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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第42話:片付け・お掃除・処分市

 
前書き
年末イベントを盛り込んだ話にしてみました。
 

 
(グランバニア城・国王主席秘書官執務室)
アローSIDE

オイラが働いて金を稼いでる事に不満なマリー……
不満があるのなら父親が近くに居るのだから直訴して小遣いを貰えば良いのだ。
オイラの稼ぎに文句を言わないでもらいたい。

しかしアニキが上手くやり込み、マリーの口を塞いだ。
他人家(よそ)と違い、親から小遣いを貰ってないオイラには、正当な報酬だと自負してる。
助かったよアニキ。

「大体お前は強請(ねだ)れば何でも買って貰えると思ってる。両親が甘やかさない分、俺が甘やかし過ぎたのか?」
「べ、別に……そんな事ぉ……無いよ……」
いや、アニキはマリーを甘やかしてる。

「他人を羨んで不必要な物まで欲しがるな」
「不必要じゃないわよ! 下着よ、下着を欲しがってるのよ! 必要でしょう」
只の下着じゃないだろ。

「下着なら腐る程あるだろ。いや、もう腐ってるんじゃないのか?」
「失礼ね。私のパンツが臭いみたいな言い方しないでよ!」
臭いだろお前のは。

「この際だから言わせてもらうが、お前は物が多すぎる。あの自室(へや)は何だ!? アレが人間の生活する場所か? お前が欲しいって言うから買ってやったドレスや貴金属類が、無残に散らばってたぞ!」

「ちょっと、人の部屋を勝手に覗かないでよ!」
「覗きたくて覗いたんじゃない。リュカさん経由でビアンカさんに叱られたから、俺も確認したんだよ!」
何でリュカさん経由なんだ?

「お前、父親に感謝しろよ。ビアンカさんは怒鳴り付けるつもりだったらしいが、リュカさんがクッションになり、俺を経由して片付ける様に注意を促させたんだぞ」
「な、何よ。私の部屋なんだから、私が自由に使用しても良いでしょ!」

「馬鹿かお前は! この城は国王の所有物なんだぞ。つまりはリュカさんだ……その国王が、娘に部屋を一室貸してるんだ。縁者だから無料だが、正確に言えば賃貸なんだ。自分の部屋だと言い張りたいのなら、ガチで一人暮らしをしろ。家賃も生活費の自身で賄って……」

「わ、私はお姫様なのよ! そ、それなのに……」
「この国の王族が、世間一般の王族と一緒だと思うなよ! リュカさんもビアンカさんも、我が儘いっぱいな贅沢な生き方を許しちゃいない……勿論俺もな!」

確かに……よっぽど平民の金持ちの方が贅沢で我が儘な生き方をしてる奴が居る。
この国は、この10年程で爆発的な発展をしているらしい。
暮らし始めて日が浅いオイラにはピンとこないのだけど……

兎も角……そんなわけで発展著しいグランバニアには、それに伴い荒稼ぎしている平民の方々が多数居る。
マリーやリュカさんが言うには“成金”との事だ。
そいつ等の金遣いは尋常じゃない。

貴族の様に守るべき領地や領民が無い分、捨てる程有る金を文字通り捨てる様に使ってる。
始末に悪いのは、親が成金で子供に甘い家庭の場合だ。
欲しがれば何でも買って貰え、大抵の事は金で片付けるから、誰に対しても我が儘を言う様になる。
偶にマリーが大人に見える事がある程、そのヤンチャぶりは類を見ない。

とは言え、このマリーも大概に我が儘だから、彼氏のアニキも苦労が多い。
山積みの書類を決済しながら横目でマリーを見ては溜息を吐いている。
別れちまえば良いのに!

