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子供でも

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第三章

「君はこうした本を買えないよ」
「どうしてなの?」
「だってどっちの本もね」
 店員は子供に穏やかに話す。
「君が買える年齢の本じゃないから」
「だから僕は買えないんだ」
「そうだよ」
 こう子供に言うのだった。
「だから大人になってからまた来てね」
「うん、じゃあ」
 こうしてだった、子供はその本を買えずに。
 二人のところに戻ってだ、頭を下げてから言った。
「御免なさい、買えなかったよ」
「ああ、それじゃあな」
「仕方ない」
「君が悪いんじゃないからな」
「俺達が無理に頼んだものだ」
「だから気にするな」
「君は悪くない」 
 こう言ってだ、暁も未到も。
 それぞれの鞄に手を入れてだった、暁は飴玉を未到はキャラメルを出してだった。子供に差し出して言った。
「これはお礼だ」
「俺達の頼みを聞いてくれたな」
「けれど買えなかったよ」
「買おうとしたからな」
「それで充分だ」
 二人は微笑んで彼に言った、そしてだった。
 子供はその飴玉とキャラメルを貰ってから店を出た、その彼を見送ってからだった。
 暁はやれやれといった顔でだ、未到に言った。
「いいと思ったのにな」
「俺もだ」
 未到もそうした顔で暁に応えた。
「流石に店員さんがああ言うなんてな」
「それじゃあ仕方ないな」
「ここは一旦家に帰って着替えてだ」
「他の店に行って買うか」
「そうするか、自分で買うべきか」
「自分で読むものだしな」
 そうした本をというのだ。
「それじゃあ一旦家に買えるか」
「そうするとしよう」
 二人はこう話してだ、そしてだった。
 それぞれ一旦大人しく家に帰って着替えてだった。待ち合わせをして学校から離れた本屋に行った。そこで目当ての本を買ってだった。
 こっそりと店を出てからだ、暁は未到に言った。
「じゃあまた家に帰ってな」
「読むとしよう」
 こう話してだった、二人は再び家に帰るのだった。結局自分達でいささか手間をかけてそのうえで買うことになった。


子供でも   完


                           2015・8・22 
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