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陸軍兵士が誤って海軍鎮守府に移籍させられてしまったようです

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貸出兵‐敵地潜入す

 
前書き
どうも皆さん夜桜デビルと申します。前回の前が気に書いた通り連続投稿なので誤字脱字が多々ある場合がありますが脳内変換または指摘の方お願いします。

それではどうぞ!! 

 
「…戻ってきたはいいがどう攻めるべきか…」

潜入する前と同じ岩の影に身を隠しながらどう基地を破壊するかを考える

「基地内部は死角も細い道も多いし面倒臭い…となると外から切り崩すのが得策だな」

岩陰から顔を出し見張り台にいる兵士の見ている方向を確認する。こちらを確認できる見張り台は二つ、運のいいことに両方の兵士はこちらを向いていない。

「高台ごと破壊する方が手間が省けるが警戒される可能性が高いし…素直に撃ち殺す」

腰辺りにぶら下げているC4は三つ、高台を破壊するだけなら問題ない数だが爆発音で警戒されては困る。サプレッサーは壊れてしまったが勘づかれる前に二人共打ち殺せば問題ない

「……気づかれてないな」

考えを手早くまとめここから近い高台にいる兵士に照準を合わせ発泡しすぐ様もう一つの高台に照準を合わせ発泡。数秒何も反応がないところを見ると無事撃ち殺せたようだ

「反対側にまだ高台は二つあるがまずこっち側の兵士を片付けてからだ」

反対側の高台からはこちら半分は死角で見えていない筈だベレッタの残弾数を考えると半分ずつ制圧していく方が警戒される範囲も少なくなる



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「…粗方排除できたか?」

外階段にいた兵士を片付け手すりの壁に身を隠しながらふぅと息を吐く。こちら側の兵士は見た所全員殺したが、ここからが正念場…警戒された状態で残り半分を制圧しなければならない

「ぞろぞろ来やがるな」

そんなことを考えていると反対側から駆け足で数十人の兵士達がこちら側に流れ込んできた。内部から出てこないのは負傷した奴らの治療をしているからだろうか?どちらにしろこちらとしては好都合だ

「…折角上にいるんだここから」

ゆっくりと手すりから覗き込み狙いやすい兵士を打ち抜いていく。奴らはまだこちらの場所は特定できていないしここで出来るだけ多く殺しておきたい

「…軌道で位置がバレ始めたみたいだな…」

数人撃ち殺したところで兵士達の動きに変化が現れた。弾の軌道で粗方の位置を特定したのだろう…ここは無理せず一旦引くとしよう

「パッと見あと数十人、身を隠す場所も多いし移動しながら確実に殺すか」

外階段から少し離れた物陰に隠れ、カラになったマガジンを引き抜き最後のマガジンを装填する。ベレッタはあと十五発、SMGは装填してあるマガジンと替えのマガジンの二つ、圧倒的に弾が足りないが何とかするしかない



side change-電



「大丈夫でしょうか…」

座りながらずっとそんな言葉がずっと口から漏れる。暗闇さんがあの基地に向かってから数時間は経ったのだろう舌の方にあった太陽は既に真上に到達し始めている。暗闇さんはあの有名な貸出兵の隊長さんだというのは少し前に食堂で話した時に聞いていたし困難な依頼を数多くこなしている事もよく耳にしているが

「…あの基地を一人で制圧するのは難し過ぎるのです…」

「…何が難しいんだ?」

「ふゃ!?…く、暗闇さん」

「待たせてしまって悪かった。少し兵士達を排除するのに手間取ってな」

いくら貸出兵の隊長さんである暗闇さんでも一人であの基地を制圧するのは難しいと考えていると突然後ろから声が聞こえ、びくりと体が震えた。振り返ってみると今考えていた人物である暗闇さんが立っていた。

「大丈夫なのです。…それよりも怪我をしているみたいなのですが」

「ん?…あぁ、問題ないちょっと銃弾が数発貫通しただけだ。それより足の方はどうだ?」

「痛みはもう感じなくなったのですけど足に力が入らないのです」

視界に入った暗闇さん見ると赤黒く染まっている服に数カ所の穴があり、その部分は更に濃い赤く染まっていた。しかし暗闇さんは問題は無いとだけいうと私の足の状態を聞いてきたので素直に答える。

