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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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魔境-ミラーナイト-

シャキン!!とメフィストの右腕部分から音が鳴ると、彼の右腕に鋭い爪〈メフィストクロー〉が生える。それに対し、ネクサスもアンファンスからジュネッスブラッドにチェンジする。
しばらく互いを睨み合ってから、先にメフィストの方から蹴りが繰り出されてきた。それを背中を反らして避けたネクサスが、今度は自分がメフィストに向かって蹴りを入れる。メフィストはそれを姿勢を低くして回避し、メフィストクローを突き出す。ネクサスがそれをアームドネクサスで受け止めたところで、隙を見せた脇腹に向けて蹴りを叩き込み、メフィストクローでネクサスの胸に斬撃を与え、フィニッシュに胸に蹴りを当てて蹴とばした。
「フン!!ハァッ!!」
「グワ!!」
吹っ飛んで地面に落下したネクサスに向け、メフィストはメフィストクローから闇の弾丸〈メフィストショット〉を放って攻撃、すぐに立ち上がっていたネクサスはそれを横に転がることで咄嗟にかわした。
再度立ち上がるネクサス。メフィストの姿を確認しようと顔を上げるが、目の前にすでに奴の姿はなかった。どこへ行った?ネクサスが周囲を見渡す。すると、頭上から空気を切り裂くような音が耳に飛び込む。頭上を見上げると、爪を突き出してこちらに突進してくるメフィストの姿が見えた。
ネクサスは右腕のアームドネクサスから〈シュトロームソード〉を形成、メフィストの刺突を刀身で防いだ。つばぜり合いが展開される中、メフィストがそのまま押し出そうとするのに対し、ネクサスは押し負けないよう自分も力いっぱいメフィストを押し返そうとする。
「一体あの皇太子に…何をした?」
その状態のまま、ネクサスはメフィストに問う。
「アンドバリの指輪…という死者に偽りの命を与えるマジックアイテムを使っているらしい。他の連中は、一度殺してガルベロスの術で操ってはいるがな」
メフィストは意外と詳しく教えてきた。いや、隠すまでもないからこそ話したのだろう。しかし、メフィストの言い回し方がこの嫌な展開を楽しんでいるかのように見えて、ネクサスは不快感を覚えた。姫の純情いじりといい、なんてことをするんだ…!
「もうあの姫を楽にしてやれよ」
「何?」
突然メフィストが耳を疑うことを口にする。ネクサスの動きがその一言で止まった一瞬を見逃さず、メフィストは左拳に闇の力を込めてネクサスをぶん殴る。
「ウワァッ!!」
「あの娘は、この世にすでに絶望している。こんな醜さばかりが目立つ世界で生きるより、愛する者の思い出に浸りながら過去の中で生きていた方が幸せなのさ」
「違う…!」
ネクサスは顔を拭って立ち上がりながら、メフィストの言葉を真っ向から否定した。
「そんなのは、生きている意味がない!」
「強がるなよ。貴様こそ、そうじゃないのか?小僧」
ネクサスを指さしながら、こちらを見透かすようにメフィストが指摘してきた。
「貴様からも、匂うぞ…」



