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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 妖狐伝 3

 
前書き
会社の方針が変更になり、ストレスからスランプを抜け出せたっぽいです。
10人未満の会社なのに超一流企業からの外注が2本に、社長が昔作っていた無料のアプリというかシステムというか、それを金を取れるぐらいにしっかりしたものに作り変える仕事に加えて細々と小さい仕事も受け続ける方針です。手持ちのお金はどんどん減っていくのに資産はどんどん跳ね上がっていく状況に。仕事がないよりはマシだと割り切って頑張ってます。 

 


寝る前のブラッシングを屋敷に転移反応を感じる。向かってみようと立ち上がると襖を開いてリーアが現れる。そしてそのままオレに抱きついてくる。

「どうしたんだ、リーア」

「お願い十束、私を抱いて」

「おい、リーア、落ち着け」


「初めてだけどなんとかなるはずよ。だから、今すぐ「リーア!!」っ!?」

「リーア、落ち着いたな。一つずつ訳を話せ。オレも出来る限り手を貸してやる」

「ごめん。だけど、抱いて欲しいのは嘘じゃない」

落ち着いたリアスから事情を聞くと、フェニックス家の三男と無理矢理婚約させられそうになっているそうだ。とうとう、この時が来たのかと思いながら話の先を促す。リアスの仕方のないことだと思っていたのだが、相手が悪すぎた。眷属は全て女性で肉体関係を持っている。この時点でほとんどの女性から嫌悪される。その上で定職に就くこともなく、たまにフェニックスの涙を作って売る程度。典型的なダメ悪魔だな。そんな相手だがフェニックス家というのがグレモリー卿が強く出ることを許さないのだろう。たぶん、三男はそのことをわかってやっているな。

「そんなのが相手だなんて絶対に嫌!!私は、私は貴方が」

最後までいう前に再び屋敷内に転移反応を感知し、目の前に魔法陣が現れる。魔力からしてグレイフィアさんか。

「やはりこちらにお出ででしたか、お嬢様」

「グレイフィア」

「十束様、お嬢様のことは?」

「話を聞き終えたところです。それで」

「お話の手間が省けて幸いです」

「私は帰らないわよ、グレイフィア」

「構いません。私は十束様に用があるだけですので。お嬢様に関しては特に指示を受けていませんので」

「「えっ?」」

「私はグレモリー家当主様から十束様への言伝を預かってきているだけです」

「言伝ですか?」

「はい。この度、リアスお嬢様の婚約者を決めるにあたり、大々的にお相手を募集することになりました。条件などはお嬢様の嫁入りだけです。グレモリー家時期当主はミリキャスが継ぐことになります」

条件は嫁入りだけ。そんなバカなことが。

「グレイフィアさん、本当に条件はそれだけなのですか?」

「はい、身分や種族も関係ありません。婚約者を決めるために期間内でどれだけの物をグレモリー家に収められるか、有り体に言ってしまえばお嬢様にどれだけ価値を付けるのかを競わせる試練を用意しております。その際、グレモリー家からの補助以外は自分の『力』のみで物を入手するという条件があります」

「なっ、そんな!?」

リーアはフェニックスが有利だと考えたのだろうが、違うな。『力』の意味を履き違えている。

「なるほど。それで、私にもそれに参加するようにと?」

「ご本人の意思次第です。参加する場合は監視と補助を兼ねた人員がグレモリー家から付きます」

「そうですか。リーア、今日のところは戻れ。これだけ状況が動けばどうとでもしてやる」

「……分かったわ」

リーアが魔法陣の転移で帰るのを見送ってから再びグレイフィアさんに対峙する。

「オレも参加させてもらおう」

「分かりました。グレモリー家にそう伝えておきます。それから監視と補助には私が付くことになります。それから、これはグレモリー家に仕えるメイドではなく、あの娘の義姉として尋ねます。何故今まで動かなかったのですか?」

