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総てに飽いた男の物語

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プロローグ

 
前書き
書いてしまった…Dies iraeを久しぶりにプレイして

ふと、ハイスクールD×Dの小説が目に留まって…やってしまいましたw 

 
―煉side―

突然だが、春と言えば君たちは何を思い浮かべる?

出会いか?分かれか?恋か?それとも、新たな友か?
もしくは…桜などか?

まぁ、人には春と言えばが思い浮かべるものは数え切れぬほどあるだろう。

時には、こんな事もあるはずだ

「うっわ…すげぇ美人だ…こんな人がうちのクラスなのか…クソ!横の奴が恨めしい!!」

「あの人って確かこの学園の理事長の家族だったよね?」

「ああなんでも北欧に留学してたらしい…」

「良いなぁ…」

ふと、私の横に座っている少女を見る
彼女はリアス・グレモリー所謂『美人』というやつだ

春にこんな綺麗な女性と席が横になる、普通の男子ならば
これだけで幸福感に満たされるだろう。

だが私は…

「…つまらない」

そう、つまらないのだ。可笑しな話だが横になった筈もないのに、
既に体験しているような…そんな『既知感』があるのだ。

私は物心がつく前から変だった、生まれた時からこの世総てを私は知っていた。

生まれて初めて上げる産声を、家族が子が産まれ産声を上げた事を喜び合う声を、

その総てを知っているような感覚。さきほども言った既知感というもの、
それを産まれたときから今までずっと感じているのだ。

テストで初めて満点を取ったときの喜び、それを親に褒められる喜び

今まで、表情には出していなかったが、
ありとあらゆる事、モノの総てを私は知っている感覚しかなかったのだ。

そして、小学生の時だったか…事故にあって、死にかけた。そう生死を彷徨ったのだ。

その時、何故かは知らんが。私は生きている感覚、
そして幸福感に満ち溢れていた。

ああ、これが…死にかけるという事なのか…これが…これが未知なのか…!
生死を彷徨うなど…到底できまい…あぁ…これすらも既知になってしまうのか
…なんと惜しい…既知はもう要らぬ、私は未知が欲しい!

私は歓喜した、未知という存在に。

これが未知なのか…素晴らしい!と興奮していたよ。
いやはや、既知感のせいで、私は興奮などしないと思っていたのだが…
未知を体験すると興奮した、その時初めて興奮したのかもしれん…いや、これは既知だった

夢の中の私が感じていた。未知を体験したときの興奮を。
ゆえに興奮は飽きはせぬが、既知だった。

そう、その時からだったのだ、私が未知を求めだしたのは。

今は学園生活だが…これも既知なのだ。つまらない以外の何でもない。

だから、私は何もせず、ただ…未知を経験できるものはないかと
日々小説を読んでいるばかりだ。

できることならば…ここに書いてある悪魔とやらと会ってみたいものだ。
悪魔や堕天使とやらは私は思わず、なにかの衝動に駆られた。

会ってみたい、悪魔達の常識を感じてみたい。それは私にとって未知だからだ。
だが、そんな事は到底有り得ないだろう…これはおそらく妄想だ所詮、幻想でしかない

ゆえに飽いて、飽き続けている。つまらない…あぁ、何故総てが既知に見えてしまうのだろうか

ああ、だが総てに飽いていながら…興味を持った男がいたな

彼の名は兵藤 一誠(ひょうどう いっせい)夢の中での私程…とはいかないが
変態の少年だ。そして、私の一つ下の後輩だ。この感覚は懐かしいように感じた。

まるで、夢の中の私がドイツにいた時に出会った…
金髪金眼のゲシュタポの長官と出会ったときの感覚だ。
彼の名は思い出せんがね…だが、『ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ』と
いう名の軍人の名を聞くと、どうも懐かしい感覚に誘われる。
まるで、彼と友であったかのような感覚に…もしかすると…
彼が夢の中で出会ったゲシュタポの長官なのかもしれぬと今では思っている。

