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RSリベリオン・セイヴァ―

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第九話・外伝「蒼真と……」

 
前書き
今回はひとまず狼SIDEの話は一先ず置いといて、蒼真の足取りを追ってみましょう?

↑現在の蒼真です。彼は空自だった父親の革ジャンを形見としていつも着ています。 

 
メガロポリスから人里離れたとある集落の村、そこにあの男が訪れに現れた。
「……ここが、弥生の実家か?」
G1ジャケットを着た青年が、バイクに跨って土手から天弓侍弥生の実家があるという故郷へ訪ねに来ていた。理由は、狼が持つRS「零」のことである。
この零は、RSであっても彼女の社に保管されていたという謎のRSであった。おそらく、彼女の家族の誰かがリベリオンズに関連しているのだろう。
ここだけの話であるが、零の持つ「絶対神速」は未だリベリオンズでも開発段階である。それをいち早く開発したというのは自分たちにしてみては前代未聞。この詳細を徹底的に突き止めなくてはならないため、特にこの宮凪蒼真はそんな零が狼に融合してしまったことに彼の身を少なからず案じていたのだ。よって、今に至る……
「やれやれ……ついたはいいものの、こんな殺風景な片田舎に本当に零の秘密を知ってる人間がいるのか?」
場所を掴んだ以上、ダメもとで探るつもりだったのだ。とりあえず蒼真は、弥生の実家である神社を頼りにバイクを走らせた。
弥生の実家、玄那神社の場所は集落から離れた山奥である。そこは、まさに蒼真が想像していた以上の大社であった。
巨大な鳥居が彼を出迎え、空に突く石段を登ると、新たに先ほどとはほぼ小さな鳥居が彼を迎えた。そして、目の前には広々とした境内が映っていた。
――こんな山奥にこんな大社があったとは……
まさに、神々しさを感じさせられる。これは本当にパワースポットになりかねないだろうな? 噂によると、この神社は下の集落の人間しかしらないようだ。なるほど、人を寄せつけないという正に神聖な場所なのだな。
「確か……」
確か、神社の片隅に住宅があったと聞くが……あれか? そう、蒼真は本殿の片隅にある住宅と社務所が棟続きになった自宅兼社務所へ歩み寄った。
「すんませーん!」
インターホンもなく、引き戸を数かいノックする。しかし、ノックしても誰も出てこない。留守だろうか……
「すんませーん……留守か?」
または、御奉仕かなにかで外に出ているとか? まぁ……こうなれば神職の誰かが来るまで境内で待ち続けることにした。これでも、彼は神社に興味があるため待ち続けるのにも暇は感じなかった。
「立派な鳥居だな?」
目の前に立つ真っ赤な鳥居を見上げた。周囲には木々が挟み、幻想的に見えた。
「やっぱ、神社に居ると心が落ち着くな?」
全てが幻想的で、嫌なことを忘れさせてくれるかのようだ。
しばらく、ここで待ち続けても悪くはないなと、そう思っていたが。
「何奴だ!!」
背後からの殺気と共に風を着る音と共に蒼真の背後へ刃が走った。
「!?」
蒼真は、咄嗟に太刀「迅紅」で襲い来る刃を受け止める。
「ほう……斬りかかる寸前で刃を止めるはずであったが、やるな?」
「……ッ!?」
刃を交える相手は、真っ赤な袴を来た弥生のような巫女の女性であった。しかし、弥生よりも大人びた女性だ。涼やかなクールな顔立ちに、紙帯で一つに束ねた髪を風に揺らし、赤い鞘から抜刀した真剣が迅紅と重なり合っていた。
――殺す気がない? なら、威嚇か?