「さて……お前の母上の言葉をそのまま言うが、『あの部屋を直ちに片付けなさい! それもマリー自身が。もう二度と散らかさない様に戒める為に、メイドの手を借りてはダメ!』との事だ。俺も賛成だし、リュカさんも同じ事を言ってた。お前はこの国の姫様だが、メイドを雇っているのは国王で、お前じゃない。自室を片付ける為に勝手に使うなよ」

あらら……
どれ程散らかってるのかは分からないが、お姫様が身の回りの世話をして貰えないなんて……
冗談なら笑えないが、事実(マジ)だから笑える。

「ほら、解ったろ! そんなわけで俺はお前にパンツなんぞを買ってやれん! しかも俺の趣味とは懸け離れたパンツなぞな!」
と言うと、オイラ達(主にマリー)に「シッシッ」と手で出て行く事を促し、仕事のスピードを速めるアニキ。

これでオイラもリューラとデートに行けるぜ!

アローSIDE END



(グランバニア城内)
マリーSIDE

マジかよ……
お姫様が自ら部屋掃除しなきゃならないのか!?
前世で十分最下層な人生を歩んできたのだから、転生した今の人生は脳味噌腐りそうな王族人生を謳歌させてくれよ。

「お前……どんだけ散らかしてんだ?」
「お父さんとビアンカさんが怒るくらいだから……相当よ、きっと」
リューラの問いにリューノが憶測で答える。勝手だな!

「うっさいわね。私の部屋なんだから勝手でしょ!」
「いいから見せてみろ」
何に興味を持ったのか、リューラがズンズン私の部屋へと歩んで行く。おいおい……レディーの部屋だぞ!

「な、なぁリューラ……止めとけよ。多分、きっと、間違いなく酷い部屋だぜ! 行かない方が良いって」
「狐、貴様……酷い部屋とは何だコノヤロー!」
見てもいないのに、勝手な事を言うな……そして見るな!



「うわ……何だこれは!?」
「こ、ここ……何処よ!?」
「この世にこんな悪夢的な空間が存在するのか!?」

見るなと言う私の願いとは裏腹に、リューラの好奇心によって私の部屋が御開帳された。
そして観覧者のコメント……
勝手に見といて何て言い草だ!

「こりゃ誰だって怒るよ。ウルフの言ってた事が解る……お父さんに感謝ね。私がビアンカさんの立場だったら殴ってたもん」
「ああ……リューノの意見に賛成だ。私は今でも殴りたい」
人様の部屋を勝手に見ておいて、殴るだの何だのと勝手な事を言うな! 見なきゃ良いだけだろが。

「大変だなマリー……これを一人で片付けるんだろ? オイラ同情するよ」
「片付けるも何も、物を隅っこに追いやって終わりだ。本とか服とかが整然と並んでれば良いだけだろ?」
簡単な事さ。前世でもそうやって片付けてたし。

「良いわけねーだろ馬鹿女! この部屋の問題は、物が多すぎるって事だ馬鹿! アニキがそう言ってただろ。要らねー物をガンガン捨てるんだよ!」
「要らねー物なんてねーよ馬鹿!」

「要らねー物がねーわけねーだろ! パッと見ただけでも要らねー物だらけだ!」
「ゴチャっと置いてあるからそう見えるだけだ。全部必要な物ばかりだよ!」
私の物を勝手にゴミ扱いするんじゃねーよ馬鹿狐が!

「馬鹿言ってんじゃねーよ馬鹿女! あの床に落ちてるキノコの生えた物体が必要な物なのかよ!? アレ元々何だ、食い物じゃねーのか? 何年物だ馬鹿!」
「ワ、ワインだって、何年も寝かした方が価値が上がるだろ……」

「アレがワインじゃねーから問題なんだろ! 仮にアレが寝かした方が価値が上がる物体だったとしても、キノコが生えてるんだぞ! 価値なんかあるか馬鹿!」
な、何だコイツ……口調がウルフに似てきたぞ!?