「痛みが消えてるならいい。どっちにしろ歩いて帰れる距離じゃないっとそうだ仕上げを忘れていた。ちょっと耳をふさいでおけ」

「?」

空いている私の前の席に座りながら耳を塞ぐように言われ何故?と思いながらも素直に掌で覆うようにして耳を塞ぐ

「…これで依頼完了だ」

「…!?」

暗闇さんの声が聞こえたとほぼ同時に後ろから轟音が響いた。すぐ様その音の原因を知るために振り向くと

「き、基地が…崩壊しているのです」

「司令官から基地を崩壊させるよう依頼が来たからな。さ、さっさと行くぞ」

「わふぅ…ヘルメット?」

突然基地が崩壊したことに驚いているとボフッと頭になにか乗せられた。徐に手で触ってみるとヘルメットのようだ

「警察に追われるのは勘弁なんでなちゃんと被っておけよ」

「りょ、了解したのです」

ボォンボォンと座っている乗り物?から音を出しながらこちらを向く暗闇さんに了解だと答え、いそいそとヘルメットを装着する

「ちゃんと被ったな?」

「大丈夫なのです」

「よし、んじゃ行くが取り敢えず俺の腰辺りにでも捕まっててくれ」

「はい?…はわわわ!?」

疑問に思いながらも軽く暗闇さんの腰辺りに捕まるとほぼ同時に座っている乗り物?が猛スピードで走り始めた。ふ、吹き飛ばされそうなのです

「そんな弱く捕まってちゃ振り落とされちまうぞ?」

「速過ぎるのです~もう少しスピードをおとしてください〜!?」

「悪いがあんまりトロトロしてたら遅くなってしまうから我慢してくれ」

「本当に吹き飛ばされそうなのです~!」

振り落とされないように反射的に抱きつくような格好になってしまったが暗闇さんはなにも言わない。というものの今の私にそんなことを考えている余裕はないので迷惑だと思われていたもどうすることもできない

side change-暗闇

「…兄貴俺だ」

『暗闇か、何か問題でも起きたか?』

数秒ノイズ音が続きようやく依頼者である兄貴の無線に繋がる。

「いや、ただの依頼完了報告だ。一五〇〇に目標の基地を崩壊させた。もちろん捕虜の艦娘だった電も救出出来てるが足を負傷している。帰還予定は一八〇〇辺り、何か問題は?」

「問題ないあとは無事帰還してくれればいい、電については工廠の方に前もって連絡をしておく」

「了解した」

簡単に依頼が完了したことと現在の状態について兄貴に伝え無線を切る。

「…まだ怖いか?」

「だ、大丈夫なのです」

先程から抱きつくように捕まっている電に声をかける。やはりこのスピードは慣れてない奴には怖いだろうしな

「ほとんど抱き着いてるくせに何言ってる。取り敢えずあの辺で一回止まるぞ」

「本当に大丈夫なのです。このまま鎮守婦に向かいましょう」

「安心しろお前の為じゃなくて俺が疲れたから休むんだよ」

道の端にあった小さな草原にバイクを止め、すぐ様寝転がる。日が暖かくて気持ちいいな…

「こんな所で時間を潰して大丈夫なのですか?」

「あぁ、ここから鎮守府までさっきのスピードで行けば三十分くらいでつく」

「でもさっき帰還予定は一八〇〇と…」

「予定はただの予測だ、状況によって早くも遅くもなる。ま、今回は予想以上に早く終わったからな時間潰しだ…」

ふぁと欠伸が漏れる。今回の依頼は最悪1日以上かかるものだった。敵兵力や基地の規模も普通の基地より倍近くあったが今回は運が良かったのもありたった数時間で制圧し崩落させることが出来たということは余った時間は何をしてもいいだろう?

「悪いが少し寝る。お前も適当に時間潰しといてくれ」

「え?あ、了解したのです」

漏れそうな欠伸を噛み殺し瞼を閉じる。正直本格的に眠くなってきた…昨日は少し遅くまで兄貴と話をしていたからあまり眠れてないのもあるだろう。




--------------




「…んっ」

「目が覚めましたか?」

「…状況が呑み込めないんだが」

少し冷たい風に揺り起こされるように目が覚めた。パチパチと何度か瞬きをすると電の顔が視界に入る。しかしここで疑問が浮かび上がった。上を見ている俺の視界に何故電の顔が映っているんだ?

