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ドリトル先生の水族館

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第十二幕その四

「夏はこれですよね」
「はい、日本の夏は」
「こんな美味しい野菜はないです」
「はい、これ程甘くてあっさりしたお野菜はです」
「西瓜だけですね」
「僕もそう思います」
 先生もその西瓜を笑顔で食べています。
「日本の夏は西瓜も必要です」
「絶対にですね」
「麦茶もそうですが」
 先生は麦茶m飲みつつ言います。
「西瓜もですね」
「先生は日本の夏もお好きですか」
「はい、そうです」
 その通りだというのです。
「湿気が強いのが困りますが」
「イギリスの夏はあっさりしているそうですね」
「こうしたうだる様な暑さはありません」
「そうらしいですね」
「まだ神戸は楽ですが」
 先生が住んでいる神戸、八条学園もあるその町はです。
「大坂はかなりですね」
「確かにあそこは暑いですね」
「相当に」
「京都はさらに暑くて」
「あそこは盆地ですからね」
 日本の夏のお話にもなりました。
 そしてです、先生は今度は水饅頭を食べて言いました。
「しかしその暑さも」
「先生はお好きですか」
「それも含めてです」
 その暑さもというのです。
「大好きです」
「それは何よりですね」
「いや、夏も楽しめるのが」
「日本の夏ですね」
「まさしく」
 こうお話してでした、皆で。
 その日本の夏のティーセットを心ゆくまで楽しんで、でした。その後でまたグソクムシさんを見ました。その後で、でした。
 閉館時間が近くなってグソクムシさんにです、先生はこう言いました。
「明日も来させてもらうけれど」
「いい研究が出来ているか」
「うん、とてもね」
 こう笑顔で言うのでした。
「いい論文が書けそうだよ」
「それは何よりだ」
「君のことがかなりわかったよ」
「どうも俺は謎と思われているな」
「かなりね」
「深海にいるからか」
「そうだよ」
 まさにそれが理由だというのです。
「君も他の深海生物もね」
「住んでいる場所だけでか」
「人は自分が行けない、知らない場所を謎とするからね」
「それでだな」
「そう、君にしてもね」
「謎となっているか」
「君にしては心外だと思うけれどね」
 グソクムシさん自身にとってはというのです。
「そう思われていることは」
「そうだな、俺は特にだ」
「自分をそうは思っていないね」
「俺は俺だ」
 そうだというのです。
「まさにな」
「だからだね」
「謎に思われているとはな」
「やっぱり心外だね」
「どうもな、しかし調べたいのなら調べればいい」
「僕みたいにだね」
「俺はそれは止めない」
 決して、というのでした。 
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