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恋姫†袁紹♂伝

作者:masa3214
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第31話

 
前書き
袁術「この辺にぃ、兄様来てるらしいっすよ」

張勲「大丈夫でしょ、ま、多少はね?」

袁紹「おうごらぁ! 妹いんのか? 妹出せよ」

袁術&張勲「ファッ!? やべぇよやべぇよ……物凄い、ハチミツ食べてたから」



袁紹&張勲「あ^~美羽ちゃん可愛いんじゃ^~」

顔良「えぇ……」


大体あってる 

 
「やっぱり、汜水関の突破は難しそうね」

「ああ、正面から馬鹿正直に攻めれば痛い目を見るだろう」

「そこを守る華雄将軍含め、兵士達の士気も高いそうです」

 連合の陣から少し離れた見晴らしの良い丘、そこに陣を張り終えた孫呉の総大将孫策と、その頭脳たる周瑜、軍師見習いの呂蒙の三人が汜水関を遠目で窺っていた。

「まぁでも、私達には汜水関は関係ないものね」

「その通りだ。精々他の諸侯達に奮戦してもらおう」

「私としては向こうが気になるわ」

「ん? ああ、袁紹軍か……」

 汜水関のみならず連合全体を見渡せるそこから、孫策は袁の軍旗がはためく陣営を指差す。

「陣の形成がやたら早く感じたんだけど……これって何気に凄いことよね?」

「『凄い』の一言では済まされんぞ。あの速度は異常だ」

「大軍は鈍足なのが基本です。速さをかね添えた大軍なんて、敵に回したら大変ですよぅ」

「『袁家の常識は非常識』とは、よく言ったものね……」

 目にする度に常識を覆してきた袁紹軍、ここまで来ると感心を通り越し呆れてくる。
 しかし、ここで思考を停止させないのが有能な将、孫呉の者達だ。

 孫策は、自分達の独立の大きな壁になるであろうその軍を見つめ闘志を燃やし。
 周瑜は、袁紹軍の隙を見つけようと頭を回転させ。
 呂蒙はその軍の特性、自軍に応用出来るものは無いかと、陣営のみならず兵の一挙一動くまなく観察した。

「袁紹とは黄巾の時以来ね……」

「…………」

「冥琳?」

「ああ、あの時の借り、倍にして返す時がきた」

「はぁ……なんか冥琳が自信満々だと、嫌な予感がするのよね」

「どういう意味だ!」

 まるで黄巾の時のようなやり取り、周瑜の表情に不安を覚える孫策。
 彼女の辛辣な言葉を受けたものの、周瑜は改めて宣言した。

「あの時とは違う。今日こそは私が……奴を手玉に取る!」

「キャーやっぱり冥琳カッコイイ!」

「こ、こら! 引っ付くな雪蓮!!」

「わわわ、雪蓮様大胆です~」

 もうすぐ戦にも関わらず、孫呉の者達に余計な緊張は無い。
 百戦錬磨な彼女たちにとって、戦場の空気は慣れたものだ。唯一見習いである呂蒙は少なからず緊張していたが、孫呉の軍師に見出された事もあり、肝は据わっている。

「ッ!? ……お客のようね。多分三人」

「え? あ、本当ですね」

 突然身体を緊張させ、真剣な表情になった孫策に軍師二人は驚いたものの、それが来客の知らせと知り安心する。
 後ろを振り向くと此方に向かって歩いてくる人間が三人。距離はまだ遠く、顔は良く見えない。
 気配どころか足音すら聞こえない距離で気配を察知した孫策。その武人の範疇を超えた勘働きに、新人である呂蒙が舌を巻き始めた頃、周瑜は目を見開き驚愕した。

