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魔界転生(幕末編)

作者:焼肉定食
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第25話 転生・高杉晋作

 すでに死の床についていた高杉の元に現れたのは、武市半平太だった。
「伊藤君、彼に例の薬は飲ませてあるかね?」
武市は伊藤の顔を見ることなくずんずんと歩き進んだ。
「ええ、最初は嫌がっていましたが、食事や薬に混ぜてのませました」
 伊藤は伏し目がちに、いった。高杉を偽ってその薬を飲ませていることへの罪悪感があったのだろう。
「よろしい。これで、高杉君は復活する。後は私に任せて部屋には誰も入れないようにしてくれ」
 武市はニヤリとほほ笑んだ。
(うん?復活?)
伊藤はその言葉に違和感を覚えた。何故なら、普通なら回復というところではある。
なのに、武市は復活と言ったのだ。
伊藤の心の中に何やら嫌な予感が膨らんでいった。

 武市が高杉の寝ている場所に来たときは、すでに高杉は虫の息の状態になっていた。すでに、武市が言ったように、その部屋には、武市と高杉しかおらず、しーんと静まりかえっていた。
 武市は蝋燭の火を消し、高杉の耳元でつぶやいた。
「高杉殿、祈るのです。行きたいと。この世でまだやり残しがあるはず。願うのです。強く強く、死んでも願うのです」
 が、高杉には聞こえている節はもうなくなっていた。
「さぁ、祈るのです。さすれば必ず蘇られる。この私、武市半平太。いや、大魔王・サタンの名のもとに」
 武市は呪文の呟きを唱え、高杉の前へ座った。高杉の息が徐々に弱くなり、そして息絶えた。
 その時、武市は首から下げていた逆十字のロザリオを天に掲げ、岡田以蔵転生の時と同じ呪文を唱えた。
「蘇れ!!高杉晋作!!!!!」
 武市の叫び声と同時に高杉の亡骸ががくがくとまるで壊れた人形のように暴れ出した。そんなことにも気にせず、武市は祈り続けた。
 ロザリオを持っている手から鮮血が噴き出た。
 以蔵の時はそんな現象はなかった。腕が引きちぎれそうな力。
(これが高杉の力か)
 武市もまた戦っていた。喧嘩屋と言われた高杉の力と。
「さぁ、サタンの元に集え、高杉晋作ぅーーーーーーーーーー!!!」
 武市の叫びと同時に元あった高杉の体の腹を割いて両手の指がまるで蚯蚓がのたうつように飛び出し、ついに現世に生きていた高杉晋作と呼ばれ体をぐちゃぐちゃに引き裂いて、生まれたまままの姿で今の高杉晋作として現れでた。
 その姿はまるで生まれたばかりの赤子のように赤く、そして、その瞳は赤く炎のようだった。

「な、なにごとだ?」
 外に長州藩士たちは何かが爆発したような音にひるんでいた。
「高杉さんのとこだぞ」
「俊介、大丈夫なのか?」
 伊藤の横にいた井上は不安げな目を伊藤に向けた。
「聞多、こい!!」
 伊藤が走り出すと同時に井上も走り出した。
(何か嫌な予感がする)
そう思いながら、高杉の部屋と急いだ。

「武市殿、ごめん」
 伊藤は高杉のいる部屋の襖を武市の許可なく勢いよく開けた。その後ろに息を切らした井上がいる。が、その部屋の光景を見た時、二人は絶句した。何故なら、部屋の中には、飛び散って粉々になっている肉片と生臭い血の匂い。そして、真っ赤でまるで赤鬼のようで整然と違う高杉晋作の姿があった。
 そして、その前に大量の血を浴びることなく座っている武市の姿もあった。
「伊藤君、高杉晋作、みごと転生したよ」
 武市は立ち上げり、ゆっくりと伊藤と井上の方へ振り向き微笑んだ。
(俺はとんでもないことをしてしまったのかもしれない)
 伊藤は後悔した。
 
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