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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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031話

ウォーゲーム第6戦が終了しそれぞれが休養や食事、それぞれの過ごし方をしているギンタは明日の休みを如何使おうかのんびりと考えていた。そんな中ガイラが座りながらじっとしているのを目にする。

「ガイラの爺さんどうしたんだじっとして?」
「ギンタか。いやただ修練の門を開いているだけだ」
「門を?」

視線をずらしてみれば地面には門が設置されその扉は固く閉ざされていた。誰かが修行を望みこの中へと入っていったという事になるが一体誰が入ったのだろうか。

「誰が入ったんだ?」
「ジークとその付き添いのドロシーだ。なんでもあのARMを使いこなす為に魔力を高めると言っていたな」
「ジークが……」

―――ファヴニール。ギンタの切り札であるガーゴイルさえも超越する力を秘めている強力なARMだがそれ以上に高い精神力と魔力を必要とする危険なARM。嘗てスノウに言われたようにファブニールは下手に多用すれば精神が壊れるとギンタは危惧している。

「ドロシーが付いているから大丈夫だろう。それにその危険なARMを使いこなせる様になる為に門に入ったのだ、お前も身体を休めておけ」
「ああ解ったよ」

門に背を向けて歩くギンタは心の中でジークへ声援を送った。イアンと共に姿を現したカルナ、ギンタも彼に桁外れの魔力には驚いていた。自分も今度の闘いのために身体を休めて万全の体制にしておかなければ。



「竜穿!!」
「ゼピュロスブルーム!!」

修練の門、門の中では外の60分の1の速さで時間が流れるという特異的な空間の中でぶつかり合う風と魔力の奔流。鋭利な刃物となって相手を切り刻まんと迫り来る真空と魔力で形成された斬撃、互い互いを消しあ消滅する。

「やるなドロシー!!ならこれでどうだ!?」

バルムンクを思いっきり地面へと突き刺し持ち前の怪力で地面をひっくり返すように持ち上げた。盛り上がっていく地面は槍のように鋭く地割れのように深い攻撃となってドロシーへと向かっていく。

「わぁおジャックのアースウェーブみたい!でもまだ甘いよ!」

ジークの攻撃に笑みを浮かべながら思いっきり箒を振り回すと爆風が巻き起こり迫り来る大地を根こそぎ削ぐように吹き飛ばした。そして吹き飛ばされた瓦礫はジークへの矢となって襲い掛かったが持ち前の防御力の前ではダメージなど入らなかった。

「ふう……矢張り強いなドロシー」
「ジーくんもね。流石は私の旦那様だよ♪」
「まだ結婚してないと思うが………」
「いいじゃない♪大爺様に宣言しちゃった訳だし♪」

溜息を付きながら休憩をとることにした二人、既に6時間以上ぶっ続けで戦いを続けていたので好い加減休息を取らなければきつくなってくる頃。適当な場所に二人一緒に腰掛けてながら生っていた果実を口にする。

「それにしてもびっくりしたよ、明日は休みだから一日分修練の門に入るっていきなり言うんだもん」
「ファヴニールを使った時に俺は倒れてしまった、それで君に余計な心配を掛けてしまったからな。もうそんな思いをさせたくない。それにあの男に勝つためだ」

あの男、それは紛れも無くカルナの事をさしている言葉だった。今の自分であの大英雄に勝つ事など出来るのだろうか、彼は優れた槍の使い手というだけではない。彼が着ていた黄金の鎧こそが問題になる。

日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)。物理・概念を問わずあらゆる敵対干渉を削減する無敵の鎧、この鎧を着けている限りカルナに与えられるダメージは十分の一になってしまうという正しく無敵の鎧。Bランク以下の攻撃を無効化しそれ以上の攻撃もダメージ軽減する悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)と似通った力を有している。

だが総合的な防御力では明らかに無効が上回っている。悪竜の血鎧には決定的な弱点がある、それは背中にある、葉の様な形の跡が残っている部分のみその効力は発揮せず、その個所を隠すことも出来ない。背中に防具を纏っていないのもそれが理由である。

「なあドロシー、このまま修行を続けてファヴニールを制御できるだけの魔力を確保出来ると思うか?」
「う~ん………かなり、難しいと思う。直接ファヴニールを見た訳じゃないけどのあの竜はとんでもないガーディアンだし、人一人で生み出せる魔力じゃ限界があるし難しいわ」
「やっぱりか………」

帰ってくるであろう返答をある程度予想していたジークは溜息を漏らす。このまま鍛え続けて魔力が増えても高が知れている、あの化け物を制御する為に必要な魔力は最低でもランクB+は必要だ。ドロシーとの修行はかなり効率がよくいい経験にもなるが成長してもBまでが限界になるだろう。

「………やれやれ、死ぬ気で魔力捻出でもするか」
「そんな事したらジーくんどうなるか解ってるの!?」

全力で魔力を搾り出す気持ちを固めようとしていたジークを止めたドロシー、始めた使用した直後は魔力が枯渇し精神力も切れ掛かるほどだったのにそれでも更に魔力を作り出すとなる身体にどんな影響が出るのか解った物ではない。精神が壊れる事さえ有り得る。

「言ったじゃない!私の傍に居てくれるって!!」
「ああ約束した、だからこそだよ。君の傍に居るために、戦うんだ」
「ジーくん……」

自分の為に戦う、だがそれは死ぬかもしれない。矛盾を孕んでも彼には戦うという道しか残されていない。そんな彼のために何も出来ないドロシーは歯痒かった、だがそんな時に彼女の脳裏に名案が浮かんだ。

「そうだ、そうだよジーくん!一人の魔力で駄目だったら二人で賄えばいいんだよ!」
「ふ、二人で?」
「そうだよ!私とジーくんの間でラインを繋いで魔力を供給すればなんとかなるよきっと!」

確かにそれならばなんとかなるかもしれない。現在ドロシーの魔力はなんとA、メルの中ではトップの魔力を有している。そんな彼女と共に魔力を供給出来ればファヴニールを十分に呼び出し続ける魔力は確保できる。だが問題がある。

「どうやってラインを繋ぐんだ……?」
「それは簡単だよ……私の言う通りにしてね」
「えっドロs」

言うよりも早くドロシーはジークの口を塞いだ。恍惚に微笑む彼女の表情で視界が埋められ、唇を甘い香りの優しい感触で覆った。ジンと一瞬頭の芯が痺れるような感覚がし意識が真っ白になっていく。

「むちゅ、はぁ、んんぅ……」
「っ!!?むう!!ぷはぁ………」
「いきなりごめんね、でも勘違いしないでね?私は、本当にあなたのことを愛してるからこうするの」
「ド、ドロシー……」

この後の事は、ジークは良く覚えていなかった。だが蕩けるような甘い感触と暖かい魔力が身体の中に満ちるのを感じドロシーに深く感謝すると同時に恥ずかしさで顔を覆うのであった。

後に門から出てきた二人をギンタ達が出迎えたがジークは顔を赤くしながら背け、ドロシーは妙に艶っぽく輝いている笑顔をしている為首をかしげた者が多かった。中には何があったのかを察しジークの肩を優しく叩いていた。

「フフフッとっても良かったよジーくん♪」
「もう………殺してくれ………」 
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