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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 黒龍伝説 10

 
前書き
10巻はサイラオーグ戦が半分以上を埋めるせいで匙を絡ませるのが面倒い。 

 


「準備は出来ているか?」

「……大丈夫」

「よし、なら行こうか」

レオナルドと手をつないで家から出るとスコルとハティが駆け寄ってくる。

「……おはよう、ハティ」

「調子はどうだ、スコル?あまり縄張りを広げすぎるなよ」

一通り撫でてやってからスコルとハティを加えて登校する。学園までの途中に付属小がある場所に家を買ったためにレオナルドを送ってからの登校が可能だ。

「それじゃあ、夕方に迎えにくるからな。何かあれば渡してある犬笛を吹くんだぞ。スコルとハティがすぐに駆け付けるからな」

「……うん」

「スコル、ハティ、任せたぞ」

レオナルドを送った後はすぐに物陰から学園近くまで影を通ってショートカットを行う。そのまま生徒会の仕事をこなして授業を終えてから生徒会室に向かい、仕事の確認をしてから仕事を分身に任せてレオナルドを迎えにいく。登校時と同じように二人と二頭で手をつないで歩きながら、今日1日どんなことがあったのかを聞いていく。それに相槌を打ち、時に尋ねられる質問に答えていく。帰宅後は夕飯を作りながら日本語の勉強を手伝ってやる。会話の方はこちらで翻訳の魔道具を用意したから問題ないが、文字だけはどうすることもできないからな。

「うん、これで基本のひらがなカタカナ50音は完璧だな」

「……頑張った」

「まあ、ここから日本語で面倒な漢字に入って行くからな。大変だが、出来る限りの事はしてやるからな」

「……うん」

「よし。それじゃあ片付けて手を洗って来な。夕飯にしよう」

夕飯を終えた後は分身に悪魔稼業を任せて、レオナルドとスコルとハティと一緒に風呂に入ってからスコルとハティのブラッシングを行う。

「そうそう、優しくな。引っかかりを感じたら少し戻して手で絡まっている部分を解いてやるんだ。うん、そうだ」

「……スコル、良い?」

レオナルドがスコルをブラッシングするのを隣で見ながらハティのブラッシングををする。今までは訓練で勝ち越していた方だけだったが、今はレオナルドの護衛の報酬として二頭ともをブラッシングしている。

「学校は楽しいか?」

「……初めてのことばかり、もっと知りたい」

「そうか。自由に生きてみろ。そううすれば、勝手に知っていける。わからないことや、やってみたいことがあれば何でも言え。できる限りのことはしてやるからな」

「……あの、えっと、その」

「どうした?」

「…………一緒に寝て欲しい」

「ふっ、構わないぞ」

そして、その話を聞いていたスコルとハティが激しく体を擦り寄せてくる。

「分かった分かった、今日はみんなここで寝よう。スコル、ハティ、少し大きくなって。オレは枕と毛布を取ってくるから」

部屋に戻って枕と毛布をとって戻ってくるとレオナルドがスコルたちに押しつぶされていた。

「こ~ら、嫉妬してるんじゃない。ほら、寝るぞ。スコル、狭いからもう少しそっちに行ってくれ。ハティ、尻尾を外側にしろ、顔の前に持ってくるんじゃない。レオナルドもそんなに離れなくて良いぞ。ほら、こっちに寄ってこい」

自分から一緒に寝て欲しいと言いながら距離を取ろうとするレオナルドを傍に近寄らせる。

「それじゃあ、お休み」

明かりをラインを使って消して寝たふりをする。しばらくするとレオナルドが少しずつ近寄ってきて、腕にそっと掴まってくる。うむ、オレより素直でよろしい。甘えるなんてもう出来ないわ。









「平和だ。松田と元浜がいなくなっただけでこんなにも平和になるなんて」

放課後に生徒会室でコーヒーを飲みながらしみじみと呟く。カメラの撤去や補修の仕事がなくなっただけで大幅に暇な時間が増えた。

「匙、気を抜きすぎですよ。それより、今日は迎えに行かないのですか?」

「ちょっとずつ友達が出来ていってるみたいなんで、遊びに誘われたようです。一応、分身を一人影に潜ませてますし、スコルとハティも傍にいるから大丈夫です」

「そうですか。あら?どうぞ」

ドアがノックされ、会長が入室の許可を出す。

「失礼する。こちらに匙元士郎が居ると聞いてきたのだが」

「サイラオーグ?」

「来校手続きは済ませてきましたか?まだであれば、先に手続きをお願いします」

「すでに済ませてきた。実はソーナと匙元士郎に頼みがあってきたのだ」

「頼みですか?」

「手合わせを願いたいのだ。オレの夢のために、一番の障害になり得るだろう匙元士郎を知るために!!」

その言葉に会長がしばらく考える。

「匙、単純な肉弾戦とフェニックスの涙を使わなくて済む程度に抑えて自由に、計2回ですね。場所は、校庭でいいでしょう。結界を張るのに少し時間をもらいます。それからリアス達を呼びますが構いませんか?」

