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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第1章:平穏にさよなら
  第17話「悔しさ」

 
前書き
実は敵の犯罪グループは結構強いです。
大体、魔導師ランクで
リーダー:SS-ランク、その他:A~AAA-ランク
です。

先週の日曜に公開するのを設定し忘れていたので、今回は二話同時に公開します。
 

 


       =緋雪side=





   ―――目の前で、人が死んだ。



  厳密には人間じゃないけど、それでも目の前で誰かが死んでしまった。どこかで誰かがいなくなるなんて世界規模で見ればよくある事だけど、目の前なのは滅多にない。

「っ....ぁ....。」

  今日であったかやのひめさんの事は、よく知らない。薔薇姫さんに至っては話で聞いて、ついさっきボロボロの状態で出会っただけだ。
  ...それでも、目の前で死ぬのは嫌だ。

「(なん.....で.....。)」

  吸血鬼の特性からか、薔薇姫さんは灰になって崩れて行く。それを泣きながら抱えようとするかやのひめさんを見て、夢の中の“私”と“彼”と重なる。

「っ.....!」

  “私”とかやのひめさんの違う所は、“私”は狂気に堕ち、彼女は悲しみに暮れた。その違い。



   ―――狂ってしまった方が、マシ。



  大事な人が目の前で死ぬ。...“私”なら“彼”。かやのひめさんなら薔薇姫さん。私なら...お兄ちゃん。きっと、実際に起きたら私も心が壊れてしまうと思う。だから、そう考えてしまう。



   ―――だからこそ、許せない。



  薔薇姫さんを殺して嗤っているアイツらが。そんな奴らに勝てなかった私に。薔薇姫さんを助けられなかった私に。

「(...狂気には身を委ねない。でも、今回は怒りに身を委ねさせてもらう。)」

  未だに嗤っている奴らを見るだけで、今にもキレたくなる。



「.....フザケナイデ....!」

  ...少し、狂気が出てきてた。落ち着かないと...。

「....邪魔!」

  傍にいた敵を思いっきり殴る。油断していたのか、直撃して吹っ飛んでいく。

「(....よし、大丈夫。思考は落ち着いている。)」

  気分はそこまで高揚していない。むしろ、怒りで氷のように冷たくなっている。

「なっ!?こいつ...!」

  一人が砲撃魔法を放ってくる。

「...(シルト)。」

〈“Schild(シルト)”〉

  それを、あっさりと防御魔法で防ぐ。...冷たくなった思考だからか、いつもよりも上手く術式が組み立てられる。

「はぁっ!」

「......。」

  砲撃魔法を放った奴が回り込んでデバイスで殴りかかってくる。それを、私は横目で見るだけで後は防御魔法で防ぐ。

「....吹き飛べ!」

「がぁあっ!?」

  ツェアシュテールングで空気を爆発させ、敵を吹き飛ばす。

「“ロートクーゲル”!」

  赤い魔力弾を放ち、トドメを刺す。...別に、殺しはしてない。ちゃんと非殺傷設定にしてある。

「...シャル、行けるよね?」

〈お嬢様なら、どこまででも。〉

  ありがたい程に大した忠誠心だ。なら、やろうか。

「行くよ...“フォーオブアカインド”!!」

  大きな魔法陣が展開され、私が四人に増える(・・・)。フランのスペルカードが基になっている魔法なんだろう。
  魔力が四分の一にまでごっそりと減るが、気にしない。

「“過去を刻む時計”!」

「“カゴメカゴメ”!」

「“クランベリートラップ”!」

  本体の私以外の“私”が、それぞれ魔法を放つ。その間に、私はお兄ちゃんの下へと行く。

「...お兄ちゃん、もし、私が止まらなくなったら、よろしくね。」

「.....分かった。」

  私の意を汲み取ってくれたのか、頷いてくれるお兄ちゃん。

  ...これで心置きなく斃せる...!

