうでもいいことを話すのかと思っているだろう。それでも話さずにはいられないのだ。
 なぜなら、小鳥遊和人十六歳、至って普通の高校生をしていたはずのそんな自分にもそんな現実が現在進行形であるのだから。
 自分の目の前には今、ありきたりな真っ白な部屋に、これまたテンプレな目の前で土下座するお姉さんが映っている。
「謝罪はもういいので。これから自分を転生させるのですか?」
「ええそうよ。君を新しい人として転生させるわ」
「そうですか。それじゃおねがいします」
女神様はあっさりと了承したのに驚いたのか1秒もたたない間だったが動揺を見せた。
 そして、目の前の女性が床を一回踏むと、自分は足元に空いた穴に落ちていった。



 意識が戻ると視界には暗闇が広がっている。そこで初めて、自分が目を瞑っていることに気が付いた。ゆっくりと瞼を開く。そこにあったのは、蛍光灯と思われる物の光。そこで自分がベッドの上に寝ていることを認識する。未だ意識が朦朧とする中、周囲を見るため首を左右に動かす。

(ここは……病院か?)

個室と思われる部屋。医療機器に囲まれる白いベッドの上で自分は横たわっている。消毒液の匂い、医療機器の電子音、ここまで気づいて病院だと確信する。

(一体…何故…)

自分のある状況が理解できず若干混乱する。しかしまた違う異変に気付く。自身の手を顔の前に持ってくる。そこにあるのは、無骨な男性の手の平とは程遠く、真っ白な艶のあるふっくらした手。それはまるで幼い子供の手のひら。明らかに自分の身体ではない。前世から普段冷静だった自分だったが、そんな自分でも混乱を隠せない。必死に今の自分が置かれている状態を整理しようとする。
 すると、スライド式のドアが開く音がする。ドアを開いた先、廊下から二十代後半と思われる女性が入ってくる。
「目が覚めたのね!」
女性は自分が目覚めたことに気付くと、寝ている自分のへ駆け寄り、顔を覗き込む。優しい手つきで自分の頬に触れながら口を開く。
「私が今日から、あなたのお母さんよ。あなたは私がきっと守るからね 黒」
こうして「裏鳴(うらなき) 黒(くろ)」としての新たな人生は始まった。



 病院で目覚めた後、病室を訪れた女性や医師達の会話から、自分が置かれている状況を整理した。自分は転生させられて現在此処にいる。自分の魂の器となっている身体の持ち主の名前は、黒。三歳の幼い少年で、事故に遭ったところを病院に運び込まれたらしい。
 大した怪我はなかったが、問題は彼の両親だ。黒の両親は、自分がこの場所に来ることになった事故によって命を二人とも落としたらしい。
裏鳴美夜と呼ばれた女性の話を聞く限り、どうやら彼女が黒の引き取り手になるらしい。未だ混乱の中にありながら、三歳児として振る舞い周囲の情報を集めていった。
 幼稚園では周囲の赤子を放っておいて読書をしては先生には気味悪がられ、小中学校では図書館に籠って本を読んでいたりしただけで中二病扱いされていた。
 そう暮らしているうちに気付いたが瞬間記憶、絶対記憶、人とは到底思えない運動能力というチート能力がついている事に気が付いた。
 それにより記憶は頭にどんどん蓄積されていった。