「動けなかったからとしか言えない。お互いの立場を考えて。リーアは次期当主であろうと肩肘を貼り続けていた。だから、他種族の、しかも立場のある相手と結婚などは考えられなかった。リーアとリアス・グレモリーの立場に挟まれて動けなかった。そして動かされることも嫌った。動きたいはずなのにだ。だから、手が出せなかった。ただ、京都に来た時だけはリーアで居られるようにしてやることしかできなかった。だが、状況は動いた。オレの本気、見せよう」

部屋の隅の畳を剥がし、地下への階段を開く。それを降りた先に広がるのは前世で使っていた道具を今世で手に入れた物で再現・発展させた物だ。

「グレイフィアさん、とりあえず行方が分かっていない魔剣や聖剣の情報を貰えますか?」

道具を準備しながらグレイフィアさんに情報を尋ねる。

「そうですね、まずはエクスカリバーの最後の一振りが一番価値がある物でしょうか。まあ、大戦期に失われたので完全に行方が知れませんが」

「銘は?」

「エクスカリバー・ルーラーですが」

地図を広げその上にペンデュラムを垂らす。過去を思い出しながらこの世界とは異なる魔力をペンデュラムに通す。

「告げる世界に存在する名はエクスカリバー・ルーラー彷徨えるは幾星霜担い手もなく流れるのみ」

即興で探知術式を組み上げてこの世界の魔力で強引にブーストをかける。するとペンデュラムが円を描き始める。中心点を割り出した後に、拡大した地図を数度切り替える。最終的にペンデュラムが指し示したのはフランスの田舎の小さな雑貨店だった。上手いことに三勢力の領域外ということもあり、すぐに現地に飛ぶ。無論、グレイフィアさんも連れて。懐疑的な態度で着いてきていたが、目的の店に近づくにつれて驚愕の感情が浮かび上がる。店に入り年老いた主人に剣を置いていないかと聞くと昔から家に伝わってるガラクタならあると言われ、それを大金を積んで引き取る。

「封印された影響で錆びたように見えるだけのようだな。封印にガタが来ているから力が漏れている。封印を解いてやれば、エクスカリバー・ルーラー発見。再封印っと」

「わずか30分足らずで。十束様、貴方は一体」

「オレはオレですよ。京盛会会長補佐兼妖獣会直系若葉組組長、『十尾』の十束。それだけですよ。さて、これでオレの探知能『力』は見せました。次は、晴安会直系大谷組に行きましょうか」






フランスから戻って夜遅くにだが晴安会直系大谷組を訪ねる。

「で、今日は何の用だ?利息の振込み日はまだ先だろうが」

「いえね、少しこちらの都合が変わりまして、今すぐ全額耳を揃えて出すか、物納してもらおうかと。もちろん、全額耳を揃えて出すことができるのは知っています。組の屋台骨が折れるでしょうが」

「都合が変わった?それに物納でかまわないだと?何を求めるんだ?」

「霊媒『燕石』をね」

「『燕石』?確かにあれは貴重なものだが、借金の方が値段的には高いだろうが。それに霊媒としてもそこまで、うん?おい、まさかそっちの意味で使う気なのか!?」

「はい。ようやく、動ける状況になりましたので。まさか、このような状況になるとは思ってもいませんでしたから。時期が悪いのですよ」

「なるほどなあ。大勝負にはあれがあった方がいいだろうからな。分かった。これで借金はチャラでいいんだな」

「ええ、後ほど屋敷にまで運び込んでいただければ引き換えに証文をお渡しいたします」

「時期が時期ならお主が自分で採取できたであろうにな」

「これが最初で最後のチャンスですから。多少の散財など気にして入られませんよ」

「そうか。上手くいくことを祈っておこう」

「ありがとうございます」

「他の奴らには伝えてあるのか?」

「妖獣会の方では伝えてあります。大々的に動くために個人的な伝や貸借りも全て投入します」

「本気なのだな。なら、こっちも話の通じる奴らに通しておいてやる」

「助かります」

大谷組から屋敷に戻る道すがらグレイフィアさんが尋ねてきた。

「十束様、妖獣会を動かすのですか?」

「動かす。とは言っても若葉組だけだろうな。あとは、個人的に貸しを作っている奴らと善意で動く奴らだろうな」

「それでは貴方だけの『力』ではないのではありませんか?」

「試さないでください。若葉組はオレ自身で作り上げた権『力』だ。それに貸しと善意もオレが今まで築き上げてきた縁という財『力』だ。オレ自身の『力』、そういうことなんでしょう?」