「ああ、構わない」

「では、そうですね、一時間後に始めましょう。その間に準備を済ませるようにしましょう。匙、分かりましたね。くれぐれも無茶、危険なこと、やりすぎもしないように」

「了解です」









単純な肉弾戦は開始30秒でサイラオーグが意識を失って倒れたことで決着がつく。

「サイラオーグがあんな一瞬で!?」

「正面から突っ込んだと思ったら前転から足を使った首締め。腕もキメて抵抗させることすら封じる。初見じゃどうしようもないね」

「それ以上にあれだけの隙を平気で見せる胆力がすごいです。いきなりのことでサイラオーグさんが対応できずに動けなかったからこそ一気に勝負が決まりましたが、逆の結果になっていてもおかしくない行動です。私にも匙先輩の技術があったとしても初手で使おうだなんて考えられません」

グレモリー先輩達がそんな話をしているのを聞きながらサイラオーグさんに気付けを施す。

「……オレは負けたのか」

「ええ。完全に意識を失っておられたので」

「あれは、なんという技なのだ?」

「飛びつき三角締め。本来なら組み伏せながら行う三角締めをいきなり行う強引な技です。純粋な格闘戦じゃあ、知らなければ外すこともできないでしょう」

「そうだな。あのような技もあるとは」

「筋力なんかは別にして純粋な技術では人間が一番です。2戦目に移りますが大丈夫ですか?」

「ああ、問題ないはずだ」

「では、始めましょう」

サイラオーグさんからできる限り離れてから会長に開始の合図を頼む。

「会長、合図をお願いします」

「行きます、始め!!」

開始の合図として魔力弾が打ち上げられると同時に影の中からとっておきを取り出す。

「なっ!?」

取り出したのは特注で作らせたモンスターバイク、人間ではまともに乗る事が出来ない代物だ。巡行時速500km、最大時速700km、最大時速までの時間はわずか4秒、拡張パーツのロケットエンジン搭載で瞬間的に時速1200kmを誇る怪物だ。素早く跨り、エンジンを始動させる。

「匙!!そんなのありなのかよ!?」

兵藤がそう叫んでくる。サイラオーグさんも再び唖然としている。

「馬の使い魔が認められてるんだ!!鉄の馬を使って何が悪い!!免許もちゃんと取ってるぞ!!こいつは法律に引っかかるがな!!」

エンジンの音にかき消されないように大声で叫び返す。それと同時にサイラオーグさんに向かってバイクを走らせると同時に大鎌を取り出して、ラインでバイクを運転する。

「冥府から取り寄せた死神の鎌の試し切りだ!!」

「なんだと!?」

死神の鎌という言葉に驚いて迎撃の構えをとっていたサイラオーグさんが転がって躱す。それでも髪の毛の数本を切ることができた。だが、それでは意味が無い。ふむ、ならば次の手だ。ターンしてもう一度突っ込み、ロケットエンジンを点火させて更に加速して先程と同じように切ると見せかけて鎌を投げる。

「くそっ!?」

「固定概念を持ったままだと命が無いですよ!!」

投げた鎌を再び転がって躱すサイラオーグさんだが、鎌には透明なラインをつなげてある。そのラインを操作して追撃しながらバイクで撥ねるコースに突っ込む。ふはははは、取れる手は少ないがどうする?

「オレは負けない!!」

少ない手の中でサイラオーグさんが取ったのは一番の悪手。バイクを停める姿勢に入った。だめだ、それじゃあオレを相手にするのは不可能だ。バイクがサイラオーグさんと衝突する寸前でオレはバイクから飛翔する。それを見てサイラオーグさんが自分の過ちに気付いた表情を浮かべながらバイクを受け止めた。その次の瞬間には、サイラオーグさんの背後から背中合わせにエクスカリバーとアロンダイトを突きつけるオレの姿がある。さらに次の瞬間には鎌がオレの手元に戻ってくる。

