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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第1章:平穏にさよなら
  第15話「草の神」

 
前書き
今回はリリなのに一切関係ないキャラ(作者のお気に入り)が出ます。
...一応、それが優輝がさらに魔法に関わるきっかけになります。 

 


       =三人称side=





「はぁっ....!はぁっ....!はぁっ....!」

  暗がりの森の中、二つの影が駆けて行く。

「っ....追手は!?」

「まだ追いかけてくるよ!」

「もう!なんなのよあいつら!」

  駆けているのは、二人の少女。どうやら、何者かから逃げているようだ。

「多分、“ソレ”が原因だよ!」

「ああもう!なんで“一つ”になるのよ!」

  少女が自身の首に掛けている紫色の勾玉の首飾りに対してそう言う。

「はぁっ、はぁっ、...くっ...。」

「だ、大丈夫!?“かやちゃん”!」

  走っている少女が息苦しそうに胸を抑える。

「だ、大丈夫よ...あ、あんたなんかに心配される程じゃ、ないから...。」

  強がってるようだが、誰がどう見ても大丈夫じゃない。それはもう一人の少女も分かっているようだ。

「...かつての力が、使えればいいんだけどね...。」

「贅沢言ってられないわよ...。主を失くした私達が弱体化するなんて、分かっていた事よ。」

  そう言いつつ、駆けるのをやめない。やめれば、すぐにでも追手に追いつかれるからだ。

     ビシッ!

「っ!あいつら、撃って来たわよ!」

「あたしが弾くよ!あれぐらいなら、まだ!」

  弾丸状の何かが着弾し、片方の少女がレイピアを構えつつもう一人を庇うように走る。

「あれ、霊力じゃないわよね。一体...。」

「多分、魔力じゃないかな。あたしの故郷に同じような力があったから。」

「魔力...か。」

  庇われる少女は、走りながらも弱ってしまった自身の体を見る。

「(私にもっと力が残っていれば...。)」

  弱体化した事を悔やむ。だけど、それでは何も事態は好転しない。

「力は残ってなくても、これぐらいなら....!」

  背負っていた弓を持ち、同じく背負っていた筒に入っている木製の矢を番える。

「(位置は分からない。だけど、さっきの着弾場所の角度からするに...。)」

  急いで相手の居場所を計算する少女。ちょうどその時、もう一人の少女が飛んできた弾丸を弾き、居場所が判明する。

「そこね!」

     ヒュン!

  風切り音と共に、矢が暗がりの森に消えて行く。弓が得意な彼女にとって、今の矢は確実に当たったと確信していたが...。

     ―――キィイン...!