――――血の匂いがな




(彼が、ウルトラマン…!)
アンリエッタは、正直驚いていた。確かにシュウは普通の人間じゃない。どこか遠い場所から来たことは確かだし、ハルケギニア人とはそもそもあらゆる面で違う何かをにおわせていたが…。
いや、だがそれ以上にはっきりしていることがある。
(ウルトラマンまで、邪魔をするのですね…!)
この国のために戦ってくれたこともある恩人、そして英雄とも思っていた。だがこうして自分とウェールズの道を阻んでいるということは、結局彼らは自分を国の平和のための道具か何かにしか見えていない。寧ろそんなことは考えてもいないのに、邪魔をされ続けている不快感から、アンリエッタはそう思いこんでしまった。
「さて、僕らの方もそろそろはじめようか。時間が惜しいからね」
ウェールズは杖を取り出して戦闘態勢に入る。
サイトはふと、視線をネクサスの方に向ける。あの悪魔の方は彼に任せよう。自分たちはまず、ウェールズをどうにかしなければ。
「ルイズ、下がってろ。援護を頼むぜ」
「わかってるわ。皇太子さま…すみません。お覚悟を!」
再度構えなおした際、今度はウェールズが先手を打ちに風魔法を放つ。サイトはそれを剣の一振りで振り払い、あくまで峰打ちだがウェールズに剣を振り下ろそうとする。しかし、直後にアンリエッタが来ないで!と叫びながら水の壁を作り出し、彼を攻撃。
「ぐ!」
「ウェールズ様には指一本触れさせない…!」
デルフを盾代わりにすることで防ぐサイト。しかし水の壁はデルフの刀身に触れている箇所だけは吸収されていってるものの、彼女の意思の元さらに激流はサイトを押し返そうとする。しかし、アンリエッタに向かって一発の小さな爆発が起こった。
「きゃ!!」
「アンリエッタッ…!」
「姫様と言えど、私の使い魔には指一本触れさせません…!」
爆風を受けて少し吹っ飛ぶアンリエッタに、ルイズは震える声で言い返す。
「ルイズ…あなたなにをしたかわかっているの…!」
ドレスが土まみれになって立ち上がるアンリエッタは静かにルイズを睨んだ。
「アンリエッタを土で汚すとは…もう容赦はすまい!!」
アンリエッタを攻撃されたことがかなり自らの神経を逆なでされたのか、ウェールズは怒りを露わにして彼女の傍らに立つ。
彼はパチン指を鳴らすと、ダークフィールド内の空間に稲妻のようなものが走る。すると、その稲妻のような歪みの中から、一体の巨大生物が姿を現す。
城内部で発生したダークフィールドに現れシュウを襲ったビースト、ガルベロスだった。
「グルルル…」
「怪獣!?」
現れたガルベロスの、一目見ただけで血に飢えているのが丸わかりな姿を見て、ルイズとサイトは戦慄した。あんな化け物と操って来たなんて、ウェールズは一体何者になってしまったと言うのだ?
「姫様…」
アンリエッタは悪魔と地獄の番犬が味方に着けている自分の立場に疑問さえも抱かないのか?ルイズは、いくら一度の気の迷いだとしても、ここまで決意を固くしている姫を見たことがなかった。
「やれ、ガルベロス!!」
「グルオオオオオオ!!!」
ウェールズに従うまま、ガルベロスはサイトとルイズに向けて火球を放ってきた。
「こっちだルイズ!」
さすがにこれはまずい。サイトとルイズは直ちにその火炎弾と反対の方角へ逃げる。ここで無謀に立ち向かったところで、逆に消し炭にされてしまう。
「ウェールズ様ッ…!」
ガルベロスは容赦なくルイズたちに向けて火炎弾を放ち続けている。ウェールズがこの獣を、冷たい笑みを浮かべながら使役しているその様はあまりに異常だった。さすがにアンリエッタも、これだけの力の差を見せつけてなお攻撃している彼に向かって口を開いた。
「…ウェールズ様、もう十分ですわ。ここまですればルイズたちは…」
やはりここで見逃してやろう。自分たちには逃げられるだけの力があるのだから。しかし、ウェールズからの返答はアンリエッタの期待を裏切った。
「いや、残念だが彼女達にはここで死んでもらう」
アンリエッタはそれを聞いて絶句した。そして納得ができないと声を荒げた。
「なぜです!あなたにはもうあの子たちがまともに逆らえるだけの力がある!そしてウルトラマンネクサスも、黒い巨人となったミスタ・メンヌヴィルに殿を任せれば、ルイズたちを殺さずとも十分に逃げ切ることができます!なぜ追い打ちをかける必要があるの!?」
「なぜって…決まっているじゃないか?奴らは、この僕を『殺しに来た』んだよ?せっかくこうして僕は君の元に戻って来たのに、今度こそ殺されることになってもいいのかい?」
アンリエッタは、笑みを浮かべたまま冷酷な言葉を吐くウェールズを見て、膝を着く。
「信じられないのなら、君の魔法で僕の胸を抉ってくれ。君の手にかかるなら本望だ」
「そ、そのようなことが、私にできるわけ!!
なぜ…です…私はここまでのことは望んでないわ!ただ、あなたと共にありたい!愛し合いたいだけなのに!
私は…あなたが分からなくなっていく…」
アンリエッタはたまらず涙をこぼし始めた。ルイズたちが立ち向かってさえ来なければ、このまま見逃すつもりだった。それでも敵意を向けてきたからこそ応戦することになったのだが、怪獣と言う圧倒的戦力を操り、さらに味方にはウルトラマンに対抗できるだけの黒い巨人がいる。ならもう十分だ。それでもウェールズは彼らに対する攻撃の手を緩めようとしないのだ。自分の知っているウェールズは、こんなにも容赦のない男のはずが…。
「覚えているかい?ここ、ラグドリアン湖の水の精霊の前でなされた誓約は違えることはないということを」
ウェールズは、数年前にアンリエッタとかわした時の話を持ち出した。覚えている。アンリエッタはあの時ウェールズに対して共に誓おうと勧めたのだから。
「だから、わからなくていいんだよアンリエッタ。君は黙って僕に従っていればいいんだから」
その言葉を聞いてアンリエッタは顔を上げる。不思議なことに、ウェールズの体のまわりから黒い霧のようなものが見えた気がした。
「ウェールズ、さま…!?」
今更かもしれない。だが、アンリエッタの中に薄々疑惑がのしかかった。
「さて、早く野暮な邪魔者を始末しなくては。徹底的にね」
アンリエッタの視線を気にせず、ウェールズは次に視線をガルベロスの方に傾ける。
「メンヌヴィル殿、あなたが僕に貸した獣は大いに役立ちますね…ふふ」
ウェールズの瞳に映るガルベロスは、その獰猛な目を赤く明滅させていた。その視線の先に映るのは、黒い悪魔と戦う、紅の模様をその身に刻んだ銀色の巨人だった。



