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ファイナルファンタジーⅠ

作者:風亜
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35話 ≪仲間の意味≫

「 ───あの子は何故、必要以上に私を気に掛けるのだろうか」

 エーコとジタンが去った後を何気なく見つめたまま、誰に問うでもなく呟いたように云うマゥスンにフライヤが答えた。

「そうじゃのう……、私から見てもおぬしは、どことなく危うい。飛んで火に入る夏の虫のように、自ら進んで危険や災難に飛び込みその身を滅ぼしてしまうのではないかと、不安にさせる。エーコも無意識の内に、そのように感じておるのやもしれぬな」

「 ───── 」

 表情を変えず僅かに下向き沈黙したマゥスンに、軽く溜め息をついたサラマンダーが口を挟んだ。

「不安にさせてる意味が、よく判らねぇらしいな。お前の仲間って奴らが、少し不憫に思えてきたぜ」

「おぬしがそれを云うのか? つい最近似たような状況に陥っていたとは思えぬ云い草じゃのう?」

「それを云うな、フライヤ」

 皮肉めいた事を云われ、バツが悪くなるサラマンダー。

「ともかくマゥスンよ、難しく考える必要はあるまい。他愛ない会話から始めて、仲間と打ち解けてみてはどうじゃ?」

「 ………。そのように努めてはみるが、やはり判らない。必要以上に接する事に、意味があるのだろうか」

「なら聞くが、お前は何の為に他の奴らと行動を共にしてる?」

 サラマンダーの問いに、マゥスンは淡々と答える。

「 ───成すべき役目を果たす為」

「その役目ってのは、お前独りで成せる事か? だとしたら始めから、他の奴らと組む必要はねぇはずだろ」

「 ………… 」

「そっちの事情は知ったこっちゃねぇが、お前が馴れ合う気がなくても他の奴らにとってお前は、必要とされてるんじゃねぇのか。お前自身もそれに応えようと、元居た世界とやらに戻ろうとしてるんだろう。……意味なんざ、それで充分だと思うがな」

「なら、こちらからも問わせてほしい。サラマンダーは、ジタンを見極めるという名目で行動を共にしてきたそうだが、どういった理由からか、教えてもらえないか」

 マゥスンにしては珍しい問いに、サラマンダーはすぐに言葉が出てこなかった。

「私は席を外そう、ここから先はおぬしら二人で語らうと良いぞ」

「おいフライヤ、余計な気を遣うんじゃねぇ。お前には以前、トレノで話したとはいえ……ここに居ろ」

 二人きりにされるのが嫌なのか、フライヤを引き留めるサラマンダー。

「俺は二度、奴に負けている。大した力を持っていながらそれを見せつけず、ただ仲間とつるむ奴が理解できなかった。どれほどの者か見極めるため、付け狙う事にしたが……奴にしてみれば俺は戦力の1人であり、どんな理由であれ行動を共にしてきたからには俺を仲間だと抜かした。……結局、奴の思考に敵わなかったってとこか」

「ジタンは、会って間もない私の事も仲間だと云っていた。───つまり彼は、単純なのか」

「フフ、良くも悪くもそうなのじゃろうな。おぬしもなかなか判っておる」

 マゥスンの言葉に思わずフライヤは苦笑し、サラマンダーは苦虫を噛み潰したように云った。

「だとすると、単純な思考の奴に俺は二度も負けたのか……。納得し難いもんだ」

「先程のように、積極的に疑問を投げ掛けてみると良いぞマゥスン。おぬしは聴かれた事に対しては話すようじゃが、自分から話そうとせぬからの。……私は飾り気のないジタンと行動を共にしていたら、少しばかりお喋りになったものじゃ。"お前はもう少し、物静かな女だと思っていた"と、サラマンダーに云われたくらいじゃからのう?」

「さあな、俺はそんな事云った覚えはねぇ」

「 ………。フライヤとサラマンダーは、仲が悪いのか?」

「悪くはないと、私は思っておるぞ。更に仲を深めるには、今少し時間が要るとはいえ背中を預け合える仲にはなれそうじゃな」

「俺はこれ以上、どうこうするつもりはねぇぞ」

「 ───仲を深めた先に、なにがしかの恩恵があるという事だろうか」

「損得勘定で深めて行くものでもないじゃろう。互いを認め、許し合える仲になるのは理想だが、強要すべき問題ではないからの」

「 ………… 」

 フライヤの言葉をどう捉えたのか、マゥスンが再び沈黙した所でサラマンダーが付け加えた。

「難しく考えるな。いきなり仲良くやってこうなんざ、面倒なだけだ。……お前のペースでやって行きゃあいい」
 
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