「っ...!?なに、あれ...!?」

「障壁!?厄介な....!」

  その矢は、障壁に阻まれた。その光を見た二人は動揺してしまう。

「っ、危ない!」

「きゃっ!?」

  咄嗟に、弾丸を弾いていた少女がもう一人を庇うように倒れこむ。

  そして、そのすぐ上を光の奔流が通り過ぎた。

「なに!?なんなの!?」

「っ...ビームは、彼女の特権なのに...厄介すぎるよ!」

  色こそ違うものの、二人のかつての仲間が使っていた技に似た攻撃を見て、二人は戦慄する。“このままでは逃げきれない”...と。

「....行って。」

「なにを....。」

  レイピアを持った少女が走るのをやめ、そう言う。

「あたしが、足止めするから...かやちゃんは先に行って。」

「っ...!なに言ってるの!?そんな事したら、あんたは...!」

  足止め...つまり、犠牲になってでももう一人を逃がそうとするつもりだ。だけど、当然もう一人はそれを認められない。

「...あたしなら、ある程度魔力の知識もあるし、力も残ってる。」

「それでも...!」

「それに、狙われてるのはその勾玉なんだよ?かやちゃんは、逃げて。」

「っ.....!」

  分かってる。どちらかが犠牲にならなければ逃げる事もできない事など。だからこそ、少女は納得したくなかった。

「...お願い。絶対に、死なないで...!」

  いつもは、素直に言えず、拒絶のような言葉を言ってしまう少女は、その時だけ、素直にそう言った。

「あはは、かやちゃんが素直になったの、初めてだね。」

「う、うるさいわね!私だって時と場所は弁えるわよ!」

  やっぱり素直になれない少女に、もう一人は笑顔になる。

「...うん!かやちゃんに応援されたなら、なんだってできるよ!」

「...なら、後は頼んだわよ...“薔薇姫(ばらひめ)”。」

  そう言って、少女は背を向け、再び走り出した。





「.....なーんて、強がってみたけど...。」

  残った少女は今まで見せた事のないような真剣な顔になり、森の奥を見つめる。

「...ここまでのピンチ、昔でもなかったなぁ...。」

  レイピアを構え、一つの油断もなく構える。

「...いい加減、出てきなよ。」

  少女は森の奥にいる“存在”に話しかける。

「魔法...それもあたしの知らない魔法を使う輩...か。」

  先程から使われていた魔法は、少女も知らない魔法だった。だからこそ、少女は隙の一つも見せることができない。

「...分かってるよ。目的はあの勾玉...でしょ?」

  森の奥から返ってきた返事に、そう答える少女。

「...ふぅん。勾玉と一つになった“アレ”さえ手に入れば他はどうでもいい...か。」

  森の奥を見つめる少女が目を細める。

「そんなの、当然させる訳ないでしょ?」

  “どうしても欲しいのなら”と少女は区切り、

「力を失ってなお、吸血鬼としての力を振う薔薇姫(あたし)を倒してからにしなよ!」

  赤い瞳を爛々と輝かせ、はっきりとそう告げる。

「古くから語り継がれてきた陰陽の力、見せてあげる!」

  そう言って、少女は森の奥にいる“敵”に向かって、駆けだした。







「(....誰か....。)」

  逃げ続ける少女は、足止めをしてくれる彼女を思い浮かべながら、祈る。

「(私を...ううん、あいつを、助けてあげて...!)」

  素直に言葉には出せなくても、少女は彼女の身を案じる。

「(力を失った私の代わりに....どうか....!)」

  森をついに抜け、拓けた場所に出る。

「.....神.....社......?」

  息も絶え絶えに辿り着いたそこは、そこまで大きくない神社だった。

「(お願い....誰か.....。)」

  いないのは分かっている。だけど、少女は昔仕えていた主の事を求めた。きっと、“あの子”なら真っ先に助けに来てくれるだろう...と。

「(....あはは....なに思ってるんだろう...私...。)」

  ふらふらと、体力にも限界を感じ、神社の縁側に倒れこむように乗る。

「....誰か...助けてよぉ.....!」

  今までにもたくさん危険な事はあった。だけど、今回ばかりは少女の精神はだいぶ追い詰められていた。
  衰弱しきった力。訳も分からずに襲ってくる何者か。そして、足止めのために犠牲になった数少なくなった(・・・・・・)友人の一人。
  その全てが少女の精神を蝕んでいた。弱気になるのも無理はない。

「(誰かぁ...お願い.....。)」

  体力を使い果たしたからか、縁側の板を涙で濡らしながら少女の意識は闇に沈んだ。











       =優輝side=



  ....はて、僕はなにをしているのだろう?

「お兄ちゃーん!待ってよー!」

  状況を確認しよう。今日は土曜日。時刻はまだ朝で、現在位置はあまり通る機会のない道。休みだから学校とかは問題ない。宿題も終わらせてある。
  ...いや、そこではなくて...。

「いきなりどこに行くのー!?」

  そう。今僕が向かっている場所。それは僕にもよくわからない(・・・・・・・・・・)

「いや、何か助けを求められた気がして...。」

「助けが?」

  感覚的というか、無意識というか...とにかくよく分からないが、助けを求める“意志”が感じられた。

「何か...導かれてる気がするんだよね...。」

「導かれてる?...なんか怪しい予感が...。」

  それは僕も理解している。だけど、なぜか向かわなくてはいけない気がした。





「...ここ?」

「多分...だけどね。」

  感覚だけで辿り着いた場所は“八束神社”。海鳴市でも有名な神社で、夏には祭りを開催したりもする。

「神社に導かれたって...なんだろう、神様関連?」

「...だとしても、行くしかないだろうね...。」

  石段を上り、境内に入る。

「....あれ...?」

  石段を登り切り、最初に見たのは...。

「あ、おはようございます。」

  セミロングの茶髪の巫女さんと、その傍らにいる子狐。そして、彼女に介抱されている明らかに弱った勾玉の首飾りを付けた狐だった。

「おはようございます。...あの、その狐は...。」

「朝、ここに来たら縁側に倒れていたの。一応、命の危険はなさそうだけど、目覚めなくて...。」

  反射的に、最近使えるようになった解析魔法を掛ける。

「(身体衰弱...生命を維持するための仮の姿?...霊力不足による気絶状態?)」

  どうやらただの狐じゃなさそうだ。...というか、霊力ってなに?

