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ポケットモンスター 急がば回れ

作者:おうーん
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23 グリーン対ブルー

グリーン「あんたら、ジムリーダーだろ」

ナツメ「そうよ」

エリカ「シルフカンパニー会長の秘書も務めさせて頂いております」

グリーン「ジムリーダーもロケット団の傘下ってわけか。
ポケモン協会も堕ちたもんだな」

屋上には強風が吹き荒れる。
カントーで最も高い建造物の頂点から、背の高いお月見山や岩山はもちろん、タマムシの街やクチバの港も一望できる。

グリーン「お前はゲンガーで来るんだろ? 俺はフーディンでいくぜ!」

ブルー「1対1ね。いいわよ、かかってきなさい!」

ナツメ「いちおうジムリーダー立ち合いなのでルール確認を……」

ブルー「ルールなんて要らない!」

グリーン「同感だ!」

2人はモンスターボールを構える。

グリーン「いけっ、フーディン!」

ブルー「いきなさい、ゲンガー!」

ナツメとエリカはただ見ている。

ナツメ「勝手に始めちゃったわね」

エリカ「まあ、よいではないですか」

ヘリポートをフィールドに見立ててフーディンとゲンガーは睨み合う。
特殊能力の高い者同士、相手の出方をうかがおうとしている。
緊迫した空気の中、突然ゲンガーはにやりと笑って両手の指を突き出す。

