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ある筈がないが

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第二章

「これよりな」
「わかりました」
「では我等も」
「ローマに」
「人の姿になってな」
 ベルゼブブは家臣達にこのことも言った。
「そうしようぞ」
「おっと、そうでしたね」
「この姿ではまずいですね」
 ここで家臣達も今の自分達の姿に気付いた、それぞれ悪魔の姿をしている。
 その姿に気付いてだ、そして言うのだった。
「では人間の姿になって」
「そのうえで」
「参るとしよう」
 人の世にだ、こう話してだった。
 一行は人間の姿になりローマに入った、そのローマに入るとだ。
 すぐにだ、家臣は主に意外といった顔で言った。
「随分と街が入り組んでいて」
「道の端が汚いですな」
「汚物と糞尿が捨ててあり」
「鼠がその上を走り回っていて」
「これはまた随分とです」
「汚いですな」
「最近こうなっている」
 ベルゼブブはその汚い、腐ったものと汚物のの匂いが充満している道を歩きつつ家臣達に答えた。
「人の世の街はな」
「ですか、また随分と」
「汚くなりましたな」
「昔よりもです」
「不潔ですな」
「私は宮殿の中は清潔にしているが」 
 ベルゼブブはその汚物と排泄物のふきだまりと化している道の端を見つつ言った。
「人が不潔していることは好きだ」
「旦那様は蠅ですから」
「だからですね」
「不潔なことはよし」
「だからですね」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだ。
「この街はその人の街の中でもとりわけ不潔だからな」
「それ故にですか」
「この街がお好きなのですか」
「このことからもな」
「このことからも?」
「と、いいますと」
「教皇のいる街だ」
 このローマはというのだ。
「先にそなた達も言ったがな」
「はい、確かに」
「我等は旦那様に申し上げました」
「このローマは教皇のいる街です」
「それ故に人の世で最も神聖とされる街です」
「神の膝下です」
 そう言っていい街だというのだ。
「ここは」
「しかしその街に入られる」
「それも好んで」
「そのことがです」
「我等にはわからぬのですが」
「ではそれをわからせてやろう」
 鋭利な整った、人の時に好んで取る姿でだ。ベルゼブブは自分の家臣達に笑って答えた。
「これからな」
「これからですか」
「我等にですか」
「そのことを教えて頂けるのですか」
「そうなのですか」
「ある場所に行ってな」
 こう言いつつだ、ベルゼブブは家臣達をローマの大通りを進みつつ案内していた。大通りの道の端も随分と汚れていた。
 その汚れた大通りをっ見つつだ、そのうえで。
 辿り着いた場所を見てだ、家臣達は驚いて言った。 
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