「幼き頃より政争に明け暮れた結果というわけですか」

「少し考えれば分かることですよ。自分一人でなんでもできると勘違いしている内は絶対に気付けないだろうが」

「そうですね。ところで、先ほどの燕石とは一体?」

「ああ、あれには別名がある。むしろそちらの名の方が有名だな。まあ、これから行く所で分かるさ。裏京都の更なる深淵に行けばな」

表から裏へと通り、そして今は使われていない表への境界線に移動する。そこで特殊な術式を打ち込んでから境界を開く。

「出来れば此処のことは内密に。気難しい人の隠れ家ですので」

「分かりました」

境界をくぐり抜けた先に待ち受けたのは大きな屋敷と、多数の兎と兎の獣人の使用人だ。

「あっ、十束だ」

「ひさしぶりだ」

「ひさしぶり」

「他に女の人を連れてる」

「メイドだ」

「冥土?」

「使用人」

「いっしょだ」

群がってくる兎の獣人達を尻尾で持ち上げながら移動する。

「輝の所に通してもらうよ」

「姫様退屈」

「ごろごろ」

「ぐるぐる」

「ぐーぐー」

「ばたばた」

「相変わらずみたいだね。自分から引きこもったのに」

「あ、あの、十束様。この方達は?」

「此処の主のお付きですよ。今はこの空間に引きこもってますが、有名人ですよ」

10分ほど屋敷内を走って、ようやく目的の部屋にたどり着く。

「輝、居ますね」

「う~ん、あっ、十束。いらっしゃい」

着物姿で畳の上でごろごろしていたのか髪も乱れたままの女性、輝に声をかける。

「淑女としてその格好はどうなんですか?」

「どうせ兎しかいないから問題ないわね。それで、今日は何の用?」

「いえ、実はですね、この度、とある女性に求婚を求めようと思いましてね。蓬莱の玉の枝を頂きたいのです」

「なにそれ、どゆことどゆこと」

輝が興味津々で聞いてきたので事情を全て話す。

「な~るほど。中々理にかなっている試練ね。娘がちゃんと守られるかを見るにはそういうのは重要よね。けどそれなら蓬莱の玉の枝はいらないんじゃないの?」

「まあ試練の方には関係ありませんね。ですが、認められた後に正式に求婚を求める際にあった方が良いでしょう?」

「中々分かってるわね。うん、合格。好きなだけ持っていって良いわよ。どうせ腐る程あるし」

「まあそうでしょうね。それじゃあ、貰っていきます。ああ、それといつもの店、主人がとうとう倒れてしまいましてね。弟子が跡を継ぐことになりました。味は後一つ足りない状態ですけど、どうしますか?」

