| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

―戦士転生―

 吹雪さんが取り落とした《ダークネス》のカードから、先日十代が倒した筈の人物と、瓜二つの人物が出現する。自分は常識には囚われない――などとうそぶいていたが、あながち冗談でもないらしい。

「……やあ、久しいね遊矢くん。まだ君を消していなかった」

 ゆっくりと語る口調だけは友好的だったが、ミスターTと名乗る人物は明確にこちらへと敵意を向けていた。その腕からデュエルディスクに似たものを生やし、それをこちらへと向ける。

「吹雪さんは下がっててください」

「すまない……そうさせてもらうよ……」

 先のデュエルで《ダークネス》の力を使ったため、疲労を隠せない吹雪さんを庇うように前に立つと、俺も対抗するようにデュエルディスクを展開する。

「おや、その力は……やはり君はいてはならないらしい」

 新生した【機械戦士】デッキを興味深く眺めながら、ミスターTはそんなことを小さく呟いた。消えてもらう、と言われようがあっさり消える道理はこちらにはなく。敵の正体を知った吹雪さんとともに、なんとしてもアカデミアに戻らなくては。

『デュエル!』

遊矢LP4000
ミスターTLP4000


「俺の先攻」

 デュエルディスクが先に導きだしたのはこちら。五枚の手札を見渡すと、まずは一枚のモンスターを手に取った。

「俺は……モンスターをセットし、ターンエンド」

「私のターン、ドロー」

 生まれ変わった【機械戦士】。その力を試すべく、あえてモンスターをセットしたのみでターンを終了する。

「私は《アンブラル・グール》を召喚」

 恐らくミスターTのデッキは、メインデッキの違いこそあれ、エクストラデッキに存在するかの《No.》を主軸としたデッキ。先鋒として、影で身体を形成している巨人が召喚されるが、No.の正体が分からない以上デッキの正体も不明だ。

「私は《アンブラル・グール》の効果を発動。このモンスターの攻撃力を0にすることで、手札の攻撃力0のアンブラルモンスターを特殊召喚する。《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》を特殊召喚」

 やはりその効果はモンスターの展開をメインにした効果であり、新たなアンブラルモンスターが特殊召喚される。早くもエクシーズ召喚かと思われたが、新たに召喚された《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》のレベルは1。《アンブラル・グール》とレベルが合わない。

「《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》の効果。特殊召喚時、他のアンブラルモンスターと同じレベルとなる」

 ……どうやらその心配は無縁だったらしく、二体のアンブラルモンスターのレベルは4に統一される。影のような暗い色であるにもかかわらず、青白く光るという矛盾した性質を持った《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》が、そのレベルと合わせて4つに分裂する。

「レベル4の《アンブラル・グール》と《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 二体のモンスターが重なっていく。召喚方法はこちらの世界でも使えるようになったとはいえ、ミスターTの陣営が使うエクシーズモンスターは特別製だ。それを示すように黒い影がフィールドに重なっていく……

「蜃気楼の如き罪を守りし、法の鍵となりし番人。今、堕落せしその姿を見せよ! エクシーズ召喚! 《No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル》!」

 フィールドに広がっていく影から現出するのは、鎧で武装された昆虫――その中でも取り分け、カブトムシのような形状をしていた。

「バトル。マスター・キー・ビートルでセットモンスターに攻撃。キー・ブラスト!」

「セットモンスターは《音響戦士サイザス》! このモンスターがリバースした時、デッキから音響戦士を手札に加える。俺は《音響戦士ピアーノ》をサーチ」

 セットモンスターは新たなウォリアーである、音響戦士と呼ばれるシリーズカードたち。サイザスの効果は新たな仲間のサーチ効果であり、マスター・キー・ビートルに破壊されてしまうものの、その効果は無事に発動する。

「メイン2。私はカードを一枚伏せ、マスター・キー・ビートルの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、フィールドのカードを選択。選択されたカードはキー・ビートルが健在な限り破壊されない。ターン終了」

「俺のターン、ドロー!」

 メインフェイズ2にて発動されたキー・ビートルの効果は、他のカードに自身が健在な限り破壊耐性を付与するカード。ならばあのカードはミスターTのデッキの中核を成す永続罠であり、キー・ビートルには何らかの自身の破壊を防ぐ効果がある、と推測する。

 そして相手のデッキの推測もそこそこに、先のターンにサーチされた音響戦士の効果を発動する。

「俺は《音響戦士ギータス》を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

「ペンデュラム……だと?」

 俺が発動したそのカードの特性に、初めてミスターTに疑問のような感情が浮かぶ。このカードはミスターTたちの力ではなく、俺と明日香が飛ばされてしまった異世界において、侵略者たちが使っていた――そして俺がエクゾディアによって手に入れた力。

 あの時使っていた《イグナイト》とはまた違うカードだが、機械戦士として生まれ変わった以上使いこなしてみせる……!

