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色気がない

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第六章

「普段はね、けれどね」
「夜はね」
「メイクもして着替えて」
「そしてなの」
「旦那さんとそうしたら」
「三人目が出来たの」
 実際にというのだ。
「この通りね」
「子供欲しかったの?」
 友人の一人が美紀に問うた。
「それで?」
「そこまでは考えてなかったわ」
「ただ旦那さんが色気がないって話してたから?」
「それで考えてアドバイス受けてね」
「そうした格好になっただけで」
「夜抱かれたかったのもあるわ」
 こうしたこともだ、美紀は言った。
「女としてね」
「やっぱりね」
「結婚しても女は女だしね」
「相手に抱かれてないとね」
「夜もね」
「そうした時間も欲しかったこともあったけれど」
 それでもというのだ。
「三人目出来たのは計算外よ」
「そうなのね」
「そっちは」
「本当にね、けれど出来たら」
 美紀はにこりと笑って友人達に話した。
「この子も産んでね」
「そして育てる」
「そうしたいのね」
「そうするわ、この子もね」
 自分のその、まだ大きくなっていない腹を摩っての言葉だった。その顔はメイクはしていないが友人達が見ても色気があった。それは母親の色気だった。美紀は自然とそうした色気を身に付けていた。友人達はその顔を見て彼女に言った。
「いいじゃないその顔」
「ぐっとくるわよ」
「その顔が一番よ」
「色気あるわよ」
「そうかしら、メイクしてないのに」
 今は、と返す美紀だった。
「そんなに?」
「ええ、そうよ」
「お母さんとしてね」
「美紀いい色気出してるわよ」
「とてもね」
 そのあだっぽい友人も言う、そして最後にこう言った。
「メイクや服で色気を出せるけれど」
「中からも出せるってことね」
「そういうことね」
 こう言うのだった、その満ち足りてそれでいて母親という女を出している美紀に。


色気がない   完


                        2015・9・22 
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