グリーン「挑発してやがるのか?
フーディン、サイコキネシス!」

得意の超能力を発揮する。
見えない力は標的を捉えると、あっという間に動きを封じる。
そしてそれは結晶が砕けるように幾つもの欠片に分かれて散ってしまう。

グリーン「どうなってるんだ? ゲンガーがバラバラになっちまった!」

それは脱皮したさなぎのようなものだった。
バラバラになったそれと、無傷でピンピンしたゲンガーがいる。

ブルー「ゲンガー、シャドーボール!」

フーディンの背後から黒い球が飛んでくる。
間一髪でかわすが、弧を描いて戻ってくる。

ブルー「もう1発、シャドーボール!」

前後からシャドーボールが迫ってくる。
フーディンは挟み撃ちにあう。

グリーン「上だ!」

フーディンはジャンプでかわす。
2つのシャドーボールはぶつかり合って消滅する。

ブルー「ゲンガー、シャドーパンチ!」

フーディンの跳んだ先にゲンガーが待ち受けている。
しかし気づいた時には遅かった。
シャドーパンチを真っ向から受ける。

グリーン「フーディン!」

真っ逆さまに落ちるフーディンはグリーンの声を頼りに着地点を見定め、受け身をとって地面との衝突を避ける。

グリーン「どうなってやがる。
サイコキネシスをくらったはずなのに……」

少し離れた場所でナツメとエリカが戦況を見守っている。

ナツメ「テクスチャーで毒タイプを剥がしたわけね」

エリカ「ちゃんと指を振るで出した技ですからルール上有効ですわね。
まあ、このバトルにルールは関係ありませんが」

ナツメ「そう都合よく出るかしら」

吹っ飛ばされたことで間合いができる。

グリーン「フーディン、自己再生!」

傷が回復していく。

ブルー「へぇ、便利な技ね」

グリーン「指を振るのほうが便利だろ。
フーディン、サイコキネシス!」

しかし効果は無い。

グリーン「エスパー技が効かねえのか?」

ゲンガーはにやにや笑っている。

グリーン「ムカつく薄ら笑いだぜ。
フーディン、身代わり!」

分身を作り出す。

ブルー「ゲンガー、シャドーボール!」

グリーン「避けろ!」

超能力で分身を操る。
しかしシャドーボールは本体を追ってくる。
やむを得ず分身を盾にする。
分身はあっけなく消えてしまった。

グリーン「くそっ、幽霊相手じゃカウンターも使えねえ」

ゲンガーは相変わらずにやにや笑っている。
更に舌を出して変な顔をしてくる。

グリーン「あのヤロー、挑発してやがる!
フーディン、サイコキネシスだ! 今度はいけるかもしんねー!」

フーディンは手に持っているスプーンでグリーンの頭を殴る。

ブルー「えっ?」

ナツメ「えっ?」

エリカ「あらあら」

グリーン「いてーな! 何すんだよ!
攻撃するならあいつにしろよ!」

フーディンはグリーンをじっと睨みつける。
すると頭のこぶから痛みではなく、別の何かが伝わってくる。

グリーン「これは……テレパシーか?」

風景が屋上のヘリポートから原っぱへと変わっていく。
目の前にはもう1人のグリーンと赤い髪の少年がいる。
もう1人のグリーンはただ黙って立っている。



シルバー「ショックで動けないか!
弱い奴はとっとと失せろ!」

高笑いするシルバーを、もう1人のグリーンは無言で見つめる。

そうか、とグリーンは気づく。
トキワシティでシルバーとバトルをした時の光景だ。

グリーン「まだ気づかないのか?」

シルバー「何のことだ?」

グリーン「そうか……ならいい」

シルバー「苦し紛れの言い訳でもするのか?」

グリーン「ケーシィ、カウンターだ!」

超能力で作りだした鋭利な物体がスクリュー回転しながら、サイドンに突き刺さる。
それはサイドンのそれの2倍はありそうな角だった。
鎧のような胸板にぽっかり穴が開く。
そして土煙を立てながら倒れる。

ヒカル「サイドン、戦闘不能! ケーシィの勝ち!」

グリーン「ケーシィ、急所は外してやったか?」

ケーシィは無表情だ。
ただふわふわ浮いたり沈んだりしている。

シルバー「なぜだ! なぜそいつが生きている!?」

グリーン「消えたのは身代わりだ」

シルバー「何だと?」

グリーン「お前が最初に攻撃を仕掛けたとき、あいつはテレポートでかわしながら身代わりを作っていたのさ。
そして身代わりをわかりやすい所に置いて、本物はサイドンのでかい図体の足元に隠れた。
サイドンは首が回らなくて見えなかった。お前は熱くなってて見えなかった。
角ドリルをくらったのは身代わりのほうってわけだ」



過去の自分の言葉を聞いて目が覚める。

グリーン「フーディン、テレパシーを解け!」

ゲンガーのシャドーボールが来る。
かわすには余裕がない。

グリーン「間に合わない……リフレクターだ!」

半透明の壁を張ってなんとか致命傷は避ける。

ブルー「なにボーッとしてんのよ。
おまけに自分のポケモンに殴られてるし、あんたやる気あんの?」

グリーン「うるせー!
お前、キレると手に負えねーんだよ! ロケット団が板についてきたか?」

ブルー「うるさい! あんたまだサカキさんのこと悪く言うの!?」

グリーンは呆れたような、悟ったような笑みを浮かべる。

グリーン「相変わらずロケット団のボスを擁護か……まあいい。
ありがとなフーディン、おかげで目が覚めたぜ。
熱くなって周りが見えなくなってたのを教えてくれたんだよな!」

ブルー「これで終わりにしてやるわ!
ゲンガー、シャドーボール!」

ゲンガーはシャドーボールを放つ。

グリーン「バカのひとつ覚えみたいにシャドーボールか。
フーディン、アレをやるぜ!」

ナツメ「アレ?」

エリカ「何でしょうかね」

シャドーボールを充分な距離まで引きつける。
そしてフーディンは身代わりを作ると同時にテレポートで消える。
シャドーボールは分身に直撃して黒い影を覆うようにして消える。

ブルー「アハハハハ! 跡形も無く消してやったわよ!」

グリーン「お前、おっかねえ笑い方するなあ。
悪タイプのゲンガーにイメージピッタリだぜ」

ブルー「へぇ、よく見破ったわね。最初のテクスチャーで悪タイプになったって。
もう遅いけどね!」

グリーン「挑発の悪タイプだって気づかなくて、ただ単に毒タイプが剥がれただけって決めつけてたぜ。
ゴーストタイプと悪タイプってなんか似てるもんな」

ブルー「勘違いして決めつけてたのがあんたの敗因よ!
トレーナーとしてまだまだね!」

グリーン「そうだな、お前の言う通りだ。
でも勝負の行方を決めつけるのはまだ早いんじゃねーか?」

ブルー「苦し紛れの言い訳でもするつもり?」

グリーン「フーディン、カウンター!」

ゲンガーの背後に周り込んだフーディンは分身が記憶したシャドーボールを2倍にして返す。
反応が遅れ、ゲンガーはそれをもろにくらう。

ブルー「ゲンガー、大丈夫!?」

黒い影にのまれたゲンガーはよろよろとしながら立っている。

グリーン「ちっ……耐えたか。
フーディン、今のうちに自己再生だ!」

ブルー「ゲンガー、こっちも自己再生よ!」

グリーン「なんだと!?」

フーディンとゲンガーは同じ技で回復していく。

ブルー「物真似させてもらったわ!」

エリカ「ブルーさんのゲンガーは物真似を覚えてらっしゃったのですわね。
わたくしもその技でずいぶん苦戦を強いられましたわ」

グリーン「これでふりだしに戻ったって訳か」

ブルー「手の内を見せあったところで、第2ラウンドいくわよ!」 
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