「俺は《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果を発動! 手札を一枚捨てることで、音響戦士をデッキから特殊召喚する! 現れろ、《音響戦士ベーシス》!」

 二対のモンスターが揃わなくてはペンデュラム召喚は行えないが、ペンデュラム効果は永続魔法の感覚で使用可能。《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果にて、手札一枚をコストにデッキから新たな音響戦士が特殊召喚される。

「さらに《ドドドウォリアー》を妥協召喚し、二体のモンスターでチューニング!」

 攻撃力を下げることで妥協召喚が可能な《ドドドウォリアー》に、デッキから特殊召喚したチューナーである《音響戦士ベーシス》。その二体がフィールドに揃い、ミスターTのエクシーズ召喚に対抗するようにチューニングが開始される。

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 合計レベルは7。よってシンクロ召喚されるは、もちろんこのラッキーカード。黄色の装甲を装備した機械竜が、雄叫びを上げながらシンクロ召喚され、その雄叫びは効果の発動に繋がっていく。

「パワー・ツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから三枚の装備カードを裏側で見せ、相手が選んだカードを手札に加える! パワー・サーチ!」

「左のカードにしておこう」

 デッキから飛び出した三つのカードのうち、一つだけが俺の手札へと加えられ、残りのカードはデッキにてその出番を待つ。そして加えられた一枚は、すぐさま《パワー・ツール・ドラゴン》へと装備される。

「俺は《パワー・ツール・ドラゴン》に《ダブルツールD&C》を装備し、バトルフェイズ!」

 攻撃力を1000ポイントアップさせ、さらに攻撃した相手モンスターの効果すら無効化する、実質的に専用装備魔法である《ダブルツールD&C》。この装備魔法ならば、マスター・キー・ビートルに隠された効果があろうとも。

「《パワー・ツール・ドラゴン》で、マスター・キー・ビートルに攻撃! クラフティ・ブレイク!」

「リバースカード、オープン! 《安全地帯》!」

ミスターTLP4000→3200

 《パワー・ツール・ドラゴン》のドリルの一撃は、狙い通りにマスター・キー・ビートルに直撃はしたものの、ライフを少し削っただけに終わる。戦闘前に発動されたリバースカード、《安全地帯》は自分の攻撃表示モンスター一体を、あらゆる破壊から守る永続罠。

 そしてマスター・キー・ビートルの効果は、マスター・キー・ビートルが健在な限り、選択したカードの効果破壊を無効にする効果。よって《安全地帯》を破壊しようとすれば、マスター・キー・ビートルの効果で無効化され、マスター・キー・ビートルを破壊しようとすれば《安全地帯》が――と両者の効果は完結している。

「……メイン2。カードを二枚伏せて、ターンエンド」

「私のターン、ドロー」

 しかしそれは、ある意味予想出来ていたことだった。予想外だったのはミスターTが伏せていたカードが、あの《ナンバーズ・ウォール》ではなく《安全地帯》だったこと。まさか――

「私は魔法カード《ダーク・バースト》を発動。墓地から攻撃力1500以下の闇属性モンスター、《アンブラル・グール》を手札に加える」

 《ナンバーズ・ウォール》への推測にひとまず当たりをつけ、ミスターTのターンを観察する。発動した魔法カードは、墓地から闇属性モンスターをサルベージする《ダーク・バースト》。その効果により、先のターンでエクシーズ素材を経由して墓地に置かれた、《アンブラル・グール》が再び手札に戻る。

「《アンブラル・グール》を召喚し、効果を発動。手札から《アンブラル・アンフォーム》を特殊召喚する」

 再びフィールドに揃う二体のアンブラルモンスター。それも《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》のようにレベルを変更する手間もなく、最初からそのレベルは両者ともに4。

「さらに魔法カード《タンホイザーゲート》を発動。攻撃力1000以下かつ同じ種族のモンスター二体を、それぞれ合計したレベルとする」

 しかしてエクシーズ召喚に使うでもなく、発動されたのは魔法カード《タンホイザーゲート》。《アンブラル・グール》の効果で攻撃力が0になったために発動条件を満たし、二体のモンスターを合計したレベル――つまり二体のアンブラルモンスターは、レベル8となってフィールドに存在する。

「私はレベル8となった二体のアンブラルモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!」

 吹雪さんが先程使用した《No.46 神影龍ドラッグルーオン》がそうであったように、恐らくランク8はレベル8シンクロと同様、切り札クラスの実力を持っている。アンブラルモンスター二体が重なり、二体目のナンバーズが権限する――

「生と死の狭間を彷徨いし魂よ。暗黒に澱みし恨みをこの地で晴らせ。現れろ、ランク8! 《No.23 冥界の霊騎士ランスロット》!」

 銀色の鎧を着込んだ清廉なる騎士。エクシーズ召喚されたそのモンスターの第一印象は、まさしく騎士といったような感じだったが……その瞳が見開かれた瞬間、その印象は間違いだったと悟る。