「馬鹿な……何故」

「え、えっと……お知り合いですか?」

 尊敬する周瑜の普段見せない驚きっぷりに、呂蒙はその原因であろう此方に向かってくる三人を見ながら尋ねた。
 その様子に、クスクスと笑い声を上げていた孫策が答える。

「さっきまで私達の話題の中心に居た人よ」

「話題の中心……ま、まさか!?」

 孫策から発せられた言葉と、先程話題になっていた人物を思い出し呂蒙は目を見張る。
 
 腰まで届きそうな長く美しい金髪、意志の強そうな鋭い瞳、嫌味ではなく、自信の強さから来るであろう笑みを浮かべ。
 光沢のある黄色い鎧が金色の光を発し続けている。
 それは、伝え聞いた『袁紹』の出で立ちそのもの。左右に居る女性達も只ならぬ気配を持つことから、彼女達がかの有名な袁家の二枚看板だろう。

「…………」

 呂蒙にはわからない。何故彼等がここに居るのか。

 俄かに信じがたいが、(孫策)(周瑜)の反応から察するに本物なのだろう。
 だからこそ信じられない。個々の優秀さで孫呉が袁家に劣っていると思ったことは一度も無い。
 しかし家柄、立場、勢力という面では天と地ほど差がある。そんな袁家から見て格下の孫呉に、このもあろうその当主が訪ねてくるなんて―――

 『袁家の常識は非常識』これは元々袁紹一人に使われていた言葉である。






「黄巾以来、久方ぶりなはずだが昨日今日のように感じるな。孫策、そして周瑜よ」

 袁紹達の顔が視認出来る場所から、拝手して待ち構えていた孫呉の三人。
 彼女等の胸中などいざ知らず、袁紹は比較的友好的に言葉を掛けた。

「お久しぶりで御座います。……此処へはどのような用向きで?」

「挨拶に来ただけである――が、『用』があった方が良かったか?」

「ッ!? これは出すぎた事を、申し訳御座いません」

「フハハ! 構わぬ、今の我は機嫌が良い――それに。挨拶に来たのは本当だ。近くに用事があったのでな、此処へはついでに顔を見に来たのだ」

 拝手の姿勢から顔を上げた周瑜は、袁紹の言葉にホッと胸をなでおろす。
 黄巾の事は未だ記憶に新しく、前回のような『頼みごと』を警戒していたのだ。

「フム、そこの者は初めてであるな、表を上げよ」

 拝手の姿勢で固まっている女性に袁紹が声を掛けると。彼女は恐る恐るといった感じで顔を上げた。

「は、ははは初めまして! 私の名は呂子明、孫呉の軍師見習いにですぅ!!」

「お、おう」

 極度の緊張から挨拶した呂蒙。そのの勢いに袁紹は思わずたじろいだ。
 しかしそれでも観察を怠らない、流石である。

 ――呂蒙、字は子明。茶色の髪をコンパクトに纏め。緊張からか眼つきが鋭いが、知性と伸び代を感じさせる瞳。大きな片眼鏡が特徴的だ。
 孫呉の者にしては肌の露出が少なく、全体的に長めの衣服、特に袖が長く腕は完全に隠れてしまっている。軍師見習いとの事だが一応武も嗜んでいる様で、唯一大きく露出している足のしなやかさがそれを物語っている。

「…………」

「む、猪々子?」

 気が付いた時には、袁紹と呂蒙の間に猪々子が割り込んでいた。そして彼女の行動の理由を聞こうと口を開く前に、猪々子は呂蒙に向けて言い放つ。

「ネエちゃん……暗器仕込んでいるだろ」

「は、はい! ごごごごめんなさいぃぃぃ!!」

「確かに亞莎は暗器を使うけど、暗殺用じゃないから安心していいわよ」

「た、足りない武力を補うため処置ですぅぅ」

「なんだ、じゃあ問題ねぇな」

 合点がいった猪々子は殺気をしまい後ろに下がる。一見無警戒にも見えるが、呂蒙が妙な動きをした瞬間斬りかかれる位置に陣取った。

「良くわかったな猪々子。後で褒美をとらそう」

「やりぃ!」

 褒美が出ることに顔を輝かす猪々子。彼女の様子に和んだ後、袁紹は顔を正し孫呉の三人に振りる。

「実は挨拶ついでに聞きたい事があってな」

「……私達に」

 袁紹の言葉に純粋に興味を持った孫策とは違い、周瑜は警戒心を露にした。
 思えば前回も質問から『頼みごと』に発展したのだ、無理も無い。

「今回の絵図を描いたのはお前達だろう?」

『!?』

 







