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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
  孤独感

大地が裂けるような咆哮が響く。

いや、実際周囲の木々が少し震動するほどだ。

そんな戦意を喪失しそうな、凄まじい咆哮の源は、ここアインクラッド第六十九層のヌシとも言える存在達だ。

第六十九層フィールドボス【青龍】、【白虎】、【朱雀】、【玄武】。

総称は《四神獣》、個々があり得ないほどの強さを誇り、現在進行形で攻略がストップしている。

アインクラッド各層の圏外フィールドには、《フィールドボス》と呼ばれる、いわゆる名前付き(ネームド)Mob が要所要所に配置され、迷宮区に至るための関門的役割を担っている。

フィールドボスの生息圏は、必ず絶壁や急流その他の通行不能エリアに挟まれているので、ボスを倒さねば塔に辿り着くことはできない。

つまり、広大な円盤に見える浮遊城の各フロアだが、実質的には複数のエリアに分断されているということになる。

この六十九層も、ど真ん中を分断するように流れている川幅の広い大河のせいで、フロアが北と南に分かれている。

その大河を渡る唯一の手段、大河の中間地点に架かっている、巨大な石造りの橋だ。

その橋の入口を陣取っているのが、《四神獣》というわけだ。

──ゴアアァァッ!!──

吠え猛る神獣達を前に、レンは冷静に状況把握に徹した。

四神獣は、綺麗に横一列に並んでいた。

右端から、【白虎】、【玄武】、【朱雀】、【青龍】の順だ。

なおも威嚇を続ける四獣を一瞥し、レンはまず右端の、機動力が高く、厄介な【白虎】の四肢を切断した。

正直、足が大根のように並んでいるため、非常に斬りやすい。

悲鳴を上げながら倒れる白い虎。

右手を振り切った状態のレンに向かって、【青龍】が突進をしかける。

それを跳んでかわし、すれ違い様に左腕を一閃。龍の首を落とす。

「……あと二匹」

舌舐めずりをしそうなほど、喜怒哀楽の楽の字を顔いっぱいに浮かべているレン。

【玄武】の尻にくっついている二匹の蛇の口が、青色に輝いてきたのを確認すると、素早くその場から離れる。

──と、先刻までレンがいた場所に閃光が走り、地面が凍りついていた。

「っ!」

蛇が氷ブレスを放っている隙にレンは近づき、頭から尻までを両断した。

バシャアアッ!と凄まじい量のポリゴンが巻き起こり、レンの視界が一瞬だけ塞がれる。

そのため、反応が遅れた。

背後から放たれた圧倒的な熱量の業火がレンの仮想体(アバター)を焼いた。

痛みはないが、激しい衝撃が集中力を削る。

「ぐ……うおぁっ!!」

衝撃に耐えながら、半ば勘で両腕を振るう。

短い悲鳴とともに、ブレスが止んだ。

やっと晴れた視界の中で【朱雀】が、その炎が燃えているような翼に傷跡をつけて落下してくるのが見えた。

レンはちらりと視界左上に表示された自分のHPバーを見た。

火炎ブレスをまともに喰らったせいか、それは注意域ギリギリのところで止まっていた。

「あぁーあ」

レンは落下している最後の生き残りに止めを刺すべく、右手を持ち上げた。










アインクラッド第五十層主街区【アルゲード】を簡潔に表現すれば、《猥雑》の一言に尽きる。

始まりの街にあるような巨大な施設はひとつとして存在せず、広大な面積いっぱいに無数の隘路が重層的に張り巡らされて、何を売るとも知れぬ妖しげな工房や、二度と出てこられないのではと思わせる宿屋などが軒を連ねてえる。

実際、アルゲードの裏通りに迷い込んで、数日出てこられなかったプレイヤーの話も枚挙に暇がないほどだ。

レンも、そっちゅうここに来ているが、いまだに道の半分も覚えていない。NPCの住人達にしても、クラスも定かでないような連中ばかりで、最近ではここをホームにしているプレイヤーも一癖二癖ある奴らばかりになってきたような気さえする。