仮に背後の殺気に気付かないまま攻撃を受けたとしても斬ろうとする素振りをとるだけと……?
「その太刀……やはり、篠ノ之束の手先か?」
――束を知っている?
「おいおい? あんなゲス女と一緒にされちまったら、こっちだって心外だな?」
「……では、何用でこの玄那神社へ訪れた!?」
「なに、『零』のことで聞きたいことがあるんだ」
「零だと……!?」
巫女は、「零」という一言で先ほどまでの険しい表情が徐々に変わっていく。やはり、ダメもととはいえ来てみた甲斐はあったようだ。
「俺は、束の敵だ。それに一様、『弥生』の仲間でもある。怪しいもんじゃない、何なら弥生に聞いてみればいいさ?」
「……」
すると、巫女は未だ警戒する睨み顔を続けるも彼に襲い掛かったその真剣をゆっくり鞘へしまい込んだ。
「もしや……数日前に御連絡をしていただいた宮凪蒼真殿か?」
「ああ……まぁね?」
ボリボリと頭をかくワカメ髪の青年に、巫女は深々と頭を下げた。
「申し訳ない。ただ……近頃は謎のISの輩共による襲撃が後を絶たない。大変無礼を働いてしまった。申し訳ない……」
「いや……わかってくれればいいさ? それよりも、『零』に関して詳しく知っているなら紹介してくれないか?」
「……わかった。では、とりあえず詳しい話をいたそう。こちらへ……」
そう巫女は、彼を社務所内の客室へ招き、盆に乗せた湯呑を置いて彼女は目の前に正座する。
「私は、この玄那神社で巫女を務めている天弓侍神無という者だ。先ほどは大変無礼を致した……それと、いつも妹の弥生が世話になっているな?」
そう彼女は不愛想ながらも蒼真にお辞儀をした。
「どうも?」
蒼真も、苦笑いしつつ会釈を返した。
――つまり、弥生はこの巫女の妹ということか……?
そして、神無は零に関する情報を話してくれたが……彼女も中途半端な内容しか知らなかった。
「……申し訳ないが、零の開発者は私にも定かではない……ある参拝者がこちらへ預けていったことしか……」
「預けた? つまり、その参拝客が零に関係した人物なのですね?」
「詳しいことは……ただ、『大切な人』へ送る大切な物と仰っていたような?」
「大切な人……?」
「申し訳ない。私も、それぐらいしか……」
「いえ……とりあえず、零はその参拝者が貴方へ預けていったという情報で間違いないのですね?」
「はい……しかし五年ほども前のこと故、私も詳しい記憶はあまり……」
「それだけで十分ですよ? こちらこそ、お忙しい中ありがとうございました」
そう彼は席を立ちあがると、やや愛想の少ない巫女へ礼を言った。
「そうだ……よろしければ蒼真殿、遠渡遥々ここまで参られたわけだ。それにいつも弥生がお世話になっている。今夜はこちらで一晩、泊まられてみては?」
「え……いや! いや! そんな、俺は……」
「遠慮はいらん。それに……そちらの知人から詳しい事情を聞いている。それなら、尚更今のうちに疲れを落としていくがいい。自慢ではないが、露天浴場もある。旅館とまではいかにあが、宿感覚でゆっくりくつろいでいいぞ?」
――露天風呂か?
こう見えて、蒼真は以外と風呂好きであり、野外風呂は久しぶりに入っていなかったために、神無の誘いに少し興味を抱いた。それに、彼女が言う「そちらの知人」というのにも気になるし……
「……じゃあ、遠慮なく?」
「よし、では支度をしよう? テレビを見るなりして適当に寛いでいてくれ?」
「いや、そんな悪いよ?」
「其方は客人だ。固くならずにゆっくりと体の疲れを落としてくれ?」
……と、ここまで言われれば、さすがに蒼真も断ることができず、大人しくそのまま一晩はこちらでお世話になることになった。

