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空席

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第二章

「尾張に行くぞ」
「あちらにですか」
「この岐阜から」
「そこに行かれますか」
「そうするぞ」
 こう彼等に言うのだった。
「これからな」
「また急ですな」
「これより尾張とは」
「岐阜からすぐですが」
「そちらに行かれますか」
「そうする、ついて参れ」
 こう家臣達に言ってだった、馬を出させて彼等を連れてだった。
 彼は岐阜から尾張に向かった、すると。
 蒲生はすぐにある寺に入った、彼と同行する家臣達はその寺の前に来た時にだ。顔を見合わせてそのうえで話をした。
「ここは」
「寺、ですか」
「この寺にですか」
「参られるのですか」
「今からな」
 蒲生はこう彼等に答えた。
「そうするぞ」
「ええと、この寺は」
「殿に何かご縁が」
「ご縁があるのでしょうか」
「そうした場所でしょうか」
「うむ、少しな」
 蒲生は家臣達にこう答えた。
「これよりな」
「では、です」
「我等もですな」
「この寺に参るのですな」
「これから」
「そうするのじゃ、それでよいな」
「はい」
 家臣達は蒲生に微笑んで答えた。
「殿のお言葉とあらば」
「我等も喜んで参ります」
「是非共」
 蒲生は若いが家臣達への気遣いが出来ている者だ、それで彼等も主である彼の言葉に笑顔で頷いたのである。
 それでだ、蒲生は彼等と共にだった。
 その寺に入った、そして参ってだった。
 ここでだ、彼等は寺の中を見て回って話した。
「整った寺ですな」
「あまり大きくはありませんが」
「よく掃除されていて」
「しかも新しい」
「この寺は一体」
「どういった寺でしょうか」
「ある方に縁がある寺でな」
 家臣達にだ、蒲生はこう答えた。
「その方が建てられた寺なのじゃ」
「その方とは」
「一体どういった方でしょうか」
「この寺を建てられた方は」
「かなりの方でしょうが」
「この国のことを考えてみるのじゃ」
 いぶかしむ彼等にだ、蒲生はここでこう言った。
「尾張のことをな」
「尾張、ですか」
「この国でこれだけの寺を建てられるとなると」
「やはり」
「そうじゃ、殿が建てられたのじゃ」
 織田信長、彼がというのだ。
「この寺はな」
「ですか、あの方がですか」
「建てられた寺ですか」
「ここは、ですか」
「そうした寺ですか」
「しかし」 
 家臣の一人がこうしたことを言った。 
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