「そうねぇ、とりあえずその後一つ足りない状態を食べてからかしら。また持ってきて頂戴」

「はい。では、失礼します」

部屋から出て、そのまま庭に出て適当な大きさの枝を折って手にする。

「それが蓬莱の玉の枝なのですか?ただの木の枝にしか見えませんが」

「ああ、そう見えるだけですよ。持って近くで見てください」

「これは、見た目より重い。それに本当に伝承のように金銀玉で出来ている。宝石でありながら自己主張がなく、本物の木に見える。これが蓬莱の玉の枝」

「そういうことです。自然界ではありえないでしょう?この屋敷に生えている木は全てそれです。輝、彼女は本当の名は輝夜。不老不死の存在ですよ」

「では、先ほどの燕石は」

「燕の子安貝。あとは、火鼠の衣、よりも反物の方が良いか。それと龍の首の玉、正確に言うと首に逆鱗を持っている龍の逆鱗の全部で4つは試練とは別口で収集します」

「そこまで本気だったのですか?」

「リーアがリーアで居られたように、オレがただの十束で居られて恋愛感情を持っているのはリーアだけですよ。ただ、その感情に蓋をしていただけで」





「よう、聞いたぞ。とうとうリーア嬢ちゃんに求婚するために試練を受けてるんだってな。こいつは鬼瓦印の一斗瓶だ。祝いとは別にやるよ」

「私たちからは龍の髭を加工して作った扇子。貼ってあるのは銀弧の毛を溶かし込んである和紙に呪装を施したものよ。もちろんお祝いとは別よ」

「浅打ばっかだけど、草薙の剣とか日本原産の神剣類を持ってきてやったぞ」

「ヒヒイロカネ、余っているインゴット」

「持ち運びやすいように宝船、預かってきてるよ。くれてやるって、じいちゃんが」



「すまないな、みんな。ありがとう」

「あ、あの、十束様?これらを本当にグレモリー家に納めても大丈夫なのですか?」

「うん?一級品は出てきてるけど超一級品は出てきてないから問題ないですよ。なあ、みんな」

「「「「おう!!」」」」

「これらより上があるのですか?」

「閉鎖的だったから積もりに積もって埃かぶってるのを誰かの祝い事のたびに使いまわしたり新しく作ったりしてるのが知られてないだけだな」

「それでも、現時点で勝ちは決まったようなものですが」

「グレイフィアさん、リーアにどれだけの価値を付けるかって言ったよね。勝ち負け以前の問題だよ」

「そこまで本気だったのですか!?」

「そこまで本気です。とりあえずリストの作成お願いします。たぶん、まだ増えるでしょうし、他の行方知れずの魔剣とか聖剣を拾いに行ってきますし、拾いに行かせます」

「お待ちください。グレモリー家に増援を要請しますので」

「では、しばらくの間さっきみたいに探索してますので」













「グレイフィア、疲れ切っているようだが大丈夫かい?」

「サーゼクス様、私たちは十束様を甘く見過ぎていたようです。事前に覚悟だけはしておいてください」

「……それはどのような?」

「今日で、三勢力の政治バランスは大きく変わります。ええ、それはもう大きく。無論、冥界内でも」

「な、何をしたんだい、彼は?」

「十束様が納める物の目録です」

「厚さが1cmはあるんだけど」

「重要度の高い順に並べてあります。というより最初の1ページ目の物だけでバランスに大きく影響を与えます」

サーゼクスが目録を開いてゆっくりと閉じる。

「……どこで見つけたんだい?」

「フランスの田舎の小さな雑貨店です。探し始めて30分もしない内に確保されました。また7割ほどが贈り物ですが、門外不出だった代物が多数見受けられます。本人たちは閉鎖的だったために外に流れていないだけで超一級品は出していないということです。それでもかなりの物が、浅打とはいえ神剣なども見受けられます。残りの3割もそれほど時間をかけずに見つけて、若葉組の者が回収に走った結果です。危険な物はご自分で確保されていましたが。中には戦闘で相手を殺してでも確保した物が。相手は最近、活動が活発になっている『禍の団』の構成員でした」

「それだけの量をどうやって運んでくるんだい?」

「宝船が3艘。これらも納めるそうです」

「まさか、ここまでとは。そんなに入れ込んでいたとは」

「本人曰く、感情に蓋をしていただけだそうです。やはり、あの一人で日本神話に殴り込みをかけたというのは事実なのでしょう。動くまでは全くそんなそぶりを見せていないのに、動くと決めれば自重しませんから」

「怖いなぁ。さすがの私でも単騎で一つの勢力に喧嘩を売るような真似はしたくない。それを平然として生き残っている。私よりも強いかもしれないね。リーアのお相手はほぼ十束君で決まりかい?」

「ライザー様もかなりの量のフェニックスの涙を用意したようですが、目録の中程3ページ分でお釣りがきます」

「となると実力行使に移る可能性もあるね。力を見せろと言ってしまっているから」

「十束様も予想しています。交友のある組長たちが傍に隠れて潜むそうです。おそらくは鯉伴様か吉野様の隠密術で。武闘派の赤石様、坂田様、岸沢様は最低でも潜んでおられるかと」