「(...でも、なんとなく、分かる。僕が導かれたのは、この狐だ。)」

  無意識に狐に近づく。そして、優しく狐に触れる。

「....“譲渡”。」

  狐が淡い青色の光に包まれる。突然の事に巫女さんも緋雪も...それとおそらく子狐も驚いているけど...僕自身、無意識だったから驚いている。

「(...なんで“霊力”持っててそれが渡せるの?)」

  これも以前に見たステータスのアビリティのせいだろうか?

「っ.....。」

「あ、起きるかな?」

  巫女さんが僕のやったことを聞こうとしたが、狐が目覚めそうになってそれを取りやめる。

「....っ!?」

「っと?」

  狐は目覚めた瞬間、辺りを見回して僕らを認識し、すぐさま縁側に置かれていた木製の弓と矢筒を器用に引っ掛けて持ち、僕らから距離を取る。

「....あのー、あの弓矢は?」

「えっ?あ、確か狐と一緒に縁側に置いてあったんだけど...。」

  ...つまり、あの狐の物か。

「......。」

  凄い敵意を抱いて僕らを見てくる。

「くぅー....?」

「あっ、久遠...!」

「っ......。」

  子狐の方が狐に近づいていく。狐の方はやはり警戒しているようだ。

「....くぅ、仲、間...?」

「えっ?」

「うん?」

  あれ?この子狐、喋らなかった?

「あ、ちょっ、久遠!人前で喋らないようにって....あ。」

「.....。」

  うん。この巫女さん、墓穴掘ったね。

〈『ちなみに元々タイミングを見計らって私達から教えるつもりでした。』〉

「『あ、気づいてたんだ。』」

  さすがリヒトとシャル。

「っ...(あやかし)!?まさか、こんな所で...!」

「おっ?」

「えっ....?」

  子狐が喋った事に驚き、いきなり少女の姿を取り臨戦態勢に入った元・狐。
  少女となったその容姿は、ふわっとした茶髪のストレート。肩の部分が紐で編んだだけで露出している水色の和服。それを、真ん中が赤色の青い帯で締めており、腰には大きな青いリボンがある。そして主張するかのようにある狐の耳と大きな尻尾というモノだった。首には狐の時にもあった紫色の勾玉の首飾りが掛けられている。白い足袋と草履を履いており、和風っぽさを彷彿させる。
  身長は150㎝ぐらいだろうか?...まぁ、何が言いたいかというと、緋雪や司さん達のように“美少女”だった。

  ....別に、やましい意味で言ってる訳じゃないからね?

