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幸せゲット

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第六章

「それは」
「そうなの」
「嫌な出来事だったけれどな」
「まあとにかくよね」
「ああ、色々とな」
 今日は、というのだ。
「あってな、それでな」
「もうな」
 それこそというのだった。
「帰って風呂入って飯食って寝ようってな」
「思ってるの」
「そうだよ」
「そうなのね、じゃあね」
「それじゃあ?」
「お祓いしてもらったら?」
 二人で一緒に並んで歩きながらだ、愛衣は信彦に提案した。
「ここは」
「お祓いか」
「そう、神社に行ってね」
「お祓いはお金かかるだろ」
「行ってそれでお願いするだけで違うわよ」
 それで、というのがだ。愛衣の提案だった。
「だから行く?一緒に」
「一緒にかよ」
「言いだしっぺは私だしね」
 それで、というのだ。
「私も一緒に行くわ」
「いいのかよ」
「だから言ったのは私だから」
 穏やかだがしっかりとした表情と言葉でだ、愛衣は信彦に言うのだった。
「だからね」
「そうか、じゃあな」
「神社に行きましょう」
 こうしてだった、信彦は愛衣に案内されてだった。二人で神社に参って賽銭を入れてお願いをした。そこで破魔矢やお守りも買った。
 お祓いはしなかったがそうしたものを買ってだ、信彦は愛衣に言った。
「これでか」
「随分違うわよ」
「不幸は去るか」
「何かもうドツボみたいな状況だったのね」
「みたいじゃなくてそのままだったんだよ」 
 それこそとだ、信彦は愛衣に答えた。
「今日は朝からな」
「そうだったのね」
「嫌な出来事ばかり起こってな」
「それでさっきも」
「ああ、急に雨が降ってな」
 ゲリラ豪雨があったというのだ。
「外に出られなかってな」
「難儀な話ね」
「時間も潰したんだよ」
「そう、けれどね」
「神様にお願いしたしな」
「破魔矢とお守りも買ったから」
 だからだというのだ。
「これでね」
「大丈夫け」
「そう思うわ、だからね」
 それで、と言うのだった。
「今日は二人で何処か行かない?」
「おい、そう言うのかよ」
「ええ、そうしない?」
「もう不幸が起きないからか」
「若し起こってもフォローするから、私が」
「いいのかよ」
「だから言いだしっぺだし。それにね」
 ここでだ、愛衣は少し頬を赤くさせてだ。信彦にこう言った。
「いい機会だから」
「いい機会?」
「ここから先は言わないわよ」
 その赤くなった顔での言葉だ。
「とにかく、いいわね」
「そういうことか」
「そうよ、前からね」
「そんなことはな」
 信彦もだ、愛衣の言いたいことがわかってだった。その顔を赤くさせてそのうえで言った。
「もっとな」
「いいじゃない、それは」
「そうか、じゃあな」
「今日は一緒にね」
「遊ぶか」
「それでこれからもよ」
「ああ、帰って日常パートも味気ないしな」
 こうも言ってだ、信彦は愛衣と二人でだった。
 この日は雨上がりの街を一緒に歩いた、そうして。
 駅前で別れる時にだ、愛衣が言って来た。
「またね」
「ああ、またな」
「これからも何かあったら私に言ってね」
「それでだよな」
「何かなくても一緒にいようね」
「それじゃあな」 
 笑顔で二人で話してこの日は別れた、そしてだった。
 信彦はこの日はもう不幸な出来事はなく快適に過ごせた。それに何よりもだった。
 彼は愛衣とのことを思い出して笑顔になってだ、にこにことして。家でもその顔を家族に言われたが笑って返すだけだった。
 そしてだ、この日のことを思い出してベッドの中で言った。
「色々あったけれどいい日だったな」
 こう言って寝た、そうして心地よく寝るのだった。


幸せゲット   完


                       2015・8・15 
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