レンは家に帰る前に、四神獣達からドロップしたアイテムを処分してしまうことにして、馴染み、というか第二の家になりつつある買い取り屋に足を向けて──

「あっ!屋台だ~、美味しそう!おじさーん、これ一つ!」

「あいよ!」

いなかった。

近くにあったベンチに座り、揚げたてのチキン(に見えるもの)に息を吹きかけて冷ましていると──

「まさか本当に倒すとはナ」

背中合わせに設置されている後ろのベンチから、語尾に特徴的な鼻音が被さる甲高い声が聞こえてきた。

レンは振り向かずに、充分に冷えたチキンにかぶりつく。

肉汁が滴るそれをゆっくりと咀嚼しながら言う。

「もともと情報をくれたのはそっちでしょ?アルゴねーちゃん」

「にっひっひ。だがナ、まさかソロで挑むとは思ってなかったヨ」

《鼠》はけたけたと笑った。

「あれのどこが、難攻不落だって?一分ぐらいしかかからなかったんだけど」

「それはレン坊が最強なだけだヨ」

甲高い声は、少しだけむくれたような声を出し、なおも続ける。

「攻略ギルド選りすぐりのプレイヤーパーティーが撤退せざるをえないぐらいの強さだったんだゾ。それをいとも簡単に倒すレン坊がターミネーターなだけダ」

「うるさいなぁー」

レンはチキンを食べながらメインウインドウを開く。

素早くタブを切り替え、マップデータにアクセスすると、全てをまとめて羊皮紙アイテムにコピー。

オブジェクト化された小さなスクロールを取り上げると、後ろに放り投げる。

「ほい、ちょっとだけど六十九層の未開拓エリアのマップデータだよ」

「いつも悪いナ、レン坊。前から言ってるケド、規定の情報代ならいつでも…」

「いんや……お金には困ってないからね」

背後から苦笑する気配。

「そりゃ、いいご身分だナ」

皮肉たっぷりの言葉をするりと受け流し、レンは言った。

「そりゃどーも……んで、何か真新しい情報ない?」

声は、んーと少しだけ悩む。

「………レン坊はこれからあそこに行くのカ?」

あそこという言葉が指し示す人物を思い浮かべ、今度はレンが苦笑する番だった。

「まーね」

「そんじゃあ、必要ないナ」

即答した声に、レンは首を傾げる。

「何で?」

「行けば解るヨ」

自信満々の訳を聞こうと、レンが振り向くと、後ろのベンチにはすでに誰もいなかった。

「………何なんだよ」

チキンの最後の一片を飲み込みながら、レンは言った。 
 

 
後書き
なべさん「始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「はーい、今回も残念ですがお便り紹介コーナーはやりません」
なべさん「うーい、今回はいよいよ登場人物紹介コーナー最終回だよーん!」
レン「最終回はやっぱり僕だよねー」
なべさん「イエス!ではどーぞ!!」

名前 レンホウ(愛称はレン)
顔 黒髪、黒眼、童顔。生まれてこのかた「可愛い」以外の第一印象を持たれたことがない
体格 かなり小柄で、キリトより頭二つぶんくらい低い
装備 首:マフラー・オブ・ブラックキャット(真っ黒なマフラー)
上半身:ブラッディ・フードコート(フード付きのロングコート)
ユニークスキル 《鋼糸(ワイヤー)》、範囲攻撃と部位欠損に優れているが、一度止められるとあまり効果は期待できない
追記 ステータスは完全なる敏捷値極振り型。性格は基本的に温厚だが、人の命を軽んじる点が多々ある。

なべさん「おっしゃー!次回から休んでたお便り紹介コーナー復活させまーすよー!」
レン「お楽しみに~♪」
なべさん「はい、自作キャラ、感想などありましたら送ってきてくださいねー」
レン「待ってまーす!」
──To be continued── 
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