今は彼、兵藤 一誠は中学三年であろう。
彼がここに、駒王学園に来てくれることを願ってしまっている。

いや、彼は必然と、ここにやって来るだろう。何故かはわからん、だが確信が持てるのだ。

彼はここに来ると。そして、私に未知なるものを教えてくれるのかもしれんと。

それまでは…私は傍観者でいようと思う。それこそが私の役目だと思うからだ。

これも何故かはわからん。だが、本能的にそうしようとしか思えんのだ。

「――え。…聞いているのかしら?」

おや、となりの少女が話しかけてきたようだ

「ぬ。何か用かね?リアス・グレモリー嬢」

「あら、やっぱり聞いていなかったのね」

リアス・グレモリー嬢はムスッと頬を膨らませて、私の方を見る。
ああ、そんな顔をするなそんな顔をすれば――

「おい!また煉のやつ…」

「いいなぁ…リアスさん」

「ケッ、お似合いのカップルってか…!」

ほら、この通り。クラスの注目を浴びてしまうではないか。

ふむ、とりあえず、不機嫌になっている彼女に謝罪をせねばな

「すまない。何せ、飽いているものでな、
こうして小説を読み暇つぶしをする事さえ―飽いてしまっているのだ」

「貴方は、いつもそればっかりね」

呆れたように言うリアス嬢、そう私と彼女はこんな話を何度もしているのだ
私でなくとも、彼女もおそらく飽きてきているだろう

無理もない、この会話を週に二回程度はやっているのだからな

そして、彼女の言った事は当然だ。ゆえにこう返そう

「然り。私は常に飽いているのだよ。リアス嬢?
君は既知感、というものを知っているかね?」

「既知感…確か一度も体験していないのに、体験しているように感じることね
今ではデジャブとか言われていたわね、それがどうかしたのかしら?」

既知感がどうしたのだ、と言わんばかりの顔を私に向けるリアス嬢。
…確かに彼女にとってはどうでも良いかもしれんが…私にとっては結構重要なのだぞ

仕方ない、彼女に説明するとしよう

「言わば、私は常にソレ(既知感)に囚われているのだよ。
ありとあらゆる森羅万象、その総てが私には既知に見えてしまうのだ。
滑稽な話だ、既知感ばかりのせいでこの世界が私からは灰色に見えてしまうのだからな」

「そう、貴方の世界は随分とつまらないのね」

今度はため息をつき、腕で胸を支えながら言う。
ふむ、絶景かな。…おっと、失礼。これもまた既知とはいえ…目のやり場に困るのだ。
下手をすれば、このクラスの男性全員の相手をせねばならんからな。

いや…あの時は大変だった。一人一人、記憶を弄ったのだからね。
でなければ、私が大多数の人間に殺されるかと思ってしまった。
あれもまた未知…だったら良かったのだがね、
夢の中のドイツあたりであんな事をした気がするのだよ
ラインハルトという男性と。…確か、怒りの日(Dies irae)だったかね?

と、そんな事を考えている暇があれば、彼女に返答せねばな。

「無論、そうとしか言えんな。私は今までも、今からもつまらん人生を送るのかもしれん
だが、私は思うのだよ。こんなつまらん世界だが、
いつか私が楽しめる…未知があるのではないかとね」

「あら、貴方が笑うかもしれないのね?それなら、見てみたいものだわ」

妖艶な笑みを浮かべてリアス嬢は私にそう言う、
…ふむ確かにそうかもしれんな。私は今まで心の底から笑った事がない。

これもまた既知感ではあるが、心底笑ったのは、つい先ほど語った
怒りの日でしかないな。いや、夢の中とはいえ…楽しかった。
彼との殺し愛は飽きる事がないだろう。例え、それが既知になろうとも

何故かは知らんが、あの殺し愛の時、何処からともなく
「双首領様が楽しそうでなによりです」とどこからともなく聞こえた気がするのだが。
あれは気のせいだと思いたいものだ

それは、スルーしておいてだ

「ふむ、まぁそれも良いかもしれんな。
だが、それには…この本に載っているような、神話の存在がいれば、の話だがね?」

そう私は、洒落てもいない冗談を言う。

だが、リアス嬢は少し口を引き攣らせた笑みを浮かべていた

「…そ、そう」

「うむ?何か気に障る事でも言ったかね?ならば謝罪しよう」

「いえ、別に気に障ったわけではないわ」

「ふむ、それならば良いがな…む?そう言えば…卿の、リアス嬢の苗字は七十二柱では――」

「コホン!リアス、煉さん、そろそろ席に着いた方がよろしいかと」

私が途中まで言うと、それを遮るかのような形で大和撫子と言われている女性であり
リアスの後ろに座っている姫島 朱乃(ひめじま あけの)が言う。

「ぬ。もうそんな時間かね…もう少し話したかったが…まぁ良いだろう」

「朱乃、ごめんなさいね、もう着くわ」

「ええ…ではお昼頃に」

「うむ、承知した」

ぬ?楽しそうだと?御冗談を…私は常に飽いているのだよ。これは日常光景だ。
私の…な…何処か私は未知を願いつつも、
この刹那を消して欲しくないとも願っているのだろうな…

To be Continued… 
 

 
後書き
次回更新はいつになるのやら…(遠い目)

ゆっくり更新ですので気長にお待ちください! 
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