「“禁忌《レーヴァテイン》”...!」

  魔法だと大剣程度だけど、スペルカードのつもりでレーヴァテインを展開する。...まぁ、単なる神社の境内一帯程度を薙ぎ払える(・・・・・)ぐらい大きな大剣を創りだしやすくするための言葉なんだけどね。

「さぁ...簡単に、コワレないでね?」

  弾幕で翻弄されている奴らへと、レーヴァテインを振りかぶる。





「.....あれ?」

  レーヴァテインを振った時に気付いた。奴らの数が減っている。おかしい。

〈お嬢様。結界が書き換えられ始めています。〉

「結界が?」

  見てみると、奴らは次々と転移魔法で逃げており、結界が私達を閉じ込めるものじゃなくなっている感覚がした。

〈...書き換えから、解く方に変えました。〉

「...奴らが逃げた事に気付いたのかな。」

  既に、奴らは全員逃げてしまった。弾幕に晒されている奴に転移魔法を使う暇はなかったはず。なら、バックに誰かが居たって事かな。

「みすみす逃した...!」

〈お嬢様...。〉

  分身した私達が魔力に戻って私に還ってくる。

「...ち..さいよ...!待ちなさいよ!返してよ!!」

  かやのひめさんが泣き叫ぶようにそう言う。

「薔薇姫を!私の友人を、返しなさいよっ!!」

「かやのひめさん....。」

「っ......!!」

  お兄ちゃんが心配するようにかやのひめさんの名を呼ぶ。
  ...私は、結局奴らを逃してしまった事が、悔しくて、悔しくて、ただ怒りに震える事しかできなかった...。





       =優輝side=



「くそ.....。」

  結界が解かれる。それと同時に、僕はその場に座り込む。
  頭が痛い。体も痛い。...でも、それよりも、奴らを逃した事が嫌だった。

「終わった....の?」

「くぅ.....。」

  神咲さんも座り込んでいる。久遠は...子狐に戻っていた。

「ぐすっ....ひっぐ.....。」

  かやのひめさんは、未だに薔薇姫さんが存在していた場所で泣いていた。
  ...誰も、彼女に話しかけない。そんな余裕もないし、何より、友人が目の前で死体すら残さずに消えてしまった事になった彼女に、声を掛ける事なんてできない。

「....リヒト...。」

「....シャル...。」

  僕と、僕と同じように怒りに震えていた緋雪が、それぞれのデバイスに声を掛ける。

〈...魔力波長は既に記憶済みです。〉

〈...いかがなさいましょうか?〉

  リヒトが僕に、シャルは緋雪にそれぞれ返事する。

「...一種の、復讐だよ。あいつらを何としてでも見つけ出して、然るべき償いをさせなきゃ。」

「それまでに、私達は強くなっておく。」

  どの道、奴らはかやのひめさんを狙ってきたんだ。また、現れるだろう。
  ...その時、絶対に捕まえてやる...!





