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サテラさんとカズトくん

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days1.

 
前書き
ちょこっと息抜きがてらに、ホリミヤに影響されて書きました。年齢操作、関係操作、性格改変、何でもありです。どうぞ、よろしくお願いします。 

 

誰にだって、知られたくないことや、隠していることの、一つや二つあるはずだ。
でも、もしもそれを共有することが出来たとしたのなら…………
これは、そんな話だ。

*****************

「サテラー!」

学校の廊下で、淡い緑色の髪、わポニーテールにしている女子生徒が、走ってくる。その先にいるのは、ブロンドのロングヘアの女子生徒がいた。

「どうしたの、キャシー?」
「お願い!今日の宿題見せてください!」
「はぁ…また?」

女子生徒、キャシーの友人であるサテラは、呆れたかのように溜息を吐き、鞄の中からノートを一冊取り出した。

「授業までには返してよ」
「ありがとうございます‼︎」

そう言いながら、ラナはサテラの後ろの席に座りながら、ノートを広げて宿題を写し始める。

「あ、そういえばサテラ」
「んー?なにかあった?」
「この前、知り合いからサテラの番号教えて欲しいって頼まれたんだけど、言っても平気?」

キャシーがそう言うと、サテラは一瞬眉を顰めたが、すぐに何時もの笑顔に戻った。

「自分で言いに来ない時点でダメ」
「相変わらずかっこいいね〜」

ケタケタと笑いながら、ノートを写していく。それを見ながら、サテラは一つため息を吐き窓の外を見つめる。

「そういえば、一限目って教室移動じゃない?」
「あ〜、そうね。化学室」

2人は並んで教室を出て歩いていった。
その時だ。

「おい」

背後から声をかけられ、サテラとキャシーは振り返った。そこにいたのは、少し長めの髪で目元を隠した、クラスメイトがいた。

「これ、落としたぞ」

彼がそう言って渡したのは、サテラの使っている消しゴムだ。おそらく先ほど勉強している間に落としてしまったのだろう。

「あ、ごめんね。ありがと、蒼井くん」

消しゴムを渡した男子生徒、蒼井は、サテラからお礼を言われると直ぐに教室から出て行った。

「サテラ、蒼井くんと知り合いなの?」
「え?知り合いというか、1年の頃からクラスメイトなだけよ。なんで?」

キャシーからの質問に素直な返答を返すと、驚愕の事実を突きつけられたかのような表情になる。

「サテラ、蒼井くんが何と呼ばれているか知ってる?」
「え、何よ急に……普通に名前じゃないの?」

ぶんぶんと首を横に振るキャシー。一体何が言いたいのだろう。

「接触禁止の魔王って呼ばれてるんだよ」
「何それどこの学園の能登さんボイス?」

キャシーの話からすると、蒼井和人は触れられると殺意の籠った目で睨みつけられた後にフルボッコにされるとのこと。

「何よそれ、単なる噂でしょ?」
「……まぁ、それもそうね。そういうことにしときましょう」

切り替えの早い友人を見て、苦笑いしながら並んで歩く。
自分から知ろうとしない限り、他人の本当の姿など見えてこないのだ。

「そういえばサテラ」
「今度は何よ」
「今日の放課後は暇?友達と駅前のケーキ屋に行く予定なんだけど」

明確な誘いの言葉。キャシーはいつも一緒にいる一番の友人だし、女子高生ならば放課後に友達と遊ぶなど普通だ。けれどサテラにはどうしても行けない理由がある。

「ごめん、今日は無理」
「ええ!また⁉︎」

申し訳なさそうに言うサテラに、キャシーは落胆的な声を上げる。それでも友達をやめないでくれるのだから本当にいい友達だ。

そんな友達にだって、言えない事はある。

放課後、サテラはキャシーと別れ自宅へと直帰した。そして、彼女がまずとった行動とは……

「……よし!」

メガネをかけ、ざっくりと髪をまとめた後に二階建ての家の掃除を始める。
その姿には学校のような華やかさは皆無で
下手をすればそこらの主婦となんら変わらない。チラリと時間を気にすると四時を回ろうとしていた。

