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RSリベリオン・セイヴァ―

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第八話「謎の襲撃者」

 
前書き
凰戦がメインとなる話です。乱入してくる謎のISはチョイ役かも……? 

 
翌日、代表戦当日のアリーナに狼の姿は見当たらず、代わりに一夏が白夜を展開してアリーナの入口に立っていた。
――全く、狼さんも無茶なことを言うよ?
昨日、弥生と帰宅した狼から告げられたことに正直、驚きが隠せずにいた。凰が言ってはいたが、あまり信用性がなく、しかし狼から聞けば、信じたくないが信じてしまうのだった……
『ごめん! あのチビに振り回されて散々な目に会ってさ? 今日だけでいいから代表戦の相手をしてやってくれ?』
昨夜に言われた狼の台詞が、今も頭の中に残っていた。
「仕方ない。今回は一肌脱いで頑張るとするか?」
深呼吸をし、一夏はアリーナへと入場した。
「あ! 織斑君よ!?」
「本当だ! 今日は狼の奴いないじゃん!?」
「ラッキー! これで織斑君の活躍が見られる~!!」
周囲の観戦席に座る女子たちは一夏の登場に狼とは違って歓声を上げる。
――うるせぇな……!
舌打ちをしつつ、一夏はしぶしぶと白夜を両手に握った。
「RS本体異状なし、飛行状況異常なし、防御システム……異常、なし」
白夜の状態をホログラムに表示し、一夏は上空を見上げた。
「アイツか……?」
頭上の空には、紅いアーマーを纏った一機のISが浮上している。中国のIS甲龍(シェンロン)である。
「ようやく、戦えるわね? 一夏!」
「フン……」
一夏は、凰を睨みつけて彼女の目の前に浮上する。
「この戦いで、アンタにあの時の約束を思いださせてやるわ?」
「戦いで、約束を思いださせようなんて……強引で野蛮だな?」
一夏は、何食わぬ顔で言い返す。
「そう……じゃあ、さよならねぇ!?」
キレたように、凰は豹変して両手に双剣「双天牙月」を握った。
――中国の国産IS、甲龍……とりあえず、中国のISの中ではトップクラスを誇る高性能機か?
試合が始まる数時間前、事前に弥生から貰ったデータを観覧しておいた。攻略はよくわからないが、武装の種類は調べておいた。
「行くわよ? 一夏!!」
双方に持つ双天牙月を連結させて一刀の薙刀へ合体させて、それを優雅に振り回して一夏へ襲い掛かった。
「……!?」
一夏は、凰の息も止まらぬ猛攻を避け続けながら、できるだけ距離を取り続ける。しかし、
「もらったわ!」
「なにっ!?」
薙刀の猛攻に気を取られ、甲龍の両肩に浮遊する衝撃砲の存在に気付くことができなかったのだ。
――衝撃砲ッ!?
衝撃砲、それは中国が独自の技術で開発したという、空気を取り入れて衝撃波に変換して撃ち放つという兵器らしい……
「ぐあぁ!」
衝撃砲をもろにくらった一夏は、そのままアリーナの壁へ叩き付けられる。

「白夜が防御力に手向けているとはいえ、いつまでもつやら……」
席に座る狼は、そう一夏の戦いを見守った。
「しかし、甲龍の衝撃砲は射程が短距離とはいえ、威力は桁違いです。あの薙刀で攻めに入り、守りは、あの衝撃砲で固める。これは、一筋縄ではいきませんね……?」
狼の隣に座る弥生は、鋭い察知で甲龍の性能を見抜いた。

