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フランの狂気になりました

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第六話

 
前書き
よろしくお願いします 

 

フランドール・スカーレットは困惑していた。

彼女の中にいるもう一人の人格、月華。彼女………いや、彼は未来という不確定なものの情報を持って気づけば自分の中にいた。
呼びかければ必ず反応を返して来た彼は少し前から読んでいた本に視線を落としたまま全く反応を示さない。

「……月華??」

フランが再び月華の名前を呼んだ。
しかし何も変わらない。先ほどから同じ事を繰り返し、繰り返し続けていた。

たが、そのいずれも月華は反応を示すこと無く今のままを保ったままなのだ。
ずっと呼び続けているフランから見れば無視されているとしか捉えられなかった。

「うがー!月華ったら、さっきから呼んでるんだから無視しないでよ!」

当然ながら精神年齢が外見相応のフランには無視されるのは我慢ならない事の様で、目に涙を浮かべて月華を睨みつけた。
すると、月華は視線を本からフランへ向けた。
だが────────

「………………月華?」

フランは月華を見て固まった。正確には月華の“目”を見て……そして、その“表情”を見て………。
月華の目からは光が消えていた………そして、表情すらその顔には浮かべていなかった。
その目には、その表情には感情が存在していなかった………。

“普段から表情がコロコロ変わっていた月華から表情が無くなっていた、目から意志の光が消えていた”
今までのとかけ離れた月華の姿にフランは目を見開いて驚愕した。

フランには部屋を出て親に襲われた記憶が抜け落ちていた。
精神の自己防衛が働いたのだろう。
フランには自信が何故気絶していたのか、それどころか自信が気絶していた事さえ知らないだろう。
フランからすれば気づけば眠っていて、起きたら月華が変わってしまっていた。

もうフランには何故こうなっているのか理解できなかった。

「………月華……どうしちゃったの?」

フランから出た言葉はこの位。
それ程動揺が激しかったのだろう、呼びかけ続けてやっとこちらを向いたのに応えてくれるとはフランも思ってはいない。
けれども聞かずには居られなかった。
だが、それはいい意味で裏切られた。

「────別に………どうもしてない………」

月華はフランに感情を感じさせない平坦な声音でただ、それだけを言った。
フランはまたも目を見開いて驚くが、少なくとも自分の声が届いている事に安堵した。

そして、今度こそ何があったのかを聞こうとして──────辞めた。

フランは“月華がこうなってしまったのは少なくとも自分が関係してるのでは?”そう考えたのだ。
フランの精神年齢が外見相応でも頭がそこまで悪い訳ではない。寧ろ月華より頭は良いのだから。
だからこそフランは核心により近い場所にあっという間にたどり着いたのだ。

そして、月華から話を聞く前に月華自らが話し始めれる様になるまで待つことにしたのだ。
月華が話してくれるまで待つつもりは無いが、少なくとも今は月華を労わった方が良いと判断した。

月華は既に本に視線を戻してしまい、反応は期待しない方が良いだろう。
それに月華が自ら話す事が出来る様になるにはただ待つだけではダメだろう。

そこでフランは思い出した。
この屋敷には大きな図書室が有る、其処なら月華の様な者を治す為の本もあるかも知れない。

思い立ったが吉日。
フランは颯爽と精神世界から出て自らの身体へ戻ると、自分の部屋の扉の前に立った。

扉へ右手を伸ばす。

「(月華…………待ってて!)ギュッとして…………………………ドカーーン!!!」

扉が粉々に壊れた。
さっさと部屋から出たフランは図書室を探しに駆け出した。





図書室を探し出すのにはさほど時間は掛からなかった。
と言っても、実際図書室は地下に有ったのでフランの部屋のすぐそばに有ったのだ。
なので、部屋自体は直ぐに見つかったが問題は図書室に有る本の数だ。

天井まで届く壁と一体化した本棚。
そして、同じく天井まで届く本棚が一人分の間隔を開けてズラリと並んでいた。
しかも、その本棚一つ一つにぎっしりと本が詰まっていて、さほど広くない図書室に大量の本が保管されていた。

フランはそれを見て絶句した。
確かに大量にあるのは覚悟していたがまさかこんなに有るなんて思っても見なかったのだろう。
そして“取り敢えず適当に探してれば見つかるだろう”何て甘い考えをしていた自分をのろった。

四つん這いで項垂れていたフランは顔を上げると取り敢えず手近かな本棚から本を出し始めた。



──────────────────────



爆音。
突然地下から聞こえてきた音は私を不安にさせるのには十分な音だった。

「っつ!?……………まさか………フラン?」

レミリア・スカーレットはそう呟いた。
彼女は先日、自身の妹であるフランドール・スカーレットによって親を殺された。
当然フランドールの親でもあったのだが………。
だが、彼女はフランドールに恨みも、怒りも持ってはいない。
彼女の能力は“運命を操る程度の能力”これから先の枝分かれして無限に広がる運命を見て、操る事が出来る能力だ。
本人は現状操る事はまだ出来ないが“観る”事は出来るらしい。その人が辿るであろう運命、そして“辿ってきた”運命さえも…………。