 どこまでも暗い闇のような、底の見えない漆黒の瞳が俺を見据えながら、銀色の刃をこちらに向けた。

「バトル。エクシーズ素材を持ったランスロットは、相手プレイヤーにダイレクトアタック出来る」

「くっ……リバースカード、オープン! 《くず鉄のかかし》! 相手の攻撃を無効にする!」

 ミスターTの邪悪な笑みによって、ランク8にしては低すぎる2000という攻撃力の意味を悟る。切り札クラスとしては不充分なその攻撃力だが、ダイレクトアタッカーとしては規格外にも過ぎる。《パワー・ツール・ドラゴン》を無視して突き進むランスロットの進路を、伏せてあった《くず鉄のかかし》が妨害する――

「なっ!?」

 ――ことは出来なかった。ランスロットの剣の一閃に、《くず鉄のかかし》はあっという間に切り裂かれてしまう。

「ランスロット以外のカードの効果が発動した時、オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、その効果を無効にする」

「ぐあっ!」

遊矢LP4000→2000

 ミスターTの効果の説明の直後、白銀の一刺しが俺の胸を貫いた。一瞬にしてこちらのライフは半分にまで落ち込み、さらに効果を無効にされた《くず鉄のかかし》は再利用出来ず、そのまま墓地に送られてしまう。

「さらにランスロット、最後の効果。このモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時、フィールドのカード一枚を破壊する。私は《パワー・ツール・ドラゴン》を選択」

「……《パワー・ツール・ドラゴン》の効果発動、装備魔法を墓地に送ることで破壊を無効にする! イクイップ・アーマード!」

 直接攻撃効果と、それを防ぐ相手のカードを無効化する効果、さらに相手にダメージを与えればさらに追撃する効果――全てが密接に絡み合ったランスロットにより、俺は《パワー・ツール・ドラゴン》まで破壊されそうになるものの、何とか自身の効果でそれを防ぐ。……だが、ミスターTのフィールドにはまだ、マスター・キー・ビートルがいる。

「続いてマスター・キー・ビートルでパワー・ツール・ドラゴンに攻撃。キー・ブラスト!」

「パワー・ツール……!」

遊矢LP2000→1800

 《くず鉄のかかし》と《ダブルツールD&C》という二段構えの防御を破られ、《パワー・ツール・ドラゴン》はマスター・キー・ビートルの前に沈む。

「私はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 ミスターTのナンバーズ二体の攻勢により、防御の布陣を整えていた俺のフィールドは、あっという間にペンデュラムスケールにセッティングされた《音響戦士ギータス》、そしてリバースカードが一枚となる。

 対するミスターTのフィールドは、永続罠《安全地帯》と自身の効果で完全に破壊されない要塞と化した、《No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル》。そしてオーバーレイ・ユニットを一つ持った、《No.23 冥界の霊騎士ランスロット》にリバースカードが一枚。そのカードの効果を無効化する効果に、俺の動きは大きく封じられる。

 ただし《No.23 冥界の霊騎士ランスロット》を破壊せねば、俺は次なるターンのダイレクトアタックで敗北する。直接攻撃効果を発動するために必要な、オーバーレイ・ユニットを無効化効果で使い切らせたとしても、あっけなく補充出来るのは先の吹雪さんとのデュエルで証明済みだ。

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

 ならば《音響戦士ギータス》なども含めて、効果を使わずにランスロットを破壊する必要がある。そのために呼び出されたモンスターは、機械戦士のアタッカーたる三つ叉の機械戦士《マックス・ウォリアー》。生まれ変わったデッキとはいえ、いつまでもこのデッキは【機械戦士】デッキだという健在を示すように、勇猛にフィールドに躍り出た。

「バトル! 《マックス・ウォリアー》でランスロットに攻撃! スイフト・ラッシュ!」

「ほう……?」

 アタッカーとはいえ《マックス・ウォリアー》の攻撃力は1800、僅かにランスロットには及ばない。しかしマックス・ウォリアーには、その僅かながらを補うための効果がある。

「《マックス・ウォリアー》は攻撃宣言時、攻撃力を400ポイントアップさせる!」

「だがランスロットはこのカード以外のカード効果が発動した時、オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、その効果を無効にする」

 《マックス・ウォリアー》の三段突きが炸裂するが、それは効果を無効にするランスロットの剣に弾かれてしまい、その衝撃で無防備な胴体を晒す。そこを見逃すランスロットではなく、素早く剣を引くと、最低限の動きの突きでマックス・ウォリアーを貫いた。

「まだだ! 墓地から《スキル・サクセサー》の効果を発動!」

 ……いや、ランスロットの細い剣は、マックス・ウォリアーの槍を持っていない方の手で握られていた。そのままランスロットの剣を握り潰すと、三つ叉の槍をグルグルと回して威力を高める。

「墓地からこのカードを除外することで、モンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる! スイフト・ラッシュ!」

 一瞬の攻防を制したのはマックス・ウォリアー。零距離からの三段突きが遂にランスロットを捉え、あっさりと機能を停止させる。《音響戦士ギータス》の効果で墓地に送っていた《スキル・サクセサー》の効果で、最終的なマックス・ウォリアーの攻撃力は2600。

「…………」

ミスターTLP3200→2600

「戦闘で相手モンスターを破壊した時、マックス・ウォリアーの攻撃力とレベルは半分になる」

 マックス・ウォリアーが爆炎の中から帰還するとともに、ミスターTにも微少ながらダメージが入るが、特に気にはしていないらしい。確かに破壊不可の《マスター・キー・ビートル》がいる限り、ミスターTの優勢は揺るがない。