「....優輝君、緋雪ちゃん....!?」

  唐突に、名前を呼ばれる。

「...司、さん....?」

  名前を呼んできたのは、司さんだった。見れば、バリアジャケットを纏っている。

「次元犯罪者が現れたから来たんだけど....これは...。」

  この場にいる人達を見渡しながら呟く司さん。

「...その犯罪者に、襲われたんだ。」

「っ、やっぱり....。」

  申し訳なさそうな顔をする司さん。...別に、司さんはなにも悪くない。責任を感じているだろうけど、どの道あいつらの所為には変わりない。

「えっと、時空管理局です。話を、聞かせてもらえますか?」

「あ...それ言うの忘れてた....。」

  金髪のツインテール...フェイト・テスタロッサもいたようで、僕らにそう言ってくる。

「...分かりました。」

「でもお兄ちゃん、他の人達は...。」

  神咲さんと久遠は大丈夫だろう。でも、かやのひめさんは....。

「...彼女に、なにがあったの?」

「...目の前で、大切な友人を殺されたんだ。」

  聞いてきた司さんに、簡潔に伝える。
  ...未だに、かやのひめさんは薔薇姫さんが持っていた折れたレイピアを握り締めている。

「...あの....。」

「...なによ。」

  テスタロッサさんが話しかけるも、何も受け付けたくないような声で返事を返す。

「...事情を聞きたいので、ついてきてもらえますか?」

「.....分かったわよ....。」

  心ここに在らずといった様子でついて行くかやのひめさん。

「...じゃあ、優輝君達もついてきてくれる?」

「分かった。」

「じょ、状況が上手く呑み込めないのだけど...。」

  僕と緋雪は大丈夫だけど、神咲さんは今日魔法に関わったばかりだからまだまだ戸惑っているみたいだ。

「えっと...さっきの戦いに関する事で、ちょっと事情聴取する感じです。それと、魔法は公にできないので、その事に関する事でも話があります。」

「なるほど...うん、わかった。」

  とりあえず、ついて行く事にしたみたいだ。

「では、転移しますね。」

  司さんとテスタロッサさんの転移魔法で、僕らはその場から転移した。





「ふわぁー....。」

  間の抜けた声を出しながら、辺りを見回す神咲さん。

「次元航行艦アースラという船です。...まぁ、地球からしたらSFですよね。」

「私、あまりSFには興味ないけど、それでも実際に見ると凄いなぁ...。」

  神咲さんの言い分は分かる。確かに圧巻されるな。

「........。」

  そんな会話の中でも、暗い雰囲気のかやのひめさん。

「(彼女にとって、司さん達は遅すぎた助け...か。)」

  間に合わなかった。その一言で片付いてしまうが、かやのひめさんにとっては致命的だった。目の前で親しい人が殺されるのは、誰だって堪えられない。

「(...あれ?そう言えば、管理局として司さんは来た。それとテスタロッサさんも。...だとしたら、もしかして...。)」

  ふと、気が付く。二人がいるのなら、転生者である織崎もこの艦に乗っている可能性がある。多分、嘱託魔導師になっているだろうし、この艦に乗っていてもおかしくはない。
  もしそうなら、かやのひめさんや神咲さんが魅了に掛かってしまう気が...。

「『司さん、司さん。』」

「『...?どうしたの?優輝君。』」

「『この前、すずかちゃんやアリサちゃんが魅了に掛からなくなるようにした魔法、使える?』」

「『魔法?...使えるけど...あ、そう言う事か。』」

  察しがいいのか、すぐ理解してくれた司さん。

「フェイトちゃん、ちょっと、先に行って艦長に報告しておいてくれる?」

「え?あの、別にいいですけど、どうして...?」

「ちょっと、心のケアが必要だからね...。同じ場所にいた人たちと一緒に、少し落ち着かせたいんだ。」

「あ....そう、ですね。では、先に行ってます。」

  適当に理由を考えて、テスタロッサさんを引き離す司さん。

「...あれ?フェイトちゃんも一緒の方が、魅了を解除できたんじゃ...。」

「いや、魔力が足りないよ。ナイス判断だったよ司さん。」

  未だに僕の魔力は足りない。あれからBランク程の魔力になったけど、最低でも発動にAAAランク分の魔力が必要なのだから、足りなさすぎる。
  しかも、魔力が多いほど効果が強くなるのだから、リヒト曰くAAAランク程の魔力の持ち主になると、SSランク以上の魔力が必要なようだ。...多すぎない?