「何か夢でも見たのですか?」

「いや見てない。今この状況が呑み込めないだけだ。なんでお前の顔を俺が見上げてるんだ?」

「それは暗闇さんの頭が電の膝の上にあるからなのです」

「膝の上?…」

グッと後頭部を下げてみると確かに地面とは違う柔らかく暖かいものの上に頭があることがわかる。成程通りで頭が痛くない訳だ

「それでなんで俺の頭が電の膝の上にあるんだ?確か寝る前は草の上だった筈だが?」

「えっと…た、助けてもらったお礼なのです。め、迷惑でしたか?」

「いや、逆に頭が痛くならなくて助かった。…もう少し寝てもいいか?」

端末を取り出し時間を確認する。十六時三十分か…正直まだ眠い…

「電は大丈夫なのです」

「助かる。それじゃあもう少しだけ頼む」

「はい、おやすみなさいなのです」

眠かったのもあるだろう電の声が耳に届いた後意識が途切れた



side change-電

「サラサラなのです」

ゆっくりと小さく寝息を立てながら寝ている暗闇さんの髪を優しく撫でる。目元に軽くかかるくらいの前髪に触れると絡まることなくスルリと指から零れる。もしかしたら私よりも髪質がいいかもなのです…

「それに綺麗な顔…なのです」

目元にかかった黒い髪を横に流し、細めの眉毛。少し釣り上がった目元に長い睫毛。低めの鼻。薄い桃色の唇。少し白い頬と順に触れていく。

「んんっ…」

「可愛いのです~」

プニプニと頬をつつくとむず痒そうに口元がピクリピクリと小さく動く。起きていた時のキツい目線や口調からは全く予想もしていない反応に自然と口元が緩む

「ふふ」

これ以上やると起きてしまいそうなので髪を撫でることにする。サラサラと指から零れる手触りにまた口元が緩んだ



side change-暗闇


「んぅ…」

「あ、起きましたか?」

「あぁ…今何時だ?」

「一七二〇なのです」

一七二〇…十七時二十分か。ちゃんと時間通りに起きれたようで良かった

「…長い時間寝て悪かったな。足は大丈夫か?」

「はい、まだ薬が効いてるみたいで何ともないのです」

一度立ち上がり固まった筋肉を動かす。足の怪我も悪化してはいないようだ

「ならいいがっと」

「はわわ!?」

「一々驚くな。足を負傷してる奴を歩かせるわけには行かないだろうが」

「ご、ごめんなさいなのです」

筋肉をほぐしたところで座っている電を先程と同じように抱き上げるとまた電が驚く。運ばれるのがわかっているのだから一々驚くなっての

「っし、んじゃ行くぞ」

「はい」

電をバイクの上に降ろしバイクに跨る。さて、時間もギリギリだし飛ばさなきゃな



side change-優

「うっし、完成っと」

持っていた工具を作業台に置き椅子にもたれかかり葉巻に火をつける

「…手伝ってもらってあんがとな助かった」

作業台を歩き回っている一人にお礼をいうとニコニコと笑いながらコクコクと何度か頷く。誰にお礼を言ってるのかというと、妖精という人型の小さな小人のような奴らにだ。小さな体ではあるがそれを補える程の知識や作業の速さを持っている。そんな奴らが何人も集まれば作業時間は格段に早くなること間違いなしだ。

「ほぉ、もう完成したのか早いの」

「ん?おぉ、工廠長じゃねぇか」

妖精たちを見送りながら使った工具を片付けていると後ろから声が聞こえたので振り返ると少し大きな妖精が立っていた。

「整備兵にしては若いと思っておったが技術は相当なものだの」

「んなことねぇよ。俺なんてまだまだひよっこだっての」

「そんなに謙虚することないぞ?ここの妖精たちと五分と言っても過言ではないからの」

「はは、そう思ってもらえてんなら嬉しいが…アイツらに見合ったものは今の俺じゃ作ってやれねぇんだ」

溜息混じりに煙を燻らす。今回改造したスコーピオンとレミントンはもっと俺に技術があれば反動と重量を減らしつつ連射速度と威力を上げることだってできた筈なんだ

「焦りは禁物だの。そんな付け焼き刃の武器を使わせることがどれだけ使用者を危機に晒すかはお主が一番わかっている筈だの?」

「…あぁ、それは作る者なら誰でも知ってる暗黙のルールだろ。それはわかってんだよ…」

「…では、少し質問だ。何故あの貸出兵のチビ共がお前の未熟な武器を受けとったのかわかるかの?」

「…」

いきなり工廠長からの問に黙り込む。何故俺の武器を受け取ったのかか…正直なぜ受け取って貰えたのかはわからない。スコーピオンはバネを切ったことで反動が一気に上がったしレミントンだって全長と重量が大幅に大きくなった分威力と連射速度が上がったに過ぎない

