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女の子の秘密

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8部分:第八章


第八章

「どうやらね」
「何か信じられねえな」
「あれだけ食ってか」
 またその食べる量を思い出しながら話していく。
「けれど。確かにな」
 その中の一人がふと言った。
「間食しないのと夜遅く食べないのはいいことだな」
「だよな。あれって太るからな」
「そういえばあいつ昼寝とか居眠りとかしないしな」
「それもあるか」
 昼食べてすぐ寝る。これで力士はあの体型になるのだ。彼等はこのことにも気付いたのだった。
「太りにくい体質なのは間違いないみたいだしな」
「それにああした努力か」
「そうだな。努力は一つじゃなかったんだな」
 皆でこのことを話す。
「それでだったのかよ」
「本人もわかっていたんだな」
「みたいだな」
「実際な」
 ここでまた仲間うちの一人が言う。
「女は皆そうらしいぜ」
「皆か」
「ああ。食ってもああして運動したりお茶飲んだり」
 まずはそれであった。
「それに間食しなかったりとか肉とか食わないとかな。大変らしいぜ」
「女優さんだけじゃなくか」
「女優さんだけじゃなくてな。とにかく大変らしいな」
 このことを仲間うちに話すのだった。
「もうな。スタイルとか維持するのにな」
「川西だけじゃないのかよ」
「川西だけじゃないな」
 このことがあらためて話される。
「多分。このクラスの女全員だし」
 言いながらクラスの中を見回す。どの女の子も顔は能天気に笑っている。しかしだったのだ。
「世の中もな。そうなんだろうな」
「そういえば俺のおふくろも」
「俺の姉ちゃんも」
「従妹も」
 皆それぞれ親族の女性を思い出し当てはめていった。
「何かっていうとダイエットしたりしてるな」
「身体によさそうなのは何でも試してるしな」
「そういうのかよ」
「それだな。とにかく女ってのは男よりもずっと大変みたいだな」
 またこのことが話される。
「俺等なんかそれこそ食っても身体動かしてりゃいいだけだしな」
「まあそうだな」
「それしかしねえな」
「だよな」
「それに多少太ってもな」
 今度は自分達の親族の男組のことを思い浮かべる。そうすると実にわかりやすかった。何しろ自分達と同じであるからである。
「言い繕いもできるし皆そんなに心配しないしな」
「おっさんなんて皆太ってるしな」
「そうそう」
「俺達なんか本当に楽だよ」
 自分達への結論はこれだった。
「で、女の子はな」
「違うってわけか」
「川西然り」
「特にあの年頃はな」
 自分達の年頃でもある。
「気にするよな。どうしてもな」
「だよな。何かな」
「何だよ」
「俺、自分の彼女見る目が変わりそうだな」
 一人が少し照れ臭そうに笑いながら皆に述べた。
「あいつも陰じゃそんな努力してるのかって思うとな」
「ああ、それ俺もだ」
「俺も」
 皆彼のその言葉に続いた。一人だけではなかった。
「表じゃ笑ってて裏ではそんなことしてたんだよな」
「だよな」
 こう言い合う。
「それ考えたらな。今までみたいに付き合えないな」
「全くだよ。少しは優しくしないとな」
「バチが当たるよな」
 こんな言葉も出て来た。
「そうか。だからか」
 また一人が言った。
「ああ言われてるのは」
「ああ言われてるって?」
「だからな。山の神様は大事にしろってな」
 昔は山の神は女だとされてきた。これは日本独自の考えである。山の神は女房のことである。つまり自分の妻を大事にせよということである。
「だからか。そうした努力を陰でしてるからな」
「ああ、そうだな」
「そうなるな」
 皆も彼のその言葉に頷いた。
「じゃあ。今よりちょっとはな」
「優しくするか」
「だよな」
 皆で言い合うのだった。こうして彼等は女の子に優しくなった。それはこういった話が先にあった。しかしこのことは彼等は何も言わずただ態度に表しただけであった。女の子は白鳥であり水面の下でこそということがわかったからであろうか。


女の子の秘密   完


                  2009・3・31
 
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