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ドリトル先生の水族館

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第十一幕その五

「生きものの形も他の世界と違うからね」
「だからなんだ」
「不気味って言う人もいるんだ」
「不思議じゃなくて」
「不気味だって」
「そうした人もいるよ」
 実際にとです、先生は皆にお話します。
「深海はそうした世界だってね」
「言われてみればね」
「そうかも知れないわね」
「実際に光は差し込まないし」
「生きものの種類も数もどうしても少なくて」
「その生きものの形も独特で」
「行き来も難しいから」
 皆も先生のお話を聞いて言うのでした。
「不気味って言う人がいても」
「それでもね」
「当然って言えば当然かしら」
「人の感じ方はそれぞれだしね」
「僕にとっては不思議で神秘的な世界だけれどね」 
 先生は深海にそうしたものを感じています、そしてそれはお顔にも出ています。
「違う人もいるよ」
「どうしても」
「そうなんだね」
「感じ方は人それぞれ」
「そういうことだね」
「そういうことだね、じゃあ行こう」
 先生はその穏やかな目を今はきらきらとさせて言いました。
「その深海の中でも一番不思議で神秘的な彼のところに」
「ダイオウグソクムシさんんのところに」
「今から」
 皆も応えてでした、そのうえで。 
 皆は先生と一緒にダイオウグソクムシさんのところに来ました、グソクムシさんは自分のコーナーのところにいますが。
 動かないです、皆は白くてダンゴムシを大きくした様なその姿のままじっとしています。そのグソクムシさんを見てです。
 動物の皆は一様にです、グソクムシさんを見つつ先生に尋ねました。
「これがあの」
「ダイオウグソクムシさんだね」
「何年も食べないっていう」
「それでこの水族館でも何年も食べていない」
「今日も何も食べていない」
「彼がだね」
「そうだよ」
 その通りとです、先生は皆に答えました。
「彼がね」
「ダイオウグソクムシさんだね」
「そうだよ、じゃあ今から彼の診察をはじめるよ」 
 皆にこうも言ってでした、そうして。
 先生はです、グソクムシさんに尋ねました。
「いいかな」
「ドリトル先生か」
 グソクムシさんは低く落ち着いた渋い声で先生に応えました。
「そうだな」
「うん、そうだよ」
「診察で来たか」
「そうなんだ、診ていいかな」
「好きにしろ」
 これがグソクムシさんの返事でした。
「先生のな」
「それじゃあね」
「しかしだ」
「しかし?」
「何故俺の言葉を知っている」 
 グソクムシさんは先生に尋ねました、自分から。
「誰に聞いた」
「アンコウさんのご主人からだよ」
「それでか」
「言葉を知っていたら駄目だったかな」
「いい」
 別に、と答えたグソクムシさんでした。 
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