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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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039話

「……そう興奮する事は無いわ。貴方にはいい相手が待っているんだから、ね?」
「ああ………そうだな。すまない」

ヴィーザルが倒された事を見ながら身体の疼きを押さえているジークを抱き寄せて落ち着かせるディアナ、その疼きは強い魔力と見事な戦いぶりによる戦士としての本能が強く刺激されていた。

「ジークにはドロシーがいい相手だと思うわ。あの中では一番の魔力を持っているからね」
「彼女か」

ARMによって映し出されている彼女の姿、顔が大きく映し出され自分が戦う相手だと認識する。映像越しにも感じる強い魔力の強さ、自分に相応しい相手だと口角が上がる。

「だが良いのか、あれは君の妹だろう。良いのか殺しても」
「あちらも私の命が狙いよ。殺そうとして来る相手を殺しても私は文句は言わないし感謝しか言わないわ」
「そうか、なら……」

バルムンクを抜き放ち映像越しにだがドロシーへと剣を突き立てた。

「存分に、やらせて貰おう………君の為に剣を取る。見事彼女を殺して見せよう」

狡猾に笑みを浮かべるがその素顔を隠すように付けられた赤い鎧に赤い仮面。全身に染まったその真紅は何故そうなったのだろうか。

「では行って来る」
「ええいってらっしゃい」

まるで仕事に出かける旦那と妻のようなやり取りをしてディメンションARMを使用し転移していくジーク、そしてこれからのウォーゲームで見られるであろうドロシーの苦しむ姿に期待を寄せるディアナであった。



「うめぇな!おらジャックもっと食いやがれ!!」
「おっサンキュっすアランさん」
「うめぇ~!ナナシって意外に料理美味いんだな!」
「褒めても御代わりしか出せへんで~」

ジャックVSヴィーザル戦後、次の対戦カードを決めると次の試合は翌日だと伝えられた一同はジャックの勝利を祝してバーベキューを行う事にしていた。尚味付けと焼き加減はナナシが管理し抜群の足を皆に提供している。

「明日はアルヴィスのリベンジマッチ、絶対に勝てよ!」
「おいらに続くっすよアルヴィス!」
「ギンタやジャックに言われなくてもアルが勝つに決まってるもん!!」
「御代わりが仕上がったぞよ、しかしもう少しゆっくり食べても……忙しすぎるぞよ」

次々と完食している料理の山を片付けながら新しい物を持ってくるのはジークの従者であるMrフック。がジャックやギンタの食べる速度が余りに速いためか忙しそうに動いていた。

「………そういえばドロシー姐さんは何処に行ったんすかね?」
「そういえば何処に行ったんだろう?」
「………やっぱりジークさんのことが心配で食事が喉を通らないんじゃ………」

スノウの言葉で思わず一同は手を止めてしまった。二人の中の良さは此処にいる全員が良く理解している。互いの事を深く信頼し合い理解し自分の全てを任せることが出来るまでに高められている絆があるからこそ恋人である彼のことを心配している。彼が攫われた時など凄まじい絶叫を上げたほどだ。

「兎に角、ジークの為にウォーゲームが終わり次第レスターヴァ城に乗り込もうぜ!」
「また無茶な事言いやがるぜ………だが超賛成だ!」
「なんだかんだいってアランさんも結構乗り気っすよね」
「えっ今ハンサムって言ったか!?」
「言ってねぇっすよ!?」
「冗談だ、昔ダンナが言ってたギャグだ」
「親父んな事いってたのかよ………」

自分も知らなかった親父の新しい一面のような物を発見してしまったギンタは複雑そうな表情をしながら新しく回ってきた肉に齧り付こうとするがそれが何時の間にかなくなっていた。気づけば隣にドロシーが座っており肉を食べていた。

「あっドロシーそれ俺の!」
「いいじゃない一つぐらい、私まだ食べてなかったわけだし」
「そうやでギンタ。それにまだ仰山あるから心配しなさんなや」
「―――なら俺の分も追加作ってもらおうかな」
「ああええでって誰やっ!?」

いきなりした背後からの声に思わず飛び退くようにジャンプして後退するナナシ。そこに立った居たのは全身に真紅の鎧を着込み深々と仮面を被っている男であった。

「誰やお前は!?」
「ふむ中々いけるが味付けが濃いんじゃないのか?」
「そ、そないか?」
「ってそうじゃないでしょ!?何平然と食ってるんすか!?これはおいらの祝勝会っすよ!?」
「ケチケチした事を言うな、まあ俺が誰かと言われればこのピアスを見れば解るだろう」

そう言いながら髪を靡かせながら触れたピアスが揺れる、耳に付けられていたのは赤く染められたナイトクラスを示すピアス。

「チェスの!!」
「ナイトクラス!?」
「でもピアスが赤いっすよ!?アランさんどういう事っすか!?」
「俺も解らん………6年前のウォーゲームにはそんな奴は居なかった……」

突如として現れた謎のナイトクラス、声からして男のように感じるがノイズのような物が走っているのか完全に判別は出来ない。

「まあいい。俺はこいつを渡せとクイーンから言われただけだ」
「クイーン、ディアナから!?」
「そぉら」

そう言いながらドロシーへと投げたのは小さなARM、ARMに深く精通しているドロシーはそれがディメンションARMの一種で映像を記憶するタイプのものだと理解した。

「確かに渡したぞ。ではな」
「待ちなさい!!!私のジーくんは如何してるのよ!!!?」
「………?何を言っているのか良く解らんが俺は知らんな」

首を傾げながら消えていった男を見送りドロシーは思わず握り締めていたARMを見つめた。恋人への思いを増して行き自分の気持ちは先走り焦りばかりが募っていく。そしてメルの一同は渡されたARMに記録されている映像を確認してみるとそこに写されていたのは磔にされているが無事な姿を見せているジークであった。しかしそのジークの頬に手を当てているディアナの姿を見た瞬間にドロシーは殺気をむき出しにしディアナへの叫びを爆発させた。

「あの女ぁあああああああああああああ!!!!!!!!!私の旦那様になに触れてんだぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「「「「こ、こええええ………」」」」
 
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