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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第1章 Fate/please love me seriously
  第1話 穏やかな朝

 「それじゃあ行って来る」
 「ああ、2度目の高校生活3学年目を、今日も存分に堪能して来い」

 師匠であるスカサハの含んだ言葉を背に、士郎は苦笑しながら家を出た。
 しかし――――。

 「如何かしたんですか?」

 衛宮邸を出た直後、隣の藤村組の本邸の門から若衆たちが急ぐように次々と出て来ていたのだ。

 「おう、士郎か?いやな、土手の川岸の方で他所から来たチンピラが屯ってるていう情報をご近所さんから貰ってな、それで急ぎ対応しに行こうとしてたんだよ」
 「それなら俺が先に行って騒ぎにならないように見てきますよ。どうせ通学路ですし」
 「おう、それなら遠慮なく頼むわ。だがお前は学生だからな、俺達の誰かが1人でも着けば学校の方に行ってくれていいぞ?」
 「分かりました」

 そう言った直後に士郎は、その場から消え去った。
 それを見送った若衆の1人は楽しそうに笑っている。

 「相変わらずやるなぁ・・・!組長や若頭が気に入る気持ちも解るぜぇ」

 そんな風に呟いていた。


 -Interlude-


 「これは・・・・・・川神か」

 自分の最高速度で現場に向かっていた士郎は、途中で関節を外された不良たちを見かけた。
 恐らく何時もの様に吹き飛ばしたのだろう、関節を外された痛みと吹き飛ばされたショックで気絶していた。

 「相手を囲むようにする手合いに、川神は容赦ないからなぁ」

 士郎はこれについて、藤村組の若衆のまとめ役に連絡した。
 それから土手に行くまでに、見かけた不良たちの関節を痛みを起こさない様に元に戻していった。
 但し、起きた後に周囲の住民に迷惑を掛けないように、ある程度身動きを取れない様にロープで縛った。
 因みに、ロープはこっそり投影で創り出した。
 そんなこんなで現場に着くと、不良は予想通り誰1人も残って居なかった。
 勿論これについて連絡した後に、不良たちを蹴散らした張本人を見つけたので声を掛ける。

 「おはよう、川神。今日も派手にやったな」
 「ん?衛宮か。ま、何時も通りだ」

 士郎に挨拶された百代は平常通りに対応する。
 その百代に士郎は、彼女に気付かれる事なく一瞬だけ服のポケットから僅かに出ているモノを見る。
 如何言い含めたかは判らないが、鉄心はお守りを身に着けさせることに成功したらしい。
 士郎は、これについて一安心する。

 「自業自得だろうから仕置するのは構わないが、あんまりやり過ぎると周囲の迷惑にもなるから自重してくれって前に頼んだはずだけどな?」
 「いいだろう、別に。私の勝手じゃない――――」
 「借り」
 「!」

 士郎の一言に、百代は過剰反応する。

 「脅しなんてしたくないが、毎度の事借りがあったはずだ。この頼み事を引き受けてくれないなら、借りも極力早く返してくれないとな。それともう肩代わりしてやらん」
 「は、早まるな、衛宮!頼みは引き受けるから、それだけは勘弁してくれ!」

 百代は一瞬にして士郎に対して腰を低くした。
 そこに大和が士郎のあるキーワードに反応する。

 「衛宮先輩、おはようございます。それで、義姉さんが言ってた“肩代わり”って何ですか?」
 「直江か、おはよう。何だ言ってないのか?確か舎弟の彼にだけは、話を通してあるって言ってた筈じゃなかったのか・・・!」
 「えっ、いや、それは・・・」

 士郎の静かな眼光により、まるで蛇に睨まれた蛙の様に縮こまる百代は、しどろもどろになった。

 「肩代わりって言うのはそのままさ。百代が他からも借金してからバイトして返すようにしてるらしいが、今迄期日までに間に合いそうも無かった時もあったのは知ってるか?」
 「ええ、その時は基本的に俺とかが貸しますから」
 「けど直江達から借りた分だけじゃ足らない時もあってな」
 「その時に衛宮先輩が肩代わりしていると?」
 「まぁ、そうなるな」
 「義姉さん・・・」

 呆れ半分憤り半分で大和に睨み付けられる百代は、まるで現在進行形で裁かれている被告人の様だ。

 「むぅ」
 「まったく、他からも肩代わりしてるなら如何して言わなかったの?」
 「だって言ったら怒るだろ?」
 「当たり前だよ。――――それと、“借り”って言うのも何?」

 大和に聞かれた百代は言いたくないのか答えようとしない。
 その代わり士郎が答えた。

 「それについては言っておいてなんだが、それほどの事じゃない。単に今までのテストの勉強で、ほとんど直前になって泣き付いて来ただけだ」
 「衛宮!如何して全部言うんだ!これが大和経由で爺やルー師範代にバレたら不味いんだぞ!?」
 「なら最低限の勉強位してくれ。俺だって勉強の時間があるんだぞ?」
 「その割には何時もお前が勉強してる所なんて見た事ないぞ?よくそれで今までダントツ首位を守り切れてきたな」

 百代の言葉通り、士郎は川神学園に入学してからテストの成績は常に1位だった。
 と言うか、この世界に来てからずっと1位だ。
 その理由は、士郎の3番目の魔術の師である万華鏡の指導のおかげ?である。
 士郎がキシュアに目を付けられてしまってから、まずこう言われたのだ。