自身の能力でフランドールを観た時、彼女は自身の妹へ言った言葉を後悔した。
『親殺し』もう、自分が言った言葉は取り消せない。
その言葉を言ってしまった時の妹の顔が脳裏を過ぎる。
光の消える瞳、表情が凍るようになくなっていき、そのままふらつく足取りで地下へ戻って行った後ろ姿。

もしも能力を使って真実を知ろうとしなかったら……私は今もフランを恨み、憎んでいただろう。

…………だが
この屋敷“紅魔館”の当主となった今、地下で妹が一体何をしているのか調べる必要がある。

レミリアは大きくため息を吐くと、大量の砂埃を上げる地下への階段を下り始めたのだった。



──────────────────────



「なーいーよー!!」

フランは大声を上げた。
月華を何とか出来そうな本が見つからないのだ。
実際はまだ本棚の半分も調べて無いのだが………本棚の大きさもだが、数も数なのでやる気が無いに等しい状態なのだ。

(誰かに手伝って貰おうか?でも誰に?)

フランがそう考え出した時………。

「何なのこれ!?」

後ろから聞き慣れた、でも最近聞かなかった声が聴こえた。

「ちょっとフラン!?何やってるの!?」

(おねぇ様?………ちょうど良かった?)

レミリアは背筋に何かを感じた。





「何で私がこんな事を…………」

「もー!おねぇ様さっきからそればっか!」

「あははは………」

地下、『図書室』
ここで、この屋敷の現当主、その妹、そしてメイド長が本棚から本を抜き出しては表紙を見てしまう。
この作業をひたすら繰り返していた。

現当主、私ことレミリア・スカーレットがこの部屋に入った時、本棚から出しただろう本の上で寝そべっていた妹を発見した。
彼女が自分を見たとたん何故か背中に嫌な汗が流れた…………。
残念なことにその“嫌な汗”は大当たりになってしまった。

あれよあれよという間に気づけば私もメイリンも、フランの手伝いをさせられていた。

だが、何故フランは『精神異常者の治し方』の本なんて探してるのかしら?
と言うかそもそも図書室ここにそんな本は無かったと思うけど………。

たしか、此処は魔道書位しか…………いや、黙ってましょう。

それにしても…………フランったら物の探し方が下手ね。探すって言うより散らかしてるだけな気もするし……………。
全く………一体誰が片づけると思ってるんだか…………メイリンが大変じゃない。

私?私は片付けないわ。だって当主だし。
ほら、片付けはメイドの仕事じゃない?メイリン達の仕事を取るわけにも行かないからね?
別に私がやりたくない訳じゃないよ?本当だよ?

「ああっ!!」

突然フランが大声を上げた。

「おねぇ様!めーりん!!こっち来て?!!」

すると、フランが私達を呼ぶ。
私とメイリンは、顔を見合わせるとフランの声が聴こえた方へむかった。



そこには通路があった。
図書室には本来出入り口以外に外から中へアクセスする方法は無い筈なのだが、目の前に有るのはどう見ても入ってきた入口とは違った。

「おねぇ様!めーりん!!凄くない!?本探してたら出てきたのよ!!」

フランは興奮して語るが、私は百年近くこの紅魔館で生活してきて、何度もここを利用していたのに未だにこんな部屋が隠れていた事に驚いていた。
メイリンも驚いている………彼女も知らなかったのね………私が産まれる前からこの舘で働いてた見たいだし、まだこんな所があったなんてびっくりしたわよね、私はしたわ。

すると突然フランがその通路へ入って行こうとした。

「ちょっと、フラン!?貴女何してるの!?」

「何って冒険よ!ぼうけん!こういうの見るとワクワクするよね!!」

「いや、しないわよ!?第一此処は自宅よ!?一応私達の家よ?それに、もう少し慎重に………」

「五月蝿い五月蝿い五月蝿ーい!!良い!?おねぇ様?今私の中でこの先に進まないと話的にも進まないって何かが言ってるの!囁きまくってるの!」

そう言うや否やフランは私の手をふりほどいて通路の奥へかけて行った。
あーもう!?しょうがないわ!

私もフランの後を追って駆け出した。

「………あるぇー?私………どうしたら良いんですか?」

そう言って美鈴は周りを見渡す。
そこには無造作に置かれた沢山の本の山。

「あー………これを片付ければいいんですね……」

美鈴はフラン達が進んだ通路をもう一度見ると、散らかった本の片付けを始めた。
 
 

 
後書き
|´-`)ゲームッテイイヨネ 
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