「……と、いうことだ。明日の午前中にはそっちに戻る」
夕暮れ時の境内の中で、蒼真は基地で未だ零の研究に専念し続けている魁人へ連絡を取った。
『こっちは忙しくないから、しばらくゆっくりしていってもいいよ?』
「それよりも……あの神無っていう娘に俺のことを伝えたの、もしかして魁人、お前か?」
『ご名答~♪ 一様、親友として君の身を案じてあげた行為だよ?』
やはりか……蒼真の感はあたり、彼は深々とため息をついた。嬉しいことであるが、何もそこまでしなくてもいいのに……
「おいおい?……こっちたぁ、出張スケジュールでビッシリなんだ。なによりも、明日の夜までにはアメリカ・ニューヨーク支部の会議に出席にしなくちゃならねぇんだ……」
『そのあとに日本へ戻って北海道の地下施設で開発中の新型レーダーのレポート拝見、さらに明朝には再び海を渡ってドイツの首都ベルリン支部へ出向き、『黒兎』共の対策会議……仮眠する時間すら乏しいね?』
「だろ? ったく、上層部の爺共が、俺を便利屋か何かと勘違いしてんのか?」
『そう愚痴るなよ? とりあえず、いったん切ろう。ごゆるりと過ごしてくるよいいよ?』
「そうだな……それよりも、神無ちゃんに無理言わせたんじゃないだろうな?」
『そんなことあるもんか? 彼女も弥生ちゃんからいろいろと君のことを聞いているし、一度会ってみたいって言っていたんだよ? それに、弥生ちゃんが大変お世話になっているそうでってことだから、一晩は心よりおもてなししたいって言いだしたんだ』
「なら……いいけど?」
『とりあえず、ゆっくりと寛いでいくといいよ? それにしても……神無ちゃんって娘は声しか聴いていないけど、弥生ちゃんみたいに可愛い娘かい?』
「えっ!?」
一瞬、襲い掛かってきたときなんかびっくりしてそれどころじゃなかったが……しかし、先ほど間近で見てみると、目が大きくてクールで華やかな印象、まさしく言動を覗いては大和撫子というような雰囲気だ。思いだせば思いだすほど、胸が痛くなりそうだ……
「まぁ……綺麗だったかな?」
『そりゃあ良かったね? そんな綺麗な人と、一晩……』
「バカ! そんなんじゃねぇよ?」
『冗談♪ 冗談♪ ま、今夜は仕事のことなんか忘れてゆっくりしていきな?』
「ああ……悪いな?」
ホログラムに表示された通信システムは消え、蒼真は遠慮なく疲れを癒していこうと大きく背伸びをした。
「蒼真殿? 風呂の準備が整った。湯が冷めぬうちに疲れを癒してまいれ?」
後ろから神無が呼びかけ、それに振り返った蒼真は、微笑んで礼を言う。
「ああ……ありがとな?」
「ッ……!」
そのとき、蒼真の笑みを見た途端ふと神無の頬が赤く見えた……しかし、気のせいだろう。夕暮れの明かりが彼女の顔を照らしたのだと、彼は軽く思いこみながら浴場へ向かった。
「おお~! こいつぁ広いな?」
目の前に広がる広い大浴場の露天風呂はまさに蒼真好みの光景であった。霧のように湯気が立ち上り、そんな湯船にから見える白い湯を見るたびにたまらなくなった。
「いいね……早速入るか!」
軽くタライで体を洗ってから、熱くも丁度いい湯加減の湯舟へ体を沈めていった。
「くぅ~……癒されるなぁ~? こんなにいい風呂に入れるんだから泊まってみてよかったぜ!」
「そうか、それはこちらとて光栄だ」
「そうかい! 俺も……っえ?」
ふと、背後から聞こえた神無の声に蒼真は振り返った。すると、ガラガラと戸を開けてバスタオル越しに裸になった神無が浴場へ入ってくるではないか? それも、彼女の胸元は弥生以上の巨乳であるがため、バスタオルがはち切れそうで、今にも見えそうなくらい……
「ちょ、ちょ、ちょ……ちょっとおぉ!?」
慌てふためき、仰天するのも無理はなく、流石に蒼真でも鼻から流血を起こす寸前であった。
ちなみに、彼はクールな外見とは裏肌に女性との経験は全く皆無である……
「せ、背中を……流しに来た。背を向けろ?」
「背中? い、いや……いいって!? 自分で出来るから……」
「其方は客人なのだ。ならば、それ相応の持て成しとやらをだな……」
「そ、そこまで気ぃ使わなくていいって!?」
「いいから! 早く背を向けろ?」
「自分でやるって!?」
「ええい! 大人しくこちらに……きゃっ!」
強引に蒼真の両肩を掴もうとした矢先、床に置いてあった石鹸を踏んで滑り、彼女の纏うバスタオルは勢いによって飛ばされ、裸体のまま蒼真の体に重なるように倒れてしまった。
「い、いてて……!」
気付いた蒼真は、なにやら巨大な肉厚な部位に顔が埋もれていることに気付く。それもいち早くその正体は何なのか気付いた。
――こ、これは……!?
「そ、蒼真殿……? はうっ……」
頭を抱えて目を開ける神無であるが、自分の胸元がやけにこそばゆく感じた。彼女の爆乳が、彼の顔面を包み込んでいたのである。
こうして彼女は甲高い悲鳴と共に蒼真の頬には真っ赤な手形が一つ浮かび上がったのは言うまでもない……

