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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ソードアート・オンライン】編
  099 少女たちのデスゲーム


SIDE 《Leafa》

「うぅ…ん…。……そういえばデスゲームに巻き込まれたんだった」

(……夢──だったら良かったのに…)

デスゲームに巻き込まれた初めての朝。目覚めは控え目に云っても〝最悪〟の一言だった。

――「うぅ…んん…」

「きゃっ…!? ……真人兄ぃがどうして──あっ、私が頼んだったけか」

聞きなれないアラームに目を開け、知らない天井を見ている内にデスゲームに巻き込まれた事と、真人兄ぃ──〝こちら〟ではティーチ兄ぃに、恥ずかしながら添い寝をしてもらっていたのを思い出した。

―お兄ちゃん達が私を心配するのは判るよ。……でもお兄ちゃん達が心配なのは私も一緒だよ。お兄ちゃん達に〝何か〟が有った時、〝何も知れない〟、〝何も出来ない〟──って、なるのが一番恐いの―

なんて──お兄ちゃん達には格好つけてはみたものの、やっぱり怖いものは怖い。……死ぬのは怖い。今、私の生存を約束してくれているのは、視界左上に見えるHPバーだけで1000──どころか900にすら届いていないHPが、いやに頼りなく思える。

(……でも私はまだツイてる方だよね…)

兄が2人──掛け値なしで信頼出来る身内が2人も居るのだ。……茅場さんからのチュートリアルの後、昨日の転移門広場前での出来事を(かんが)みたら──あの混沌とした空間の事を考えたら、間違いなく私はラッキーガールなのである。

キリト兄ぃは私を──私と真人兄ぃをデスゲームを巻き込んだ人で、怨み言の1つも言いたかったけど、元々このゲームの誘い文句が「スグとも一緒に〝剣〟をやりたい」だった。……正直に云えば嬉しかった。……だからこのゲーム──【SAO】をやることを承諾した。それに…

―ティーチ、リーファ──いや、真人兄ぃ、スグ。……本当にゴメン。……俺がこのゲームに誘わなければ、こんな事にならなかった! 本当にごめんなさい…っ!!―

あの時、今にも自殺してしまいそうな程に〝悲痛〟の色に染まったキリト兄ぃ──和人兄ぃの顔を見た瞬間、用意していた怨み言が全て消えてしまった。……事も有ろうに、私はキリト兄ぃを(なじ)り──一歩間違えれば〝取り返しのつかない事〟になっていただろう。

……それくらいにキリト兄ぃが追い詰められているのが判った。……私には赦す事しか出来なかった。

「んあ…? ……スグ…? ……なんで居んの──オーケー、デスゲームだったねそういえば」

ティーチ兄ぃがのそのそ、と起きていた。時間を見れば、起きてから既に10分も経過しているのが判った。……どうやらティーチ兄ぃは10分差──私とほぼ同じ時間にアラームを設定していたらしい。

「……おはよう、リーファ」

「おはよう、ティーチ兄ぃ。……って、もうティーチ兄ぃは順応してるね、このデスゲームに」

「……良くある異世界転移モノみたいに、〝いきなり言葉も通じなさそうな異世界に呼ばれて──いきなり(ファーストキス)を奪われそうになる。〟──とかじゃないからな。これくらいなら、まだ慈悲モノだろ」

「あはははっ、なにそれ?」

ティーチ兄ぃは、茅場さんが作ったこの〝無慈悲〟〝残酷〟と云う言葉ですら修飾が足りないこのゲームを〝慈悲モノ〟と返してきた。……冗談に冗談で返され、知らず知らずのうちに頬が(たわ)む。

……これである。真人兄ぃは、いつも私を──〝私達〟の事を気にかけてくれる。……たまに、お父さんより〝お父さん〟をしている事すらあるのだ。〝父〟が2人も居る私と和人兄ぃは果報者なのだろう。

「行こっか、キリト兄ぃも待ってるだろうし」

「ああ、そうだな」

升田 直葉、13歳。今日も生命の危険が蔓延(まんえん)している電脳世界に繰り出すのだった。……一日も早く、心配してくれているだろう両親や友達を安心させるために──〝現実世界(リアル)〟に帰るために…。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 《Asuna》

『……以上で【ソードアート・オンライン】の、正式サービスのチュートリアルを終了する。……プレイヤー諸君の、健闘を祈る』

(そういえば、数学の課題もあるんだった…。……あと英語の予習も。……早くログアウトしてやらなきゃ…)

私とお姉ちゃんの通う学校は、俗に云う〝お嬢様学校〟で、一日でも──〝たった一日でも〟予習が遅れてしまうと、すぐに授業に着いていけなくなってしまう。……私はお姉ちゃんとは違って凡才なので〝数〟をこなさなければならないのだ。

……〝茅場 晶彦〟を名乗った赤いローブの巨体が消えた後、私の脳裏に浮かんだのは課題の事だった。……しかし、いくら探してもログアウトボタンは見つからない。……白状しよう、もう判ってはいる──それは〝現実逃避〟でしかないのだと。