「直参組長が最低でも5人か。ライザー君ではどうすることもできないだろうね。特に坂田殿がいるということはフェニックスの再生は意味を持たない。赤石殿の一撃もかなりの物だ。高位の仙術使いの吉野殿はもちろん、鯉伴殿も確か退魔刀を持っていたはずだ。岸沢殿は一撃一撃が重い方ではないからライザー君も大丈夫なのだろうが、眷属たちはダメだね。言わずもがな、十束君は文字通り桁違い。ははっ、出来レースだね」

「最初からそのつもりでしたのでしょう?種族問わずの時点で、結果はわかっていたのでしょう?」

「過程が大分斜め上方向にそれたけどね。エクスカリバー・ルーラー、見ることはないと思っていたのだが」

「私もです。ただ、探知術式なのですが、既存の技術とは別の物、詠唱も明らかに即興の物でした。基本はどの探知系とも同じですし、術式自体も変わったところは見られませんでした。ですが、次々と今まで誰にも知られていなかった、あるいはテロリストが秘匿所持していた物を見つけ出していました」

「そちらの方は調べる必要はないよ。おそらくだが、依頼すれば適正価格で探し物をしてくれるはずだ。グレイフィアに見せたのは、おそらくだがその事実もグレモリー家に納める物の一つなのだろうね。手の内を晒したのはそういう意味だろう。あれでまだ20を過ぎたばかりだとはね。まあ、昔からそうだったか」







「納得できるか!!」

放たれた炎を傘を回しながらボール状に丸めて傘の上で走らせる。弱い炎だな。もう消えかけてやがる。

「納得できない?それはグレモリー家を信じられないというのと同意義だと分かっての発言だな」

炎が消えたので傘をたたんで降ろす。

「ただの妖怪ごときが純血の悪魔と結ばれるなど許されるはずがないだろうが!!」

「何を言っているんだか。身分や種族も関係ないと最初に説明されていただろうが。それにお前はフェニックスの涙を500個用意した。オレはそれ以上の物を大量に用意した。それだけの事実だ。そんなこともわからないのか?」

「自分の力で用意していないのだろうが。一人であれだけの量と品を用意できるはずがない!!」

「ふふっ、ルールすらもきちんと理解できていない馬鹿か。いや、それはオレ以外の全員か。オレは自分が持つ全ての力を使っただけだ。権力や財力、それらも力だ。そんなことも理解できずに冥界を治められるのか?貴様らが考えているほど社会は甘くないぞ。契約を扱う悪魔がこの程度すら理解できないようなら、人間以下だ。やり直してこい」

再び放ってきた炎を同じように傘で防ぐ。

「宴会芸の練習にはちょうどいいか。で、グレモリー卿、魔王ルシファー様の前でこんなことをして許されるとでも思っているのか?」

再び炎が消えるまで傘の上を走らせてから傘をたたむ。グレモリー卿は冷めた目でオレと反論しなかった数名以外の婚約者候補を見ている。

「もういい、見苦しい。お前たちのような奴らにリアスはやれない。ルール上問題はなく、お前たちの言う自分の力で集めた物だけを換算しても十束殿が圧倒している。それはグレイフィアが確認している」

「お待ちください、グレモリー卿!!」

「黙れ!!」

「グレモリー卿、よろしいですか?」

「むっ、なんだね、婿殿」

「彼らは大層自分の力に自信があるようです。なら、その自信、完全に折りましょう。許可を頂けますか?」

「ほぅ、そういえば婿殿は強いと噂だけは聞くが実際に戦う姿を見たことはないな」

「僕も見てみたいね。妖怪の力はそれほど知られていないしね」

「妖怪の力なら既にお見せしていますよ。鯉伴、吉野」

「「はいよ」」

オレが合図を出すのと同時に、反抗的な態度をとっていた奴らの後ろから連れてきていた組長たちが姿を表す。傍にいたことに気づけずにいた悪魔たちは驚き、悠々とオレの前に5人が並ぶ。