「もういい……アロー、落ち着いて」
私が狐の言葉に反論出来ないでいると、リューラが諦めた口調で私達を落ち着かせる。
流石仲良し姉妹。

「ここで大声出してても何も解決しない。皆で協力して片付けちゃいましょう」
え、手伝ってくれるの?
「な、何言ってるんだよリューラ!? アニキが言ってたろ……大変さを解らせる為に「メイドを勝手に使用するな……と言った」

「そうね……私達家族が手伝っちゃダメとは言われてないわねリューラ」
マジでか!?
ホント、何てステキな姉妹なんだろう! 惚れてしまいそうだよ私は。

「そうとなれば早速開始だ。先ずは“居る物”と“要らない物”……そして“ゴミ”との分別だな」
「そうね。マリーに任せたら何でも“居る物”にしそうだから、アンタは私達の指示通りに肉体労働よ!」
おいおい……私の部屋だぞ。何で選別に参加出来ないんだ?

「ゴメンねアロー……デートが中止になっちゃって」
「……良いよ、リューラの所為じゃないから。それにオイラも男だから体力に自信があるし、必要だろ? 男手が」
彼女の前だからって格好付けんな狐が!

とは言え文句を言って手伝って貰えなくなるのは避けなければ……
選別した物も後で回収すれば良いのだし、今は大人しくしたがっておこう。
さぁ、私の為に働くが良い!

マリーSIDE END



(グランバニア城内)
リューノSIDE

酷い事になった……
手伝うって言っちゃたし、何とかしなきゃならないから、頑張るんだけども……
本当にこの部屋……酷い。

酷すぎて言葉では言い表せないから、片付けの様子をダイジェストでお伝えするけど……

「うわ何だこの部屋は!? 物が多くて見えなかったが、奥行きが随分あって広いぞ? 入り口から見えてた景色は、氷山の一角じゃねーか!」
とアローが騒ぎ出した事を皮切りに……

「ぎゃー、何か踏んだー! グニュっと柔らかい物を踏んだ!? 何これ、凄い臭い? パン? 腐ったアンパン!? 食べ物を放置しないでよ!」
と私の絶叫。

「きゃー!! で、出たー!! く、黒光りの……大きいゴ○○○!! いや~、大量に居る!! こ、ここ巣よ……○キ○○の巣窟よ!!!」
と○○ブ○が苦手なリューラの悲鳴。

と、まぁ……かなりの阿鼻叫喚を体験し、可愛い妹の部屋を片付ける事に成功。

「さて……と、何とか片付けは終わったわね」
「そうだな……あの○○○リの大群には驚いたけど……」
「オイラもうヤダ……今度散らかしたら追い出してくれる様リュカさんにお願いする」

「ま、まぁまぁ……皆ありがとうね。凄く助かったわ。後は私がやるから、皆は帰って良いわよ……今度何らかの形でお礼するから♥」
そういう訳にはいかない。

「まだ終わりじゃない……この選別したゴミを捨てるんだ!」
「リューラの言う通りよ……ゴミを捨てて、尚且つ“要らない物”を売りに行くわよ」
そう、このままマリーに任せたら元の木阿弥。“要らない物”とした物を、また部屋に戻して散らかすだろう。

「ちょ……何言ってんだお前等……私の物を勝手に売る気か? そりゃ泥棒だろう」
「うるさい。もうお前の物じゃない」
「そうよ、大体未開封の物が沢山あったのに、まだ不要だと認めないの?」

「ウ、ウルフに買って貰った大切な物だから、売りたくないだけよ!」
「大切なプレゼントだと言うのなら、大切に保管しなさいよ!」
「そうだマリー。殆どの物が、あのゴミ溜め部屋の床に放置してあったじゃないか!」

「い、いや……それは~……ねぇ。 ……つーか“ゴミ溜め部屋”とは何だ!?」
「“ゴミ溜め部屋”が不満なら呼び名を変えてやろう。可愛く“()()()”と言うのは如何だ?」
う~ん、ナイスなネーミング。良いわねリューラ。

リューノSIDE END



 
 

 
後書き
皆様は終わりましたか、大掃除。
私は未だです。
去年のも未だです。
一昨年のも未だです。 
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