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女と友情

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2部分:第二章


第二章

「何処が悪いのか」
「だといいけれど」
「そうよ。まあソフトの話はこれ位にして」
 由紀子はここで話を変えてきた。
「ねえ幸枝」
「何?」
「実はさっきから気になっていたんだけれど」
 こう幸枝に話を切り出してきた。
「あそこだけれど」
「ええ、あそこね」
「そっ。あの本屋さんの陰」
 そこを密かに指差して幸枝に言う。
「あそこに。見えるわよね」
「ええ。誰かしら」
「あからさまに怪しいんだけれど」
 見ればその本屋の陰から一人の学生服の男が二人の方をじっと見ている。四角い顔でやたらに大きな身体をしている。まるで昔の柔道漫画の主人公だ。
「何かしらね」
「さあ」
「とりあえず無視しましょう」
 由紀子はこうすることにした。
「相手にしたら駄目よ」
「相手にしないって」
「あんなの変態に決まってるじゃない」
 完全に見ただけで判断していた。
「完璧にね。だから」
「無視するのね」
「そういうこと。目を合わせたら駄目よ」
 こうまで言う。
「絶対にね。見たら駄目よ」
「うん。じゃあ」
 こう幸枝に話して足を進める。しかしここでその四角い顔の大柄な男が出て来た。そうして二人の前に飛び出て叫んできたのであった。
「石黒幸枝さん!」
「はいっ!?」
「石黒幸枝さんですよね」
「はっ、はい」
 幸枝は少年のそのあまりもの大きさに戸惑いながらも応えた。
「そうですけれど」
「僕は川崎賢治です」
 少年はこう名乗ってきた。
「隣のクラスの柔道部員の」
「そうだったんですか」
「はい。宜しく御願いします」
「わかりました」
 何が何なのかわからないまま自分も名乗ってきた少年に応える。
「こちらこそ」
「それでですね」
 ここでその川崎という少年は持っていた鞄から慌てているような素振りで何かを出してきた。
「石黒さん」
「ええ」
「よかったらこれを」
 こう言ってあるものを幸枝に対して差し出してきたのだった。
「読んで下さい」
「これをなのね」
「そうです」
 真剣そのものの、今にも死にそうな顔で幸枝に告げていた。
「駄目でしょうか」
「ま、まあ」
「駄目なんですか?」
 今の幸枝の言葉で本当に死にそうな顔を見せてきた。
「やっぱり。それは」
「いえ、それは」
 その死にそうな顔を見て断ることは幸枝には無理だった。
「それじゃあ」
「読んでくれるんですね」
「ええ、まあ」
 戸惑いながら答える。
「それじゃあ」
「御願いしますっ」 
 思い切り太い声で言われた。
「受け取って下さい」
「わかったわ」
 言われるままその差し出されたものを受け取る幸枝だった。
「それじゃあ」
「返事はですね」
 川崎は完全に彼のペースで話を進めてきた。
「明日の放課後に」
「明日の放課後に」
「待ってますっ」
「何処に?」
 場所を言っていないから当然の問い掛けであった。
「何処で待ってるの?」
「屋上ですっ」
 また太い声で言ってきた。
「屋上で待ってます。御願いします」
「ええ。わかったわ」
 戸惑いながらも何とか答えることができた。
「それじゃあ」
「それではまた」
 頭を下げて幸枝に告げてきた。
「待ってますから」
「ええ。じゃあ」
「明日に」
 ここまで言って後は脱兎の如く何処かに駆けて行った。ここまでまるで嵐のようだった。少なくとも幸枝にとっては何が何だかわからない流れであった。
「今のって」
「告白よね」
 由紀子ももう姿が見えなくなった川崎がいなくなったその方を見て呟く。
 
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