「勝負ありですね」

「……ああ、オレの負けだ。また、負けてしまった」

道具を全て影に収納してサイラオーグさんに向かい合う。

「今まで戦ったことのない相手でしょう、オレは」

「手が全くわからない。正面から普通に戦っても強いというのが分かるのに、なぜそれを避けてこんな回りくどい方法をとるのだ?」

「さあ、なぜでしょうね?そう言われれば更にオレに対して苦手意識を持つでしょう?それが広まれば恐怖の域にまで達する。何をされるのかがわからない、何処までできるのかがわからない、そんな相手に敵対したいと思いますか?」

「それは……ある程度利口な奴なら避けるだろう。もしやるとすれば絶対的な天敵を用意するだろう」

「その通り。ならオレは天敵に対しての対策を構築すればいい。ある程度以下なら恐るに足らず。回りくどい行為が翻って全体的な敵の数を減らす。理にかなっているでしょう?」

「戦術が戦略に繋がり、戦略によって戦術が効果を増す。どれだけ先が見えているんだ」

「くくっ、先なんて見ていませんよ。ただ必要であるかもしれないということを事前に用意し続けているだけです。二重に考えれば良いだけのことです。もし、自分を攻略するならどんな手を使うかを考え、それに対抗するにはどうすれば良いかを考える。あとはそれを延々と繰り返すだけ。それがオレです。だが、サイラオーグさんや兵藤には合わないでしょう。あなた方はただ単に自分を鍛え続けたほうが良い。どんな敵が立ち塞がろうと、小細工ごと全てを撃ち貫く槍となれば良い。サイラオーグさんは道を切り開いて行く人です。オレはそんな人たちの露払いを行うのが役目です。オレは誰かを導くことなんてできない。だけど、導き手を守ることはできる。それがオレです」

「役割の違い。そうか、参考になった。その上で導き手として露払いの君に聞きたい。オレには何が足りていない」

これは、即答できないな。会長に視線を向けると会長も考え込んでいる。しばらくの沈黙の後、会長が口を開く。

「私の夢は今も変わっていません。その夢を、手伝ってもらえるでしょうか?」

「無論だ。ソーナの夢を否定するのはオレ自身の否定だ。喜んで力を貸すことを誓おう」

「ありがとうございます。匙」

「とりあえず色々と足りない。とりあえずは足周りの強化が最優先課題ですね。速度が足りていないですし、踏ん張りも効かせるようになるだけで2割は拳が重くなります。それから短期的に鍛える方法として重力制御術式、装身具による補助ですかね。とりあえず、これが術式です。使い方はサイラオーグさん次第です。装身具に関しては紹介状を書きますので冥界にあるオレの工房の職人に依頼してください。値段の方は勉強させてもらいます」

「……何?いや、待て、少しだけ待て。そんな簡単に色々と施されても」

「日本には素晴らしい言葉があります。タダより高い物はない。会長の夢のため、張り切って手伝ってください」

「ふんっ!!」

「あだっ!?」

会長に殴られて舌を噛む。本日一番のダメージを負った。

「気にする必要はありませんよ、サイラオーグ。その施しも普通に受け取ってもらって構いません。匙にとっては辞書の1ページをコピーして渡した様な物ですから」

「あ、ああ、ありがとう」

「匙の言葉遊びに付き合っては身を滅ぼしますよ。サイラオーグ、匙にとって貴方はまだ敵なのですから。少なくとも私と貴方のレーティングゲームが終わるまでは」

「……気をつけよう。今日はすまなかったな」

転移して帰っていくサイラオーグを見送らずに離脱しようとした所で副会長に首根っこを掴まれる。

「椿姫、ご苦労様です。さて、匙。私はやりすぎない様にと言いましたよね。しかも、手合わせの後に、相手に気づかせない様に。お仕置きの時間ですね」

生徒会のみんなにグレイプニルで拘束されて引きずられるオレをグレモリー先輩たちが引き気味に見送ってくれる。ああ、そうだ、これだけは伝えておかねば。

「兵藤、これでお前の勝ち目は更に下がったぞ。どこまで足掻けるか楽しみにしてるぞ!!」

「匙、今は自分の身を心配しなさい」

「会長、世の中には死ななければ安いという言葉が」

「本気で怒りますよ」

「あっ、すみません」

これは本気で怒らせたな。ふっ、どうなることやら。とりあえず分身に夕飯を作る様に指示を出して送り出しておこう。









『最後は、冥界で今最も注目を集めている作品よりこの方がやってきてくれました、怪盗蛇龍!!』

『ははっ、探偵コンビさん達が嗅ぎつけるまでの間だけどよろしくね』

「匙の奴、何やってんだ?」

一番歓声を受けてるけど、至って普通というか、なんかチャラい雰囲気を、というか完全に蛇龍に成り切ってやがるな。それからルールの説明があり、簡単にまとめるとダイス2個の合計値によって出られる選手が決まるといった少し変則的なルールだ。