「メイン2。《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果を発動し、手札を一枚捨てることでデッキから音響戦士を特殊召喚する! 現れろ、《音響戦士ピアーノ》!」

 そしてメインフェイズ2、再び発動されるペンデュラム効果の前に、デッキから特殊召喚される新たな音響戦士。チューナーモンスターとして、役目を果たした《マックス・ウォリアー》に並び立った。

「レベル3の《音響戦士ピアーノ》と、レベル2となった《マックス・ウォリアー》でチューニング!」

 相手モンスターを戦闘破壊した《マックス・ウォリアー》は、ステータスだけではなくレベルも半分になる。その効果を利用したシンクロ召喚により、その合計レベルは5。

「集いし勇気が、仲間を護る思いとなる。光差す道となれ! 現れろ! 傷だらけの戦士、《スカー・ウォリアー》!」

 よってシンクロ召喚されるは、戦闘破壊耐性を持った傷だらけの機械戦士、《スカー・ウォリアー》。攻撃力はマスター・キー・ビートルには及ばないが、その戦闘破壊耐性に賭けるしか今は方法はない。

「ターンエンド!」

「私のターン、ドロー」

 ランスロットは破壊したものの、まだ《安全地帯》によって守られたマスター・キー・ビートルがいる。攻撃力は上級モンスターの平均レベルだが、あらゆる方法でも破壊されないのは厄介この上ない。

「私は伏せてあった《罪鍵の法-シン・キー・ロウ》を発動。フィールドのエクシーズモンスターを選択し、そのモンスターと同じ攻撃力の《アンブラル・ミラージュ・トークン》を特殊召喚する」

「三体!?」

 伏せられていたミスターTの罠カードが発動されると、マスター・キー・ビートルを模したトークンがさらに三体、ミスターTのフィールドに特殊召喚される。先のターンでランスロットが破壊されていなければ、ミスターTのフィールドが埋まっていたと考えると、あまり想像したくない事態になっていたに違いない。

「《アンブラル・ミラージュ・トークン》は直接攻撃出来ず、選択したエクシーズモンスターがフィールドを離れた時、同じく破壊される。バトルだ。アンブラル・ミラージュ・トークンで、スカー・ウォリアーを攻撃」

「……スカー・ウォリアーは一度だけ、戦闘では破壊されない!」

遊矢LP1800→1400

 直接攻撃出来ないというデメリットはあるものの、その効果が適用されるのは、あくまで特殊召喚された《アンブラル・ミラージュ・トークン》のみ。本体であるマスター・キー・ビートルは、ただただ自らの出番を待ち続けている……!

「ならば、二体目の《アンブラル・ミラージュ・トークン》で攻撃だ」

「くっ……!」

遊矢LP1400→1000

 そして二体目の追撃を受け、さしもの《スカー・ウォリアー》も砕け散る。その衝撃に目を覆っていると、次の瞬間にはマスター・キー・ビートルが目の前に立ち尽くしていた。

「マスター・キー・ビートルでダイレクトアタック。キー・ブラスト!」

「……リバースカード、オープン! 《シンクロコール》!」

 マスター・キー・ビートルの直接攻撃の直前、発動したリバースカード《シンクロコール》に導かれ、二体のモンスターが半透明の姿で現れる。《音響戦士ベーシス》に《スカー・ウォリアー》、二体がマスター・キー・ビートルから俺を守るようにしながら、シンクロ召喚の態勢を整える。

「墓地のモンスター二体を除外し、シンクロ召喚を行う!」

 レベル1の《音響戦士ベーシス》、レベル5の《スカー・ウォリアー》。ただ《スカー・ウォリアー》は破壊された訳ではなく、新たな機械戦士を呼ぶための布石となる。

「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」

 そしてバトルフェイズ中にシンクロ召喚されるのは、重力を操る獣をかたどった機械戦士。俺とマスター・キー・ビートルの間に降り立つと、ミスターTのフィールドにいるモンスターたちを威嚇するかのように、鋼鉄のいななきを震わせる。

「グラヴィティ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功した時、相手モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする! パワー・グラヴィテーション!」

 皮肉にも大量に増殖した《アンブラル・ミラージュ・トークン》の力のおかげで、《グラヴィティ・ウォリアー》の効果は十全な力を発揮する。ミスターTのフィールドにいるモンスターは四体、よって攻撃力は1200ポイントアップし――3300ポイントとなる。

「……マスター・キー・ビートルの攻撃を中止。だが、そのモンスターは破壊させてもらう。アンブラル・ミラージュ・トークンで、グラヴィティ・ウォリアーに攻撃!」

 バトルフェイズ中にモンスターが特殊召喚されたため、ミスターTはマスター・キー・ビートルの攻撃を中断する。《グラヴィティ・ウォリアー》の攻撃力が上昇したため、その選択は当然だが……最後の《アンブラル・ミラージュ・トークン》は攻撃を宣言した。

