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逆襲のアムロ

作者:norakuro2015
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15話 トリントンの憂鬱 UC0083 3.5

 
前書き
実はスターダストメモリー大好きです。


 

 
* トリントン基地校外 UC0083.3.5 10:10

このころの技術革新は一旦小康状態を見せていた。
段々製造ラインの複雑化に伴って、頭で分かっていても製造用作業機械の開発が間に合わなかった。
そのため、この時期になっても主力MSはジム・カスタムであった。
勿論年々完成度を高めていったため、従来のジム・カスタムより性能が増していた。

そして、連邦の第2次ビンソン計画を伴って次世代機に着手し始めていた。
アナハイムのテム・レイ主任研究員を始めとする大手各社の技術者たちがインダストリアル1で会合し、その草案をまとめ上げ各社の開発競争が始まっていた。

宇宙世紀83年3月5日、トリントン基地郊外にて・・・

4機のジム・カスタムとホバートラックが岩場で新兵の訓練を重ねていた。
教官として、サウス・バニング大尉を筆頭にディック・アレン中尉が新兵であるコウ・ウラキ少尉とチャック・キース少尉らを搭乗機を交代しながら実地訓練に入っていた。

今日に限って、ガンダムのパイロットのアムロ大尉がバニングからの依頼でコウたちを鍛えていた。

コウがライフルを構えアムロを照準に捉えたが、すぐ物陰に消え、気が付くと背後より蹴り飛ばされていた。

「遅いぞ少尉!敵がロストしたら今いた位置からは必ず離れろ。目視できる距離ならばこうやって接近されるぞ」

衝撃で目を回したコウはすぐさま立ち上がり、アムロの呼びかけに応じた。

「す、すみません大尉」

「よし!次キース少尉。来い!」

キースは「え・・・」と戸惑いながらもアムロへ突っ込んでいった。
その様子を望遠鏡にてホバートラックに乗っているバニングが観察してため息を付いていた。

「・・・全く、仕方ない。戦場に出たことないヒヨっこどもだからな。年下のアムロ君にこてんぱんにノされるのもまあ教訓だろう」

その言葉を聞いた操縦席に居たアレンも同感ですと言った。

「大尉と私は戦場を経験していますからねえ。彼らには酷ですね」

「ああ、しかし来るべき時が来たらそんなことも言っていられない。彼らも平和のために戦士になると決め志願してきたのだからな」

そう言ってまたバニングは訓練の様子を覗き込んでいた。


*  トリントン基地内地下 同日 11:00


基地司令であるブレックス准将、ブライト中佐、そしてアルビオン艦長エイパー・シナプス大佐は基地の最下層にあるある貯蔵施設の扉の前に立っていた。

ブレックスがその扉を暗証番号認証で開けながら2人に語り掛けていた。

「ふう・・・政府からの指示とは言え、この扉を開けるのは気が滅入る」

ブライトもシナプスも同感だった。シナプスはブレックスに話しかけた。

「司令には何かとご迷惑お掛けしまして申し訳ない。何故この封印を解くのか、この私でも理解に苦しみます」

ブライトもこの扉の奥にある嫌悪の対象物に対し、悪態を付いていた。

「全くだ。政府は一体何故このようなものをモビルスーツに搭載など考え付くのか・・・」

その問いにブレックスは予想をした。

「う~ん。あのソーラレイのためなんだろう。高機動、高性能のモビルスーツによる一撃破壊を狙っての事だろう。艦艇並の砲座・耐久性ならいざ知らず。通常のモビルスーツでは砲撃の威力に耐え切れない。それに耐えうる人道的な兵器を開発したかった」