「……」
入浴後、神無から借りた浴衣を着て居間に座り続けている蒼真は、まだジンジン腫れる頬にできた手形を半目で撫でまわしていた。
「……蒼真、殿?」
「あん?」
お盆に料理を載せて運んできた神無に対し、当然蒼真は不機嫌に返事を返した。
「す、すまぬ……先ほどの件は、全て私に非がある。無理やりあのようなことをさせて申し訳なかった……」
顔を真っ赤にし、悲しそうな顔で料理をテーブルに並べた。
「いいって……ありゃ事故ってことにしてくれ?」
ため息をついて、形的には彼女の非を許すことにした。しかし、やはり怒っていることには変わりない。
そんな彼の背後から、シュンとなりながらも神無が料理を並べた。
「で、では……夕食ができたので是非召し上がってくれ?」
「ああ……」
振り向いて、蒼真は適当に手を合わせてから最初に目についたお椀を手に持って箸で口へ放り込んだが……
「……ッ!?」
――美味い!!
口ではどうも言葉で表せないほど、神無が振舞った料理は実に美味であったのだ。この美味い飯を口にすれば、先ほどの引っ叩かれたことなど忘れてしまいそうであった。現に、彼は先ほどの事故など忘れて勢いよく頬張り始めている。
「く、口に合うか?」
恐る恐る神無が言うが、蒼真は返答の代わりに彼女へ茶碗を差し出してこう言ってしまう。
「母さん! おかわり……あっ」
「母さん……?」
首を傾げる神無に対して、蒼真はつい顔を赤くしてしまった。かつて、自分の母親が作った料理と彼女が作った料理とがこんなにも重なったのである。
「あ……いや、その……」
「フフ……」
そんな頬を赤く染める蒼真に、神無は微笑みながら茶碗を受け取った。
「待っていろ? すぐに持っていく」
焚き飯をたらいに入れて彼女が再び持っていくと、蒼真はまじまじと彼女を見つめていた。
「ん? どうした」
「あ、いや……いつも、巫女装束着ているのか?」
彼は、エプロンを付けた巫女服姿の神無を見た。
「ああ、巫女たる者常にこの装束の姿だ」
「外出するときとか私服は持っていないのか?」  
「周に一、二回程度故、着ていく服にはそれほどこだわらぬ」
たらいに入れた飯を茶碗に持って再び蒼真へ渡してやると、彼女はこう尋ねた。
「ところで……私の料理が、其方の母君の手料理とどこか似ているところがあったのか?」
彼女は妙に少しうれしくなった。
「まぁ……お袋の飯と重なったのは嘘じゃないな? 死んだお袋の飯が食えたかのようで、よかったぜ」
「そ、そうなのか……それは、申し訳ないことを伺ったな?」
「いいって?」
「……実はな? 私も両親はいないのだ」
「……?」
ふと、蒼真は彼女を見た。
「……両親は私と弥生を庇って死んだ。それ以来は、姉妹力を合わせてどうにかここまでやってこれたというわけだ。あ、すまない。私の方こそ暗い話をしてしまって……」
「お互い気にすることじゃねぇよ? それよりも、おかわり!」
「ハハ、はいはい」
その後、大食漢な彼は飯を五杯以上食べたという。そして、腹が膨れた時に神無がお盆に酒の器を持ってきた。
「晩酌はどうだ? おかずもまだ残っているし」
「え、いいのか? 酒まで頂いて……」
「其方は客人なのだぞ? ここを宿と思ってくれていい」
「じゃ、じゃあ~……もらおうかな?」
「では、ささ御猪口をこちらへ?」
と、神無は蒼真のもとへ寄り添って彼の盃へコポコポと酒をくむ。
「おう! この酒もスゲェ美味ぇ!?」
日本酒は同僚の付き添いで飲んだことがあるが、この酒は今まで飲んだ酒よりも最高に美味かった。
「しっかし……こいつぁ効くぜぇ……!」
その分、度数もかなり強い。
「酒も口に合って何よりだ……」
「ほら、神無ちゃんも飲めよ?」
「い、いえ……私は酒には弱くて……」
「そう堅ぇこと言わずに、ささ!」
「で、では……」
酔った蒼真に誘われるがまま彼女も酒を一口もらうことに……すると、
「ヒックッ……うにゃあぁ~……」
一口飲んだだけで彼女は泥酔してしまったようだ。それどころは、キリリとしていた彼女が、いざこのような状態になると、ピッシリと着こなしていた巫女装束は徐々に肌蹴ていってしまう……
柔肌の肩が襟元からずれてあらわとなり、それどころか巨大な胸元まで見えそうになる。
そんな彼女の酔う姿を見て、唾を飲み込むことしかできない蒼真は目のやり場に困った。
「そ、蒼真殿ぉ……?」
そのとき、突如神無が蒼真へ伸し掛かってきたのだ。彼女の豊かすぎる爆乳が、蒼真の胸板へ押し付けられている。
「や、やっば……か、神無! 何をしてんだ!?」
「蒼真殿……ムニャ~……」
しかし、ここいらで彼女は寝息をたててスヤスヤ寝てしまった。
「へっ……!?」
目を丸くしながら、蒼真は神無の可愛らしげな寝顔を見つめる。
「寝てる……のか?」
――女ってもんは嫌いだが……こいつだけは、そんなに嫌な感じはしねぇかも?
今も自分の胸の中で眠る神無を抱え起こすと、そのまま抱きかかえて彼女の自室へ連れていった。
――やれやれ……今日は散々な目に会ったな? 引っ叩かれたり、目のやり場に困ったり……だが、根っから嫌なことはなかったな? 露天風呂にも入れたし、美味い飯と酒もご馳走になった。
その後、蒼真は和室に敷かれた布団を見つけた。おそらく、前もって神無が敷いてくれたのだろう。
その布団に入り、彼は明日に備えて休んだ。

