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勝負服

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3部分:第三章


第三章

「古い、時代遅れって思ってたけれど」
「それでもね。実際に見てみると」
「いいじゃない」
 こうだ。そのチュアンが着ているアオザイを見て言うのだった。
「何かあれ?お城にいるみたいな」
「そこに仕えている女官ね」
「そんな感じよね」
「つまりいいのね」
 チュアンもそんな彼女達に対して述べる。
「この服装って」
「ええ、いいと思うわ」
「チュアンがそれ着るなんて以外だったけれど」
「それでもね」
「いいと思うわ」
 こうした評価であった。そしてだ。
 彼女はそれから時々アオザイを着るようになった。するとだ。
 男の子達もだ。彼女を見るようになった。これまで以上にだ。
「何かいいよな」
「ああ、スタイルいいよな」
「すらりとしてるし」
「可愛いよな」
 アオザイと共に彼女も注目される。さらにであった。
 それでだ。同じ大学の同じ学部のだ。グエン=バン=チュンがこう言ってきた。格闘技を得意としていてスポーツマンとして知られている。黒い肌に人懐っこい笑顔がトレードマークの気さくな若者だ。格闘技をしているだけあって引き締まった身体に長身である。黒髪を短く刈り丸い大きな目をしている。
 その彼がだ。こうチュアンに声をかけてきたのだ。
「あのさ」
「どうしたの?」
「今度よかったらさ」
 そのアオザイ姿の彼女に声をかけてきたのである。こう。
「映画観に行かないかな」
「映画に?」
「そう、映画にね」
 こう誘ってきたのだった。
「どうかな、それは」
「映画っていうと」
「そう、今人気のあれね」
 ここでその映画のタイトルをチュアンに話すとだ。チュアンは笑顔で応えた。
「あっ、その映画私も」
「観に行きたいって思ってたの?」
「ええ、そうなの」
 こう話すのだった。
「それじゃあ一緒にね」
「うん、一緒に行こう」
 こうしてだった。デートが決まったのだった。そしてだ。
 デートの後でだ。チュアンは友人達に話すのだった。
「それでそれからね」
「付き合うことになったのね」
「そうなのね」
「ええ、そうなのよ」
 こう満面の笑みで話すのだった。彼女は今は青いアオザイを着ている。
「私今凄く幸せよ」
「グエン性格いいしね」
「気さくだし優しいし」
「よかったじゃない」
「そうね。やっぱりこれって」
 チュアンはだ。ここでこう言った。
「アオザイのお陰ね」
「その服のお陰なの」
「それでグエンをゲットしたって」
「そうなのね」
「ええ、そうよ」
 こう話すのだった。
「間違いなくね」
「ううん、アオザイって凄かったのね」
「そうね」
 友人達も顔を見合わせて話す。
「これまで何ともないって思ってたのに」
「古くて時代遅れだって」
「そう思ってたけれど」
「違ったんだ」
「そうよ。アオザイって凄いのよ」
 チュアンは満面の笑顔で言う。
 
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