「人道的ですと!兵器に人道も何もありはしませんよ」

ブライトはオデッサの苦汁を飲んだ経験上、政府の見解に怒り、疑問を呈していた。
ブレックスとシナプスは首を横に振り、ブライトを宥めた。

「ブライトくん。私もシナプス大佐も反対なんだ。誰もがそう思っている。しかし我々は政府の決定に従わねばならない。それに逆らって軍事判断をすることは軍閥だよ」

「ブレックス准将の言が正しい。ブライト君、今は時を待て。こんな戦争状態など誰も歓迎しない。いつか機会は巡ってくる」

ブライトは2人そう言われ、熱くなっていた自分に反省した。

「・・・大変失礼致しました。未熟さを恥じております」

シナプスはブライトの肩に手を置いて、笑顔で語り掛けた。

「いやいや、君みたいな直情的な感覚は大事にしなさい。そうすれば、いざという時にその正義の下で動けるようになる。私みたいな頭でっかちには到底無理なことさ」

「はあ」

すると、ブレックスの扉の認証が終わり、扉がゆっくり開き始めた。


* アルビオン艦内 格納庫 同日 12:00

モーラ・バシット整備主任が全てのメカニックにお昼休憩を言い渡した。

「よーしお前ら。後は午後だ。お昼食べてこーい」

メカニック等は試作機から離れ、それぞれが基地の食堂へぞろぞろと移動していった。
それとすれ違いにニナ・パープルトンがやって来た。それを見たモーラがニナに声を掛けた。

「おー、ニナ。どうよ整備班のこの頑張りは」

モーラは手持ちのタブレットをニナに渡し、ニナはニコリとした。

「うん、頑張っているようじゃない。これなら予定より早くロールアウトできるわ。この基地での重力下実験に挑み、その成果を持って私は新たな量産機のプロジェクトに参加できる」

ニナはとても向上心旺盛だった。この試作新型機を踏み台にしてニナは若くして技術者のトップを狙っていた。まずは目の前のこのプロジェクトの達成が最重要課題だった。

ニナの目の前には2機のガンダムがあった。

RX-78GP01ゼフィランサス。
ムーバブルフレームの伸縮性設計とガンダリウム合金の結晶で現時点での汎用性の最上位を極めた仕様となっている。

RX-78GP02Aサイサリス。
こちらも仕様が大体代わり映えはないが、ある武装によりそれに耐えうる耐久性に富んでいた。元々ジオンの技術の流れが色濃いと聞く。

ニナ自身も本社命令で2機のテストを命じられたが、ニナが実際携わっていたのはGP01の方が主だった。ついでにと言う本社重役の頼みということから、評価を得て恩を売る機会と見据え、一緒に世話をしていた。

ポーラも汎用性あるGP01に付いてはお気に入りだったが、もう1機についてはいぶかし気だった。
そのことについてニナに話し掛けた。

「ねえ、ニナ。このGP02さ、ちょっとアレだよな・・・」

ニナも複雑そうな面持ちで答えた。

「うん・・・南極条約にひっかかりそうな素材ね。アナハイムは戦争当時から死の商人と囁かれていたけど、あながち嘘ではないね。これを見る限り」

「う~ん。メカニックもこれを触る奴らも半信半疑で整備しているよ。全くモチベーションの維持が大変だよ。お偉方の考えることって・・・ブツブツ」

「まあ、連邦が発注した製品だから。そんなに気に留めなくてもよいんじゃない?」

ニナはモーラの背中を叩き、モーラは少しむせ返った。

「・・・うっ、アンタ見かけによらず力があるね~。うちの整備やらないかい?」

「フフフ・・・やらな~い」

ニナは笑い、来た場所をスキップして戻っていった。それをモーラは頭をかきながら、一緒にランチするためにその後を追っていった。


* とある宙域にて・・・ リリー・マルレーン艦内 ???


シロッコはジオンのシーマ・ガラハウ中佐と極秘に会談をしていた。
シーマはシロッコに渡された資料を目に通していた。シロッコはシーマにその資料の補足事項を述べた。

「貴公らが計画している事案に提督はすでに気づいている。それをより効果的にやってもらいたいことが主旨となる」

シーマはシロッコの話を聞いていた。

「近日中にあのソーラレイは消すことができる。すると貴公らの立場も危ういだろう。貴公のことを見込んでのことだ。かの毒ガスでの虐殺を貴方らだけのスタントプレイと押し付けたジオン。そのジオンにも貴公らは煙たがられている。そこで私らは貴公らを連邦に迎えさせて、そのジオンの悪事を日の下に晒したい」

シーマは口元を歪ませていた。シロッコは話を続けた。

「近々、トリントン基地にテスト配備される機体の情報を提供しよう。それを是非デラーズにでも流して欲しい。あんな代物なくとも我々は対処できる術を近いうちに完成させることができる。だが、そのためには正規軍が邪魔で仕方がない。あの第2次ビンソン計画・・・今私らが阻止するにしても表立ってできないからな」

