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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語

作者:マルバ
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SAO編 主人公:マルバ
ありふれた冒険譚◆初めての絶望、そして希望
  第十三話 レクチャーその二、『パニック制御』 そしてケイタの理想

 
前書き
メンテナンス終了を待って投稿しようとしたらなんかインターフェイスが一新されて格好良くなっていてすごくびっくりしました。 

 
四日目。


「今日は恐怖に打ち勝つ訓練をしようと思う。仮にMPKに遭ったり、アラームトラップを引いちゃったりしたとしよう。その時、パニックに陥ったりしたらまずいことになる。でも、どんなに強大な敵でもパニックにならずにしっかりと隊列を組んでさえいれば生き残ることはそれほど難しくない」
「でも、転移結晶だって転移するまでに時間かかるだろ?敵に囲まれたらどうするんだよ」
「ダッカー、確かに囲まれた時に転移するのは難しいけど、無理じゃない。例えば、こんなことができる……」
マルバはそこで言葉を切ると、羊皮紙(っぽい何か)を取り出すとそこにペンで図を書き込みながら説明する。
盾を持った二人が前に出て、その後ろに長物使い二人、そして何故か一番後ろに短剣使いのダッカー。

「え、オレ攻撃できねーじゃん。何すりゃいいの?」
ダッカーの最もな質問にマルバが答える。
「今回のレクチャーは『大量の敵相手になんとか生き残る方法』を考えること。別に倒さなくてもいいから。ダッカーは転移結晶を使う役ね。」
なるほど、と頷くダッカー。


「転移結晶を使う際、当たり前だけど一番気をつけなきゃいけないのは『敵からの攻撃』。何らかの攻撃を受けた時点で転移はキャンセルされてしまうから、敵の攻撃を受けないようにする必要がある。そこで、前衛の出番だ。」

マルバは先ほどの図のケイタ達を取り囲むように敵の絵を書いた。

「まず、前衛二人はその防御力を生かして正面から来る敵の攻撃を防いでもらう。防ぎ方は『パーリング』が好ましいけど、無理なら武器を跳ね上げるのがいいかな。要するに攻撃できない数秒を作ることが重要だから。」

図の敵が側面からの攻撃を繰り出す。それを受け止めるのは長物使いの二人。

「ケイタとササマルは側面からの攻撃を跳ねあげる役。いくら防御力が高いからっていっても側面からの攻撃だとクリティカルは稀でも強攻撃を喰らうことは十分あり得るから、前衛が攻撃を喰らわないようにするんだ。」

「隙ができたらオレが転移結晶を使うってこと?」
ダッカーがマルバの説明に割り込んできた。

「うん、そういうこと。それじゃ、次の説明。」

マルバは先ほどの羊皮紙を横にずらし、次に羊皮紙を置く場所をつくる。




「転移結晶が使えない状態で敵に囲まれたときはとにかくモンスターのいない方向を確保するんだ。壁でも、通路でもいい。それで、こういうふうに隊列を組む。」

二枚目の羊皮紙にペンが走る。敵の方に二人の前衛役――テツオとサチ――が斜め前方に身体を向けてに並び、そのすき間から顔を出すように短剣使いのダッカー。そのすぐ後ろに長物使い――ケイタとササマル――が続く、という構図が描かれた。

「これはあくまで向かってくる敵を一掃するための隊列だ。逃げられない強敵に歯向かう時用に、できるだけ死亡率を下げたもの。逃げられる時はさっきやった方法で逃げるのが一番だけどね。はい、サチ」
「転移結晶が使えないなんてことあるの?」
サチが律儀に手を上げてから質問する。

「『結晶アイテム無効化エリア』なんていう最悪の場所が存在する。それも、大抵狭い通路だったり、戦いづらい場所に存在することが多いんだ。しかも、結晶アイテムを使ってみるまでそこが無効化エリアかどうかは分からない。」
険しい表情で伝えるマルバ。というのも、以前マルバは無効化エリアで死にかけたことがあるのだ。ハイディングを習得していなかったら今頃ここにはいなかっただろう。レッドゾーン少し手前のHPゲージの横に浮かぶハイディングレートの表示が刻々と下がるのを見つめていたときは生きた心地がしなかった。

「話を戻すね。ええと、それじゃ今日はこれから第十層の洞窟系ダンジョンの中にあるアラームトラップで訓練。分かっていてもアラームトラップを引いた時はかなりパニックになるから、さっき言ったように隊列を崩さないように気をつけてね。敵の攻撃に隙ができたらダッカーはすぐに転移結晶を使うんだ。転移先はこの街でいい。」
黒猫団の皆は真剣な顔で第十層に向かった。






五日目。

「それじゃ、今日までのレクチャーのおさらいをしながらレベリングしますか。特にダッカーのレベルが低めだからみんなと合わせるようにしないといけないしね。午後まで第十五層のフィールドダンジョンで、ダッカーと僕、他のみんなに分かれて訓練ね。」
「ちょっ、なんでオレだけ!」
「だから、君だけレベル低いんだってば。一昨日とその前の日もみんなは『見切り』の訓練も兼ねてレベリングしてたんだから。」
ちぇっ、とつまらなそうな顔をして舌打ちするダッカーのレベルは確かに黒猫団の平均レベルより3つほど低い。レクチャー二日目と三日目はマルバの勧めで第二層で体術の訓練をしていたからだ。短剣使いは連撃が命。体術スキルを学んでおけば連続技の後さらに追撃ができるのだ。もちろん、直後のディレイには十分気をつける必要があるが。