「正直わからん」

「まぁ、難しいだろうな。答えはお前の気持ちが篭っているからだの」

「俺の気持ち?」

もう一度煙を吐き少し考えてみる。確かに性能が悪い武器を態々持って行くよりも改造前に戻した方がいいに決まっている。貸出兵は仲間思いと噂で聞いたことがあるが強ち間違いじゃないみたいだ

「ただあの貸出兵が気持ちだけで武器を受け取るとも考えづらいがの」

「あぁ、あいつらにはあの重さと反動は許容範囲らしい。欠点より利点の方が大きいと言ってたしな」

「ほぉ、あれ程のものまでも許容範囲とは驚きだの」

「俺も驚いてるよ、改造前と比べて倍近く重くなってるやつを軽々持っていくんだからな」

ほんとに驚いてる。元々重いSRは更に重くなっているし軽いことが長所のSMGも普通よりも大分重い筈なのだが何事もない様に担いでいくあいつらを見たときは数秒固まったものだ

「流石は貸出兵…並大抵の軍人とは鍛え方もやはり違うようだの」

「軍事歴も俺より長げぇし鍛えてる期間もやっぱ長げぇとは思うな」

ぱっと見ほっそりとしてそうだが力は大抵の軍人よりだいぶ強い。あれだけ重いものを腕の力だけで運んで行ったんだからな

「以外だの。お主軍事歴と年はいくつじゃ?」

「俺か?俺は軍事歴五年で今年二十三だ」

「ほほ~若いの〜 それならもう数年もすれば妖精なんてすぐ追い越してしまうぞ」

「そっか…ても数年も待てねぇんだよな」

まだ貸出兵に入って一週間も経ってないが隊長である暗闇からの無線で貸出兵ここの厳しさがわかった。詳しい場所はわからないが有名な海軍基地とは教えてもらった。有名な海軍基地となれば基地の規模も兵の数もデカイ筈だ。そんな基地に隊長であるとは言えたった一人で戦いに行っているとわかれば今すぐにでも完璧な武器を渡してやりたいと思うのは当然だろう

「さっきも言ったが焦りは禁物じゃ。今は自身の出来る最高のものを渡してやるのがお前さんに出来る唯一のことだの」

「…そうだな。んじゃ俺は行くな。話聞いてくれてあんがとな工廠長」

「うむ。わしの今の言葉忘れるでないぞ」

吸いきれた葉巻を灰皿に押し付け工廠長に一言例を言ってから部屋をでる。俺に出来る最高のものか…



side change-暗闇

「着いたぞ」

「…」

「?…寝てやがる」

草原から予測通り三十分程で到着した。電に先に降りるように言おうと後ろ振り返ると俺に抱きつくようにしてすぅすぅと寝息を立てながら眠っていた。まぁ、牢獄に捕まってたんだ肉体的にも精神的にも疲れたんだろう