「えーっと...こっちの部屋がいいかな?」

「結界は僕に任せて。リヒトとなら、余程じゃない限り、ばれないから。」

  司さんについて行って、一つの部屋に入る。

「あの...なにをするの?」

「...えっと...ちょっとした、加護を付ける、的な?」

「加護....?」

  まぁ、よくわからないだろうなぁ...。

「適当に腰かけておいてください。私が勝手にしますので。」

「は、はぁ...?」

  そう言って司さんは、以前のすずかちゃんとアリサちゃんの時のように祈りの体勢になる。

(そら)に祈りを捧げる巫女の願いを叶えたまえ...。〉

「汝らの御心を護りし加護を...。」

〈天駆ける願い、顕現せよ。“ Wish come true(ウィッシュ・カム・トゥルー)”〉

  聖女のような姿になり、神咲さん達が暖かい光に包まれる。

「.....これで、大丈夫です。」

「くぅ....ポカポカする...。」

「これが...加護?」

  神咲さんと久遠がそんな感想を漏らす。

「ぁ......。」

  かやのひめさんも、声を漏らした。

「....ねえ。」

「ん、なに?」

  かやのひめさんがいきなり僕に話しかけてくる。

「ちょっと、私と契約してくれる?」

「契約....?」

  さっきまでの暗い雰囲気がなくなってるのにも驚いたけど、契約というのも気になる。

「...この中でまともに霊力を持っているのは、貴方と彼女だけ。でも、彼女は既に妖狐がいるから、必然的に貴方と契約する事になるのよ。」

  ...緋雪と司さんは持ってないんだな。霊力。で、神咲さんは久遠がいるからダメだと。...神咲さんは久遠と契約的な事してなさそうなんだけどな...。

「でも、契約って、どうすれば....。」

「....ちょっと待って、何か、筆...書くものない?」

「書くもの?えっと....。」

  あ、今手持ちに何もないや。

「えっと、ペンなら持ってるけど...。」

  司さんがペンを持っていたらしく、差し出す。

「...床に描く事になるわね...。」

  紙も必要なのか...。...あ、そうだ。

創造開始(シェプフング・アンファング)。」

  魔法で適当に画用紙を投影する。一応、三人程乗れるくらいの大きさにしたけど...。

「あ、ありがと。...少し時間かかるから、ちょっと待ってて。」

  そう言って何かを書き始めるかやのひめさん。

「ここが確かこうで...あ、こうだったわね。」

「これは....五行の陣...?」

  五芒星のように描かれていくソレは、所謂魔法陣の陰陽版みたいな物らしい。神咲さんも見た事があるようだ。...僕はマンガとかでしか見た事ないけど。

「今は霊力不足だから簡易的なものしかできないけど...これでよし...ね。」

  しばらくすると、書き終わったのか、かやのひめさんが立ち上がる。

「貴方、霊力は扱え...ないわよね。」

「魔力ならできるけど...霊力はちょっと...。」

  扱った事がないし、霊力を渡せたのは無意識だったからね。

「...私から契約を持ちかける事で強制的に霊力を覚醒させるわ。心の準備はいい?」

「え、あ、うん...。」

  心の準備って...。...まぁ、覚悟はできた。

「陰陽の力を持ちし者よ...汝、我と契約を結ばん...。」

「.....。」

  五行の陣に立ち、かやのひめさんは言葉を紡ぐ。
  すると、かやのひめさんは淡い水色のような光を放ち始める。

「っ....?....これが...霊力?」

  体から魔力とは違う力が溢れてくる。

「そうよ。それが霊力。...量は“あの子”に遠く及ばないけど、純度は引けを取らない...いえ、同等ね...。」

「へぇ~....。」

  純度は高いんだな...。“あの子”って前の主の事か?

「後は契約を.....。」

「っとと...あ、繋がった。」

  霊力が少し二割程持って行かれる感覚がした後、かやのひめさんと何かが繋がった。霊力を譲渡した時にできたパスとは違う、契約らしい繋がりができた。

「...契約時に二割、後は一割分私に供給する感じでしばらくはいいわ。」

「これで契約完了...なのか。」

  これが霊力...ちょっと、興味があるな。

「あ、それと....。」

  かやのひめさんの胸元から浮き出すように、人型の紙が出てくる。

「私の型紙よ。」

「型紙?」

「そうよ。私は厳密には草祖草野姫本人ではなく、その分霊の一人みたいなものよ。...でなければ、神そのものを従える事になるからね...。これがあれば、少し離れていても呼び出せるし、私がどうなっているか分かるわ。」

「なるほど...。」

  漫画とかの陰陽師で言う式神の本体って所か?