「迎撃しろ、グラヴィティ・ウォリアー! グランド・クロス!」

ミスターTLP2600→1800

 不審げに思いながらも《グラヴィティ・ウォリアー》に迎撃を命じると、あっさりと《アンブラル・ミラージュ・トークン》は破壊され、ミスターTのライフポイントはさらに削られる。迎撃に成功はしたものの、拭いきれない不信感が形作られるように、ミスターTは更なるカードを発動した。

「速攻魔法《アンブラル・デス・ブラッド》を発動。アンブラルモンスターが破壊された時、破壊したモンスターを破壊する!」

 破壊した筈の《アンブラル・ミラージュ・トークン》が再生すると、《グラヴィティ・ウォリアー》を引きずり込みながら、影の中へと諸共に消えていく。この速攻魔法が狙いだったのか、と思いながら、破壊された《グラヴィティ・ウォリアー》のことを思う。

「ターンを終了しよう」

「俺のターン、ドロー!」

 攻め手にする腹積もりだった《グラヴィティ・ウォリアー》が破壊されてしまい、何とか耐えたものの未だミスターTのフィールドには攻撃力2500クラスのモンスターが三体。対するこちらのフィールドは、ペンデュラムスケールにセットされた《音響戦士ギータス》のみ。

「俺は《ミスティック・バイパー》を召喚!」

 逆転に賭ける一打。笛吹きの機械戦士を召喚すると、その効果を早速発動する。

「このモンスターをリリースすることでカードを一枚ドローする。それがレベル1モンスターだった場合、さらに一枚ドロー出来る。《ミスティック・バイパー》をリリース!」

 《ミスティック・バイパー》をリリースすることで、まずは一枚のカードをドロー。チューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》――レベル1モンスターのため、さらに一枚のカードをドロー。手札補充を果たして更なる魔法カードを発動する。

「通常魔法《狂った召喚歯車》を発動! 墓地から攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚し、さらにその同名モンスターを二体、デッキから特殊召喚する! 来い、《チューニング・サポーター》!」

 速攻魔法《地獄の暴走召喚》の相互互換、《狂った召喚歯車》が発動され、墓地の攻撃力1500以下のモンスター……《音響戦士ベーシス》の効果で墓地に送られていた、《チューニング・サポーター》がデッキからも含めて三体特殊召喚される。そのデメリット効果として、相手は同じレベル・種族のモンスターをデッキから特殊召喚出来る、という権利を得るが、メインデッキにエクシーズモンスターがない以上特殊召喚は不可能。

「そして《音響戦士ギータス》のペンデュラム効果! 手札を一枚捨てることで、デッキから音響戦士を特殊召喚出来る! 《音響戦士ドラムス》!」

 さらにデッキから音響戦士が特殊召喚されるとともに、墓地に送ったカードが光り輝いていく。手札コストと言えども、ただ墓地に送るだけではなく。

「このカードが墓地に送られた時、特殊召喚される! 来い、《リジェネ・ウォリアー》!」

 新たな機械戦士の特殊召喚により、がら空きのフィールドから五体のモンスターが揃う。もちろん揃わせるだけではなく、さらに真価を発揮する。

「レベル2の《音響戦士ドラムス》に、レベル2とした《チューニング・サポーター》二体をチューニング!」

 《チューニング・サポーター》はシンクロ素材になった時、レベルを1か2に選択することが出来る。三体のうち二体のレベルを2に、それらがシンクロ召喚の為の歯車となっていく。

「集いし拳が、道を阻む壁を打ち破る! 光指す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《マイティ・ウォリアー》!」

 スタジアムを拳で砕きながら大地に降り立ち、マイティ・ウォリアーがシンクロ召喚される。その拳をマスター・キー・ビートルに向け、巨大な一撃を叩き込まんと威圧する。さらにシンクロ素材になった、二体の《チューニング・サポーター》の効果が発動する。

「《チューニング・サポーター》はシンクロ素材になった時、カードを一枚ドロー出来る。よって二枚ドロー!」

 二枚のドローを果たした後に盤面を見渡す。通常召喚権は失ってしまったものの、まだフィールドには《チューニング・サポーター》と《リジェネ・ウォリアー》。まだこちらの手番は終わらない。

「さらに墓地の《音響戦士サイザス》の効果発動! このカードを除外することで、除外された音響戦士を特殊召喚する! 現れろ、《音響戦士ベーシス》!」

 最初のターンでセットしていた《音響戦士サイザス》の、墓地における効果が発動する。その効果は除外された音響戦士の帰還。通常罠カード《シンクロコール》により除外されていた、《音響戦士ギータス》がフィールドに特殊召喚される。

「レベル1の《音響戦士ギータス》に、レベル4の《リジェネ・ウォリアー》、レベル2とした《チューニング・サポーター》でチューニング!」

 そして行われる更なるシンクロ召喚。残った三体のモンスターが、新たな機械戦士を呼ぶ呼び水となる。

「集いし刃が、光をも切り裂く剣となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《セブン・ソード・ウォリアー》!」

