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明日も爽やかに

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2部分:第二章


第二章

 二人はお互いに別れそれぞれ走りはじめた。その時にだった。
 健斗は己の左手の柵のところに朝顔を見た。青い朝顔がそこに咲いている。やや紫がかった青だった。
 晴美も見た。右手にだ。鉢にある赤い朝顔をだ。こちらもやや紫がかった赤だった。どちらも朝顔の色だった。
「夏だからな」
「咲いているな」
 二人はその朝顔を見てだ。それぞれ微笑みながら呟いた。そしてその青と赤の朝顔を見ながらだ。そのうえでまた呟くのだった。
「こうして毎日見ているけれどな」
「毎日見ていてもな」
「いいものだな」
「飽きないな」
 そしてだ。こうも言うのだった。
「明日もな」
「見るか」
 その朝顔を見ての朝のことだった。そうしてだ。
 学校に行く。健斗は海の様な青い学生服、晴美は上が鮮やかな赤のブレザーと黒いネクタイ、下は緑と黒のタートンチェックのミニスカートに黒いストッキングというスタイルだ。その姿で同じクラスに入る。そしてだった。
「今朝も頑張ってたな」
「そちらこそな」
 笑顔で言い合うのだった。
「部活の練習以外にもやるなんてな」
「そちらこそあれだな。朝早く起きて新聞配達とはな」
「子供の頃からだからな」
 微笑んでだ。こう答える健斗だった。
「家が新聞配達の家だからな」
「それでか」
「ああ。だからな」
「そうか。新聞屋は朝が早いか」
「豆腐屋と同じだからな」
「ははは、そうだな」
 豆腐と聞いてだ。晴美はその口を大きく開けて笑うのだった。
「豆腐もだな。朝だな」
「だからそれと同じだな。別に新鮮でなくてもいいけれどな」
「そういうものか。しかし新聞ならだ」
「何だ?好きな新聞でもあるのか?」
「大阪スポーツは面白いらしいな」
 話に出すのはその新聞だった。
「あれはかなりな」
「面白いがあそこに書いてあるのは嘘ばかりだぞ」
「何っ、そうなのか」
「ああ。全部でまかせを書いているんだ」
 このことはよく知っている彼だった。
「スポーツ新聞の中でもあれはな。凄いからな」
「そういう新聞なのか」
「そうだ。だがそれがいい」
 何処かの戦国武将みたいな言葉も出す健斗だった。
「あまりにもあからさまな嘘だからな」
「そこまで凄い嘘なのか」
「まず宇宙人が出る」
 少なくとも普通の新聞ではないことである。
「その他にも色々あるからな」
「ううむ、宇宙人か」
「何なら家に届けるか?八条新聞の他に」
「そうだな、一度お母さんに話してみる」
 晴美は考える顔で述べた。腕を組むとその上制服の中に収められているその二つの胸が乗る。実に見事な胸だ。
「お父さんにもな」
「おい、本気なのか」
「悪いのか?私は何時でも本気だぞ」
「女の子がスポーツ新聞を読むのか」
 健斗がここで言うのはこのことだった。
「それは」
「駄目か?それは」
「あまりないだろ」
「そういうものか」
「ああ。まあないな」
 また言う健斗だった。怪訝な目と共にだ。
「どうしてもというのなら反対はしないがな」
「一度家族と話してみる」
「できるなら話さない方がいいがな」
 健斗は明らかな忠告をした。
 
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