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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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Another110 友情

 
前書き
遼の友情 

 
大輔達がギガシードラモンを撃破した頃、太一達はどこから攻略しようかと頭を悩ませていた。
その時である。
複数のデジコアを抱えながら太一達の所に来たのは。

ゲンナイ「遅れてしまってすまんのう。」

太一「何だよ爺?今更戻ってきて、大輔達ならもう行っちまったぞ」

ゲンナイ「むう…遅かったか…いや、デジタルワールドの安定のために使われていたお前達の紋章の力を返しに来たのじゃよ」

全員【え?】

デジコアから光が放たれ、紋章が輝きを取り戻した。
四聖獣が完全に目覚めた今、選ばれし子供達が紋章の力を持っているべきだと言うらしい。

ヤマト「なる程、ゲンナイさん。俺はあんたを少しだけ見直したぞ」

全員【うん。】

フェイト「ところで、あの光は…」

ゲンナイ「うむ、今頃大輔達の元にも行っているじゃろう。スナイモンのデータも用意した。これで大輔達も全力で暴れられるはずじゃ」

つまり今まで全力で戦えなかった大輔とブイモンもフルパワーで戦えると言うのだろう。

ユーノ「希望が見えて来ましたね…」

ティアナ「はい!!これならデジモンカイザーに勝てる!!」

遼「なあ…」

全員【?】

小さく聞こえた遼の声に全員の視線が遼に向いた。

遼「治を倒したら…あいつはどうなるんだ?」

ルカ「そうですね、正規の選ばれし子供ではない以上。デジヴァイスは没収され、デジタルワールドからも何らかの罰が下るでしょうね。あれだけのことをしてるんです。相応の罰が待っているでしょう」

遼「治にチャンスをやってあげてくれないか?」

太一「はあ!!?何言ってんだよ!!?あいつがしていることはお前も見てるだろ!!?」

治「分かってる。分かってるさ、でもな…どれだけ罪を重ねてもあいつは小さい頃からの付き合いで、俺の2人といない親友なんだ!!だから、あいつを救ってやりたいんだよ!!不器用だけど優しいあいつを知っているから!!」

一輝「それが今まで悩みに悩んでようやく出た結論か?」

遼「ああ…悩んで悩みまくって、出せた答えがこれだけだった。この答えが正しいのかは俺にも分からない。でも、他人の出した答えに納得出来ないなら、自分で答えを探す。」

ルカ「遼さん…」

遼「あいつが…“天才”とかそういうので苦しんでたのを知ってたのに…本当なら俺があいつを一番理解してやらなきゃいけなかったのに…!!」

今、自分にあるのは後悔だけだ。
あの時、ちゃんと治と話していればこんなことにならずに済んだかもしれないのに。
生まれつき優れていたから、他人に距離を置かれ、両親も他人も自分を見ない、ありのままの自分をさらけ出せそうなデジタルワールドには行けず、賢や自分は選ばれたのに自分は選ばれない。
独りになって、絶望して、訳が分からなくなり、全てを壊そうとしている。
そして、余計にデジタルワールドから拒絶されるという負のスパイラルに陥って、もうどうしようもないところまで来てしまっていた。

一輝「お前の気持ちは分かる。でもそれが通るかは別問題だ。リーダーである大輔の意見も聞かないとな」

大輔「いいんじゃないかな?」

フェイト「大輔、帰ってたの?」

大輔「ああ、遼さんとデジモンカイザー…治さんは幼なじみなんだろ?」

賢「ああ、弟の僕より兄さんのことを理解していると言っても過言じゃない」

実際、治と距離があった賢より、等身大の治を見てきた遼の方がずっと治のことを理解していると言っても過言ではない。

大輔「だったら、あの要塞をぶっ潰して、デジモンカイザーを止めさせた後、治さんの監視を遼さんに任せよう。治さんのことを幼い頃から知っている遼さんなら万が一何があっても対応出来るはずだ。杜撰なデジタルワールド上層部共に任せるよりかは遥かに信頼出来ると思うけどな」

遼「大輔…いいのか?」

大輔「はい。みんな…今回だけ遼さんに任せてみようぜ。大事な友達を思う気持ち…痛いほどに分かるから…」

ヤマト「…そうだな、遼の“友情”に免じて今回は遼に任せてみるか」

空「そうね…」

ミミ「えっと…どういうこと?」

光子郎「あ、すみません。何の説明もしていませんでした…遼さんとデジモンカイザーの一乗寺治さんは幼なじみでして、一乗寺治さんは賢君のお兄さんでもあるんです…それから…」

自分の知っていることをミミに教えていく光子郎。
モニターを見遣ると、攻撃は止んでいる。
どうやら今日の攻撃は終わったようだ。

大輔「みんな、今日はこれでお終いにしよう。紋章の力が戻ったのは嬉しいけど。紋章の力に慣れさせないとな」

全員【了解!!】

大輔「さてと…俺もお説教しに向かうとするかね…」

大輔が目指すのは一乗寺家だ。
せめて帰る場所くらいは用意してやりたいという大輔の気遣いだ。































「治ちゃん……一体何処に居るの……?」

一乗寺兄弟の両親は不安で夜も眠れない状態で居た。
愛おしい子供の片割れが消えただけでも精神に多大な重力をかけている……。
そこに追い打ちをかけるテレビの言葉達。
何も知らない人間の様々な言葉達で両親の心も体力も限界が近かった。
そこへ。