「衝撃砲の威力は強大だ……薙刀の猛攻も半端ない。だが……」
一夏は、白夜を両手に構えた。そして決心したかのように彼は甲龍の周辺の上空を駆けだす。
「何度やっても同じよ!?」
凰は、そんな一夏の真横から薙刀を振りかざす。それでも、一夏は彼女の猛攻を掻い潜りながら距離を保ち続けた。しかし、それもまた再び放たれる衝撃砲によって崩されてしまうのだ。
「言ったじゃない? 何度やっても……同じよ!?」
甲龍の両肩部に浮遊している衝撃砲の砲身が再び一夏へ牙をむき、そして放たれた。
――来たっ……!!
刹那、一夏は左手で白夜の柄を握り、もう片方の右手を刀身の峰へ添えた。
「……!?」
容赦なくふりかかる衝撃砲によってまた吹き飛ばされるのかと思いきや、後の展開は大きく急変する。
「な、何でよ!?」
一夏が吹き飛ばされるのを予想していたのだが、一夏は白夜を構えたままその場に浮上している。
「衝撃砲とはいえ、所詮は風、空気そのもの。その風を刀のような鋭い刃で裂けば衝撃砲といえども消滅するはずだ!」
「くぅ……!」
自分でも気づかなかった弱点をつかれ、苛立つ凰だが衝撃砲は空気を原料として取り入れるため尽くことなく無限に放つことができる。だから、それはそれで意味がないのだ。
しかし、それ以外にも甲龍には弱点がある。
「それと……!」
一夏は、素早く凰の背後へ回り込んだ。
「しまった!」
「甲龍には、背後からの対策がないことと……先ほどの衝撃砲はチャージするのに時間がかかることだ!」
軽く目を通したとはいえ、甲龍のデータを見せてもらってラッキーだった。しかし、相手は中国代表候補生だ。兵器の威力よりも操縦者の技量が最も恐ろしいだろう。
「くらえぇ!」
「……何のォ!!」
しかし、凰は振り返り薙刀で一夏の白夜を受け止めて弾き返した。
――相手は巨大な薙刀だ。それに対して、こっちは一見ただの日本刀……大きさと馬力ではあちらの方が上か……
そう、五メートル近い巨大な武器に約一メートル以上の武器、大きさ共にパワーに差が出る。これではパワー負けするのが落ちだ。
――俺にも、絶対神速みたいな必殺技があれば……
一夏は、そう思った。RSは、基本的に装着者の発想と積み重ねた技術によってその人間特有の技が生み出されるようになっている。しかし、一夏はRSを手にして数日と満たない。そんな彼が、目の前の代表候補生と格闘するにはやや不利であった。
しかし、そう考えている間にも凰の容赦ない薙刀の猛攻が続く。そして、最悪なことに衝撃砲のチャージが完了していた。
「あの衝撃砲を喰らったらライフが10以上減っちまう……!」
現状白夜の活動状態を確認した。目の前に映し出されたホログラムによると、ライフはあと40と50を切った。あの衝撃砲を一発喰らっただけで防御エネルギーを半分以上も持って行かれたのだ。
――考えろ……相手はパワーが強いとはいえ、それ以上に何かが欠けているところがある。そこをつけば必ず、きっと……!
「……ッ!?」
しかし、甲龍への攻略に気を取られ、凰の薙刀猛攻をもろに腹部へ受けてしまった。
「がぁっ……!?」
咄嗟に距離を取り、ダメージを受けた腹部を片手で押さえた。
「こいつぁ……効くぜ……」
「どうしたの? それが今のアンタの実力ってわけ?」
