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助け方

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第四章

「そして誰かを助けるよ」
「そうしろよ」
「そうするって決めたんならな」
「確かにそうした道もあるしな」
「頑張れよ」
「だから勉強するよ」
 橋口は友人達に微笑んだまま答えた。
「そして軍医になるよ」
「そうして人を助けてな」
「頑張れよ」
「そうさせてもらうよ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 彼は実際に勉学に励んでだ、防衛医大を受験して。
 合格してだ、医大でも勉強に励んで。
 遂にだ、医師のテストにも合格してだった、彼は軍医になった。
 そのうえでだ、ある街で災害が起こった時にだった。彼は所属している部隊と共に被災地に行って怪我人達の治療をした。その時に。
 被災者の子供達にだ、治療にあたっているテントの中で言われた。
「有り難う、おじさん」
「有り難うって?」
「うん、お父さんの怪我を治してくれて」
「お母さんを助けてくれて有り難う」
「お兄ちゃん喜んでたよ」
 こう言うのだった。
「だからね、有り難う」
「お医者さんのお陰よ」
「自衛隊の人達がいてくれたから」
「僕達助かったんだよ」
「本当にそうしてくれて有り難う」
「ただね」
 ここでだ、子供の一人がだった。
 橋口にだ、こうしたことを言って来た。
「先生はどうして先生なの?」
「どうしてって?」
「うん、他の自衛隊の人達はね」
 それこそ、とだ。その子は言うのだった。
「瓦礫を片付けたりトラックに乗ったりしてるのに」
「僕はだね」
「ここでお医者さんやってるの?」
「僕はどん臭くてね」
 子供達にわかりやすいようにだ、橋口は自分の運動神経のなさを話した。
「だから自衛隊の普通の人にはなれなかったんだ」
「そうなんだ」
「今皆を助けてくれている人達みたいにはなんだ」
「なれなかったんだ」
「うん、だからね」
 それでとだ、彼はさらに話した。
「こうしてお医者さんになったんだ」
「どん臭いから」
「だから」
「勉強をしてね。お医者さんでも皆を助けられるからね」
 こう考えてとだ、子供達に話した。
「それで僕は今こうしてるんだ」
「普通の自衛隊の人達でなくてもだね」
「お医者さんになったら僕達を助けられる」
「そういうことなんだ」
「そうだよ、じゃあこれからも怪我をしたらね」
 その時はというのだった。
「僕も来るから」
「うん、じゃあね」
「先生また怪我をした人ここに連れて来るから」
「診て」
「そして助けて」
「そうさせてもらうよ」
 橋口は笑顔で応えた、そしてだった。
 彼は被災地で怪我人や病人達の診察を続けた、そうして彼のやり方で被災地の人達を助けていった。それが彼の選んだ道だった。


助け方   完


                        2015・9・22 
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