『以上のルールを踏まえた上でアドバイザーの皆様にお聞きします。ずばり、今ゲームの見どころや期待する所、勝敗予想などをお願いします。時間もなさそうですので怪盗蛇龍からお願いします』

匙からか。あいつの意見は戦闘に関しては恐ろしいぐらいに的確だからな。しっかり聞いておかないと。

『色々と下調べをしてみた結果を端的に言わせてもらうよ。トータル的な戦力差は両者ほとんどないね。戦略を立てる王の資質はバアルチームが上だね。これは本人の育ってきた環境によるものだろう。今回はダイスフィギュアのおかげでそこまで差は出ない』

『ここまで聞くと両者互角のように聞こえますが』

『そうですね。ここまでなら両者互角に聞こえます。ですが、バアルチームとグレモリーチームでは一つだけ大きな差が存在するんです。その差を試合中に埋めることができるかが勝敗を分けると言ってもいい』

『それは一体?』

『戦いにおいて大事な物として心技体と言う言葉がある。人によって大切な順番が逆であるみたいだけど、それの心が今回大きく関わってくる。技と体はそれほど変わらない以上それが大きな差になってくる。簡単に言えばどうして勝とうと思っているのか。詳しく説明するならサイラオーグ・バアルには具体的で大きな夢がある。彼はそのために強くなってきた。才能がないならそれを上回る努力をして、その努力の到達地点として魔王を目指している。そのために多くの高評価を得たいと思っている。眷属もそれをよく理解した上で共にその夢に向かって邁進してきた。彼の心が折れようとも、眷属の支えで彼はまた立ち上がるよ、絶対に。それに対して、グレモリーチームにはそれがない。心を支える物が。唯一支えられるおっぱいドラゴンは最近になって新たな悩みによって周囲を支えられるかどうかが不安定になっている。彼が悩みを振り切ればあるいは、と言った所だね。少ししゃべりすぎたけど、両者共に頑張ってもらいたいね。おっと、探偵コンビの番犬の飼い主に気づかれたみたいだから、またね。頑張って撒いたら戻ってくるから』

匙の言ったことは、オレたちの心に暗い影を落とした。全員が思い当たる所があるからだ。それを的確に外部から指摘された。そして匙の宣言した通りにオレたちは追い詰められた。不屈の闘志というのは本当にある。身体的には動けないはずの状態からの起死回生の一撃、ただではリタイアしないために仲間の盾となり最後の一撃を放っての相打ち。並々ならぬ気迫にオレたちは押され続けになった。

数では圧倒的に負けている状態でサイラオーグさんからの提案でオレと部長対サイラオーグさんとレグルスとの戦いに挑むことになる。本来はまだサイラオーグさんには女王と戦車と僧侶が残っている。だが、戦車と僧侶の傷が大きいのかサイラオーグさんが戦わせたくないと判断したのだ。女王は二人のそばにつけて。この時点で部長はすでに心が折れかかっている。オレ自身もそうだ。そんな時に匙の奴が放送席に帰ってきたようだ。

『ぜえ、ぜぇ、や、やっほ~、な、んとか、戻ってきたよ~。ど、どんな感じ?』

『最初の予想通りと言った展開ですね。グレモリーチームが押されっぱなしです。今はバアルチームから提案で2対2での最終決戦前ですね』

『ふ~ん、それ、認めちゃったの?』

急に匙の態度が冷めた感じになる。

『え、ええ、大会本部は前例もあることから承認しましたが』

『そう。サイラオーグ・バアル、所詮はそんなものだったか。腑抜けた姿など見たくなかったのだがな』

『えっ?』

『こっちの話だ。だが、多少は勝率が下がったな。頑張れおっぱいドラゴン、逃げてる途中でお前のことを応援している子供達が大勢いたぞ。そいつらの期待に応えてみせろ』

急に冷めた態度になった匙は、キャラを作ってる匙ではなく普段の匙で、どうやったのかは分からないが観客席にいる応援してくれている子供の声をオレに届けてくれた。

『さて、番犬の方がこっちに向かってきてるから今日はここまでかな。それじゃあアディオス!!』

最後に子供達の応援を届けてくれた方法でオレにアドバイスをくれた。

『初心を思い出せ。お前は何のために力を求めたのかを、誰のために強くなろうと思ったのかを』









「禁手化を変化させたか。悪魔の駒の性質を染みつかせたのか。なるほど、参考になるな」

本気で会長を振り切って試合を観戦していたのだが収穫はあった。禁手化と悪魔の駒の融合。コツはいるだろうがオレも出来るだろうそれに満足を覚える。兵藤はわかりやすいぐらいに反動を付けて強くなる。壁が大きければ大きいほどそれを乗り越えた時に爆発的な成長を見せる。こちらである程度誘導してやればその成長を促せられる。そしてその成長を横からちょろまかしてオレの手札に加える。win-winの素晴らしい関係だな。

