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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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逃走を選択肢に入れる?

 何も聞こえなかった。
 少なくとも僕の耳には何も“音”が聞こえなくなった。
 この世界に来て先ほども会話をしているので、異世界に来たから“音”が聞こえなくなるというわけではない。
 
 そうなってくるとこの眼の前の怪物は、“音”が聞こえない状態で動いているということである。
 大きさは僕の三倍くらいの高さがある。
 けれどもさもさとした白く長い毛で覆われているので大きさはそこまで高くはないのかもしれない。

 その白い毛の中、爛々と輝く赤い瞳が7つ輝いている。
 これで複眼だったらやだなと僕は思う。 
 しかも左右に金色の触手のようなものが二本ほど生えており、そのうちの一本では白く光る蝶のようなものを捕まえている。

 “白光蝶”というものがアレなのだろう。
 そこでその金色の触手を振り回し、その“白光蝶”を毛の中に放り込んでいるのを僕は目撃した。
 確かこういった“白光蝶”を餌にしているような何かがいた気がしたけれどそこで、吸血鬼なエイダが顔を真っ青にさせながら、

「“白毛玉”が何でここに」
「“白毛玉”?」
「あ、あいつは風を操る強い力を持つ魔物なの! 確かにこれは“白光蝶”を食べるのよ。でもそれよりも嫌なのが……“人間”や“魔族”を誤認して食べることがあるのよね」
「……食べる?」
「そう、食べる」

 それを聞いた僕は目の前のアレを見た。
 どうやらまだ僕達に気づいていないよううなきがしないでもない。

「音を立てずにこっそり移動しよう。そうすれば気づかれないかも」

 その僕の提案に他の全員が頷き、元来た道を戻ろうとした所で、風をきる音がした。

ヒュンッ

 何かが僕の直ぐ側を通過した。
 目で捉えられたそれは金色の何かのように見えて振り向くと、あの“白毛玉”が僕達に先ほどよりも近づいている。
 そしてそれの持つ金色の細長いひげのようなものは、意外に長いものであるらしい。

 “白毛玉”から10メートル以上は離れているのに届いているのだから。
 けれど“音”は聞こえない。
 それを見ながら僕は、

「“音”が聞こえないけれど、この触手が僕達のそばに来た時は風をきる音が聞こえたから……音が聞こえなくなる範囲はそんなに広くないのかも」
「なるほど」

 レイアが頷いて、そこで杖を振るった。
 同時に杖の先端が輝き、氷の壁ができる。

「とりあえずは時間稼ぎを。それでどうしましょうか? このまま逃げますか?」

 そこではっとしたようにエイダが、

「こ、ここで逃げる訳にはいかないわ。アレくらい倒せるようにならないと、お姉さまたちにまた笑われてしまう」
「いいじゃん、いつものエイダだね~、で終わりだと思うよ?」
「リリア、どうして私がずっと気にしていることを……」

 と言ったリリアとエイダの会話を聞きながら僕はレイアに、

「とりあえずは戦うことになったけれど、“音”が聞こえない、という点と風魔法という点で、あの怪物は周囲の空気を操る力がある、と見たほうがいいのかな。真空中は音が伝わらないはずだし」
「……そうですね。その範囲は、意外に小さいのかも」
「あの怪物の表面積にその空気のない場所の厚み、移動を考えるとそこまで大きくはないとして、そちらに多くの魔力を割いていると考えたほうがいいのかな? それとももっと大きな魔力を持っているのかな? 僕みたいに」
「いえ、そこまで巨大な力は持っていなかったはずです。でもそうですね、よく触手で攻撃するというのは書物で読みましたね」
「じゃあそちらに力を割いていると。だったらそういった力を使っている間に手を打ったほうがよさそうかな。ちょうどいい魔法がさっき読んだもので……」

 そこまでしか僕は言えなかった。何故って、

「いいわ、私の力を見せてやるわ!」

 そう言ってエイダがが突然飛び出したのだった。

 
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