「・・・そうかい。話はわかった。あんたたちのお仲間になる条件はデラーズのお手伝いとビンソン計画を潰すことだね。グチャグチャにしてやるのは大好物さ」

シーマは形相を変え、シロッコの前で不満、鬱憤を話し始めた。

「・・・あの上官のせいで私らの人生が変わっちまった・・・。同じ志の下であんな扱いを受けるなど同士と思えるわけがない!」

シロッコはニヤッと笑みを浮かべた。そしてシーマに語り掛けた。

「・・・辛い思いをしてきたんだね。これからの新時代では貴公のような不幸な体験をしてきたものこそ報われるべきなのだ」

その言葉を聞いたシーマは顔が和らぎ、シロッコを見つめていた。

「そうだ。その顔だ。もう苦しむ必要などない。苦しめた者たちへ贖罪する機会を与え、我々と新時代を歩むのだ」

「シロッコ・・・」

この時からシーマはシロッコへ陶酔することになった。


* トリントン基地 食堂内 12:30


コウとキースは対面でランチを取っていた。
キースはアルビオンの中にある新型試作機の話を持ち出してきた。

「なあコウ。あの艦に積んでいる新型試験機の話だけどさ・・・」

「ああ、耳にしているよ。なんかアレが次世代機ベースなんだとか」

「そうそう。やっぱりモビルスーツ乗りとしてさあ、興味惹かれるよな」

コウは黙ってキースの話を聞いていた。コウはメカ好きもあって志願していた。が、積極性に欠いていた。キースはそのノリの悪さにコウの一番興味のある話を持ち掛けた。

「実はさ・・・その試験機のテストパイロットはこの基地から出すという専らの噂らしい」

コウのスプーンが止まった。キースはやっと聞く気になったかと思い、話し続けた。

「だからさコウ。一足先にその試験機拝みに行ってもいいんじゃない?幸い明日は非番だし、そうすれば実感が湧いてさ、試験のモチベーションも上がるってもんよ」

「・・・そうだな。興味がないと言えばウソだからな。明日覗いてみよう」

その会話をコウたちの丁度後ろの席でニナが聞いていた。ニナはトレイを持ち片づける際、コウたちのテーブルを通過する時に言った。

「貴方たちもあの試験機のテストパイロットを目指すのね。精々頑張りなさい。あの試験機はアナハイムの未来が掛かった代物よ。その重責に貴方たちが担えるかどうか疑問だけど・・・」

その言い回しに若さ故にコウが噛みついた。

「・・・自分らも志願して国の為に兵士になりました。重責という面では民間とは訳が違います」

しかし、ニナはそれに反論した。

「ふう・・・あの1機は貴方たちの1生涯の給与より遥かに凌ぐ程の費用が投じられているの。それにこの先貴方たちの生命を守るものになるの。貴方がそれに上手くいかない場合は貴方のせいで費用がおじゃん、そして沢山の兵士の死傷率が上がるわ。これからの死亡していく兵士たちは皆貴方を恨むの」

コウはニナにそう論破され、下を向いてグッと堪えた。そこにアムロがやって来て仲裁に入った。

「ニナさん、その辺にしておいてくれないかい」

「レイ大尉・・・レイ主任研究員からお話しは伺っております。この3年間のグレイファントム隊の中軸にて地球のジオン残党を大方降伏させ、かつ両軍被害を抑えたという手腕、見事だと」

「そうか親父は主任研究員になったか。どうだ親父は」

「はい、このプロジェクトもレイ博士の力があって、それを私もご指導頂きまして・・・博士は若いひとたちが才能活かして、平和のため、未来のために存分に力を振るってほしいと常々言っておりました」

「フフフ・・・親父もついに聖人君子を気取るようになってきたか」

アムロは笑った。そして1コ上のコウたちに話し掛けた。

「まあ、ニナさんの言うことは一理ある。コウ少尉、キース少尉も目先でなく戦争の在り方など考えることも多少は大切だ。ひとつ不安を取り除いてあげよう。この度の試験機のパイロットはオレは志願しない」

