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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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19.人生の落とし穴は至る所にある。でも気付いた者の方が落ちやすい。

<神の塔>
マリアSIDE

リュカさんがスラリンさんとホイミンさんと一緒に不思議な歌を歌っている。
歌詞がとっても素敵です。
上を向いて歩く事の素晴らしさを歌っている。

既にここは塔の最上階。
揚々と歌うリュカさんを先頭に、両際に壁も手摺りも無い空中回廊を進む。
きっと、この回廊の先にラーの鏡があるのだろう。
この回廊こそ、神様の試練が待つ回廊なのだろう。

そして試練の時はきた。
私達の行く手の床が途切れている!
神様の試練とは、かくも難解な物なのか!?
どうすれば向こう側へと行けるのか…皆さんそれを考え悩んでいる。

皆が足を止め途方に暮れる中、リュカさんだけが歌いながら突き進んでいた。
私達は信じられない物を見た。
リュカさんが何もない空中を歩いているのだ!
正確には歌いながら左右にステップを踏み進んで行く。
向こう側に渡りきると祭壇にラーの鏡が奉られてあり、それに気付いたリュカさんは足早に駆け寄りラーの鏡を手にする。
「お!?これかなぁー?ラーの鏡って!」
リュカさんは振り返り、ラーの鏡を掲げ小躍りしながら来た道を私達の元へ戻ってくる。
「イェ~イ!ラーの鏡、ゲット~!」
まるで何事も無かった様に、明るい何時もの口調で戻ってきた。

「…リュカ?お前?どうなってんの?」
「何が?」
ヘンリーさんが途切れた床を指さしリュカさんが不思議そうに振り返る。
「おわ!床が無い!え!?何?何で?さっきまであったよね!?」
「さっきからねぇーよ!」
「リュカさん、空中を歩いていました」
「えー!?」
どうやらリュカさんは歌う事に集中しすぎて足下を見ていなかった様です。

「この試練を造った神は泣いているな!馬鹿が台無しにしたって。」
「ピエールさん、酷い!!僕のおかげでラーの鏡が手に入ったのにぃ!!」
リュカさんとピエールさんの掛け合いが微笑ましい。
何か、お似合いかも。
「さて、ラーの鏡も手に入った事だし…時間が惜しいので、このままラインハット城に乗り込む!」
私にも何かお手伝いが出来るかもしれない。
ヘンリーさんの為に。ラインハットの人々の為に。

マリアSIDE END






<ラインハット城>
ピエールSIDE

私達は旅の扉を通りラインハット城へ舞い戻ってきた。
しかし何やら中庭が騒がしい。
我々は慌てて中庭に出ると、そこには中年女性が取っ組み合いのケンカをしているではないか!
しかも、ただの女性ではない。
二人の太后が泥だらけになりながらケンカをしている。

「義兄さん!ちょうど良い所へ。僕、少しでも義兄さんの力になりたくて、地下牢から母を連れ出した所に、偽者が現れて…」
「それで、どっちが偽者?」
「…それが…その…すみません…」
リュカの悪意はないが最悪の質問に落ち込むデール陛下。
「空気読め馬鹿!判らない事くらい、分かれ!」
私は思わず怒鳴る。

「相変わらずデールはトロくさいなぁ」
「ごめんなさい…義兄さん」
「まぁ、そう落ち込むな。こんな時の為に俺がいるんだ!」
「違うよヘンリー。僕たちがいるんだよ」
リュカが優しく微笑み、ヘンリー殿の肩に手を置く。

いいなぁ…男の友情って…
「だいたい、ラーの鏡は僕の功績で手に入ったんだ!自分一人で活躍したみたいな言い方やめてもらいたいなぁ」
この男はぁ…前言撤回する。
「はいはい…お前のおかげですよ。おい!そこの兵士二人!」
ヘンリー殿は兵士二人に、二人の太后を引き離させる様に指示した。
そしてリュカが各太后をラーの鏡越しに確認する。
「お!こっちが偽者だ!何か、ぶっさいくな物か映ってる」
そう言い片方の太后を指さす。

「そ、その鏡は!」
次の瞬間、偽太后は3倍以上に膨れあがり魔界のモンスター『トロル』の姿に変わっていた。
「おのれ~。よくもオレの計画を邪魔してくれたなぁ~!」
皆が瞬時に身構える!
デール陛下が、衛兵達に攻撃を命じた!
しかしトロルは、側に生えていた大木(直径1メートルくらい)を易々と引き抜き振り回し、衛兵を薙ぎ払う!

気付くとリュカは、側にいた太后と戦闘の出来ないデール陛下とマリア殿を抱え後方に退避した。
「偶には気が利く様だ。これで心おきなく大暴れ出来る!」
「全くだ!ヘンリー!ピエール!同時に行くぞ!」
ヨシュア殿の掛け声と共に、私、ヨシュア殿、ヘンリー殿がトロルへ襲いかかる!
トロルの怪力から繰り出される攻撃を避け、トロルの身体に剣撃を加え魔法を当てる。
堅い!!トロルの身体には傷一つ付かなかった!

逆に我々三人はトロルに吹き飛ばされた!
トロルの持つ大木が私めがけて振り下ろされそうになった瞬間、リュカがトロルの顔面めがけて強烈な一撃を振り抜いた!
トロルの巨体が後ろへ倒れる。
リュカは私へ近づきベホイミをかける。
そしてトロルに向かい、
「今なら、ごめんなさいすれば許してやる。僕が本気を出す前に、ごめんなさいって言っとけ!」
ほ、本気…?
何を言っているのだ…お前なんかに敵う相手ではない!
「ふざけるな!そんな壊れた杖で何が出来る」
リュカは持っている杖を見て驚いていた。
「あぁ!!僕の鉄の杖が!気に入ってたのにぃ…馬車とセットで500Gもしたんだぞ!」
とんだ安物ではないか!
先程の一撃で折れてヒビの入った杖を捨てトロルに怒鳴り出す。

トロルが再度、私とリュカに向けて大木を振り下ろす。
リュカは私とスラッシュを抱え、後ろに飛び退き我らを降ろすと一転トロルに接近し、バギマを放つ。
しかし、リュカのバギマも効果は無かった。
何らかの方法で魔法を無効化させている様だ。

今戦えるのは武器を持たぬリュカのみ。
私は絶望を感じ諦めかけたその時!
「リュカ!これを使え!!」
ヨシュア殿が、ご自身の剣をリュカに投げ渡した。
その剣はリュカの身長の半分以上もある、バスタードソード。
手入れの行き届いている業物だ。

「ん~…刃物振り回すの、好きじゃないんだよなぁ…」
そう言いつつもトロルに向かい剣を構える。
「そんななまくら刀じゃ、オレの身体に傷一つ付けられん!先程実証済みだ!」
言い終わるとトロルは大木を振り上げる。
その瞬間リュカの姿が消えトロルの後方へ現れる…いや、正確には消えた訳ではない。
我々には捉える事が出来ない程の速度で動いたのだ!

するとトロルが振り上げた大木は、あらぬ方向へ飛んで行った…トロルの腕と一緒に。
「オレの腕が…オレの腕が!!」
右の肩口から盛大に血飛沫を撒き散らしながら、驚きのたうち回るトロルを見下ろし、優しい笑顔でリュカが呟いた。
「もう、ごめんなさいしても許してやんない!」
トロルの頭は、体と永遠の別れを経験した。
私はリュカの恐ろしさを、リュカの剣の技量を思い知らされた。
…普段もう少し真面目なら尊敬出来るのに…

ピエールSIDE END



 
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