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5部分:第五章


第五章

「お安くしておきますよ」
「いや、定価で買わせてもらうけれどな」
「いいですよ。本当に古い服ですし。それに」
「それに?」
「お兄さんとても期待しておられますし」
 大輔のそのきらきらとした目を見てだ。店員もさらに明るい笑顔で言ったのである。
「ですからお安くね」
「何か悪いな」
「いえいえ、服はそれを着たい人に着てもらえれば幸せですから」
 だからそれでいいというのだ。
「そうさせてもらいますよ」
「あればか」
「はい、その時は」
 こう話をしてだ。そのうえでだった。
 店員はそうした昔の不良の服を探すことになった。その際大輔に住所や連絡先を聞いた。それから数日後だ。大輔の携帯に連絡が入って来た。それは店員からだ。
 店員は電話の向こうからだ。明るい声で彼に言ってきた。
「ありましたよ」
「あの制服が?」
「はい、ありました」
 こう話してきたのだ。
「では当店にですね」
「ああ、行かせてもらうよ」
「それではそういうことで」
 これで話が決まりだった。大輔はまた店に来た。すると店員が前に来た時以上に明るい笑顔で彼を迎えてきてだ。こう言ってきたのだ。
「凄いですよ。本当にありましたから」
「店の奥にかよ」
「そうです。そこにありました」
「それでどんな学ランがあったんだい?」
「超長ランです」
 あったのはそれだというのだ。
「丈は一メートル四十で膝まで完全に隠れて」
「コートみたいだな」
「ですね。それで前ボタンは七つ」
 ボタンの数についても話す店員だった。
「袖ボタンは五つ、カラーは五センチです」
「そういうのか」
「ズボンもありまして。そちらは」
「ボンタンだよな」
「太腿が四十、裾は二十八でツータックです」
「そっちは普通だな」
「ズボンは今と大して変わりないですね」
 そちらはそうだというのだ。
「特に」
「違うのは上から」
「はい、それで髪型は」
「リーゼントだよな」
「ポマードを付けて」
「ならそれじゃあその超長ランとボンタン買わせてもらうな」
「値段はこれだけで」
 店員が笑顔で出してきた値段は大輔にとっては予想していたより安いものだった。しかも充分出せるものだった。それですぐに支払いを済ませて服を買ってだ。
 家に帰って着てみることにした。だがその前にだ。
 店を出る時にだ。店員にこう言われたのだった。
「ただ店の奥でずっとこやしになっていたので」
「虫喰いとかないよな」
「それはなかったです」
 とりあえずそれは大丈夫だというのだ。
「埃も払っておきました」
「けれどか」
「着られる前に一度クリーニングに出された方がいいです」
「わかったぜ。それじゃあな」
「はい、それでは」
 こうして着る前にクリーニングに出すことにもなった。そうしてだった。
 大輔は超長ランにボンタンをクリーニングに出してからだった。そのうえでだ。
 着てみてだ。そのまま学校に行った。するとだ。
 
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