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パニ

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第二章

「そちらは」
「はい、どうにも」
「大き過ぎるか」
「身体が、ですね」
「身体が大き過ぎるとな」
 どうにもというのだ。
「船には乗れないからな」
「陸軍さんの戦車もですね」
「軍人は確かに体格がいい方が好都合だが」
「俺大き過ぎるって言われました」
「二メートルあるな」
「はい、二メートル三です」
 それだけあるとだ、ボロゾフスキーも答える。
「体重は一三〇キロあります」
「それだけ大きいとな」
「船にはですね」
「難しいな」
「それでなんです」
「この基地の勤務になったか」
「そうなんです、それで兵役の後は」
 ボロゾフスキーはその後のことも話した。
「ここの生まれなんで村に帰ってです」
「どうする」
「トナカイを放牧して暮らします」
「それが家の仕事か」
「はい、代々の」
「そういえばここは」
 このヤマロネネツ自治管区のこともだ、フルシコフは言った。
「そうした生活をしている人も多いな」
「はい、そうです」
「ロシア人もいるが」
「ネネツ族ですね」
「あの民族もいるな」
「はい、実はお袋がです」
 ここでボロゾフスキーはフルシコフに言った。
「ネネツ族です」
「そうだったのか」
「それでこの髪と目です」
 黒い色をしているというのだ。
「そういうことなんです」
「まさか君がそうだったとはな」
「それで実は交際相手もです」
 明るい笑顔でウォッカを飲みつつだ、ボロゾフスキーはフルシコフに話した。
「兵役終わったら結婚するんですが」
「そうか、それはいいな」
「はい、その相手もなんです」
「ネネツ族か」
「そうです」
 その通りだというのだ。
「うちの叔母、お袋の妹さんの娘さんで」
「従姉妹か」
「はい、従妹です」
「そうか、早く兵役が終わることを願っているか」
「ここで兵役が終わるまで勤務して」
 軍隊のそれをというのだ。
「それから村に戻ります」
「私もな」
「大尉もですか」
「この基地での勤務が終わったら」
 その時のことをだ、フルシコフはホロトフスキーに言った。
「次は何処の勤務になるかわからないが」
「結婚されますか」
「出来たらいいな」
「お相手はまだですか」
「いない、これがな」
 苦笑いと共に言ったのだった。
「士官学校を出てからそうした相手はだ」
「おられないですか」
「困ったことにな」
「そのうちです」
「出会いがあるか」
「その時はお祝いさせてもらいますよ」
「ははは、私のこともいいが」
 ウォッカを飲みつつだ、フルシコフはボロゾフスキーに告げた。 
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