 アンブラルたちが巻き起こした影を光で切り裂きながら、セブン・ソード・ウォリアーがシンクロ召喚される。金色の鎧を輝かせながら、マイティ・ウォリアーとともにフィールドに並び立つ。展開しきったモンスターは二体のシンクロモンスターとなり、マスター・キー・ビートルたちに相対する。

「それでどうする気かね? 見たところ、どちらもマスター・キー・ビートルには適わないようだが」

「《チューニング・サポーター》がシンクロ素材になった時、一枚ドロー。ああ、だからまだだ! 魔法カード《ヘルモスの爪》を発動!」

 マスター・キー・ビートルに対抗する為に発動されるのは、新たな装備魔法を生み出す魔法カード《ヘルモスの爪》。魔法カードとモンスターの融合という他に類を見ないソレは、手札の《エフェクト・ヴェーラー》をコストにしていく。時空の穴に巻き込まれたそれらは、装飾過多なハンマーとなって帰ってきた。

「融合召喚! 《タイム・マジック・ハンマー》!」

 翼が生えた金色の槌。それはまるで昔話から伝わる打出の小槌のようで、装備魔法の名手たる《セブン・ソード・ウォリアー》に装備される。剣の代わりだろうと《セブン・ソード・ウォリアー》には何の問題もなく、さらに自身の効果を適用する。

「《セブン・ソード・ウォリアー》にカードが装備された時、相手に800ポイントのダメージを与える! イクイップ・ショット!」

ミスターTLP1800→1000

 装備魔法カードを装備した時のバーン効果。ライフポイントだけを見れば、こちらとミスターTは互角のポイントとなる。もちろん三体のマスター・キー・ビートルがいるあちらがまだ有利だが、それもこの《タイム・マジック・ハンマー》によって覆す。

「バトル! セブン・ソード・ウォリアーで、マスター・キー・ビートルに攻撃! タイム・マジック・ハンマー!」

「迎撃しろ、マスター・キー・ビートル。キー・ブラスト!」

 《タイム・マジック・ハンマー》には攻撃力を上げる効果はなく、セブン・ソード・ウォリアーの攻撃力はマスター・キー・ビートルより低い。しかしあらゆる手段で破壊出来ないマスター・キー・ビートルには、単純な攻撃力は必要ないとばかりに、セブン・ソード・ウォリアーは、近くの床に対してハンマーを振り下ろす。

「《タイム・マジック・ハンマー》を装備したモンスターが戦闘する時、相手モンスターをダイスの振られたターン数除外する!」

「除外……!」

 あらゆる破壊を無効にするマスター・キー・ビートルも、除外を相手にすれば無力でしかない。《タイム・マジック・ハンマー》が指し示した時刻は『3』――よって三ターン、マスター・キー・ビートルはこのフィールドから離脱する。

 そしてそれと同時に、《罪鍵の法-シン・キー・ロウ》で出現していた《アンブラル・ミラージュ・トークン》二体も影となって消えていく。姿を似せていた《No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル》がいなくなった今、《アンブラル・ミラージュ・トークン》はその姿を保つことが出来ず、ただ破壊されるのみ。

 よって残るのは、《タイム・マジック・ハンマー》を振り下ろした《セブン・ソード・ウォリアー》と――まだ行動を起こしていない《マイティ・ウォリアー》。セブン・ソード・ウォリアーの背中を乗り越えるように飛び立ち、ミスターTへと肉迫する。

「マイティ・ウォリアーでダイレクトアタック! マイティ・ナックル!」

 ミスターTに振り下ろされる強靱な腕。二体のナンバーズを攻略した上での一撃が、遂に叩き込まれる――瞬間に、ミスターTとマイティ・ウォリアーの間に、一体の壁のようなものが出現していた。

「私は手札から《バトルフェーダー》の効果を発動。ダイレクトアタックを無効にし、相手のバトルフェイズを終了させる」

 手札から誘発される《バトルフェーダー》の効果により、マイティ・ウォリアーの一撃は惜しくも止められてしまう。そして展開しきった俺には、もうこれ以上ミスターTへ追撃する手段はなく。

「……ターンエンドだ」

 俺のフィールドには《マイティ・ウォリアー》に、《タイム・マジック・ハンマー》を装備した《セブン・ソード・ウォリアー》、ライフポイントは残り1000。対するミスターTのフィールドには何もなく、ライフポイントは同じく1000。

「私のターン、ドロー」

 戦線を支えていたマスター・キー・ビートルが除外された為だが、ミスターTはそれでも無表情を崩さない。それもまた計算ずくのような――人間でない、得体の知れないものを相手取っているのだと、今更ながらに実感する。

 逆を言えば、ミスターTを驚愕させた時がこちらの勝利の時。

「私は通常魔法《悪夢再び》を発動。墓地から守備力0の闇属性モンスターを二体、手札に加える」

 ミスターTの手札に加えられたのは、恐らくはアンブラルモンスターが二体。攻撃力と守備力が0という特性を持ったアンブラルは、魔法のサポートによりその特性を最大限に活かしていた。

