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水の国の王は転生者

作者:Dellas
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第一話 王子誕生

「おぎゃあああああぁ! あぎゃあああああぁ!」

いったい何がどうなってしまったんだろう。
確かめようとするがどういうわけか目が開かない。
口が勝手に悲鳴・・・・・・・と、いうか泣き声を上げる。
辛うじて俺の鳴き声に紛れて雑音のようなものが耳に届くぐらいだ、今置かれた状況を確かめるべく雑音に耳を傾けた。

「おめでとうございます! マリアンヌ王妃殿下」

「元気な男のお子様でございます、王子様でございます」

「王太子殿下万歳! トリステイン王国万歳!!」

「まもなく国王陛下も参りましょう」

「そうね、少し休ませてもらおうかしら」

どうやら転生には成功したらしい、先ほどの会話を聞くところによるとどうも・・・・・・・トリステンだか何かの国王と王妃との間に産まれた王子様らしい。
王子様・・・・・・・そう! セレブだ! 転生させてくれたとはいえあの不良神どものおもちゃにでもされるのではないかと戦々恐々だったのだ。



ふと、誰かの手だろうか? なにか柔らかいものがオレのほほをなでる。

「はじめまして、私の赤ちゃん、私があなたのお母さんよ」

「あー、うー」

うん・・・・・・・なにかすっごく温かいものがオレの小さな身体全体を駆け巡った。

「あー、あー」

オレは母を探そうと目を開けようとするが中々まぶたは開かない。

「もうすぐ、お父様が来るから」

父ちゃんか、国王ってくらいだから立派なヒゲでも生やしているんだろうか。
カイゼルヒゲを生やすいかにも国王! って感じのおっさんを想像して脳内で吹きかけた。
その後リラックスしたのか自然とまぶたが開き、初めて母を見た時はかなりヤバかった。
いくら美しいからってさ、いくらなんでも生んでくれた母親に惚れるわけには行かないからね
すかさず目を閉じて寝たふりを決め込んだんだ。








しばらくすると何やら廊下の辺りが騒がしい。
すると、いきなり派手でハンサムガイなおっさんが部屋に入ってきた。

「ああっ! 愛しのマリアンヌ! よくがんばったね!」

「陛下! 嗚呼・・・・・・陛下、私は今日この日ほど陛下と始祖ブリミルの愛に感謝したことはございません!」

「おお・・・・・・愛しのマリアンヌ、嬉しいことを言ってくれるね・・・・・・・でもそれだけじゃ足りないよ! 始祖ブリミルと僕、そして・・・・・・・キミの愛があったればこそさ!!」

「陛下ぁ!」

「マリアンヌッ!!」

はっしと抱き合い二人は深いほうのキスをした。

『トリステイン王国万歳! 国王陛下万歳!』

『トリステイン王国万歳! 王妃殿下万歳!』

『トリステイン王国万歳! 王太子殿下万歳!』

『バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!』

『ワアァァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・』

首は回らないがおそらく窓の方向、やたらと歓声が聴こえる。
他にも室内にいた貴族っぽい服の男たちが数名と医師一人と助産婦一人、メイドが数名、それらが万歳三唱しているのだ。
逆に恐縮してしまうのは前世が日本人だからだろうか?
それと母さん! 父さんが登場するまですごくいい感じでいかにも『良妻賢母』って感じだったのに父さん登場と同時の『母』から『女』への変貌はすっごい幻滅した!
王太子の誕生とはいえこんなに派手なものなんだろうか?


なんかこう・・・・・・この国大丈夫か?







先ほどの馬鹿騒ぎは終わり王城内は静寂に包まれ当番の衛兵ぐらいしか人影はない。
いや、確認してないけどさ。
王太子誕生で急遽祝日にしたって父ちゃんが言ってた。
母さんはクィーンサイズか分からないがかなり大きい天幕ベッドに横になっている、ちなみに『女』から『母』の顔に戻っていた。
父さんは豪華なイスに座り、ニコニコしながらオレを抱いている。
二人とも普通だ、ひょっとしていままでのは演技だったのだろうか?
ちなみに室内には父さんと母さんそしてオレの三人しかいない、家族団らんを楽しみたいそうで他の人たちは部屋の外に下がらせたようだ。
何か異常があればすぐにでも飛び込んでくるそうだが、首のすわってない赤ん坊がいるのに大丈夫だろうか?

それはそうと、オレの名前が決定した。

『マクシミリアン・ド・トリステイン』

だ、そうだ。

愛称はマックス、マクシィ、ってところか。

『トリステイン』が姓で、先に『ド』の称号が付くならトリステインって国はフランス圏の王国なんだろうか?
ま、今考えても仕方が無い、後で調べるとしよう。

「そういえば・・・・・・ヴァリエール公爵夫人も近々二人目を出産するそうだ」

「そう、カリーヌ様が・・・・・・月日の経つのははやいものね」

母さんが複雑そうな、何かを懐かしむような顔をしていたがオレには意味が分からなかった、友達だったんだろうか?

「男子ならばよき友人になってくれるだろうし、女子ならば婚約を申し込んでみようか、ハハハ」

「まぁ、陛下いささか気が早いのではないですか?」

「そうかな? ハハハハハハ」

「うふふ」

なんか勝手に人生設計を決められてるような会話が聞こえるが、オレは今、とてつもなく眠い・・・・・・・
うん、もうだめだ・・・・・・おやすみ。






『おやすみ、私たちの天使』


なにか聞こえたような気がするが・・・・・・・よい響きだったね・・・・・・うん、こんどこそおやすみ





 
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