「回復にはまだ時間がかかるけど、これで私もかつての力が取り戻せるわ。」

「そうなんだ。」

  それにしても、どうしていきなりこんな話を持ちかけたのだろう?

「...あの、さっきまで落ち込んでいたけど、大丈夫なの...?」

  緋雪も心配してかそう言って聞いてみる。

「...ええ。彼女の術のおかげか、暗い気持ちがなくなってるわ。少なくとも、後ろ向きな考えにはなりにくくなってる。..と言っても、悲しみが消えた訳じゃないわ。」

  司さんの魔法のおかげで立ち直れているみたいだ。さすがだな。司さん。

「それに、立ち直れたおかげで、今は悲しみよりもあいつらに報いを受けさせてやりたい気持ちの方が大きいわ。だから、貴方に契約を持ちかけたの。」

「なるほど....。」

  かやのひめさんの言う事はよくわかる。...むしろ、復讐と言ってないだけ優しいとも言えるぐらいだな。

「貴女も、ありがとう。」

「あ、うん...助けになれたのなら、私としても嬉しいよ。」

「そう...。もう、大丈夫よ。案内してくれるかしら?」

  既に立ち直ったかやのひめさんからは、しっかりとした決意が見られた。

「分かったよ。じゃあ、案内するね。」

「式姫...型紙かぁ...帰ったら、聞いてみようかな...?」

  司さんの案内について行く際、神咲さんがそんな事を呟いている。...退魔士として、どことなく気になるのかな?





「...これは...。」

「なんというか.....。」

「くぅ.....。」

「壁の材質とかから、違和感がありまくりね...。」

「日本を少し勘違いした外国人って感じ?」

  司さんの案内で艦長の部屋に案内され、その艦長の部屋を見た途端、僕を含めた様々な感想が呟かれた。

「あはは...初見じゃ、そう思うよね...。」

「...薔薇姫でもこんなのはしないわよ...。」

  司さんも苦笑い。どうやら、初見じゃそう思ってしまうものらしい。

「まぁ、日本の“和”って、日本のような文化がない限り、理解しづらいしな....。」

「...君達は、結構はっきり言うんだな...。僕も同感だが...。」

  あ、僕らが入る前から人がいるの忘れてた。声の方に目を向けると、黒い服に身を包んだ僕らぐらいの少年と、青い上着と白いズボンという服装の緑髪の女性がいた。

「...誰か日本の文化について詳しい人に教えてもらおうかしら...。」

「母s...艦長、僕も調べてみた事があるんですけど、再現するにはまず、部屋の造りとかから変えないと意味ありませんよ...。」

「.....そうね。」

  あれ...?結構、重要な話し合いになるはずなのに、グダグダ...?
  ....あ、僕らのせいか。

「...んん、とりあえず、楽に座っていいわ。」

「あ、はい。」

  楽に、と言われても、かやのひめさんと神咲さんは正座なんだな...。

「...先に自己紹介しましょう。私はこの艦の艦長を務めています、リンディ・ハラオウンです。」

「管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。」

  リンディさんとクロノさんだな。...一応、原作で知ってるけどね。

「あ、神咲那美と言います。こっちは久遠。」

「志導優輝です。司さんのクラスメイトでもあります。...で、妹の..。」

「志導緋雪です。」

「...かやのひめと言うわ。」

  僕らも自己紹介をし、話へと入る。

「まずは...私達の事情にあなた達を巻き込んで申し訳ありません。」

「事情...と言うのは、魔法の事ですよね?」

  僕が聞き返す。まぁ、それ以外に心当たりがないからね。

「はい。魔法について説明はいりますか?」

「...リンカーコアと呼ばれる器官から生成されるのが魔力で、それを行使する事で魔法が使える。細かい事を行う場合は大抵デバイスと呼ばれる道具を用い、地球にはその文化はない。...と、これぐらいですか?まぁ、大体ファンタジー物の魔法と変わりませんね。科学寄りなだけで。」

  僕がいきなり代わりに説明した事に驚くリンディさんとクロノさん。

「君は...知っていたのか?」

「リヒトに...僕が使っているデバイスに教えてもらいました。」

「...デバイスも持っているのか...。」

  あれ?司さんから何も聞いてないのかな?