ドンドン

家のドアを叩く音が聞こえる。
2人は一瞬またリポーターかと思ったがもしかしたらという希望を抱いた。

「…………治……ちゃん?」

震える手でドアを開ける母。
しかしその希望は簡単に打ち砕かれた。
そこに立っているのは大輔だった。

大輔「一乗寺さん……治さんのお宅ですよね?」

穏やかな笑みをを浮かべて大輔は一乗寺家を訪れた。










































「はい」

大輔「どうも」

お茶を出され頭を下げる大輔。
父はこんな時間に訪れる子供に不信感を抱いていた。
だが治と知り合いらしきこの少年が何か知っているかも知れないと思ったのだ。

大輔「…………単刀直入に聞きます、一乗寺治さんの事……心配ですか?」

「えっ!?」

「当たり前だろう!?」

親が子供を心配するのに理由は無い。
そんな事を聞く大輔に父は怒鳴り声を上げる。
深夜に近所迷惑であるという一般的考えは一時的に頭から消え去る。

大輔「……本当に?本当に“治”さんと“賢”を見つめているんですか?」

治と賢を強調させる大輔。

「………………当たり前だ」

父の絞り出す声に大輔は少し黙り瞳を閉じる。
大輔「俺には、お2人が“治”さんや“賢”を見ていないように思えるんですが?」

「!?」

母親は絶句し父親はソファから立ち上がる。
しかし大輔は動じず。

大輔「……本当は……“治”さんや“賢”のことを天才少年としか見てないんじゃないですか?」

「……君なんかに……何が分かるって言うんだ……!?」

大輔の胸倉を乱暴に掴む父。
どうしたらいいか悩む母。
大輔は父の腕を掴む。

大輔「そんなこと知るか!!だから聞いてるんだよ!!あんたらは本当に一乗寺“治”さんを心配してんのか!?あの人があんな風になった理由、責任が誰にあるって思ってんだ!?」

「責……任……?」

少し力を弱める父。
明らかに困惑している。
不機嫌な表情で胸倉を掴まれている大輔はなお続ける。

大輔「そりゃ親だったら子供が“天才”だったら気分はいいだろうよ!!色んな賛辞を貰えて嬉しいだろうよ!!でもな、“あるがままの自分を見てもらえない子供の心”をあんたらに理解出来るか!?治さんは頭は良くてもまだ子供なんだよ!!まだまだ親に甘えたい盛りの子供!!何でそれに気付かないんだよ!!!!」

大輔の怒声に父親の手は震えていた。
時間が凍り付いたようだった。
大輔は治と賢の父親の腕から解放され溜め息をついた。

大輔「……もうすぐ帰るから……だから……それまでに心の中でちゃんと整理をしておいて欲しい。“治さんは治さん”だから」

「!?治ちゃんが……帰ってくる!?それは本当なの!!」

母が玄関に向かう大輔を追う。
父はまだショックを受けたままである。

「ねぇ!君!!」

大輔「俺と賢達で治さんを連れ戻す。治さんが賢と一緒に帰ってきたら、治さんを抱き締めてやってくれ。それが今、治さんに必要なことだと思うから」

「…………」








































アインス「もういいのか?」

マンションの外で待っていたアインス。
大輔も笑みを浮かべながら頷いた。

大輔「ああ、あの人達は賢達の評判に舞い上がっていただけで良い人達だからな。これで治さんにも帰る場所が出来た。」

アインス「そうか…帰る場所があるというのはそれだけで幸福なことだ。」

大輔「治さんも賢と同じように親の期待に応えようとして、したくもない勉強やスポーツをやって自分を抑えてたんだ。冷静になって考えると、あの人がデジタルワールドに固執するのもデジタルワールドが本当の自分を認めてくれる世界に見えたんだと思う。だからこそあんなことになった」

アインス「デジタルワールドは未来と夢を信じる存在を選ぶ傾向がある。賢の兄は…諦めてしまったのかもな」

大輔「でも、生きている限り罪を償うことは出来る。もし治さんが罪を償おうとするなら、全力で力を貸すつもりだよ」

アインス「そうか…大輔がそう言うのなら私も全力で力を貸そう」

大輔「ありがとうな」

アインス「気にするな、あなたと結ばれる時に誓ったはずだ。“いついかなる時もあなたに着いていくと”…」

大輔「ああ、明日から忙しくなるぞアインス」

アインス「ああ」

一乗寺家から聖竜学園の寮に向かう大輔達であった。







































大輔が出ていった一乗寺家では重い空気が立ち込めていた。

「なぁ、俺達は……治と賢をしっかり見ていたか?…もしかして…見ていなかったんじゃ…」

「………ちゃんと見ていた、はずだったけど……もしかしたら…私達は治ちゃんや賢ちゃんの事を“治ちゃん”と“賢ちゃん”として見ていなかったかもしれないわね……あの子の言う通り……あまり治ちゃんや賢ちゃんの気持ちを考えていない所があったかもしれない……」

2人は黙り込んでしまった。
その心には深い後悔の念が渦巻いている。
しかしこれなら大丈夫だ。
今の2人ならきっと、一乗寺治の帰る場所となれるだろう。 
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