コウ、キースとも目前の強大なライバルが消えたことにホッとした。

「まあ、それでもオレも興味はある。明日一緒に見学しに行こうか?」

コウ、キースは「喜んでご一緒します」と二つ返事で了承した。
ニナはその姿を見て、少し大人げなかったことを恥じ、コウ、キースに謝罪した。

「ごめんなさい・・・仕事で少しストレスあったみたいね。貴方たちのことを侮辱する訳じゃなかったの」

その殊勝さにコウとキースは面を喰らった。コウがそれについて返した。

「いえ・・・オレたちも考えが浅かったことについて指摘して頂き勉強になりました」

「フフフ、そう言っていただけると助かるわ、それじゃあ」

ニナは食器を片して、再び職場へ戻っていった。
その一部始終をモーラもすぐ後ろで見ていてコウ、キース、アムロに声を掛けた。

「失礼いたします。私はモーラ・バシット主任整備員です。新型試験機の面倒を見ております」

3人ともその大柄な女性を見上げ、少し驚いた。その反応にモーラはいつも通りだなと感じた。

「・・・すみません、無駄に大きくて」

アムロはモーラの申し訳そうな反応をフォローした。

「いや、こちらこそ失礼な反応だった。謝罪する」

「いやいや、大尉に謝られる謂れはないですよ。ニナもね、自分の能力、出世欲にかられていてちょっと視野が狭まっているからなあ。色々足らないところあると思いますが、許してやってくださいな」

そうモーラが言うと、キースがコウへニナについて感想を述べた。

「しかしコウ、ニナさん美人だなあ。今度食事にでも誘ってみようかな」

「何言っているんだキース。彼女は試験機の試験官の一人になるのかもしれないんだぞ。そんなことしたら減点になるかも・・・」

「だからさ・・・今のうちにちょっと探りを入れてみるんだよ」

その会話にモーラが反応した。

「へえ~、キース少尉とやら。それは聞き捨てならないな。そんなに女日照りかい?ならニナの代わりにあたしが相手してやるよ」

キースの背後にモーラが立ち、キースは「げっ」と言った。その反応にモーラは怒った。

「なんだい。その反応は!こんなレディを捕まえておいて、その反応は流石に頂けないなあ。レイ大尉、コウ少尉。コレを少し借りてよいかな?」

アムロとコウは含み笑いしながら「どうぞお気に召すままに・・・」と言い、キースは捧げられた。
キースは「そんな~殺生な~」と叫びながら、モーラに担がれて食堂から消えていった。