「....狐の姿を取ってる事から妖狐辺り....いえ、まさか管狐?」

  矢をいつでも番えるように警戒しつつ、何か分析している少女。

「...そもそも、(あやかし)なら人間と一緒に居るのがおかしい...か。」

  “それに”と言いつつ、もう一度僕らを見る少女。

「...あなた達はあいつらの仲間でもなさそう...ね。」

  そう言って、ようやく弓を降ろして警戒を解く。

「...勘違いして悪かったわね。少し、聞きたい事があるわ。」

「....僕らも色々聞きたいから、いいよ。」

  魔力は感じられない。でも何かしらの“力”は感じられる。おそらくこれが“霊力”なのだろう。そして“あいつら”というワード。気絶していたのに関係あるのだろう。

「まず、私に霊力を分けてくれたのは、そこの貴女?」

「えっ?私は手当しただけで、霊力を渡したのは....。」

「僕だ。...と、言っても感覚だったから良く分からなかったけど。」

  なぜ霊力が渡せたのかも分からない。...なぜかできたって感じだし。

「.....確かに、貴方からは霊力が感じられるし、“繋がり”があるわね。」

「繋がり?」

「霊力を与えてる者と与えられてる者の間にある繋がりの事よ。他に呼び方がなかったからそう呼んでいるわ。」

  つまり、魔力で言うパスみたいなものか。

「とりあえず、名前を教えてくれないかな?僕は志導優輝。こっちは妹の緋雪。」

「...私は草祖草野姫(くさのおやかやのひめ)よ。...かやのひめと呼ばれてるわ。今はかやのひめの方が本名みたいなものだから、そっちで呼んで頂戴。」

  ...どことなくアリサちゃんに似た声と雰囲気だな...。

〈草祖草野姫....日本神話に登場する草の神ですね。〉

「「「か、神様!?」」」

〈暇だった時に色々と知識を蓄えていたのでその時に知りました。〉

  僕、緋雪、巫女さんが同時に驚く。...巫女さんの場合はリヒトが喋った事にも驚いていたけど。

「...それ、まさかだとは思うけど方位師の媒介道具じゃないでしょうね...?」

「方位師....?」

「あー、なんでもないわ。忘れて。」

  また知らない単語を...。霊力とかからイメージすると、どうも陰陽師を連想するけど、これは全然分からないな...。

「(...もう、いる訳ないのに、何言ってるのかしら。私...。)」

「あ、えっと...私は神咲那美(かんざきなみ)。それで、こっちの狐は久遠。」

「くぅ。」

  遅れて自己紹介する巫女さん。子狐も可愛らしく鳴く。

「...その子は管狐なの?それとも....。」

「えっと、一応久遠は妖狐...かな?」

「....?釈然としないけど、妖狐なのね?」

「....実は、元祟り狐だったり...。」

  その答えに驚愕の目で子狐を見るかやのひめさん。

「元....ね。なら別にいいわ。」

  もし元ではなかったらどうしたんだろうか...?
  ...それにしても、海鳴市って結構魔窟だよなぁ...。どうしてこう、摩訶不思議な事ばかり起きるのだろう....。

「....そろそろ私の事を話すべきね...。」

「「「.......。」」」

  かやのひめさんの言葉に、僕らは息をのんで聞く。





「―――...と言う訳よ。後はあなた達の知っている通りよ。」

  かやのひめさんの話を要約すると、こうだ。
  かやのひめさんは江戸時代の時まで栄えていた“陰陽師”の式姫と呼ばれる(よくある式神みたいなもの)者として存在しているらしい。ただ、江戸時代末期には陰陽師や陰陽師の敵となる(あやかし)はほとんどいなくなり、かやのひめさんを含めるほぼ全ての式姫が力をなくし、ほとんどが式姫になる前に居た“幽世(かくりよ)”に還ってしまったらしい。
  草の神故か、今まで生き残っていたかやのひめさんは、昨日、よくわからない結晶のような物を拾い、それが今首に掛けている勾玉と一つになってしまったとの事。さらにその夜にそれを狙って何者かが襲撃してきて、その足止めとしてその時一緒にいた“薔薇姫”という少女が残り、命からがらこの神社まで逃げてきたらしい。
  ...所々、ツンデレみたいなキャラが混じった事でかやのひめさんの性格が大体掴めた気がする...。

「...襲撃者と結晶...か。」

「お兄ちゃん、まさかだとは思うけど....。」

  緋雪も同じような事を考えているのか、同時に口に出す。

「「....まさか、魔法関連...?」」

  襲撃者=魔導師で、結晶=ロストロギア辺りだと妥当すぎる。

「魔法...あいつも言っていたけど、それが関係しているのね...?」

「確信はないけど...。」

「そうとしか考えられないというか...。」

  たて続きに色々と巻き込まれてるな。僕らは。

「魔法関連なら...僕らが協力するべきだな...。」

〈...あの、その事についてなんですが...。〉

  考えを巡らそうとした僕にリヒトが言ってくる。

〈...当事者のかやのひめ様はともかく、神咲那美様は魔法の事を知っていいのですか?〉

「....あっ。」

  そういえば、魔法って隠蔽するべき事なんだった...!

「えっと...つまり、退魔士と似たようなものなのかな?」

「退魔士って言うのはよく知りませんが...世間にばらしてはいけないというのならばそれで合っています。」

  そういえば、この子狐...久遠も喋ってたっけな。退魔士...なるほど。やっぱり海鳴市は人外魔境だな。ここまで色々な存在が集まるとは。

「...うん。わかった。こういうのは秘密にするべきだもんね。」

「分かってくれて助かります。」

  さて、問題はかやのひめさんの方だけど...。

「...リヒト、何か分かる?」

〈勾玉と融合しているモノは勾玉そのものに何かしらの力が憑いているのか、はたまたただ解析しづらいのかは分かりませんが...デバイスに近い反応としか分かりません。〉

〈私も同じ結果です。〉

  リヒトとシャルでも分からないのか...。

「...この勾玉には私の力というか...私の霊力が篭ってるから...。」

〈なるほど。それで解析ができなかったのですね。〉

  霊力と魔力だと互いに邪魔しあうみたいだな。...反発する訳じゃなさそうだけど。

「...私としては、この勾玉の事より、あいつを助けてほしいのだけど...。」

「...そうだね。ロストロギアにしろただのマジックアイテムにしろ、助けないといけないもんね。」

「でも、どこにいるのか...。」

  そう。どこにいるのかが分からないから、今の所受け身な行動しか取れないんだよね...。

「......ん?」

「どうしたの?お兄ちゃn...あれ?」

  何かの気配を感じた。緋雪も感じたみたいでキョロキョロと見回す。見れば久遠も動物特有の察知能力で感づいているみたいだ。

〈っ!来ます!結界です!〉

  辺りの雰囲気が変わる。...これは、閉じ込めるタイプの結界か!