「…仕方ない…起こさずに兄貴のところに行くか」

起こすか少し迷ったが寝ている奴を起こすのも忍びないと考え直し抱き上げる。さて、さっさと行くか



「…暗闇です」

「おお、空いてるから入っていいぞ」

「失礼します」

「早かったな…どうゆう状況だ?」

電を抱えたまま司令室に入ると振り返った兄貴が苦笑い気味に問うてきた。まぁ、確かにそうゆう反応をするよな

「帰投中に寝てしまってな。起こすのもどうかと思ってそのまま連れてきただけだ」

「成程な。んじゃ、悪いがお前らに貸してる部屋の隣の部屋に寝かせておいてやってくれ。報告書は後で持って行かせる」

「了解した」

「おっと言い忘れてた。その傷さっさと止血しとけよ」

報告を終え部屋を出る間際の兄貴の言葉に了解とだけ答え部屋を出る。流石に隠し通せる訳ないか


「…ここは…」

「俺達の部屋の隣にある空き部屋だ」

「空き部屋…なんで私がここに」

「帰投中バイクで寝てたから運んできた。司令官には許可はもらってるから安心しろ」

窓際で珈琲を飲みながら煙管を燻らせていると電が目を覚ました。寝ていたことが記憶にないということは気絶して一時的に意識が飛んでしまっていたようだ

「…ごめんなさい。また迷惑をかけてしまいました」

「別に構わん。それで足の状態はどうだ?」

「…少しずつ痛みが戻ってきたみたいなのです」

「…もう一度止痛を射つか。悪いがまた我慢してくれよ」

足の状態を確認してみるとまた青黒く腫れて来ていたので先程と同じ容量で足に薬品を注入する。

「…ちょっと動くなよ」

「?」

少し考えてから電に静止するよういい左足につけているホルスターを弄り包帯と鎮痛消炎剤を取り出し治療をしていく

「貸出兵にだけ支給される即効性の鎮痛消炎剤だ。明日には大分楽になってる筈だ」

「そ、そんなもの使っていただいていいのですか!?」

「気にするな。元々あまり使用しないし大本営に要請すればいくらでももらえるからな。っしキツくないか?」

「はい。ありがとうございます」

最後に縛り電にキツくないか確認をとると何度か足を動かしてから大丈夫とニッコリと笑顔を浮かべる。

「ならいい。じゃあ俺は行くが足に感覚が戻るまでは安静にしてろよ」

「…く、暗闇さん!」

「ん?どうかしたか?」

隣の部屋にいる筈の李悠達に今回の依頼について話す為部屋を出ようと扉に向かうところで電に呼び止められる。

「あ、あのその…き、傷の手当てをしてあげたいのですが」

「誰か怪我したのか?今包帯しか持ち合わせてないが「ち、違うのです」なら、なんだ?」

「く、暗闇さんの手当をしたいのです」

「俺の手当て?」

詰まり詰まりに話す電な疑問を持ちながらも話を聞いてみるとどうやら俺の傷の手当てをしたいらしい

「自分でやるから大丈夫だ。それにお前は怪我人だろ?大人しくしてろ」

「だ、ダメなのです!電も何か暗闇さんの役に立ちたいのです!お願いしますなのです」

「…あまり背中は見せたくないが仕方ない…手当を頼む」

先に折れたのは俺だった。ガシガシと頭を掻きながら部屋の隅に置いてある治療箱をとってから電が座っているベットの前まで戻り背を向けるようにして座り着ている服を脱いでいく。

「気分が悪くなったらすぐに言えよ」

「ど、どういう意味なのですか?」

「見ればわかるさ」

一番下に着ていた白のワイシャツを肌蹴させる。さて、どういう反応をするか

「…大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫なのです」

「意外に普通なのな結構驚くと思ったんだが」

「驚いているのですけどなんだか凄くたくましく見えたので」

軍人の背中を見て驚かない電に逆に驚いた。傷だらけで気分が悪くなるとか気持ち悪いとかいうと思ったのだがまさかたくましいなんて言われるなんてな

「たくましいなんて言われたのは初めてだな」

「そうなのですか?あ、これって刺青なのですか」

「あぁ、貸出兵の印みたいなものだ。何の絵かわかるか?」

背中を見ていた電が何かを描くようにして俺の背中をなぞる。まぁでかく彫刻してあるから気になるのは当然だな

「…ちょうちょさんに見えるのですがなんだか形が歪に見えるのです」

「そう蝶だ。形が歪なのは普通の軍人とは少し曲がった仕事だって意味でだ」

「ちゃんと意味があって形が歪なのですね」

「あぁ。っとそういえばそろそろ治療をしてもらってもいいか?」

「はわわそうでした。今すぐ始めるのです」



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「結構手馴れてるな。よく手当とかするのか?」

「入渠できない時は応急処置として治療するのでそのおかげなのだと思います」

話しながらも慣れた手つきで怪我の治療をしていく電。俺より上手いし頼んでよかったかもな

「そう言えば艦娘たちは入渠で体の傷を癒すんだったな。…俺もそんな体が欲しいよ」

「そうなのですか?でも、入渠には時間が凄くかかるのですよ?」

「長くても数十時間だろ?俺たちの場合は短くても二日間以上普通にかかるからな羨ましんだよ」

仕事柄休みがない俺達貸出兵にとって如何に早く体の状態を全快近くにまでもっていくかというのは依頼の進行度に深く影響してくる。だが、人間である俺達は傷を癒すにも何日もの時間がかかる。しかし艦娘たちは瀕死の重症であっても一日とかからず全快の状態へと回復することが出来る。ほんと羨ましい

「んむむ…色々と難しいのですね」

「本当に難しいことだらけだからな」

「なのです…暗闇さん治療の方終わりました痛くないですか?」

「あぁ、大丈夫だ」

きゅっと締め上げる音と共に電が治療完了を知らせてくれる。しかし早いまだ治療を初めて十分そこらだが

「消毒と止血はしましたが安静にしてくださいなのです」

「わかった。っと無線に連絡だ悪いが少し静かにしていてくれ」

「司令官か。…了解した」

「司令官さんからなのですか?」

電と話していると無線に連絡が入る、出てみると案の定兄貴からの連絡である頼みごとをされた

「あぁ。お前を風呂ドックに入れるついでに俺も入ってこいだと」

「暗闇さんとお風呂ですか…お風呂なのですか!?」

「デカイ声を出すな。ほら、さっさと行くぞ」

俺の話を聞くなりあわあわと勝手に慌てだした電を抱き上げて風呂ドックに向かう



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「うぅ…見られてしまったのです」

「何言ってる何も見てないだろうが」

入ってきた時からずっとこの調子だ、断っておくが俺は何も見てはいない。服は電自身で脱いでタオルを巻いた筈だし服を脱いでいる間俺は外に出ていた。これで何が見れる?