「...そんな事より、奴らの事を聞かせてもらえないかしら?」

「..それもそうですね。」

  かやのひめさんがそう割込んで、本題へと入る。

「...彼らは“カタストロフ”と呼ばれる、次元犯罪者のグループです。」

「次元...犯罪者?」

「はい。次元を隔てた先に、いくつもの世界があり、その次元を超えた先でも犯罪を犯す者の事をそう呼んでいます。」

  神咲さんの疑問の声に、リンディさんが答える。

「...“カタストロフ”は、以前から私達も追いかけていたんですが、つい先日、とあるロストロギアを狙われた際に交戦し、そのロストロギアは地球へと流れ着きました。」

「...ちなみに、ロストロギアとは通称“失われた技術”...簡単に言えば、行き過ぎた技術によって作られた危険物って所だな。」

「そんなものが...地球に?」

  色々と説明を省いているな...。まぁ、細かく説明しすぎると、理解が追い付かなくなるから、ちょうどいいんだけどさ。

「ロストロギアの名称は“フュージョンシード”...効果はまだ不明です。」

「発掘したのを運搬中に襲われましたからね...。」

  ...かやのひめさんの話と合わせると、勾玉と融合したのがそのフュージョンシードか...?

「“カタストロフ”はそんなロストロギアを追いかけ、地球へと向かい、昨日魔力反応があったため、私達も地球へと来ました。そして今日、“カタストロフ”と戦っていたあなた達と出会った...と、言う訳です。」

「昨日...?魔力....?」

  かやのひめさんを気づいているのか、疑問の声が漏れている。

「なお、昨日魔力反応があった場所には、戦闘の形跡とこれが...。」

  リンディさんが取り出したのは、折れた刀身。刃はついているものの、明らかに刺突系の武器のようだけど...。

「それは...!」

「...なにか、心当たりが?」

「....それは、薔薇姫の....。」

  かやのひめさんも、今まで持っていた折れたレイピアの持ち手の方を取り出す。

「ぴったり...やっぱり、あいつの...。」

「...薔薇姫さん...。」

  かやのひめさんを逃がすために、戦ってたんだな...。

「あの、その薔薇姫と言うのは...?」

「...私の、友人よ。..もう、消えちゃったけどね....。」

  その一言で、リンディさんは理解する。

「っ...すみません、軽率に聞いてしまって...。」

「..いいわ。悲しみは消えてないけど、平静は保てるもの。」

  そうは言うかやのひめさんだが、やっぱりどこか辛そうだ。

「...先に話しておきましょう。僕らが、今日どうなっていたか。」

  本来なら先にこっちを説明するべきだからね。奴らの事は一度後回しだ。









   ―――...平穏から遠のくは嫌だけど、こればっかりは解決したいからね...!







 
 

 
後書き
長くなるので今回はここまでです。

ロートクーゲル…赤と弾丸のドイツ語を繋げただけ。ミッド式のように応用は利かないが、速度と貫通性には優れている。複数よりも、連射の方が効率がいい。

かやのひめさんの精神がいきなり回復したのは、祈りの加護による副次効果です。7話の時よりも効果は上がっているので、軽い鬱状態などを治せるようになっています。ただ、やはり悲しみが消えていないため、ツンデレな言動はなくなっています。
それと当然、契約での詠唱はテキトーです。それっぽい言葉を並べただけです。 
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