「お姉ちゃん、これって…」

手を付いている地面の感触が〝現実への逃避〟すら許してくれず、隣に立ち──(なにがし)かを考えているお姉ちゃんへと、一縷(いちる)の望みに懸けて言外に聞いてみる。……〝嘘だよね…?〟、〝冗談に決まってるよね…?〟──と。

「アスナ、良く聞いて? ……まず大前提として茅場 晶彦が言っていた様に、外からの救援は望めない。そしてHPがゼロになったら死ぬのも本当だと思う」

しかし──半ば覚悟をしていたと云えど、お姉ちゃんが発した言葉は非情だった。……そんな私の内心を知ってか知らずしてかは判らないが、お姉ちゃんは言葉を続ける。

「……そして、〝これから〟の話をしようと思う」

お姉ちゃんの云う〝これから〟──〝多数(ニュービー)を見捨てて自己の強化を行い、この城──【浮遊城/アインクラッド】の攻略に邁進(まいしん)する事〟…。……そんな提案を私は受け入れたのだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

私のお姉ちゃんは、昔から変なところ──一人称が〝ボク〟とかだったり、そんなところは変わっているが──私からしたら〝なんでも出来る自慢のお姉ちゃん〟である。……このゲームでも私を救ってくれた。

〝お姉ちゃんが居る〟──そう思えるだけで大分助かっている。……お姉ちゃんが居なかったら私は今でも【はじまりの街】で立ち往生を食らっていただろうし、そしてその内──モンスターに鬱憤をぶつけるかの様な馬鹿なレベリングの末に死んでいたかもしれない。

「それじゃあ、行こうか」

「うん、お姉ちゃん」

「……いや、何回も言ったけどこれ──一応ゲームだから〝現実(リアル)〟の話を持ち出すの無しだから」

「お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ。……それに私達双子だからすぐにバレちゃうと思うし関係ないと思うけどなぁ…」

最早この(くだり)は何回繰り返したかは判らない。……デスゲーム2日目──今日は同じβテスターと合流して、意見を交わし合うらしい。……ローブを羽織っているのは、目立つ容姿を気にしてか。

閑話休題。

今日もデスゲームに励むのだった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 《Yuhno》

(憂鬱だ…)

「どうしたの?」

「今から会う奴がちょっとね…」

【ソードアート・オンライン】──このゲームでは感情が顔に出やすくなっている。……ボクの〝憂鬱さ〟が顔に出ていたのだろう、アスナにいらない心配を掛けてしまった様だ。

《Ryu》──今から会う約束をしているのは、〝ご同輩〟──〝転生者〟である。βテスト時代に一緒に狩りをする事があったが、4つ目の特典──〝4つ目は誰が転生者か判る様にする特典〟でリュウが転生者だと判明した。

……最初は真人君かと思ったが、すぐにその可能性は低いと睨んだ。……製品版ならまだしも──βテストに応募までしてゲームを真人君がやるとは思えなかったからだ。……実際、〝一 円〟の名前を使ってカマを掛けたが、反応は無かった。

「ここだよね」

「うん」

モダンな(こしら)えの──少し重さの有る扉を開けると、そこは店の外観とマッチしている良い雰囲気が漂っている店だった。……リュウのセンスが意外に良かった事に驚いているのは、リュウへの失礼に当たっているのだろう。

「いらっしゃいませ」

リュウに呼ばれたのは、なんでもないNPCレストランだった。店に入り、店員──NPCの挨拶を聞き流しながら呼び出した人物を探す。店の角の方に、〝転生者〟と云う設定が有る以外は普通の──黒い髪の、ボクたちから見て年下に見える少年が座っているのが見えた。

「……《Yuhno》──で間違いないか?」

開口一番はそれだった。あちらから見たら〝怪しげなローブ×2〟なのだからリュウの質問は正しい。

「うん。ボクが《Yuhno》で間違いないよ。そう言う君は《Ryu》で間違いかな?」

「ああ、《Ryu》だ。……隣のローブの人は誰だ?」

「……この娘は《Asuna》──ボクの妹なんだ。今はボクもアスナも目立つからローブを羽織ってるんだ。……あまり気にしないでおいてくれるかな」

反応を探る為に、メインヒロイン──アスナの名前で釘を刺しておく。……これでアスナがローブを外した時、〝転生者(リュウ)〟がうっかりアスナの名前をこぼしても平気──なはずである。

「ちょっと! お姉ちゃん!」

「……っ!!?」

ボクから《Asuna》が紹介された事と──アスナの〝お姉ちゃん〟発言が重なったからかは判らないが、目に見えてリュウが驚いている。……藪から蛇だすのもアレなので──リュウから〝いらない嫌疑〟が掛かるかもしれないので、今はスルーしておく。

「《Asuna(アスナ)》ですよろしく。……《Ryu(リュウ)》さん──で良いんですよね?」

「……《Asuna》──アスナね、よろしく。……呼び方はまぁ任せるよ」

いくらか余裕が有るのか、リュウに向かってアスナは挨拶する。リュウもまた、アスナに簡単に挨拶を返す。……その後はボクが主導で〝これから〟の事を語り明かした。

……気が付いた時には夕方になっていたのはご愛敬だろう。

SIDE END 
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