「そして《アンブラル・グール》を召喚。その効果により、《アンブラル・アンフォーム》を特殊召喚する」

 恐らくは先の、《悪夢再び》で手札に加えられたモンスター二体。《アンブラル・グール》の自身の攻撃力を0にすることで、手札のアンブラルモンスターを特殊召喚する効果をもって、即座に二体のアンブラルモンスターがフィールドに揃う。

 手札消費は実質ないも同然で、またもや新たなナンバーズを呼び出すか――と思いきや、ミスターTは新たな魔法カードを発動する。

「さらに《波動共鳴》を発動。モンスターのレベルを4にすることが出来る。よって《バトルフェーダー》のレベルを4に」

 フィールドのモンスター一体のレベルを4にする、という効果を持つ魔法カード《波動共鳴》。先の俺のターンで《マイティ・ウォリアー》の攻撃を防ぐために使用され、フィールドに残ったままだった《バトルフェーダー》が対象に選択されると、そのレベルが4となり――フィールドに三体のレベル4モンスターが揃う。

「三体のレベル4モンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 更なるエクシーズ召喚はレベル4モンスターが三体。それ自体は十代とのデュエルでも見せていたため、特に驚きはないものの――わざわざ三体のモンスターを使うなら、召喚されるエクシーズモンスターは、この局面を打開する力を持っているに違いない。

「疾く雷光を轟かせ、電光で世界を灼け。エクシーズ召喚! 《No.91 サンダー・スパーク・ドラゴン》!」

 今までミスターTが使っていたナンバーズとは違い、発生している影を雷光で切り裂くが如く、東洋風の飛竜がエクシーズ召喚される。その口上は伊達ではなく、雷が目前に飛来したかのような衝撃がフィールドを震撼させる。

「私はサンダー・スパーク・ドラゴンの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを三つ取り除くことで、相手モンスターを全て破壊する」

「なに!?」

 轟く雷光と戦士達の苦痛の声。俺がその効果に驚愕している一瞬に、閃光とともに俺のフィールドはがら空きとなった。

「バトル。サンダー・スパーク・ドラゴンで――」

「――俺は《速攻のかかし》を手札から捨てることで、相手のバトルフェイズを終了させる!」

 間一髪。サンダー・スパーク・ドラゴンの雷光が俺を貫くより早く、手札から《速攻のかかし》を捨てることで、相手のバトルフェイズを終了させる。《タイム・マジック・ハンマー》で相手のフィールドをがら空きにしたと思えば、《バトルフェーダー》で攻撃を防がれてしまった先のターン。その反撃とばかりにサンダー・スパーク・ドラゴンの一撃が、俺のフィールドをがら空きにしたものの、皮肉にも同じ手札誘発の《速攻のかかし》がそれを防ぐ。

「……私はこれでターンエンド」

「俺のターン、ドロー! ……《貪欲な壺》を発動し、さらに二枚ドロー!」

 通常のドローに加えて汎用ドローカード《貪欲な壺》を発動し、さらに二枚のカードをドローする。そして、手札に揃ったある三枚のカードを見て……俺は次の行動を決める。その三枚のカードでない、ある一枚のカード――それを手に取った瞬間、何かを問いかけるような言葉が俺に届いた。

「仲間を殺したその力、また使うのかね?」

 ――機械戦士はもう使えない、と言ってきた時と同様に。不思議と心の内側に入ってくるミスターTの言葉に、カードを選択しようとした俺の手が止まる。確かにこの力は、異世界で仲間を殺そうとした力と同種のもの。

「……ああ、使う」

 だから今度はその力を、仲間とこの世界を守るために使う。この力自体に罪があるわけではなく、今度こそ使い方を間違える気はない。動きの止まった指を無理やり動かすと、そのカードをデュエルディスクにセットする。

「俺はスケール1の《音響戦士マイクス》を、ペンデュラムスケールにセッティング!」

 異世界で得たペンデュラム召喚の力。それはあの【イグナイト】デッキから、新たな【機械戦士】デッキにも受け継がれていた。既にセッティング済みだった《音響戦士ギータス》と併せて、赤と青の柱が天に向かって伸びていく。そのスケールは1から8――よって、レベル2から7のモンスターが同時に召喚可能。

「ペンデュラム召喚! 来てくれ、俺の……俺の! マイフェイバリットカードたち!」

『トアアアッ!』

 二対の音響戦士が発生させた魔法陣からは、三体のマイフェイバリットカード――《スピード・ウォリアー》がペンデュラム召喚される。生まれ変わっても新たな力を得たとしても、変わらない永遠のマイフェイバリットカードは、雄々しい叫びをあげて並び立った。

「思い出した……三沢が俺に伝えてきた言葉……」

 異世界から俺を救い出してきた三沢が伝えてきた、ミスターTが『その真実は必要ない』と俺の命を狙いに来たその言葉。どうして《ナンバーズ・ウォール》でなく《安全地帯》だったのか、その疑問おかげでようやく答えにたどり着いた。

 《ナンバーズ・ウォール》ではなく《安全地帯》だった理由――それは、俺がナンバーズを使ってくる、と敵が考えてきたからだ。俺はエクストラデッキからミスターTに見えるように、《No.96 ブラック・ミスト》を取り出した。