翌朝、この里に蒼真に続いて新たな来客が訪れていた。
「束の情報によれば……この集落に蒼真が居るのか?」
黒が身を風に揺らし、すらりとしたスタイルのきいた体に大人びた美しい様子の女性、それは紛れもなく織斑千冬である。
「ここか? 神社とは、アイツの実家は神社なのか?」
それとも、神主にでもなって神社に住み着いているのか、どちらにせよ希望と不安を胸に彼女は長石段を登っていく。
「ここだな……」
落ち着いた雰囲気を保ちつつ、彼女は引き戸をノックする。しかし、誰も出てこない。
――留守か?
やはり、外で奉仕でもしているのだろうか、なら境内を探してみるとするか……
「もし、客人か?」
「……?」
千冬が振り向くと、そこには箒を両手に握る一人の巫女の姿があった。
「参拝客……ではないようだな? 何用だ?」
しかし、巫女は千冬の不愛想な風格を見て何やら強い警戒心を抱いた。
「……ここが、玄那神社なのですか?」
千冬は静かに、しかしどこか不愛想な感じに答える。
「そうだが……?」
巫女こと、天弓侍神無はさらに警戒を強めた。
――敵意を感じないはずなのに、なにやら強い執念を感じる?
「あぁ~……二日酔いはキツイぜ……ん、神無?」
そんとき、ガラガラと引き戸が開くと、中から頭を抱える蒼真の姿が見えた。
「そ、蒼真!?」
「テメェッ……!?」
蒼真は、自分の名を呼ぶ女が誰なのか、すぐにでも悟った。
――織斑千冬!?
 
 

 
後書き
予告

「何故、来た? 俺はお前など必要としない。むしろ、憎んでんだ……これ以上、俺の前に姿をさらすな。今回は、神無の前ゆえに見逃す。だが、二度と俺の前に現れるな! この人殺しめ……」

「何故だ……なぜお前は私をこれまでにして拒む!? それにあの神無という女は何者だ? そうか……あの者が私から蒼真を……!」

次回
「蒼真と神無……」 
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