「の、覗いてたに違いないのです」

「覗いてないっての。そんなことするより襲った方が早いだろう」

疑うように見てくるので溜息混じりに考えを話す。今の電は歩くことが出来ない、なら態々覗くより束縛して脱がせた方が早い

「それはそうなのですけど」

「…そんなに疑うなら今ここで襲ってやろうか?俺は満更でもないしな」

「はわわ!?だ、ダメなのです!」

冗談交じりに言ってやると顔を真っ赤にしながらまたあわあわと慌てだした。

「冗談だ。おら、先入ってろ」

「え?ぶふゎ」

またなにか言い始めそうなので湯船に向かって放り投げてやる。さて、俺も服を脱いでこないとな



「っう…滲みるな」

チャプンと湯船に浸かるとジクジクとした痛みが全身、特に背中に響く。まぁ、貫通してくれただけありがたい。残留していたら取り除くのに時間がかかるからな

「おい、そろそろ機嫌直してくれよ」

「暗闇さんなんて知らないのです」

オレと対になるように座る電に声をかけてみるがつんとそっぽを向かれる。先程湯船に投げ込まれた事を根に持って拗ねてしまったようだ

「まぁ、いいが。それでお前はあと何時間入渠してないといけないんだ?」

「暗闇さんには関係ないのです」

「いや、俺が運ばなきゃここからでれないだろ。出たくないならそれでもいいが」

「…十五分なのです」

流石にここから出られなくなるのは困るのだろう渋々ながら電は答える。

「怪我の割に随分と治るのは早いんだな」

「…小破程度の傷なので妥当な時間なのです」

「やっぱり傷の具合で時間は変わるようだな。その傷で十五分となると大破でも一二時間くらいか」

「それくらいなのです」

今の話を聞いて艦娘たちの身体がさっきよりも羨ましくなった。大破となれば人間で言う重症や瀕死に当たるもの、それをたったの一時間ちょっとで完全に傷が回復するんだ…羨ましすぎるな

「そりゃいい。…少し聞きたいんだがこのお湯なんか入ってるのか?」

「電も詳しくは知らないのですが傷を癒す効果はあるみたいです」

「ほぉ…ん?ってことは疲労はとれないのか?」

「多少はとれるのですけどやっぱりちゃんと睡眠を取らないと疲れは抜けないのです」

傷を癒す効果はと言うことは骨や心体への疲労、神経麻痺など傷ではないものは癒すことは出来ないということだ。やはり短時間で回復させるとなると癒すことができるものも限られてくるのだろう

「…なぁ、もしお前が嫌じゃなかったら風呂上がってから少し時間もらっていいか?」

「え?あ、はい大丈夫ですけど何か電に用事なのですか?」

「んや、湯船に投げ込んだお詫びをな。機嫌悪くしたままじゃあとが面倒くさそうだからな」

「別にもう怒ってないのですよ?」

少し考えてから電に一つ提案を投げかけるが小さく首を傾げながら怒っていないことを表す。女心は秋の空とはよく言ったものだ。ほんとにコロコロと変わる。

「お詫びするってんだからいんだよ。そら、良いのか悪いのかさっさと決めろ」

「暗闇さんからお詫びしてもらえる機会もうないと思うのでお願いしたいのです」

「了解」

深く息を吐きながらどっぷりと方まで湯に浸かる。治癒効果のせいだろう先程から背中が熱くむず痒い早いとこ出たいがここで多少たりとも治しておきたいし我慢するか



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「んっ…ぁ…」

「キツイか?」

少し強めに揉み解すとくぐもった声が響く。やっぱりちょっとキツイか?