「前のミスターTだったカードだ」

 十代とデュエルしたミスターT。彼が使ったナンバーズのカードであり、彼がデュエルで敗れたあとに残っていたナンバーズ。その召喚条件はレベル2モンスターが三体――今、俺のフィールドはその条件を満たしている。

「ダメだ遊矢くん! ダークネスの力をそのまま使えば、僕のようになってしまう!」

 立って歩ける程に回復した吹雪さんが、ダークネスの力を使っていた者として警告する。ただやみくもにダークネスの力を解き放てば、ミスターTの大元に力であるダークネスに乗っ取られてしまうと。

「大丈夫です吹雪さん。……三沢が、そう伝えてくれた」

「三沢くんが……?」

 三沢は語っていた。まだその半分以上は分からないので、あとで敵の正体を突き止めた吹雪さんと照らし合わせる必要があるが――ダークネスは心の闇を武器にやってくる、と。そしてダークネスが使うナンバーズモンスターは、人間の心が作り出すカードであり、誰かの心の闇を武器にしてダークネスたちはナンバーズを使うのだと。……今思えば、この《No.96 ブラック・ミスト》が、《スピード・ウォリアー》三体で召喚出来るのは、このカードが俺の心の闇なのだろう。

 仲間を殺してでも仲間を救う。そんな矛盾した目的を、異世界で力を手に入れた俺は、エクゾディアの力で叶えようとした。その心の闇が映し出し、ダークネスの力となったカード。

 だが、今は違う。この世界と仲間を、今度は間違えずに守れるように――

「俺に応えろ! ナンバーズ!」

 ナンバーズが人間の心によって作り出されたカードならば。扱う人間の心によって、また違うナンバーズとなって転生する。《No.96 ブラック・ミスト》が俺の声に応えるように、新たなナンバーズとなってその手に加わっていく。

「俺は魔法カード《能力調整》を発動! フィールドのモンスターのレベルを1下げ……三体の《スピード・ウォリアー》で、オーバーレイ・ネットワークを構築!」

 直前に発動された魔法カード《能力調整》により、レベルが1となった三体の《スピード・ウォリアー》が重なっていく。ダークネスの力に汚染されていない、俺の、俺だけのナンバーズ。もう絶対に間違えないという決意を秘めた、鉄の闘志を込めたモンスター。

「集いし鉄血が闘志となりて、震える魂にて突き進む! エクシーズ召喚! 《No.54 反骨の闘士ライオンハート》!」

 コロッセオの拳闘士のような風貌をした、鎧を着込んだ獣のような大男。身体を欠損してもなお、その歩みを止めようとしないのか、身体にはそれを補う機械が埋め込まれている。召喚とともに爆炎がフィールドを覆い尽くし、ライオンハートが芯にまで響くような雄叫びをあげる。

「バトル! ライオンハートでサンダー・スパーク・ドラゴンを攻撃!」

 しかしそのステータスは戦闘に耐えうるどころか、下級モンスターよりも軒並み低い僅か100。……いや、だからこそ突き進む反骨の闘士なのか、恐れも見せずにサンダー・スパーク・ドラゴンに向かっていく。

「ライオンハートの効果発動! このカードが戦闘する時、オーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことで、俺が受ける戦闘ダメージを相手に与える!」

「なっ――」

 ライオンハートの攻撃力は先述の通りにたった100。だからこそその一撃は、相手にとって致命傷となる。オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、ライオンハートはサンダー・スパーク・ドラゴンの攻撃を全て跳ね返す……!

「ソニック・エッジカウンター!」

「アァァァァァ……」

ミスターTLP1000→0

 ライオンハートが跳ね返した雷光が直撃し、ミスターTは悲鳴とともに消えていく。命を賭けているとはいえ、二連戦のデュエル程度では消耗しなくなった自分に苦笑しながら、俺の前に降り立ったライオンハートを見た。

「これから……よろしくな、皆」

 ライオンハートも含めて生まれ変わった【機械戦士】たちに改めて挨拶すると、デュエルが終了したことにより、ソリッドビジョンが消えていってしまう。そしてデュエルを見届けてくれていた吹雪さんに肩を貸しながら、二人で帰るべきアカデミアに向かって歩き出す。

「何から何まですまないね、遊矢くん。君だって疲れているだろうに」

「異世界で鍛えられましたから。異世界で……」

 異世界で起きたことを消すことは出来ない。俺が仲間を消したことも、みんなが一度消えてしまったことも。

「俺、みんなに謝ろうと思います」

 謝って済む問題ではないけれど。ただの自己満足でしかないけれど。俺が異世界でやってしまったことを、ダークネスの侵略の前に謝っていきたい。それを聞いていてくれた吹雪さんは、一度、空とアカデミアを見上げて考え込むような動作をした後……神妙な面もちで頷いた。

「そうだね。それがいい……」



 ――そして俺たちが立ち去ったアカデミアの旧寮跡にて。もう一人のミスターTがそこに出現していたことを、俺たちが気づくことはなく――
 
 

 
後書き
感想で明日香の出番マダー? って言われました。まだです(無慈悲) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