「それから、ダッカーは今日一日、短剣禁止ね。体術スキルの訓練も兼ねて、素手で敵を倒すこと。今日中にスキル熟練度100を目指すよ!『閃打』だけじゃ戦いも大変だし、『玄燕』は無理でも『双牙』くらいは使えるようにしておかなきゃ」
「りょ、了解……」
さらに肩を落とすダッカーは渋々マルバに従って他のみんなが行くダンジョンではなく少し難易度の高いダンジョンに向かう。





六日目。

キシェエエエエエェェェッ!!
「ひやぁっ!」
サチは叫び声を上げたカマキリのモンスターから思わず一歩下がる。が、その背中をマルバが支えた。
「しっかりして!この攻撃を受けられるのはテツオ以外には君しかいないんだよ!!」

その声がサチの背中を押す。サチは睨むようにしてモンスターを見つめた。
私がやらなきゃ……とは思うものの、身体が恐怖に縛られて思うように動けない。

カマキリが再びその鎌を振り上げた。思わず目をつぶるサチ。その鎌をマルバのチャクラムが斬り飛ばす。
「ほら、サチ、次の攻撃来るよ!!」

その声に目を開くと、また鎌を構えるカマキリが目前に屹立する。そう、このモンスターはカマキリのくせに体長が二メートル近くあるのだ。サチが恐怖するのも当然である。
しかし、サチはこんどこそ恐怖を押さえ込んだ。振りかぶる鎌を盾で押し返す、すると鎌が勢い良く火花を散らし、弾き飛ばされた。『パーリング』だ。

「テツオ、スイッチ!」
とマルバが叫ぶ。テツオが走り出て渾身の一撃を喰らわせた。態勢を崩したモンスターの細い胴にクリティカルが決まる。モンスターは絶望の断末魔と共にポリゴンの欠片となって霧散した。






その夜。

ケイタに呼び出されたマルバは宿屋の一階に現れた。
「どうしたの、急に。」
マルバは丸テーブルを挟んでケイタと向かいあう。

「突然呼び出してごめん。用事ってのはさ、サチのことだよ。」
「サチ?」
マルバは首をかしげる。サチは最近やっと盾の使い方に慣れてきて、このままいけば普通に片手剣士に転向できそうに見える。特に問題はなさそうだけど……?

「サチがどうしたの?」
「いや、マルバがレクチャーを始めてからもう一週間がたつでしょ?それなのにまだまだモンスターに対する恐怖心が消えないっていうか……。ほんとにあと一週間で前衛が務まるようになるのかなって思って。」
「うーん、なんていうか……けっこう順調に進んでいると思うんだけど。だめなの?」
「あれで順調なの?今日だってマルバが鎌を破壊してなければかなりダメージ食らっていたと思うよ?」
「最初あれだけ怖がってたのにここまでできるようになったんだ、いい進歩だと思うけどなあ。」

「でも、それじゃダメなんだ!!」
ケイタは焦ったように声を荒げる。

「前衛がちゃんとしなきゃ、僕たちは死ぬかもしれない!前衛が二人いなきゃダメなんだ。テツオが回復する隙がなきゃ、僕たちは戦えない!マルバも、最初に助けてくれた時の戦闘を見ただろ!?このままじゃ、僕たちが攻略組になるのなんて無理だ!!僕たちはさらに上を目指したいんだ!!!」



テツオが回復する隙がなきゃ、僕たちは戦えない(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)……。
その言い方に、マルバははっとした。これでは、まるで……
「……前衛はテツオがやる、その回復の間だけサチが支えていれば十分だ、とでも言いたげだね。」



「……そうだ。サチはこのままじゃ完全に前衛をすることはできない。このまま無理に前に出て前衛をやったって死ぬだけだ。サチを守るためには、今までどおりテツオが前衛をするしかない。」

マルバはため息をひとつつくと立ち上がって言った。

「盾を信用できていないのはサチだけじゃなくてケイタもみたいだね。サチは、僕がちゃんとした前衛にしてみせる。サチは、テツオの代わりなんかじゃない(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)。」

彼女は、僕だ。かつて逃げ出したかった過去だ。僕は決して彼女を誰かの代替物にはさせない。

宿屋の階段を上ると、十五センチくらい開いていたサチの部屋のドアが音もなく閉まった。まるで、階下の出来事を盗み聞きしていたかのように。











九日目

【Message Recieved!!】
From : Keita
Subject : サチを見なかった?
Main : サチが出ていったきり帰ってこないんだ。僕らは迷宮区に行ってみる。マルバも何か分かったら知らせてほしい。


「サチ……!」

 
 

 
後書き
ヒロインはシリカにする!と宣言しておいてなんなんですが、どう頭をひねってもシリカを攻略組に押し上げることができません。
いかんせん45レベは低すぎる。70レベ(前線の平均レベルという設定)との差がありすぎてゲームクリアまでに攻略組との差を埋めることができないんです。
シリカではなくオリジナルキャラをヒロインにするか、シリカがマルバの隣で戦うのを諦めるか、なんとかシリカのレベルを一ヶ月ほどで25レベル上げるか、そのどれかが必要なのですがどれがいいでしょうか?
ご意見がありましたら感想板までお願いします。どうすればいいか分からなくなってきたので……。 
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