「くそ…このままじゃ!!」
ダークフィールド内の、ちょうど岩陰に隠れたサイトとルイズは辛うじてガルベロスの火炎弾をやり過ごそうとしていた。自分たちが身を隠したことで一端攻撃を中断したガルベロスが自分たちを探しているのが見える。だがその気になれば周囲の岩や森を破壊してこちらの姿をあぶりだそうとすることもあり得ない話ではない。
「王子を何とか再起不能にさえすれば…」
今のウェールズはガルベロスを操る怪獣使いのようなものでもある。あの怪獣は厄介だが、せめてウェールズを叩けば、ガルベロスも彼のコントロールから離れてこちらが優位に立てるかもしれないと思った。しかしルイズは意外なことを口にした。
「…無理よ。ここは一端退くしか…」
「ルイズ、本気か!?姫様が連れて行かれるんだぞ!」
フーケ事件のルイズのように、単なる名誉や誇りのために…というためではない。ここでウェールズを見逃したらアンリエッタが連れて行かれてしまう。今や彼女は女王となる身で国民に強い影響力がある。他に世継ぎもいない今彼女が連れていかれたらトリステインは大混乱に陥ってしまう。同時にルイズの幼き日の友達を連れていかれていいのか?いや、いいはずがない。
だがルイズは、退くと言う選択肢をとろうとしていた。あのルイズがその手を取るとは思わなかった。貴族とは背を向けない者、それにアンリエッタは忠誠を誓うべきにして幼い頃からの、身分を超えた友達。なのだから。
「サイト、姫様たちを見て」
「え?」
サイトはガルベロスに見つからないよう、岩陰からそっとウェールズたちを覗き見た。よく見ると、アンリエッタのウェールズの周囲の空気がおかしい。不自然に二人の周りを風が覆っている。
「水と風のトライアングルクラス。それも王家の血を引くからこそ恵まれた特別な魔法…『ヘキサゴンスペル』よ。あれが姫様たちを守っているわ。もしあの怪獣をうまく切り抜けても…」
逆にあの二人に返り討ちにされ、ガルベロスとの挟み撃ちで結局やられてしまう、ということだろう。ルイズなりに冷静に判断した結果、撤退すると言う選択しか残らなかったのだ。
だがフーケの時と違って、今回は生き残ってもアンリエッタ一人の損失はこの先のトリステインの大混乱を招き、同時に大損失に繋がりかねない。
ふと、ダークフィールドに飲み込まれた森の中から人影が見える。その人影は、ガルベロスに向けて手に持っていた銃で発砲した。
「アニエスさん!!」
その人物はアニエスだった。だが、あのゾンビ兵士たちとの戦いですっかり疲弊しているのか、顔に拾うが表れており、鎧のあちこちが血と泥で汚れている。
「姫殿下には手出しさせん…!!」
彼女は銃弾を装填し、再び銃撃するアニエスだが、対怪獣兵器でやっと怯むほどの頑丈さを誇るガルベロスに通じるはずもなかった。
不味いことにガルベロスがアニエスに気づき、今度は彼女を邪魔な存在と認識し、迫ってきた。
「ルイズ、ここにいろ!俺はアニエスさんを助けに行く!」
「サイト、待って!待ちなさい!」
ルイズは引き留めようとしたがもう遅い。サイトはガンダールヴのルーンによる身体強化で圧倒的な速さで走り去っていた。
ガルベロスがアニエスに向けて炎を吐こうとしたとき、彼はウルトラゼロアイをガンモードに折りたたみ、さらにもう一丁…シエスタから託してもらったフルハシの形見であるウルトラガンを取り出し、ガルベロスに向けて撃った。
「こっちだ犬っころ!!」
サイトの銃撃はアニエスのものよりも効いたのか、ガルベロスはサイトの存在にすぐに気付く。サイトはアニエスとも、そしてルイズからも離れた場所に向けて、ガルベロスに銃撃しながら走り出す。
元々狙っていた得物であるサイトの方に、ガルベロスは歩き出す。たかが獲物ごときに噛みつかれたのが気に食わないのか、獰猛な肉食獣らしく吠えながら彼を追いかけ続けた。
「サイト…もう!あのバカ犬!!」
使い魔の癖にやたら説教くさいこともいうくせに、無茶しすぎだ。しかしここから動くことはできなかった。すぐに岩から飛び出せば、ウェールズたちに見つかってしまう。そうなったらサイトがわが身を危険に追いやった意味がなくなってしまう。けど、ここでじっとしたままでも、どのみちサイトは…。
我慢ならなくなったルイズは、ついに岩陰から姿を現した。そして呪文を詠唱し、ガルベロスに向けて攻撃した。
「エクスプロージョン!!」
思った以上に大きな爆発が起こり、ガルベロスにダメージを与えた。やった…!と心の中で思うルイズだが、やはりガルベロスがこちらに気づいた。そして同時に、ウェールズとアンリエッタもルイズが底にいることに気づいてしまう。
「そこにいたか、ミス・ヴァリエール。少しは持ちこたえたようだが…これで終わりだ」
「ッ…!!」
ウェールズが杖を構えると同時に、ガルベロスが再びルイズの方を振り返ってしまう。圧倒的な巨体を誇る化け物の鋭い視線にルイズは思わず目を閉ざす。しかし後悔はなかった。サイトを少しでも助けられたのなら。
「「ルイズ!!」」
どうして出てきた!思わず声を上げるサイトとアンリエッタ。しかしガルベロスは、ルイズにむけてその手を伸ばしてきた。
『サイト!』
『ああ!』
「デュワ!!」
サイトはすぐにウルトラガンを腰のホルスターに仕舞い、ゼロアイを展開し目に装着し光を身にまとった。
直後、ルイズの前にどこからか飛んできた銀のブーメランが一本飛来、彼女の前に迫ったガルベロスを切りつけ吹っ飛ばす。
「ギエアアアア!!!」
悲鳴を上げるガルベロス、そして目を閉じていたルイズは目を開く。自分を守る盾とならんがためか、自分の目の前に、これまで自分たちのピンチを救ってきたあの巨人が立っていた。
「ウルトラマン、ゼロ…!」
アンリエッタは、自分がそう思う資格がない立場にあることは分かっていても、ルイズの死が回避されたことに安心した気持ちを誤魔化しきれなかった。
「く…もう一人のウルトラマンまで…!」
また邪魔者が増えて悪態をつくウェールズ。だが、これでウルトラマンたちは怪獣とメフィストとの頭数を合わせて二対二。イーブンだ。
まだ勝負はわからなくなった。ここは様子見することにしよう。
「アンリエッタ、こっちにくるんだ」
「あ…!」
ウェールズはアンリエッタを強引に引っ張ってこの場から一旦離れることにする。アンリエッタはウェールズに引っ張られた際、ゼロを見つめるルイズと、傷を負って膝を着きながらもゼロの姿を見上げるアニエスを振り返ることしかできなかった。