「まあ確かにwin-winだけど、本人が知らないんじゃねぇ。お代わり貰える」

ギャスパーの停止結界の邪眼の力を利用して最高の状態で保存してあるティーポットからお茶のおかわりを注いで砂糖を一つにレモンのスライスを2枚付けてセラフォルー様に差し出す。

「能力の地味な無駄遣い」

「戦闘にしか使わない方が無駄遣いです。便利なものは使い倒してこそです」

「物は言いようだね。それで、赤龍帝ちゃんは勝てると思う?」

「サイラオーグさんがバカをやらかしたので多少勝率が下がっただけです。今の所、兵藤は戦車、僧侶、騎士の力を見せましたが女王の力を出してもまだサイラオーグさんの方が強い。というかそれぐらいの力を予想した上で鍛えましたから。足を止めての正面からの殴り合いにならない限りはサイラオーグさんの勝ちは固いです」

そう、勝ちは固いのに。

「なんでそうなるかなぁ。グレモリー先輩の活躍はまあいいよ、土台は出来てるからあれぐらいはできるだろうから。それよりなんでその悪手ばかりを選ぶかなぁ。プライドを捨てる場所をちゃんと判別できるようにしておけばよかった」

殴り負けるサイラオーグさんを見ながらため息をつく。それをセラフォルー様は苦笑しながら慰めてくれる。

「ああいうのが悪魔の大半を占めるの。悪魔の種族的特性といっても過言じゃないんだよ」

「オレ、絶対に眷属は全部転生悪魔で揃えて隠密集団を作るんだい」

「はいはい、いじけないの」

はぁ、これ以上子供扱いされるのはあれなので最後にもう一度ため息をついてから切り替える。

「それで上級への昇格の件と伺ったのですが?」

「切り替え早いねぇ~。そうだよ、赤龍帝ちゃんたちやソーナちゃんの眷属のみんなもそこそこ功績を積んだから中級に昇格するんだけど、それに合わせて上級に上げちゃおうって。英雄派の件でやりすぎだから」

「流れに乗って最善を尽くしたつもりなんですけどね」

「最善を尽くしすぎなんだって気づいて言ってるよね。明らかに挑発も含んで。敵になりそうなのを炙り出したいのは分かるんだけど、やりすぎはダメだよ。思わぬ所で足を取られるよ」

「自分なりに自分を殺せる物を考えてるんですが、正直に言えば脅威になるのは少ないんですよ。まずは、説明するまでもないグレートレッドにオーフィス。超越者の三人、そして龍殺しのサマエル。龍殺しの武器は担い手次第といった所ですね。あとは頭を吹き飛ばされた時ですね」

「よかった、頭を吹き飛ばされても再生するとか言われなくて」

「さすがに頭を吹き飛ばされるとどうすることもできませんよ。日にちは中級試験と同じでしょうか?」

「そうだよ。まあ、爵位とか領地に関しては卒業するまで待たせることもできるからそこは安心していいよ」

「ありがとうございます」

「あっ、そういえばさっきの腑抜けた姿ってどういう意味?」

「ああ、あれですか。先日、サイラオーグさんの母親の治療を行いましてね。それがモチベーションアップに繋がるかと思えば、あの有様です。魔王を目指すのは母親との約束と聞いていたものですから、意識を取り戻した母親と語ればさらに夢への道を固めると思ったんですがねぇ。いやはや、分かっていたとは言え、心というものは難しいですね」

「元ちゃん現在進行形でひね曲がってるしね」

「……そんなにひね曲がってますか?」

「自覚なかったの?」

「いえ、ひね曲がってるのは自覚してますが、進行形というのが」

「まっすぐになろうとして余計に絡まってる感じだけど」

「……否定できないんですよね?」

「そう返す時点で無理だね」

別の意味でまた落ち込みながら帰宅の準備を始める。
 
 

 
後書き
戦力が激減どころか壊滅状態の英雄派に明日(活躍の場)はあるのか?
















まあ、あるんだけどね。二人で頑張るよ。どんな苦難にも諦めずに挑戦するかっとビングの精神で。 
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