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英雄になりたい

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第三章

 歯科医になるべく必死に努力した、彼はここでも励み見事歯科医となった。そして勤めはじめるとだった。
 友人の一人がだ、彼に困った顔で言って来た。
「今度君の務める病院に行っていいか?」
「歯が悪いんだね」
「痛むんだよ」
 実に痛そうな、苦い顔での言葉だった。
「だからな」
「じゃあ来てくれたらね」
「診察してくれるかい?」
「是非ね」
 微笑んでの返事だった。
「そうさせてもらうよ」
「よし、それじゃあな」
 こうしてだった、友人は彼が勤める歯科医院に行った。そして彼に歯を診てもらってこう言われたのだった。
「下の奥歯が虫歯になってるよ」
「ああ、だからか」
「それで痛むんだ」
「じゃあ治療してくれるかい?」
「勿論」
 微笑んでの返事だった。
「これから」
「頼むぜ、痛くてな」
「結構進行してるね」 
 その虫歯がというのだ。
「これは抜いた方がいいかな」
「えっ、抜くのかい」
「かなり進行してるからね」
 その虫歯がというのだ。
「だからね」
「抜くしかないか」
「差し歯はあるから」
「けれど抜くんだね」
「麻酔はするよ」
 これは忘れないというのだ。
「だから痛くもないよ」
「わかったよ、仕方ないな」
 抜くしかないと言われて手術の時もその後のことも言われてだ、彼は落ち着きを取り戻してそのうえでサイにこう答えたのである。
「頼むよ」
「じゃあね」
「これがヒーローか」
「僕の出した答えだよ」
「皆を守って悪い奴と戦う」
「そうしたヒーローだよ」
「確かにね」
 友人は少しだ、首を傾げさせてからサイに答えた。
「虫歯は悪いことでね」
「歯槽膿漏とか他の病気もね」
「歯牙腫もあったね」
「ああ、そういう病気もあるんだね」
「歯や顎にはね」
「その歯や顎を守ること」
「それが僕の出したね」
 それこそというのだ。
「結論なんだ」
「ヒーローとしての」
「歯は万病の元だから」
「それを治すことが」
「ヒーローだって思ったんだ」
「だから君は歯科医になった」
「そういうことだよ」
 友人に笑顔で言った。
「悪い歯や顎の病気をやっつけて人を助ける為に」
「だから僕の歯もだね」
「そういうことだよ」
「成程ね」
「そういうことだよ、じゃあね」
「うん、また何かあったら頼むよ」
「いや、まずは歯を大事にだよ」 
 このことも言ったサイだった。
「歯磨きを忘れずに」
「そこでそう言うんだ」
「まずは虫歯という悪い奴に襲われないことだよ」
「それが先決なんだ」
「そう、だからいいね」
「うん、歯を磨くよ」
 友人も頷いた、そしてだった。
 サイは彼に歯の磨き方についても話をした、そうして歯や顎の病気に困っている人達を助け続けた。そこで牧師にも言われた。
「こうしたヒーローというのも」
「いいですよね」
「虫歯は確かに悪い奴だからね」
「人とするのなら」
「それを見極めて困っている人を治すことは」
「ヒーローだよ」 
 そう呼ばれている人の仕事だというのだ。
「まさにね」
「ではこれからも」
「ヒーローであり続けるね」
「そうさせてもらいます」
 サイは牧師に笑顔で応えた、そしてだった。
 ヒーローとして人々を救い続けた、歯科医として悪い病気と戦って。


英雄になりたい   完


                         2015・7・18 
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