「血の臭い…だと?」
「ああ、そうだ。貴様からは血の臭いがぷんぷん漂っている」
ネクサスに対し、メフィストは言った。
寧ろ血の臭いがするのはメフィストの方のはず。なのに奴は、ネクサスも血の臭いにまみれていると指摘した。
「俺と同じ血にまみれた修羅の臭いがするぞ。ここに来たのは、別にアンリエッタを助けるためじゃない。本当は血を血で洗う戦いを、貴様が求めているからじゃないのか?」
血でまみれた…。ネクサスは思わず押し黙った、まるで何か思い当たることがあったのか。
いや、血と言う単語を聞いて、一瞬彼の脳裏にある光景が浮かぶ。
森の中で展開されている戦場。乱射される銃弾によって倒れていく人々。ある人物の名を呼びながら戦場の真ん中を無謀に走る幼い少女。そしてその少女が、爆死した姿。
最後に、壊れた建物の真ん中で、雨に打たれている自分の腕の中で、血を流しながら目を閉じていった…『彼女』の姿。
「ッ!」
思わずネクサスは、メフィストを殴りつけた。しかし、メフィストは多少怯んだ程度ですぐに持ち直し、殴られた顔を軽く拭った。
「ふふ…その様子だと図星だったようだな?」
こちらを笑ってくるメフィストに、ネクサスは心を揺さぶられていた。いつもの冷静さが、油断しているとすぐに消えてしまいそうになる。
(会ったばかりの奴が知ったようなことを…)
ネクサスはなんとか揺さぶる心を持ちなおそうと構えなおした。
すると、メフィストがかぎ爪を突き出してきた。足で空を払い、次に来た蹴りもまた手で払い落す。お返しにネクサスはメフィストの胸を蹴って彼を突き飛ばした。
すぐに勝負をつけよう。こいつを野放しにしたらどんな被害ができるのか検討もつかない。ネクサスは直ちに両腕をクロスし、アームドネクサスに光をスパークさせる。ネクサスの必殺光線、オーバーレイ・シュトローム。これで一気にメフィストを粒子状に分解してしまうつもりなのだ。
だが、その時だった。