凰は既に勝ち誇っていた。
――くそっ! このままではマジでやられる!!
先ほどの攻撃でライフルは20も減り、残りのライフルであの衝撃砲を受ければこちらとてひとたまりもない……
「そら! そらぁー!」
さらに凰の猛攻が繰り出される。それを何とか白夜で受け止める一夏であったが、その刹那。
「……!?」
一瞬、薙刀「 双天牙月」の刃にわずかな切りこみが幾つか見えた。先ほど自分が白夜で刃を交えた箇所である。
――切りこみ? 傷……まさか!?
一夏は、一か八かで賭ける。白夜を強く握りしめ、右下段へ構えだした。
「フフッ、覚悟を決めたようね?」
凰も、一夏が一撃で勝負を決める行為だと悟った。
「行くわよ……一夏ァ!!」
猛スピードで突っ込む凰と甲龍に対し、その場で立ち止まり迎え撃つ姿勢を取る一夏と白夜。
――頼む、白夜……!
そして、一夏は白夜を上に向けて切り上げる。風の音と共に白夜の鋭い刃は、凰の持つ薙刀の刃へ思いっきり斬り付けた。その、刃の切りこみに向けて白夜のエネルギーを集中的にぶつける。
「そこだぁ!」
次の瞬間、 双天牙月の片方の刃が斬り飛ばされた。
「そんな……!?」
凰の、怯んだ隙をついて一夏は彼女の腹部へ白夜の一撃を撃ち込んだ。
「こんの……!!」
一夏を追い払うため、両肩からの衝撃砲を撃ち放とうとするも。
「来たか……!?」
それを察知した一夏は、ふたたび凰の背後へ回り込み、白夜で衝撃砲の砲身を背後から切り落とした。
機体の部位が破損して、次々と甲龍のシールドエネルギーの残量が減少していく。
衝撃砲を二つとも失い、さらに片方の刃しか残していない薙刀を持つ甲龍は、目の前の白夜と互角か、それ以下の存在となった。
「まだ! まだまだよ!?」
飛び道具がなくとも近術戦なら負けられない。凰は再び一夏へ猛攻を仕掛けるが、その片方の刃も、白夜の刃によって粉々に砕け散った。
「う、うそっ……!?」
「切れ味の強い武器に何度も叩き付けていたら、刃こぼれぐらいはするぜ?」
一夏の白夜は日本刀の真剣。刀とは、切れ味に最も優れた武器でもある。特に、刀モデルのRSは切れ味と、耐久率に力を込めたタイプだ。何度も言うかもしれないが、RSは防御力の強度を捨てる代わりに、IS以上に攻撃力がずば抜けている。そんな武器にISタイプの武器が何度も刃を交えれば……勝敗の結果は知れている。
こうして、甲龍の武装は全て使用不能となったことで、アリーナに一夏の勝利を告げる放送が鳴り響いた。
「そ、そんな……アタシは認めないわ!? どうして、そんな刀一本でこの甲龍に太刀打ちできるわけよ!?」
しかし、凰だけは認めずに一夏の勝利に反対していた。
「いい加減に認めろ! 凰……」
「まだよ……まだアタシは戦える!」
甲龍を纏う凰は、一夏へ拳を向けだした。
「拳と武器とじゃ、どう見たって不利なのはわかるだろ!?」
「わからないわね!? 最低でも、アンタみたいな等辺僕には!!」
――チッ! このチビ……!!
諦めが悪い凰の執念深さに、一夏は痺れを切らしていた。しかし、
『――上空より、熱源接近――』
「!?」
白夜が知らせた警報に一夏は上空を見上げた。上空から数発の図太いビームが降り注いでくる。
それを、咄嗟に一夏はバックステップでかわす。

