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『殺し、失い、得たもの。』

作者:零那
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『失ったもの』



ごくごくありふれた普通の日々のように想えた。
すべてが嘘だったかのように...
でも、カラダに傷は在って、心も一部失ってて...
確実に現実が鋭く突き刺さる。

蓮は根が良い奴やったから辛い。
最期の最期に...
元の蓮に戻りかけやったから尚更...
いっそ、最期迄、最低な奴やったら...こんな気持ちにすら、ならなんだかもしれん。

蓮との綺麗な思い出を失った。
蓮との歪な関係を失った。
蓮との深い絆を失った。
蓮との信頼関係を失った。

蓮との...

蓮の存在を...

失った...

其れが現実。

失った...

違う。

消した。

そぉ零が。

此の手で。

怖い。

ホンマに現実?

やっぱり現実は残酷や。

このまま零も死のっかな。

ほな、あの世で蓮が言うんよ。

『オマエも来たんか!』って、笑いながら。

また昔みたいに愚痴ったり語ったり...
あの世には、もしかしたら楽しく過ごせれる未来があるかも!
零でも死ねる薬無いかな...

自殺未遂何回したんやろ。
薬、リストカット、飛び降り...
無駄に痛いだけで死ねれん。
青酸カリなら逝ける?

2人はピザ選んで風呂入った。
またテキーラ飲みながらボーッと死ぬ方法考えてた。
其れを察したかどうかは知らん。
先に風呂あがってきた舞。
零に抱き付いて来た。

『舞、どした?』
『...』
『舞?』

顔を伏せたまま首を横に振る。

『ありがと、舞』

舞が静かに泣く。
たぶん、見せたらアカンような表情やったんかもしれん。

『ごめんな、舞。辛いなぁ』

大きく首を横に振る。
振り絞るように言う。

『...もし、蓮が、あの時死んでなかったとしても、舞が自分で殺してたと思う。やけん謝らんといて!辛くない!そぉやって自分ばっか責めんとって!其の方が舞は辛い!!』

桜も風呂あがってて今の扉の処で聞いてた。

『そやで、零。舞は、あの時、横たわってた2人を見て、瞬間的にアンタの脈を確認してた。生きてるって解ってすぐ血を拭きだした。舞は確かに蓮を好きだった。でも、零の方が大事な気持ちも事実なんやで!アンタが舞を泣かしたら意味ないやろ!
うちら2人は何も後悔してない。此で良かったって改めて思う。零の蓮への気持ちも解ってるつもり!何も言わん...
でも!!死のうとか馬鹿なこと考えるんは許さん!!絶対許さん!!監禁でも何でもして見張る!!』



桜がまくし立てるのは珍しい。

『...あはは...あー...桜ホンマに監禁しそぉやからなぁ...怖いわぁー!!舞ぃー助けてやぁー!!』

ふざけるように返した。
だってあまりにも嬉しくて、照れるやん?
あれ、違うか...
んー...人からの熱い気持ちって素直になれん...
慣れてないからかなぁ、誰かに想われるってことに。

『おまえなぁ!!真面目に話しよんのにぃっ!!!』

冗談混じりに笑いながら、軽く首締められて以前みたいにジャレた。
舞も笑った。

組長がピザ持って登場。

『おぉっ!!元気やのぉ♪ピザ来たぞ!酒どけろー。もぉ飲むなよ零!!』

『ん、今は飲まん』

桜が言う。

『零、これめっちゃ普通のやつね。あとコッチが...』

説明を受ける。
食べてみる。
...微妙。
チーズ脂っこ過ぎ。
吐きそう。

『オマエが酒飲み過ぎなんよ!』

突っ込まれた。
皆が笑った。
寝室に残ってあったオニギリいただいた。

組長が言う。

『零!オマエが失ったものは現実や。でも、この2人の気持ちを素直に受け止めろ。その上で、得たものの大きさを考えてみ?
今、此処に居る皆、間違いなくオマエの味方や!!忘れんなっ!!』

『...さっきの話、聞いてたんやろぉー...』

『タイミング悪くなぁー』

皆が笑った。


 
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