「……黒幕がいる?」

「はい」

 連合に参加を決めたその日の夜、準備を進めている袁紹に対し桂花、風の両名が己達の見解を聞かせに訪ねてきた。

「今回の袁術様決起は余りに唐突です。また、今まで静観を決めていた張勲がそれを許すとも思えません」

「加えて言うなら、今回の決起は私達を邪魔をするのが目的でしょう。桂花さんの策を逆手に取ったと見ると自然です~」

「申し訳御座いません……」

 自分の策を利用され、目的(洛陽の調査)はおろか、その間に行う筈である反袁紹派の鎮圧も出来なくなった。
 気のせいか猫耳に元気が無く、垂れ下がっている。袁紹は彼女を慰めるように頭をなで、質問を続けた。
  
「では、裏で手を引いているものがいると……」

「はい、反袁紹派の誰かをそそのかし、袁術様に決起させた者がいるはずです」

「張勲の目を盗み反袁紹派に接触でき、尚且つ連合の勝利で利を得る勢力……」

『孫呉』





 

 袁紹の質問に三者三様の反応が返って来た。

 孫策は、『質問の意味がわからない』とでも言いたそうに口を開きながら呆け。
 呂蒙は質問に対しどう答えて良いかわからず、慌てふためき。
 そして周瑜は、口を閉じ静かに袁紹の目を見ていた。

「フハ! 下手だな周瑜よ、隠し事がある時沈黙は悪手ぞ。孫策のように呆けるか、呂蒙のように慌てる振りで良い。逆に何の反応も見せないのは、悟られたくない『何か』があると言っている様なものだ」

「ッ!?」

 その言葉に思わず顔に手をやる周瑜。そして『しまった』という表情。

「フハハ! 正直であるな周瑜。我は正直者が大好きである!!」

「……お戯れを」

 完全にしてやられた形だが、周瑜の余裕は崩れない。
 今のやり取りで袁紹は確信に近い何かを持っただろう。しかし証拠が無い。
 孫策とは違い、己の勘だけで動く人物では無い事を知っている。大胆で慎重。
 その方針、袁紹の考えが、袁家をことさら強大な勢力に成長させてきたのだ。

「戯れか……そうだな、ここまでが戯れ。この先が本題である」

「……?」

「お前達孫呉が独立の為に奮闘しているのはわかる。水面下での努力も並の物ではなかろう。
 ――だが」

『!?』

 袁紹の纏っていた雰囲気が変わる。連合の同士から、大勢力袁家当主のものに。

「その牙が我と――我が妹に向いた時には容赦せん。完膚なきまでに叩きのめし、独立の芽ごと狩りとろう」

「……」

 袁紹の本題、それは警告。

 今回の彼女達の企みは問題ない。たとえ董卓が噂と違い潔白だろうと、連合には『参加』していたのだから。
 結果論ではあるが妹とも対面でき、張勲を引き込むことに成功した、感謝すらしている。