ズキィ!!!

「グアァッ!!?」
ネクサスの左腕に激痛が走り、彼は光線の構えを解いてそのまま膝を着いてしまった。なぜ今になって痛みが?さっきまでストーンフリューゲルの中で体を休めたことで傷を癒しておいたはず。
まさかと思い、ネクサスは視線をメフィストとは別方向に視線を傾ける。思った通りだった。こちらを向いているガルベロスの目が、赤く輝いていた。
(やはりあいつか…!!っ痛…!!)
激痛にさいなまれる中、メフィストが近づいていく。その右手にギラリと光るかぎ爪を見せつけながら。



「よっし…行くぜ!」
変身と同時にサイトと体の主導権を交代されたゼロは気合を入れて構えを取った。ガルベロスがこちらに向かってきた。ゼロは突進してくるガルベロスに向けて手を伸ばし、掴みかかる。左の頭を脇腹の下に持って行ってヘッドロック、頭を抑えつけたまま拳を脳天に叩き込む。ガルベロスはゼロに捕まった状態で荒れ狂うようにもがき、彼を強引に振りほどく。振解いた途端に頭突きでゼロを押し返す。胸を打たれたゼロだが、この程度で怯まない。ガルベロスの中央の頭に飛び蹴りを叩きつけ、よろけたところでラッシュパンチを数発叩き込み、ガルベロスに掴みかかってそのまま投げ倒す。
そのまま上にジャンプし、蹴りの構えを取ったまま落下していく。だが、ガルベロスは咄嗟に上半身を起こし、ゼロに向けて火球を吐いた。
「ウォアア!!」
火球に被弾し、バランスを崩したゼロは地面に落下してしまう。落下の隙を突いてガルベロスが鋭い牙をむき出して近づいてきた。
「ンの野郎ッ…!!お返しだ!!」
ゼロはすぐに体を起こすと、近づいてきたガルベロスに向かって額のビームランプからの閃光〈エメリウムスラッシュ〉を発射する。光線を受けて怯んだガルベロスに向かって駆け出し、ゼロは鋭いチョップをガルベロスの真ん中の顔に向けて叩き込む。
「へっ、見掛け倒しだったようだな。このまま止めを刺してやるぜ!」
ゼロは両腕をL字型にくみ上げ、父親から受け継いだ必殺の光線を撃ち込もうとした。



