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フランの狂気になりました

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第十話

 
前書き
よろしくお願いします 

 

「………何だ、お目当ての奴等が自ら来るとはな」

妖怪達の誰かが言った。
私達が目的?………そんな事は関係ない。美鈴を傷つけたこいつ等は決して許さない……!

私は『グングニル』を持つ手に自然と力が篭って行く。
美鈴はお父様が亡くなって唯一私の所に残ってくれた、私の唯一の従者、今、ここで無くすのは惜しい。
“まだ”私には彼女しか居ないのだから。

「『レーヴァテイン』!!」

フランが飛び出した。
彼女が持つ剣とも杖とも取れる不思議な形状の棒に纏った炎が振るわれると共に業火となって周囲に居た妖怪達を一瞬で灰にした。
顔を覆いたくなる程の熱気がこちらまで届いて来る。

暫くはフランに任せて大丈夫だろう。
私は傷だらけの美鈴の下へ行くと、美鈴へゆっくり、ゆっくりと私の妖力を流して行く。
適切な行動という程では無いだろうが、何もしないより遥かにましだろう。
現に、傷だらけの身体から比較的軽い怪我が見る見るうちに治っていく。

吸血鬼の私が言うのもあれだが、些か回復速度が早い気がしないでもないが………、それは美鈴が“力のある妖怪だから”と言う事で納得しとこう。

「………レミリア様!何でここに来たんですか!?今からでもフラン様を連れて逃げて下さい!死にますよ!?」

「今にも死にそうな貴女に言われたくはないわ。それに、私も、フランだってここから逃げるつもりなんて無いわよ?私達は誇り高き吸血鬼、殺されるかも知れないからって逃げるなんて有り得ない…………寧ろ殺してくれるわ……!」

私から殺気と共に妖力が溢れ出る。
私のそれは美鈴でさえたじろぐ程の妖力を波は、フランを始めとして、フランに気を取られていた妖怪達が私の方を見る。

「フラン………其処をどけ……。巻き込まれて死んでも……知らんぞ?」

フランは驚いた様に私を見ると、其処から離脱する様に空へ逃げた。

そう、それで良い……。
今の私は────────────










────手加減なんて出来ないからなぁ!!

私は『グングニル』を渾身の力を込めて“投げた”
私の投げた『グングニル』は目にも止まらぬ速さで、ちょうどフランの居た辺りに着弾すると、其処を中心に私の妖力や魔力が“爆発”した。
その爆発は近くに居た妖怪達を呑み込んで行く、更に爆発の範囲外に居た妖怪達も爆発の衝撃波によって薙ぎ払われて行く。
爆発によって立ち上った砂埃で、周囲は確認出来ないが大変な惨状になっているのは想像に硬くない。



「ちょっと!どういう積り!?私を殺す気か!?」

フランが砂埃の中から出てくるなり“怒り心頭”と言った様子でそう言った。

「……だからどけって言ったじゃない。それに、どいたからやっただけだし……」

「せめて待つ事をして欲しかったよ!ギリギリ巻き込まれ無かったけども!」

「巻き込まれ無かったならそれで良いじゃない」

「ちょ!?“あんた”姉としてそれで良いのか!?」

「その姉に向かってあんた呼びするなんて何様のつもりかしら?」

私とフランは額を付け合ってメンチを切り合う。
「あ?」とか、「お?」とか、言い合っていると段々と砂埃が晴れてきた。
ずっと同じ事をやっている訳にも行かないし、額どうしを離し、砂埃の先を睨みつける。

砂埃を引き裂いて私の『グングニル』が飛んできた。そして、それを皮切りに砂埃が一気に晴れていった───



───その先は正に“地獄”だった。
『グングニル』によって出来た大きなクレーター、更にその周囲は更地に豹変していた。

それでもまだ、その先には沢山の妖怪が見えるのに舌打ちしてしまう。

だが、今ので半分以上は削ることが出来ただろう。
自分でやっておいてあれだが、この後の事を考えると頭が痛くなってくる。やっぱり、多少は手加減した方が良かったと今更ながら思ってしまう。……これはその時に考えれば良いだろう。取り敢えず前の奴等に集中しなくては。