「潰そうと思えばいつでも潰せた。まだ心が折れぬのなら、妖獣会直参組長の力をとくと味あわせてやろう」

肩に担いだ金棒を突きつけながら叫ぶのは鬼の中でもっとも力強い男。

「はっはぁ~、ようやく暴れられるか。妖獣会直参犬坂組組長、『重石』の赤石!!」

懐から小刀を取り出し鞘に入れたままペン回しのように回すのは鎌鼬の中でもっとも速い男

「くくっ、堂々と悪魔と戦えるとは運がいい。妖獣会直参鳥井組組長、『旋風』の坂田!!」

見た目的には一番歳をとっているように見えるメガネをかけた男はもっとも畏れを集めた第一世代のこっくりさん

「面倒ではあるが、十束の為だ。一肌脱ごう。妖獣会直参魚見組組長、『離岸流』の岸沢だ」

派手な着物を着崩して妖艶な空気を醸し出すのは猫系の妖怪ということしかわからない特殊個体の女

「惚れた女の為に力を振るう。それに手を貸さなきゃ女が廃るってものよ。妖獣会直参桜組組長、『朧月』の吉野よ」

煙管を吹かしながら腰に差した刀に手を伸ばすのはオレと一番付き合いが長くて深い信用できる遊びの師匠

「目出度い出来事を己が私欲で汚そうなんて、醜いの一言だな。妖獣会直参遊騎組組長、『遊び人』の鯉伴」

いつも通りに傘を開きながら肩に担ぐ。

「種族と自分の血にしか目を向けない輩に教えてやろう。妖怪は、最も恐ろしい存在であると。妖獣会直参若葉組組長、『十尾』の十束!!恐れないなら叩き潰して恐怖を植え付ける!!」












「さて、これで残りはお前だけになったな、ライザー・フェニックス」

「馬鹿な、こんなことはあり得ない。なんなんだ貴様らは!?」

既にライザー・フェニックス以外の悪魔とその眷属は各組長が粉砕した。ライザー・フェニックスの眷属も既に全滅している。それには妹のレイヴェル・フェニックスも含まれる。

「妖怪だよ。ただ力を外に向けて振るう機会が無かっただけの。さあ、先手は譲ってやろう。炎対決だ」

「くっ、炎と風を司るフェニックス相手に炎対決で勝てると思うな!!」

ライザー・フェニックスから、いや、焼き鳥でいいか。焼き鳥が出した炎を見て呆れて何も言えない。

「後悔してももう遅いぞ、死ね!!」

「はぁ~、その程度で炎を司るなんてな」

爪先に灯した炎を指で弾く。傍目から見ればオレの炎が飲まれて終わりなのだろうが、オレの炎と焼き鳥の炎が触れ合った瞬間、オレの炎が大爆発を起こし、焼き鳥の炎を全て吹き飛ばす。

「お前は炎を理解していない。だから、こうなる。炎を消すには酸素を奪うか、散らすかだ。爆発には弱いのが炎だ。そして攻撃に使うのなら収束させるのが基本中の基本だ。こんな風に」

収束させて白く光る熱線で焼き鳥を斬り払う。焼き切られたことに呆然とする焼き鳥だったが、体が崩れ始めたことでようやく理解して苦しみだす。

「あああああ!?フェニックスの体が、焼かれるだと!?」

「より強力な炎で焼き切ったからな。さて、炎対決はオレの勝ち。次は特性か?フェニックスの再生に対してオレは狐火。ほれ、火力は抑えてやる」

全身を焼き鳥の炎より2~3度低い狐火で包み込む。絶叫がさらに増す。

「狐火は魔を払う特性がある。よく間違われるが、妖怪は魔に属しているわけではない。個体ごとにバラバラの属性に属している。ちなみにオレの場合は狐火は聖だが、幻術類は魔に属している。再生も限界に近づいてきているようだな。これもオレの勝ちか」

狐火を止めて回復するのを待ってやる。焼き鳥が懐から小瓶を取り出して中身をかぶる間にオレも団子を取り出して食べている最中だ。狐火は燃費が悪いからあまり使いたくないんだよな。回復した焼き鳥の炎を使って団子に焼き目を入れる。