「だいじょうぶなのです…続けてください」

「…キツかったらちゃんと言えよっ!」

「うぅ…」

目頭にうっすらと涙を浮かべながらも続けてくれという気持ちに答える為力を込めるが…体格差もあるだろう痛みに耐えるよう電は押し込めたような声を出す。

「初めは痛いだろうが我慢してくれ」

「い…痛いのです」

力を加えると今度ははっきりと痛いと口に出した。これでも優しくしている方なので後は慣れてくれるまで我慢してもらうしかない



「…どうだ?」

「き、気持ち良くなってきたのです…」

「ならいいがっ」

「んはぁ!」

大分落ち着いたのを見計らい先程より力を込めると一際大きな声を上げる。おいおいあんま大きな声出すと

「ちょ、ちょっとアンタ何やってるのよ!」

「ん?」

「い、雷ちゃん?」

なんて思っていると案の定部屋の扉が開かれたので視線を動かすと電に似た容姿をした少女が仁王立ちしながらこちらを見ていた。

「そういう行為をするならもう少し場所を考えた方がいい。声が丸聞こえだよ」

「そ、そうよレディにあるまじき行為よ!」

雷に続き響と暁が入ってきた。扉前で盗み聞きとは性格悪いな

「雷ちゃんたち何か勘違いしている様なのです!?」

「…電さん説明して貰っていいですか?私だと逆に疑われてしまいそうなので」



「という訳なのです」

「ってことは私たちの勘違いってこと?」

「そうなりますね」

話を聞くなり苦笑いを浮かべる雷。俺が行っていたのは疲労を緩和するマッサージだ。声だけ聞いたら勘違いする奴もいるだろうけどな

「な〜んだ…心配して損したわね」

「それよりマッサージであんな声を出すのかい?」

「そ、そんなに変な声出していたのですか?自分じゃわからないのです」

「艶めかしい声は出してましたね」

まぁ、如何わしい行為をしているのかと誤解されそうな声は出していたがここは濁して伝えるのがいいだろう

「艶めかしいですか?」

「…君のマッサージは相当気持ちがいいみたいだね」

「気持ちいというかフワフワした気持ちになるのです」

「自分では普通にやっているつもりなんですけどね」

そう別に擽るようにとか敏感な場所を触ったわけではなくだだ足を普通に揉んでいただけだ。まぁ、李悠も気持ちいいとはいっていたが

「なら、私も頼もうかしら?最近疲れが取れないのよね」

「構いませんよ。まずは電さんの方が終わってからですけど」

「なら、私と暁は部屋に戻っているよ。さ、暁行こうか」

「あんまり遅くならないようにしなさいよ」

雷を残し響と暁は部屋を出ていった。さて、そろそろ再開するか



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「はい、終わりましたよ」

「…凄いわね。体が軽いわ」

「疲れが抜けたのです」

約一時間程かけ電と雷二人のマッサージが完了しそれぞれが体を動かしマッサージの効果を確認している。大分時間がかかったが満足してもらえたようでよかった

「お二人共随分と疲れていたみたいですね。特に雷さんは体中ガチガチでしたよ」

「やっぱり出撃のし過ぎかしらね」

「あまり無理し過ぎると体に負担がかかりますから気をつけてくださいね」

マッサージ中に話しを聞いていたが最近は資材調達の為連日遠征に行っていたらしい。

「そうね。提督に遠征を減らしてもらえるか頼んでみるわ」

「それがいいですよ。あ、それと疲労は一時的に緩和しているだけなのでしっかり睡眠をとって体を休めてください」

マッサージしたとはいえ完全に披露が抜ける訳では無い。やはり体全体の疲労をとるならゆっくりと寝るのがいい

「わかったわ。電あんたは少し休んでから来なさいね。もし歩けないようだったらここに寝かせてもらって。…いいわよね?」

「私の部屋ではないですが了承は得てるので大丈夫ですよ」

「そう、それじゃ電のこと任せたわね」

そう言い残し雷は部屋を出ていった。許可を取っていたからいいが何だか強引な見た目より随分と強引な奴だな



「…八時ちょい過ぎか…少し早いがお前は寝ろ」

「でも、眠くないのです」

ベットへと電を運び寝るようにいうがやはり寝るには早いようで苦笑いを浮かべる。

「お前が感じてるより体は疲労してる、目を閉じてればいつの間にか寝てるから心配するな」

「そう言われても…そうなのです!暗闇さんについてお話して欲しいのです。そうしたら寝られる気がするのです」

なにか思いついたような声を出したと思ったら俺の話をして欲しいと言い出した。