「...力を失ったせいか、こんなにあからさまな術の行使にも気づけないなんて...。」

「魔法だから..かもしれないけどね。」

  かやのひめさんは動物そのものじゃないから久遠のように感づけなかっただけで、“魔法”として気づけたのは僕と緋雪だけだろう。

〈...封鎖結界...これは、逃げられませんね。〉

「なら、倒すしかない...か。」

  上空を見ると、いつの間に現れたのか、数人の人影があった。

「っ....!薔薇姫っ!」

「彼女が....?」

  複数ある人影の中に、一人だけ足を掴まれてぶらさがっていた。
  右のサイドポニーの銀髪で、内側がピンク色のボロボロの黒い外套を纏い、その外套を留めるように菫色のリボンを胸元に付けている。内に来ている服は女子高生の制服のような茜色のスカートと白いシャツで、菫色のリボンが巻かれた黒いショートブーツを履いていた。
  ....ただし、ボロボロになり、折れたレイピアを持って気絶していた。...いや、ほぼ死んだも同然だ。そこまでボロボロになっている。

「薔薇姫ぇっ!!」

  かやのひめさんの悲痛な叫びに、奴らはにやけながら彼女を投げ...





   ―――容赦なく魔力弾をぶつけた。



「っ....ぁ....!」

「あいつら....!!」

  魔力弾により吹き飛ばされた彼女は、ちょうど僕達の所に飛んでくる。かやのひめさんがそれをキャッチし、緋雪は奴らに対して怒る。

「落ち着け...。」

「でも....!」

  僕だって憤ってるのは変わりない。僕も奴らを睨むと、奴らはにやけながら、

「ほらほらどうしたぁ?感動の再会だぜ?」

「ま、犬死にしてるけどな!ぎゃはははは!」

  ...あいつら...!そんじょそこらの盗賊みたいな喋り方が余計癪に障る...!

「っ....!あんたたちねぇっ!!」

  怒りに任せ、かやのひめさんが何かしらの力(おそらく霊力)を込めた矢を奴らに向けて放つ。

「おっと、危ない。」

「っ....。」

  しかし、それは余裕を持った防御魔法で防がれる。

「ふはははは!無様だなぁ?必死に逃げて、友人サマを犠牲にしたのに、こんな所で追い詰められて、渾身の一撃も防がれたんだからなぁ!」

「っ...く....!!」

  バカにされてかやのひめさんは悔しさに俯く。

「なんなのよ...なんなのよアンタたちはぁっ!!」

  ボロボロになった薔薇姫さんを抱きしめながらかやのひめさんは叫ぶ。

     バシュッ!

「うをっと!?」

「お、お兄ちゃん!?」

  ゲラゲラ笑っていた一人に向けて、無言で魔力弾を放つ。

「...緋雪、他の三人を護ってて。」

「え、あの、お兄ちゃん...?」

  緋雪が僕を心配してか声を掛けてくるが、無視して前に出る。

「あー?なんだぁ?魔導師もいたのかよ?」

「......。」

  ...まだ、かやのひめさんとは会ったばかりで、よく知らない。薔薇姫さんもかやのひめさんから話に聞いただけだ。

「あ、貴方....?」

「..........。」

  相手は典型的な盗賊のような魔導師。...直感で分かったけど、こいつらは本当にありがちな犯罪グループかなにかだろう。

「......っ.....!」

  だけど、こうしてかやのひめさんの友人である薔薇姫さんが踏み躙られ、奴らは僕らを貶すように嗤い、かやのひめさんは薔薇姫さんが犠牲になった事...そしてなによりも自身が無力で何もできない事を悔やんでいる。





   ―――理由はそれだけで十分だろう?





「僕は...あいつらを倒す!!」

  至極単純な事だ。自分勝手だけど僕の怒りをあいつらにぶつけてやる!!

「お前らのしでかした事、この場で償え!!」

  そう言って僕はリヒトを剣型にして構えた。







 
 

 
後書き
今回はここまでです。
かやちゃ<ドッ!>...あ、なんでもありません。

かくりよの門....知ってる人、この小説を読んでくれている人でどれくらいいますかね...。一応、元ネタは知らなくても大丈夫ですけど...。
あ、かやのひめの声のイメージは釘宮さんです。(王道ツンデレだから) 
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