「うむ、団子を焼く分には丁度いい火力だな」

さらに煽るだけ煽ってみるが、そろそろ面倒になってきたな。

「それじゃあ、最後の一撃だ。頑張って耐えてみろ」

使うのは最初と同じ普通の炎だ。ただ、分かりにくい場所に発生させる。効果はすぐに現れる。焼き鳥が喉を抑えて苦しみ出し、気を失って転送される。

「焼き払うだけが炎じゃない。肺の中に炎を灯してやった。生物である以上、酸欠からは逃れられない。感覚で使うから理解が及ばないんだよ」

純血でフェニックスといえどこんなものか。酔っ払いの鬼どものほうがまだ強い。終了を告げるアナウンスとともに転送される。軽く服の汚れを落としてからみんなでグレモリー卿たちが居る観戦室に移動する。

「おお、婿殿。見事な戦いぶりだったよ。これなら安心してリアスを嫁に出せる」

「ありがとうございます」

「別室にリアスを待たせてある。今日、婚約者が決まるとしか告げていないからな。早く会ってあげて欲しい」

「分かりました。鯉伴、あとは任せるよ」

「はいよ、行ってきな」

「では十束様、こちらになります」

グレイフィアさんに案内され、リアスが居る部屋の前まで案内される。扉の前で二人してため息をつく。

「相変わらずの度胸ですね」

「迂闊に入ると滅びの魔力で意識を狩りに来ますね。全く、あの娘は」

「もしかしてオレが参加してることを伝えてないんですか?」

「はい。完全に監禁してましたから」

「はぁ~、分かりました。自分でなんとかします」

「申し訳ありません。それから、リアスのこと、お願いします」

さてと、とりあえずいつものように蛇の目を傘に正しく貼ってから畏れを使って短距離転移で部屋の中に入る。部屋の中にはドレスを着せられたリアスが扉に向かっていつでも魔力を放てるように待機している。

「お転婆はいくつになっても変わらないか」

「っ、十束!?」

「やぁ、リーア。迎えに来たぞ」

「……ダメよ、十束。私は行けない」

「諦めるのか?」

「いいえ、貴方に迷惑をかけられないだけ。私は、自分の力でなんとかしてみせる」

「この場を潜り抜けてからどうするつもりなんだ」

「それは、その」

「ちょっとは考えような。まあ、それはおいておいて」

部屋のテーブルの上に蓬莱の玉の枝、燕の子安貝、火鼠の反物、龍の首の玉を並べる。これを見てリーアもオレが何を言いたいのかわかったようだ。

「竹取物語の輝夜は求婚者にこれらの物を求めた。これらを入手できるぐらいに強くなければ、故郷の者に敵うはずがなかったから。リーア、お前のことが好きだ。オレと結婚してくれ。オレがお前を守ってみせる」

「……えっ?だって、そんな風に見えなかった。私のためにって、無理を」

「していない。オレはお前のことが好きだ。だが、環境が許さなかった。だけど、状況は変わった。オレはリーアが欲しい。そのために試練に参加して、ついでに文句を言ってきたやつも全て伸した。あとは、リーアがオレと一緒になることを望んで欲しい」

「ほ、本当に?私の婚約者が、十束?」

「ああ、そうだ。グレモリー卿も魔王ルシファー様も認めた。オレが、リーアの婚約者だ」

リーアがオレに抱きついてきたので優しく抱き返す。

「無理だと思ってた。十束と結ばれることなんて絶対にないと思ってた」

「オレもだ。だけど、諦めたくなかった。思いを捨てずに待った甲斐があった。リーア、もう一度聞く。オレはリーアのことを愛している。オレと結婚してくれ」

「私も貴方のことを愛しているわ。私のこと、離さないで」

「ああ、絶対に離すものか」

どちらからともなく、唇を触れ合わせる。ああ、我慢しないと。さすがにまだ我慢の必要が、必要が……


 
 

 
後書き
どうなったかはご想像にお任せです。


今年はこれとあと一本か二本ぐらいかな?

木場君も更新したいけど匙君の方が変に人気があるんだよなぁ。
あとは完全にお遊びでプロットで終わりが確定しているオリキャラで懇親会でもやろうかな。 
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