「何が起こったんだ!?」
上空を見上げる俺と弥生は、上空から現れた謎の黒い人影を目撃する。それは……
「ア……IS!?」
俺は叫んだ。そう、あの形と姿は確かにISの形状である。全身を黒いアーマーを纏い、頭部の素顔すらも見られない。また、先ほどはなったであろうビームの発射元は、あの巨大な両椀部からであった。
「そんな……あんなタイプのISは見たことがありません!」
弥生も、俺の隣で目を見開いた。
「支給、蒼真さん達に連絡を取ります!」
弥生は、咄嗟に携帯を取り出した。
「じゃあ、俺が何とか食い止めるよ!」
「お願いします……こちらも、早く応援を呼びますから!」
俺は、零を展開して観戦席から飛び出していった。

『アリーナにて正体不明のISが乱入! 生徒の皆さんは至急シェルターへ避難してください。また、専用気持ちの生徒さんたちは教師の人たちと一緒にカタパルトへ……』
真耶の放送がアリーナへ響いた。
「一夏! 無事か!?」
俺が一夏の元へ駆け寄る。
「狼さん? あれはいったい……!?」
「俺にもわからん……だが、このままではヤバいことは確かだ。弥生が今、応援を寄こしてくれる! その間、何としても食い止めるんだ!?」
「は、はい!」
「アタシも戦うわよ!?」
そこへ、凰が割りこんできた。
「何を言ってるんだ!? お前のISには武装が……」
俺が止めに入るが、凰は聞きいれてはくれない。
――邪魔だけはするなよ!?
俺は、そう思いながらも凰に構わず一夏と共に連携を取りながら謎のISへ攻撃をかける。
しかし、相手の両椀部から放たれる巨大なビームは近づいただけでもライフが削られる。うかつに動けばダメージを喰らってしまう……
「危ない!?」
凰への直撃を防ぐため、一夏が彼女をかばい抱えてビームから逃れる。
「ちょ、何すんのよ!?」
と、助けたはずの一夏を突き飛ばした。
「何すんだよ!?」
「よ、余計なお世話よ!?」
「お、お前な……!?」
そんな、こんな時にツンデレを出す凰に俺は痺れを切らす。が、
「邪魔だ! 退けテメェ!!」
そんな凰の背へ何者かのダブルパンチが直撃して、彼女は地上へ叩き付けられて目を回していた。乱暴であるとはいえ、これで気にせずとも戦える。しかし、彼女を気絶させたのは何者か?
「よう! パーティーに遅れて悪いな?」
「ごめん! 間にあったかい!?」
その声は、上空から飛来した二人の影から聞こえてきた。槍「桜幻」を持つ等幻太智と、斧「雷豪」を担ぐ飛電清二の姿であった。
二人は、それぞれの武器を弾いたり、楯にするなどして謎のISのビームをかわしながらISへダメージを与えた。そして、そのISは二人の渾身の一撃によって即死となって動かなくなる。
「い、いいのかよ!? 操縦者が……」
俺は、二人へ駆け寄ってそう尋ねる。
「心配はいらねぇ……コイツは、「無人機」だ」
と、太智がそう答えた。
「む、無人機!?」
「そう、それも何処の国のものでもない識別不明のIS。しかし、今はそのことよりも……?」
清二が指をさした先の上空には、幾つかの教員機と、代表候補生たちの専用機らがこちらへ向かってきていた。
「ああ……ありゃあ、面倒だな?」
てっとり早く事を済ませたのはいいとして、この後の言い訳が大変であろう?
だが、そんな彼らの背後では大破したはずの謎のISがギギギと軋む音を鳴らしながら巨大な片腕をこちら向かうISの上空へ向けだした。
「やべ!?」
その片腕を桜幻で地面に突き刺した頃にはすでに遅く、ビームは教員機と専用機の飛ぶ上空へと向かう。ISの中には専用機でセシリアが纏うブルーティアーズも含まれる。あんなビームをもろに喰らえば、ISでも体勢を崩して地上へ真っ逆さまに落ちてしまうだろう。
「絶対神速!」
俺はとっさに叫んで、ビームの放たれた目標へ向かって飛び出した。
「さがれ! セシリア!?」
まさに、セシリアの元へビームが命中するはずであった。しかし、間一髪で彼女を庇ったことで、ビームは俺の背をギリギリ掠めてセシリアは驚いただけで助かった。しかし、そのおかげで俺のライフが50も減っちまったぜ……?
「け、怪我はないか? セシリア……」

その後、謎のISは教員たちによって回収された。また、一夏は凰との戦いを得てクラスで一躍人気者に……でも俺は、特に何も良いことを言われることなく、ただ凰に恐れおののいて一夏に代わって戦ってもらった臆病者っていう評価を受けた……だが、
「謎のISと戦う時、狼さんも一緒に戦ってくれたんだ! 相手の放ったビームからセシリアを守ったのも狼さんなんだぞ!?」
そう、フォローしてくれたおかげで何とか非難を浴びずに済んだ。しかし……
「今日から転向することになりました等幻太智ッス、三年間は宜しくっスね?」
「ど、どうも……飛電清二です。これから三年間よろしくお願いします」
弥生が呼んだ応援とは、近々ここへ派遣されることになっていた。この二人であった。偶然今日から転入してくる予定だったらしいので好都合であった。
しかし、二人は一夏とは違って、狼と同様の三枚目キャラと見なされて歓声と歓迎は皆無となった……
――やれやれ大変なことになりそうだぜ……?
俺は、心底そう思った。

IS学園の寮室には寮長の織斑千冬以外は誰もいなかった。彼女は、誰もいないことを確認したうえで携帯を取り出すと、何者かへ連絡を取った。
「……私だ。そうか……やはり、あのISを送ったのはキサマか? まぁいい……で、何のようだ? って、聞くまでもないか……ああ、そうだ。うむ、やはり鎖火狼と一夏が持つ武器の形状をしたISは、やはりISとは言えない。まるで、ISとは違う別の存在と言った方が……ああ、わかっている。しかし、いい加減「彼」のことを悪く言うのはやめろ? もう、何年も会っていないからといって、私が彼のことを忘れると思っているのか? それは……当初は、あのような不愛想な別れ方をしてしまったが……そうだ、近いうちに彼の元へ会いに行く予定だ……行くな? そんな決定権はお前にない。とにかく私は、久しぶりに思い人の元へ足を運んでみる。邪魔はするよなよ? いいか? 邪魔はするな? わかったな……」
と、千冬は携帯を切り、椅子に座った。
――ようやく、会えるな?
彼女は、10年前に果たせなかった告白をかつての幼馴染に伝えるのを決心したのだった。
しかし、現実とは如何に残酷かを、文武両道で完璧的人物として慕われている彼女はまだそれを知らないでいた……


 
 

 
後書き
予告

新たに加わった太智と清二、心強い二人を迎えてさらにドタバタは止まらない!
その一方、蒼真さんは何やらRS関連でどこかへ行っちまった……

次回
「蒼真と……」 
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