 彼女達の独立心は強い。形振り構わないそれが妹に向くことを袁紹は危惧した。

「さて、我等はもう行くとしよう。ああそれから、後ほど我が陣で合同軍儀を行う。
 代表の人間を連れて来るように」

 名族の圧から未だ動けない三人に用件を簡潔に伝えると、言葉の通りに立ち去っていく袁紹。
 孫呉の三人は、まるで嵐にでも見舞われたような心境で佇んでいた。





「姉様ーー!」

「……蓮華?」

 しばらくして、重たい空気を漂わせていたその場所にまた一人。
 孫策の妹である孫権、真名を蓮華(れんふぁ)がやって来た。

「貴女には陣の管理をお願いしたはずでしょ、どうしたの?」

「大体終わったから思春と穏に引き継いでもらっています。ここには使者からの言伝を伝えに」

「当てて見せようか、袁家でしょ?」

「な!? 何故わかるのですか!!」

「ふふん、雪蓮姉様にわからない事なんて無いのよん♪」

「からかうな雪蓮。孫権殿はお前と違って真面目なのだ」

 生真面目な孫権は姉の冗談を真に受ける。その様子が面白いからからかった孫策に、周瑜が諭すように横槍を入れる。

「わかったわよもう!……実はさっき私達にも知らせが届いたのよ」

「此処にも袁家の使者が?」

「ええ、ただの使者じゃなくて当主だったけど」

「な!? からかわないで下さい! いくら私でもそれが冗談だとわかります!」

「あわわ、冗談ならどんなによかったか……」

 真面目な呂蒙が意味深に呟く。それを聞いて姉に喰らい付いていた孫権は動きを止め、恐る恐る周瑜の方に目を向けた。その意図がわかった周瑜は溜息を一つ洩らし、彼女が求めている答えを言葉にする。

「残念ながら事実だ、此処には先程まで袁紹殿が居た」

「!?」

 目を見開く孫権、呂蒙は少し前の自分を見ているような気分に陥り。
 その横で、妹が驚く表情を面白そうに眺めていた孫権が、意を決し口を開いた。

「蓮華……貴女は合同軍儀の時留守番をよろしくね」

「な!? ……私も孫呉の次期当主として参加すべきでは?」

「代表を『三人』と言われたの、私と冥琳と穏で三人。勢力としては格下の私たちが大勢で行くわけにはいかないわ」

「……わかり…………ました」








「雪蓮、何故あんな嘘をついた。袁紹は代表と言っただけで人数は指定していない。孫権殿一人連れて行くのは難しく無いだろう?」

「今のあの娘を袁紹に会わせるわけにはいかないわ」

「……何故だ」

 孫策にしては珍しくふざけた雰囲気が無い。彼女が真面目な時は孫呉の未来を左右するような事柄が多く。それを良く知る親友、周瑜は一字一句聞き逃さないよう耳を澄ませた。

「蓮華の当主としての気質は私とも、そしてお母様のものとも違うわ。
 義と徳を重んじるソレは袁紹に近いわね」

 言って、先程の袁紹を思い出す孫策。以前、黄蓋が袁紹の器について評価していたが、今日初めてその容量の計り知れない器のでかさを痛感した。
 彼が纏う器のでかさを体現したような威圧の空気。息が出来ず、心の臓を握られたかのような圧力は余りにも――

「袁紹は蓮華が目指す当主の姿そのものよ、問題は完成されすぎていることね」

「つまり……ここで袁紹(理想)と会わせては自信を無くす可能性があると?」

「そういうこと♪」

 未熟な妹とさして変わらぬ年齢、それでいて遥か高みにいる人間を見せ付けられれば心が折れる。
 孫権は真面目だ、それが自分の歩みを止める原因とわかりながらも、袁紹と自分の器を比べ、自身の未熟さに絶望するだろう。孫策は伊達に長女、そして孫呉の当主として立っているわけではない。
 その気質の違いから何かと反発されてはいるが、妹の事を誰よりも理解していた。

「心配はないわ、私の見立てだと蓮華の伸び代は彼を超えるわよ!」

「フッ……姉馬鹿だな雪蓮」

 孫策の考えに反対はない。むしろ孫権の伸び代に対しては周瑜も同意見である。

 



 しかし彼女達は失念していた。孫権と同じく袁紹にも伸び代がある事を――

 
 

 
後書き
NEW!新人軍師 呂蒙

好感度 10%

猫度 「え? ええええっと……」

状態 緊張

備考 初対面が強烈すぎて苦手意識を持つ
   それと同時に袁家に対する警戒心を高める
 
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