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エル=ドラード

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2部分:第二章


第二章

「どうやら」
「参ったな。また見つからなかったなんて」
「次がありますよ」
 しかしここでも明るい声のシッドだった。
「また次探しましょう。それで見つけましょう」
「次だね」
「はい、次です」
 その何の変哲もない険しく高いだけの山においての会話であった。
「ですから」
「それじゃあ今は帰るか」
 大学にということである。彼等が務めているその大学にだ。
「何もなかったし」
「わかりました。では大学まで」
「やれやれだよ」
 帰路につくその最初でまた溜息をつく彼だった。
「帰りがまた辛いんだよね」
「道は同じですよ」
「同じでも違うんだよ」
 こう言うのである。
「これがね。ほら、行く時はエル=ドラードがあるんだって希望があるじゃない」
「それで足取りは軽いんですね」
「そうさ。けれど帰りはね」
 ないとわかっでいるからだ。それが辛いというのである。
「嫌なことだよ、全く」
「けれど戻らないと次がないですよ」
 シッドはにこりと笑って苦笑いで項垂れる彼に話した。
「戻ってまた行けばいいじゃないですか」
「そういうものかな」
「そういうものですよ。それじゃあ」
 彼をうながす。こうして彼等は帰路についた。ポンスは重い足取りは暫く続いていたがやがて軽くなった。大学に帰るとまたすぐに次の計画に移るのだった。
 話を持って来たのはシッドだった。
「今度はですね」
「今度はって?」
 大学に帰った次の日だった。もう話を持って来たのである。
「もう見つけてきたのかい?」
「前の探検の前に見つけていたんですよ」
 既に見つけてきたというのである。
「それがこれなんですよ」
「凄いね、それはまた」
「はい。それでですね」
 さらに言う彼女だった。にこにことしながら朗らかに彼の前に古い地図を出してきた。それが一目見ただけでわかるアンデスの地図だった。
 そこのあるポイントを指し示す。そこは。
「あれっ、そこは」
「ここには行ったことないですよね」
 こうポンスに問う。
「そうですよね。ここは」
「確かにね。ここはね」
 ポンスは彼女のその言葉に頷いた。
「なかったね」
「ですから行きましょう」
 明らかに促す言葉であった。
「今度はここに」
「いいのかい?」
 ここで怪訝な顔でシッドに問うた。
「君の方は」
「私がですか?」
「いやね、僕はあれだよ」
 まずは自分のことを前置きしての言葉だった。
「好きでやってるんだから。ずっとね」
「私もですよ」
 しかしシッドはシッドでこう言葉を返すのだった。笑顔をそのままにして。
「好きでやってるんですよ」
「好きでなんだ」
「そうですよ。好きなんですよ」
 彼女もだというのだ。
 
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