「そろそろルイズお迎えの時間だ!」

誰にも知られない姿があるのは、サテラも同じだ。
弟の面倒を見るのは彼女の役目で、学校帰りに友達と遊ぶ時間もない。

ーこんな格好クラスメイトにも見せられないしね……

それが、彼女の、サテライザー・エル・ブリジットの日常だ。少なくとも、この時までは…………

数日後の休日。

サテラはいつも通り家の掃除をしていた。未だ幼稚園児の弟、ルイズはどこかに遊びに行っている。弟が邪魔なわけではないが、掃除は捗るものだ。
今日もこのまま何事もなく過ぎると思っていた。その時だ。
ガチャリと玄関から音がして、誰かが入ってくる気配を感じる。ルイズが帰ってきたのだろう。

「ルイズー?帰ってきたならただいまくらい……」

言いなさい、と言いかけたところで手に持っていた洗濯カゴを床に落とした。
何故なら、弟が鼻血を出して帰ってきたからだ。それなのに泣いていないのが逆に怖い。

「ルイズー‼︎だ、大丈夫⁉︎ああ、もう鼻血出しちゃってもう……」
「お姉ちゃん……」

鼻血を出しているルイズに駆け寄って、血を拭き取っていく。そこで、ふとルイズが誰かの手を握っていることに気がついた。

「あの、大丈夫そうなんで俺帰りますね」

ーしまったー!完全に無視してた‼︎

鼻血を出したルイズが一人で帰ってこれるとは思えないのに、誰かが連れてきてくれたなど考えていなかった。弟の隣に立つ少し目つきの悪いピアスをつけた青年のことを失念していた。自分の失態に気がつき、どうしようかとあたふたしていた時、ルイズが青年の手を握った。

「おにいちゃん…寄ってってよ……」
「え、あ、いやでも……」

青年はルイズとサテラの顔を交互に見た。
おそらく迷惑じゃないか悩んでいるのだろう。

「あ、どうぞ。上がって行って下さい。お礼もしたいですし」

にっこり、とまではいかないまでの愛想笑いを作り上がるように促した。ここで返してしまっては相手に悪い。
その意図を汲み取ったのか、青年はゆっくりとうなづいた。

「本当にありがとうございました」
「あ、いや……お構いなく……」

コーヒーを差し出され、青年は遠慮しながらも受け取った。ルイズが苦いのかと尋ねるのを優しく肯定している。
改めて見ると、不思議な青年である。ピアスの穴を耳に大量に開け、下手をすれば舌や唇にも開けているかもしれない。

「犬に吠えられてたんです。びっくりして転んだみたいで。そこに、俺が通りかかって」
「そうだったんですか。本当にありがとうござました」
「いや、でもすごいですね。転んだのに泣かなかったし。住所もちゃんと言えて」

そこまで褒めちぎられると、弟の事なのにまるで自分のことのように嬉しくなる。子煩悩とはこんな状態なのだろうか?

「それにしてもすごいですね。学校では優等生で、家事まで出来るなんて。少し意外でした」
「いえいえそんな……って、え、学校?」

聞き捨てならないその単語に、サテラは思わず身を乗り出した。

「え、だってブリジットさんですよね?」
「…あ、そうだけど、え、もしかして同じ学校⁉︎」

おかしい。これでも記憶力は良い方なはずだ。間違ってもこんなイケイケな感じの人はクラスにはいない。

「え、そうですよ。アオイです」
「あおい?」
「ええ。同じクラスの蒼井です」

頭の中の蒼井と、目の前にいる蒼井を比べてみる。
学校での蒼井は、よく言えば寡黙。悪く言えば無愛想な一年時からのクラスメイト。
目の前の蒼井は、それには似ても似つかない……こともない。よく見るとどこか面影が……

「え、ちょっ、え、エエエエエエエ‼︎⁉︎」


この日、秘密の共有者が出来た。

 
 

 
後書き
いかがでしたか?まだまだ無炭酸ですが、どんどん微炭酸になっていくので、よろしくお願いします。 
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