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タパ

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第五章

「もうな」
「やっぱりそうね」
「そうだよ、けれどな」
「お父さんを見たら」
「ああ、俺が亭主って言ったらな」 
 笑っての言葉だ。
「その時はなんだよ」
「皆逃げていってるわね」
「だから御前もな」
「そうしたお客さんがいたら」
「俺がいるからな」
 その巨漢の父がだ。
「安心しろ、実際にそうしたお客さんは俺を見たら皆逃げてるだろ」
「確かにね」
「タパは上がそんなのだからな」
 胸を隠しているだけだ、それで声をかける男もいるのだ。
「言い寄る奴も多いさ」
「それでもなのね」
「俺がいる、だからな」
「声をかけてきても」
「ああ、逃げるんだよ」
「じゃあ私もお婿さんは」
「俺より強い奴にしろよ」
「そんな人いるかしら」 
 父のその言葉にだ、娘は首を傾げさせて返した。
「果たして」
「いるだろ、それはな」
「じゃあそうした人をなのね」
「将来は旦那さんにしろ」
「このタパを着て?」
「タパjはお客さんも悪い虫も引き寄せるがな」
 マケは明るく笑って娘に応えた。
「旦那さんも引き寄せるからな」
「そのことをなのね」
「わかっておいてくれよ」
「わかったわ、じゃあ明日もね」
「頼むな」
「デザインは好きだけれど着心地はまだ気に入らないけれど」
「そこは我慢しろ」
 着心地はというのだ。
「その服のお陰でうちのお店は助かってるからな」
「そういうことね」
「ああ、じゃあもうそろそろな」
 マケは笑顔のままキラに言った。
「晩飯だ」
「そうね、じゃあ今日もね」
「皆で食うぞ」
 家族揃ってというのだ。
「いいな」
「それじゃあね」
「御飯出来たわよ」
 絶好のタイミングでだ、家の中からテリの声がしてきた。
「お店閉めたわよね」
「ええ、今ね」
 キラが母に応えた。
「終わったわ」
「じゃあ皆で食べましょう」
「待って、お部屋に戻って着替えるから」
 キラは母にまずはこう返した。
「それが終わってから行くわ」
「早くしなさいよ」
「母さん、俺はすぐに行くぞ」
 洋服の父はこう言った。
「じゃあキラが着替えて戻って来たらな」
「晩御飯よ」
「そうしような」
 笑ってこう話してだ、そしてだった。
 キラは洋服に戻って一家揃っての夕食に入った。脱いだタパは大事にタンスの中に閉まった。そうしてから両親のところに戻って楽しい一時を過ごした。


タパ   完


                    2015・11・28 
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