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廃水

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6部分:第六章


第六章

「だからこそおかしいのです」
「しかもうちの工場も何人も消えている」
「関係がないと思われますか?」
「そう思わない方がおかしいだろう」
 工場長はいぶかしむ顔で学者に言葉を返した。
「ここまで話が出て」
「そう思われますね、やはり」
「うむ。それではだ」
 工場長はまさかと思いながらそのうえで学者に対して己の考えを告げた。
「あれか。消えた工員達は排水によって溶かされた」
「排水が動き回って」
「しかも骨も何も残さずか」
「そうです。何も残さずです」
 学者は言葉を続ける。
「そういえばですね」
「うむ」
 話は続く。得体の知れない不気味なものを感じながら。
「最近工場の中でゴミとか生き物はいますか?」
「あれっ、そういえば」
「急にいなくなったよな」
「なあ」
 皆ここでそのことにふと気付いたのだった。
「鼠どころか蜘蛛とか小さい虫もな」
「全く見なくなったな」
「しかもな」
 疑問点はもう一つ出て来た。
「生ゴミ。全然ないよな」
「なくなったな、そういえば」
「だよな」
「そうですか」
 学者はここまで話を聞いてまた述べたのだった。
「では本当にまさかと思いますが」
「排水が動き回ってそれで?」
「食べているとか?」
「私もそれはないと思っています」
 学者はあくまで現実的な視野から語っていた。この辺りは実に理系の学者らしい。
「ですが。あまりにも話が出来過ぎています。そしてそう考えることがかなり自然です」
「それではだ」
 工場長はここまで聞いてそのうえで再度述べてきた。
「まさかとは思うが」
「はい」
 彼もまたこう前置きしたうえで話すのだった。
「これからのことを考えるとしよう」
「それでどうされますか?」
「まずはこれまで通り何人かで固まって動こう」
 これは忘れなかった。
「一人でいるより何だかんだで安全だからな」
「そうですね。それがいいかと」
 学者もまた彼の言葉に賛同して頷くのだった。
「あと密室には入らないことですね」
「そうだな。それもだな」
 今度が工場長が学者の言葉に対して頷く。逆にはなっているがそれでも話していることに対するやり取りや導き出される答えは同じであった。
「そうしていこう。ではだ」
「ええ」
「とりあえずはそうやってですよね」
 工員達も工場長の言葉に対して応えるのだった。
「何が出て来てもいいように」
「警戒ですね」
「そうです。そしてです」
 学者がここでまた知恵を出してきた。
「まずは自分達の身はそうして守って」
「それだけではないんだな」
「そうです。それでです」
 また工場長に応えながら言葉を続けてきた。
「後は餌を用意しましょう」
「餌!?」
「そうです。生ゴミも減ってるんですよね」
 学者が今度言うのはまずはここからだった。
「生ゴミも。そうですよね」
「ええ、その通りです」
「そういえば噂が出てすぐに物凄い減りました」
「ではそれで決まりです」
 学者はここまで聞いて確信したように頷いた。
 
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