 「どれだけ魔術のセンスが残念でも、私の弟子の中の末弟であろうと知識に乏しいなど問題外だ」

 この発言により、士郎は脳細胞を死滅させる気なのではと疑いたくなる位のスパルタ指導の下で、世界トップクラスの知識を無理矢理詰め込まれた。
 なので知識だけは豊富だ。
 しかし、この世界と士郎の世界の学問の知識が全て同じとは限らなかった。
 いや9割以上は同じなのだが、違う部分も確かにあるので、その当たり知識を埋めるように士郎はこれまで勉強して来たのだ。
 だがその当たりについては、自分が転生者であると言う事実を教えたごく少数の者にしか教える事は出来なかったので、それ以外の者たちに根掘り葉掘り聞かれない様に色々と装ってきたのだ。
 だがそれ以外にも勉強していることはある。
 それは様々に移り変わっていく現代の雑学や新知識だ。
 士郎の新たなる道の力になるであろうと予想して、地道にその手の情報学に努めているのだ。
 因みにテスト期間は百代の言う通り、確かに勉強はしていない。
 約1週間の間は授業終了後はフリーになるので、違法ではないが人にはあまり言いたくない仕事をしていた。

 「川神の知らない処でやってるさ」

 この様に基本的には誤魔化すしかない。
 とは言え、それ相応に交渉事にも手馴れているので、昔とは違い感情を表に出さないような感情コントロールも出来るようになったので、嘘を付いていないように思わせることなど造作も無かった。
 少なくとも風間ファミリー程度の経験レベルの人間に気付かれることは無かった。
 現に、全員士郎の言葉に騙されている。

 「兎に角、少しは自重してくれよ?」

 ポンポンと百代の頭を撫でてからその場を離れて行った。
 頭を撫でられた百代は苦虫を噛み潰したような顔に成る。

 「同い年だろうに、人を子ども扱いしやがって・・・・・・ん?」

 士郎の背を睨み付ける百代の肩を、大和が叩く。

 「義姉さん、ちょっといいかな?」
 「ま、まさか、テストの件を爺たちにチくる気か!?いくらなんでもそれは酷いぞ!」
 「それはいいよ。あの勉強嫌いの義姉さんが、如何して何時も赤点を回避出来てたのかも解ったし。それよりも、決して薦める訳じゃ無いけど、衛宮先輩なら義姉さんに釣り合い取れるんじゃないの?」
 「衛宮ぁ~~~~?・・・・・・・・・無いな」

 百代は少し考えた後に素で答える。

 「一応、理由を聞いてもいい?」
 「アイツ、あれだけ何でも出来るくせに闘争心も競争心も無いだろ?だからだ。悪い奴じゃないし、友達程度なら別に良いが、男としては見れない。少なくとも私には合わないな」
 「でも衛宮先輩とくっつけば、将来的に色々といい方向に持っていけるんじゃないの?」
 「大和、お前は普段から悪巧み的に打算性があるからか、たまに感情面を無視した利潤性で考えてるときあるぞ?」
 「え?マジで?」

 大和が後ろを向くと3人とも頷いていた。
 この事に大和は今後自重しようと胸に誓う――――とまでは行かないが、そう決めた。


 -Interlude-


 一方、風間ファミリーから離れた士郎は、多摩大橋を渡っている親しい後輩を見つける。

 「ユキ、準、2人共おはよう」
 「む?シロ兄なのだ!おはよう~!」

 小雪は士郎に反応して、ピョンピョン跳ねながら近づいて来た。
 その後を準がゆっくりとした足取りで近づいて来る。

 「おはようございます、士郎さん」
 「おはよう・・・・・・ってこら、ユキ。あんまり跳ねるな、スカートが捲れるぞ?」
 「アハハハハ、大丈夫、大丈夫!」

 小雪は士郎の注意にも、笑いながら跳ねるのを辞めない。

 「そう言えば冬馬は如何した?」
 「えっ、あっ、若はちょっと野暮用でいないっすよ」

 準は慌てて誤魔化す。
 何故なら冬馬は朝帰り――――いや、連絡はあったが帰っても来なかった。
 因みに既に学校に居る。
 ならば事実を言えばいいのだが、そうもいかない理由があった。
 その前に冬馬を含めたこの3人が士郎と親しい理由がある。
 3人は昔、士郎に救い上げられた事があったのだ。
 小雪は母親に殺されそうなときに士郎に助けられ、残りの2人は小雪経由で父親の圧力から救われたのだ。
 因みに、その時の後の事は藤村組も介入しているので、実働は士郎でアフターの様々な事は藤村組が処理したのだ。
 つまり3人にとって、士郎を含めた藤村組は大恩人だと言う事だ。
 そんな助けられた時に、まるで雷に打たれた様に冬馬は初めてときめいたのだ。
 一つしか歳が違わないにも拘らず、自分達を庇う士郎の後ろ姿が大きく逞しく見えたのだった。
 そう、冬馬は士郎に恋をしたのだ。
 しかし2人とも男だ。
 そして士郎はノーマルだ。
 法的にも認められない叶わぬ恋をした冬馬は、そのやるせない気持ちをもみ消す様に昔からお盛んに男女問わず食べているのだ。
 しかし、冬馬はある情報を耳にした。
 最近、同性婚を公式的に認めさせる動きがあると言う。
 これには一瞬歓喜したが、何所まで行こうと士郎はノーマルだ。
 なので冬馬は今も、お盛ん状態だ。
 されど冬馬は今でも本命は士郎である。
 その事を知っているからこそ、準は誤魔化しをしたのだ。
 だが、これでも士郎の目は確かなモノ。そのために、あっさり誤魔化そうと見抜いたが、「思春期なのだから隠し事の一つや二つもあるだろ」と判断したのだ。その為――――。

 「そうか、なら3人で行くか」

 準の誤魔化しを敢えて受け入れた。
 この事に準は、見抜かれているとも知らずに安堵する。
 そうして3人は今日も川神学園に登校していった。
 
 

 
後書き
 ほのぼの回としました。つまらんでしょうけど、如何か我慢を。 
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