 二〇七二年 五月九日

 黒として転生してから、およそ十一年の歳月が経った。現在黒は十四歳。中学三年生である。転生したての時は、社会常識や文明の少しの違いから生活に戸惑う日々だったが、どうにか慣れることはできた。転生当時が三歳だったため、一般人にずれた思考や年齢に不相応な態度等は誤魔化せた点が大きい。
 裏鳴黒の自宅は、昔の街並みを残した地域の敷地の一角を占めて建てられている。小さな道場も備えられており祖父が他界した後も、この家の住人により使われている。
「めぇええんっ!」
「甘い!」
早朝の道場に威勢のいい声が轟く。防具をつけて稽古する少年少女。少女は竹刀を振るが、少年は華麗なステップで避けていく。息をきらせて少女は竹刀を振り回すが、少年には一撃も入らない。どころか攻撃を往なす少年には、まだまだ余裕が窺える。
「面!」
「うわぁっ!」
少年が動きを攻めに変える。少女の隙を伺い攻撃を入れる。面の中央を狙い的確な一撃を振り下ろす。反応が間に合わなかった少女はそれをまともに受けてしまう。
「痛たた、やっぱりお兄ちゃんは強いなぁ。」
「芽吹(めぶき)は太刀筋がそのままだ。あれでは相手にあたらないぞ。」
そんな言葉を交わしながらも、礼をすると防具の紐をほどき面も外す。それと同時に素顔が露になる。
少年の方は、大人しいスタイルの髪型に軟弱そうな両目に細い顔が特徴的な少年。少女の方は、眉の上でバッサリとカットされた黒髪に、ぱっちりとした瞳をした、少し男の子めいた雰囲気を纏った少女。裏鳴家の住人である黒と、義妹の芽吹である
「力だけで押し切ろうとすると簡単に避けられてしまう。相手の動きを見極め、先読みすれば、軌道が分かる。」
「う~ん、簡単に言うけど、難しいよ」
「まぁ、要修行だ」
二人が剣道を始めたのは、祖父により八歳の頃より剣道場に通わされていたことがきっかけだった。運動能力がいい黒にとって剣道でも躊躇なく実力を発揮し、その実力は有段者の大人を軽く凌駕していた。
「早く片付けて朝食の準備だ。母さんもそろそろ起きるだろう」
「うん。分かった」
ここ最近、二人の母親である美夜は遅くまで残業している。パソコン情報誌の編集者をしている美夜は、近年発売される新ジャンルのゲームの取材らしい。締め切りが近づくとほとんど家に帰ってこないが、今の忙しさはそれと同等と言ってもいい。
「お兄ちゃん。お母さんや世間が注目しているゲームってどんなものなの?」
「バーチャルリアリティーマッシプリーマルチプレイヤーオンラインロールプレイングゲーム略してVRMMORPG…仮想世界大規模ロールプレイングゲーム。首を覆うゲー   ム機、ギアファクトを通じて脳の働きにアクセスし、その意識をデジタルデータの世界に送り出す。仮想世界のもとで行われるゲームだ。」
芽吹の疑問に、母親の情報誌から得た知識をもとに淡々と答える黒。転生してから情報を集めるため特にコンピューター関連の情報収集に力を入れてきた。前世からの記憶もあるため、人並み以上にはパソコン関係の知識に精通するに至った。
早口で淡々と喋っていたため、理解が追い付かず芽吹は首をかしげながら問う。
「ふ~ん、それってすごいの?」
「昔から同じようなのは作ることができたが、危険性があるため無視されてきた。それを害が無いように作ったんだ。それにギアファクトを使用したゲームはあるが、パズルや知育関係のソフトばかりだったからな。MMORPGとなれば、ゲームの世界に入って戦うのと同じだ。仮想世界が売りのゲーム機として、待ち望んでいたのがようやくでたといったところだろ」
「それじゃあ、そのギアファクトっていうのを使えば、ゲームの世界で冒険できるっていうこと?」
「そういうことだ」
芽吹の問いに答えながら、台所に移動。共に朝食の支度をする。会話をしながらの作業にもかかわらず、動きには一切の無駄がなく、あっという間に朝食が出来上がる。
「それっておもしろいのかなぁ?」
「さあな。だが、従来のゲームとは違うジャンルであることは明らかだ」
「お兄ちゃんはやってみたいと思う?そのゲーム」
「そうだな。興味はあるな」
それまで表情が無かった黒の顔に若干の苦笑が浮かぶ。黒の運動能力は一般人に比べると秀でておりすぎ力を抑えてきたのだ。その力を試す機会ができそうなのだ。それに単純にもどんなものか興味がある。
芽吹はそんな兄の微妙な表情を察知し、さらに問いかける。
「お兄ちゃんもやってみたら?お兄ちゃんが興味あることなんて、滅多にないじゃない」
「ベータテストをやるらしいが、応募者は現在十万人以上いるとのことだ。ハガキを出しても望みは薄いな」
「そっか。それじゃあ、お母さんに頼んでみたらどうかな?」
「情報誌編集者といえど、ベータテストの千本それに初回ロット一万本のゲームソフトを手に入れるなんて、そう出きたものじゃないさ。それに、そこまで無理をさせたくない」
珍しい黒の興味のある話題だったのに、相変わらず素気なく答える黒に、芽吹はどこか不満げな表情をする。十年以上一緒に暮らしている兄妹だが、黒は芽吹をはじめ家族に対しあまり感情を出さない。疎遠になっているわけではない。話しかければ、返事をきちんとしてくれるし、稽古だって付き合ってくれる。ただ、互いの距離感が掴めないだけだ。芽吹はその距離を埋めようと日々努力しているが黒との関係になかなか変化はおこらなかった。
 そんなことを考えながら朝食を準備している内に、着替えを終えた美(み)夜(や)がやってきて三人そろって朝食を食べ始める。朝食を終えて食器を洗い終えると、芽吹と黒は学校へ行く。
 どこの家庭にもある、ありふれた日常。それは、前世を持つ黒にとっても覚えのある風景だった。
普通なら存在しないはずの黒なのだ。あのまま生きていれば、老いていつかは死ぬだろう。それが予想のできない必然で第二の新しい人生が始まったのだ。それにおいて、いろいろ一般人とは違う点があるのだ。そんな黒が幸せになった方がいいのがいいのだろうか。駄目なことはない。しかし、黒自身は家族に対してでも引けを感じている。そして黒は自身の転生した理由を探し続けていく…。
 
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