クレーターを超えた更に奥に居る妖怪達。
だが、吸血鬼の視力ならよーく見える。
何割かは、腰を似抜かして居るようだ、それに碌に戦えなさそうな奴もちらほら………。
残ってはいたが、その中でも戦えそうなのが更に限られて居るようだ。

「……! お嬢様!!」

「フフ……どうだ、美鈴?これなら私達……いや、私だけでも十分だったな。フラン、お前はもう出るな。後は私一人で十分………だっ!!」

私はそれだけ言うと、飛び出した。
クレーターを超えて瞬く間に奴等の蔓延る場の空へ。

「どうだ?これが私の力。貴様らが喧嘩を売った相手の力だ!貴様らは私を怒らせた、泣いて詫びろ!、悔いて媚びろ!、それでも私は貴様らを許しはしない!!」

私は手頃な位置に居た妖怪に『グングニル』を突き刺した、その一撃で妖怪は事切れる。

弱い、弱過ぎる。
この程度で、家に攻めて来たのかと思うと怒りがこみ上げて来る。
私達はこの程度にしか見られて居なかったのか……と。
だが同時に誇らしくも有る。
私の力で、家の力を解らせる事が出来る事に………。

半狂乱になって逃げ出す者、只々私に命乞いをする者、感情に身を任せ襲いかかって来るもの。
平常を保つ事さえ不可能なまでに粉々にした理性、奴等には欠片もそれは残されていない。

傷ついた妖怪達も己の存在を保てず消えていく。
残ったのは目の前の数十匹だけ。
“圧倒的”“勝利”それらが私の中を優越感と共に渦巻いていく。

「あー……息巻いてんじゃねぇよガキが」

妖怪達を掻き分けて、私の目の前に現れた男。
気だるげな、この世の全てが面倒臭いと言わんばかりの表情で男はそう言った。

「………それは私に言ったのか?」


「お前以外に誰が居るってんだ」

目元は気だるげな半眼のまま、口元を不敵に歪めてそう言った男は、背に背負う剣を抜いた。

「この剣は銀製だお前達の弱点……この────────」

「───『この剣が有れば私達を殺せる……』とでも言いたいの?」

男は驚いた様に私を見た。
その目は先程までの気だるげな半眼ではなく、大きく見開いて私を見ていた。

「………何だ?吸血鬼に銀は効かないってか?」

バツの悪そうな顔をしてそう言う男。
だが、その目は私を捉えて離すまいと、視線を逸らさない。

「さぁ……どうかしらね?それより……何故“人間”の貴様が其処にいる?」

そう、この男は“人間”私達に攻めて来たのは妖怪の群れ、何故此処で人間が出てきたのか。そもそもこの人間は妖怪達とどんな関係なのか。
魔法による奴属にしても人間一人が従えせせられる数を超えている。

この男は一体どんな手段で妖怪達を味方につけたのか?
一介の人間がこれだけの妖怪達を束ねるなど不可能だ、更にこの一帯を夜にした魔法らしきもの。
何度も言うが一人の人間が起こすには些か事が大きすぎるのだ。

「………敵に情報を漏らす馬鹿が居ると思うか?」

「……そうか、だがまぁ……貴様を殺してしまえば何も問題は無いからなぁ!」

奴は銀の剣を振りかぶる。
同時に私も『グングニル』を振りかぶる。

「はぁぁぁぁ!!」

「シッ!!」

私達の掛け声と同時に、私の『グングニル』と奴の剣がぶつかり合う。
ギャリギャリと耳障りな金切り音が周囲に響きわたる。
奴の剣戟はそれこそ一流の物、対して私は槍はおろか、武術さえまともにやった事のない三流以下の者。

どう転ぶかなんて解らない打ち合い、圧倒的に差をつけて────殺してやろう………。





────私はこの時自分に酔っていた。
だからこそ起きてしまったのだろう、“私があの時もっと理性的に動いていたら”……と。
あの“ピンチ”をおこしてしまったのは私のせいだろう………。
 
 

 
後書き
|´-`)カンソウホシイナー 
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