「別に構わない具体的にはどんな話をして欲しいんだ?」

「えっと…好きな物とか嫌いな物とか?なのです」

「なんで疑問形なんだ。ようは俺のプロフィールを言えばいんだな」

「そんな感じなのです」

曖昧な返しに溜息がでる。まぁ、自分のプロフィールみたいなものなら話しても大丈夫だろう

「んじゃ、言うぞ。名前コードネームは暗闇、大本営-陸軍特別貸出部隊所属、歳は黙秘、好きな物は珈琲とチョコ、嫌いな物は生魚、これでいいか?」

「チョコが好きなのに珈琲も好きなのですか?」

「どっちも苦いブラックだ。甘い物はあまり好きではないな」

思いつくものを淡々と答えるとその中で疑問に思ったことについて電が質問してきたので素直に答える。

「甘い物が苦手なのですね。えっと年齢はなぜ黙秘なのです?」

「規定だ。俺と李悠はまだ若いらしくてな口外しないといけない場合以外は口外しないようにってな」

「そんな規定があったのですか。じゃあ生魚はなぜ嫌いなのですか?」

「見た目とか味は平気なんだが生もの独特の臭いだな。特に魚は生理的に無理だ」

思い出すだけでも気分が悪くなる。生肉も生野菜も平気なのだが生魚だけは本気で無理だ。地球上から消滅してくれないだろうか…

「意外なのです。暗闇さんみたいな完璧な人は苦手なものなんてないと思ってたのです」

「俺だって人間だ嫌いなもんや苦手なものくらいある。おら、答えてやったんだから早く寝ろ…っ」

「はわわ暗闇さん!?」

貸部屋に戻ろうと立ち上がった瞬間視界がグラりと歪み膝をつく。血を流し過ぎたか?

「ちょっと血を流し過ぎて貧血みたいだ」

「だ、大丈夫なのですか?」

グラグラと揺れる視界に苦笑いを漏らしていると首筋に温かい何かが触れる。

「凄い冷たいのです」

「血が足りないからな…寝ればすぐ治る…おっと」

「立ち上がっちゃダメなのですよ」

足に力を入れ立ち上がるが足元はフラフラとして歩ける状態じゃないのはわかった

「(あ~ダメだ倒れる)」

「だいじょうぶなのですか?」

立ち上った拍子に視界が大きくグラつき足の力が抜ける。また倒れると思ったが何かに支えられるように途中で止まる。何が起きたと思い支えられている付近に目を向けるとグラついているが誰かが支えてくれているのが見える。この状況から考えれば支えてくれているのは電だ

「悪い」

「気にしなくてもいいのです。取り敢えず座りましょうか」

謝る俺に笑顔で答える電だがやはりこのまま立っているのは辛いのかベットまで運ばれる。

「早く寝ないといけないのは暗闇さんの方なのです」

「はは、何も言い返せねぇや」

電の言葉に苦笑いが漏れる座ったら落ち着くかと思ったが状態は変わらず視界はグラグラと揺れ話しかけてきている電の声もかすんで聞こえる。兄貴の言う通り早めに止血しときゃよかった

「(明日の作戦確認は李悠に任せるか)んじゃ、寝るか」

「い、一緒に寝るのですか?」

「そうだが?」

二人ともうまく動けない状態でしかもベットが一つしかないとなれば一緒に寝ることになるのは必然的だろう。仮に俺か電がここから別の部屋に移動するとしても途中で倒れる可能性もあるしな

「別になにもしねぇよ。仮にも雇われてる身だしな。ほら、早くしろ」

「…失礼しますなのです」

先にベットへ入り電に声をかけると遠慮がちに潜り込んでくる。いや、遠慮というより恥ずかしがってるみたいだ

「そんな恥ずかしがることねぇだろ」

「…」

苦笑いを漏らしながら電に話しかけるが返答が返ってこないので顔を覗き込んでみると顔を真っ赤にしながら顔を隠していた。

「(面白れぇこと考えた)…狭ぇんだからもっとくっつけっての」

「はわわわわ!?」

ポスンっと腕の中に引き込むといきなりのことに驚いた電が可笑しな声を上げる。しかしそんなことはどうでもいい。

「暖かいなお前」

「…暗闇さんはヒンヤリしてるのです」

ギュッと抱きしめると湯たんぽのように暖かい体温が伝わってくる。体温の低い俺にはこの温度は本当に心地良い。

「これならすぐ眠れそうだ」

「電も眠くなってきたのです」

互いに持ち合わせない温度に心地よさを感じていると睡魔が襲い掛かってくる。久しぶりだなこんなに早く眠気が来るのは

「なら、もう寝るぞ」

「はい…おやすみなさい暗闇さん」

目を閉じるとすぐさま意識が暗い闇に落ちていく。最後に一言おやすみとだけ呟いて意識を手放した。 
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