笑いを収めたアムロとコウの下に今度はバニングがやって来た。

「賑やかなのは良いことだ。数年前の戦場では有り得ないことだった」

アムロはバニングの言うことに賛同した。

「そうですね。大尉もアメリカだったそうで・・・」

「ああ、オレの部隊はアメリカのガルマ部隊を相手に四苦八苦していた。しかし、今そのガルマは議員となって、今や我々の上司だ。全く変な世の中だよ」

「ああ。これもシャアの努力の賜物だな」

「あの赤い彗星か・・・敵の時は脅威そのものだが味方だとここまで頼りになるとはね」

「このトリントン基地もガルマの力が多少及んでいるため、ブライトを始めとする我らが他の連邦らの粛正対象から難を逃れている訳だからね」

「そうだな。かのダグラス中将も軟禁状態だと聞く。テネス大佐はここと同じ辺境での指導員をしていると。全く派閥というものはなんでしょうねえ」

バニングとアムロはそう愚痴をこぼし合っていた。コウも食べ終わり、報告書を自室で取りまとめるため2人に「先に失礼致します」と言い、食堂を後にした。


* トリントン基地 入口 同日 17:00

もうすぐ日没ということでアルビオンに乗艦しているアナハイム従業員のニック・オービルが「夕日を見に行く」という都合で外出許可を得ていた。

入口の守衛がオービルに許可証の提示を求めた。

「ニック・オービル。確かに・・・よし通っていいぞ。あまり遅くならないようにな。この辺の夕日は格別だから楽しんできてな」

「ああ、有難う」

そうしてオービルは郊外に車を走らせた。
オービルはある待ち合わせ場所に来ていた。そこにはアナベル・ガトーとその部下たちがオービルを待っていた。

ガトーがオービルに基地の図面とその他詳細を求め、オービルはそれらを渡した。
その情報を見て、ガトーは満足していた。

「よろしい。これでデラーズ閣下の偉業に一歩近づいたことだ。礼を言う」

「いえ、私もアナハイムも連邦も色々複雑ですからねえ。たまたま今回は貴方がたを手助けするということです」

「・・・そうか。政治とは複雑だな。ギレン総帥がその辺はコントロールしていると思われるから問題ないと思われるが・・・」

ガトーは一兵士としてただ任務を遂行するだけを考えることにした。


* トリントン基地内 アルビオン艦内格納庫 3.6 18:00


アムロらがその日全ての業務を終えたのが17時になってしまったため、コウとキースは18時にアルビオン前で待ち合わせた。その場にはニナとモーラも一緒にいた。

モーラはキースのことを気に入り、キースはそれを煙たがっていた。その光景をニナは面白く見ていてコウは半笑いしていた。

18時になるとアムロがやって来た。アムロは皆が既に待っていたことに詫びた。

「すまない。ブライトたちと会議が長引いて、待たせてしまった」

その言葉にコウは答えた。

「いえ、大尉。お気になさらずに」

キースも同じく答えた。

「そうですとも大尉。我々のような下士官など待つことも仕事ですから」

その言い方にモーラがからかった。

「なんだいキース。上官にはおべっか使って、このレデイには配慮がないぞ」

キースはげんなりした。その姿に3人が笑った。
そしてニナは格納庫へ案内した。

「それではみなさんこちらになります」

実はその時アムロらとは違う来訪客が先に格納庫へ来ていた。連邦の大尉クラスの制服を着込んでGP02を見上げていた。その大尉に整備員が丁寧に対応していた。

「・・・という仕様でして、この乗機許可を得ていらっしゃるのですね。分かりました。あちらから搭乗してみてください」

「わかった。ありがとう」

その大尉がGP02に乗り込む寸前でニナたちが格納庫に来た。ニナは乗機許可のことは知らなかったので整備班に叫んだ。

「誰なの!ガンダムの乗機許可なんて下りていないよ!」

整備員は驚いた。ニナは乗り込むひとに向かって叫んだ。

「そこのひと!すぐ降りなさい!」

その叫びにその大尉は反応した。どこかで聞き覚えがあったからだ。

「・・・ニナ・パープルトン・・・まさかな」

そう口ずさみGP02に搭乗した。
このGP02も全天周モニター仕様だった。そのことにまず素晴らしいと答えた。
そしてモビルスーツを稼働させた。

ニナは傍の管制室へ行き、試験機に搭乗したひとに語り掛けた。

「今すぐその機体から降りなさい。今ならまだ間に合います」

その問いかけにその人物はその場を震撼させる答えで返した。

「私はジオン公国デラーズ・フリート所属アナベル・ガトーだ。我らの大願成就のため、このガンダムは頂いていく」

その返答にニナは呆然とした。

「ガトー・・・アナベル・ガトー・・・なんで・・・貴方がそこに・・・」

アムロたちはガトーの声を聴き即座に対応した。

「コウ、キース、基地の格納庫へ急ぐ。使えるジムで奴を追跡するぞ」

そういう間にガトーはアルビオンのハッチを手動で開き、外へ出ていった。
それと同時にアルビオンの船体が揺れた。砲撃による基地への攻撃だった。

「っく・・・全ては用意周到なわけだな・・・」

アムロはそう言うと、コウはすぐ目に入ったガンダムに向かって走った。そして整備班に聞いた。

「これもすぐ動かせる状態なんですか?」

聞かれた整備員はとっさの質問に素直に答えた。

「ああ・・・問題ない」

そう聞いたコウはエレベーターを使いGP01に近づいた。
その光景を見たニナはハッと我に返り、コウに試験機使用と止めるように言った。

「それはダメ。貴方が使える代物じゃない。貴方はまだ訓練の身でしょう」

その発言にアムロはニナに反論した。

「ニナさん。ことは有事だ。コウ少尉に乗らせて2号機を牽制させるんだ。責任はオレが負う。その間オレらがジムを取って来て、ガトーを取り押さえる」

ニナは戦闘のベテランであるアムロに従うことが良いと思い、コウに搭乗許可を出した。
コウはGP01に乗り込み、こちらも全天周モニターであることに感嘆し、起動させた。

コウはガンダムの中で追跡する敵の名前を改めて思い出し、身震いをした。

「アナベル・ガトー・・・ソロモンの悪夢。彼の前に立った敵は成すすべなく撃ち滅ぼされたジオンの伝説のエース。そんなのを相手にできるのか・・・」

しかし悩む余裕を戦場では与えてくれなかった。矢継ぎ早に飛んでくる管制からの通信を聞いてはコウはガンダムを動かしていた。

そして、コウとガトーが基地内にて初めて対峙した。


 
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