「ガルベロスだけじゃ、力不足か…なら仕方ない。今度は僕自ら出向くしかないようだね」
ウェールズは不利に立たされているガルベロスを見て、このままではまずいと感じていた。しかし以外なのは、彼自身が出向くと宣言したことだ。
「な、何を仰いますのウェールズ様、危険です!」
相手は、あのウルトラマンだ!いくら魔法が使えるといっても、所詮自分たちはただの人間だ。真正面から突っ込んだところで勝てるわけが無い。
しかし、ウェールズはちっとも恐怖を感じていなければ、貴族が追い詰められた果てにせめて敵に一矢報いようと覚悟を決めたときに見せる顔を浮かべても居なかった。いうなれば、勝てる見込みがある…そんな目をしている。
「僕自身の力を見せ付けることで彼らの自ら手を引くことだろう。僕が死の淵に立った時…手に入れたこの『力』を…!!」
「ウェールズ…様…?」
一体何をするつもりだ?疑問に思うアンリエッタはただ見ているだけだった。ウェールズは傍の湖畔に近づく。


「…ミラー…スパーク」



水面に自分の姿が映ると、彼は両腕を円を描くようにまわしながら、死人のような声で、ウェールズは水面の中に自ら飛び込んだ。
突然入水自殺をしたかにも見える飛び込み方にあっけにとられたアンリエッタだが、その意味をすぐに理解することになる。
水の中から…否、水面に移る鏡の世界から人影が飛び出した。その人影は、やがてウルトラマンとほぼ同じくらいの巨体に肥大化し、ガルベロスに止めを刺そうとするゼロを蹴飛ばした。
「グワ!!?」
不意打ちに対処しきれず、ゼロは吹っ飛んでうつ伏せに地面に落ちた。今の攻撃は、もしやメフィスト?そう思ったが、相手は予想外な者だった。
黒銀色の体と、顔全体を閉めるほどの赤く光る十字架の発光体を顔面に埋め込んだ巨人だった。
「…お前は、城で会った…!!」
驚くゼロに対し、正体不明の巨人は淡々と名乗った。





「我が名は…『鏡の騎士 ミラーナイト』…」





自らそう名乗ったウェールズ…もとい、ミラーナイトはゼロに向けて臨戦体制をとった。




「ウェールズ様が、巨人に…!?」
アンリエッタは、この驚きを言葉で堂表現すればいいのかわからない。ボーウッドが報告書で知らせてくれた、『ウェールズが人ならざるものとなった』…とは、こういうことだったのか。
ふと、アンリエッタの脳裏にある光景が思い起こされる。
3年前、ウェールズと初めて会ってから隙を見て逢引するようになったあの頃、ウェールズがあることを教えてくれたことを思い出した。
『僕らアルビオン王家には、始祖の代から伝わる伝説があるんだ』
『アルビオン王家の伝説?興味がありますわ。教えてくださいませ』
トリステイン王家とは親戚関係のアルビオンの伝説。アンリエッタは個人的にも興味をもっていた。
『かつて始祖ブリミルは四人の使い魔を従えていたそうだ。そのうちの一人が、特殊な出で立ちでね。このハルケギニアとは異なる世界から始祖に召喚されたそうなんだ』
『異なる世界…ですか?あまりよくわからないのですが…』
『はは、僕もだよ。僕はあくまで伝え聞かれた話をそのまま口にしているだけなのだから。
…と、話がそれだね。その召喚された使い魔の一人は、鏡の世界に飛び込むことができるそうなんだ。そして何より、その力を利用した強大な力で、他の使い魔たちと共に始祖ブリミルを守り抜いた…とある。
やがてその使い魔は『鏡の騎士』としてたたえられ、始祖の子の一人…アルビオンの祖王と結ばれ、我が王室を作った。
この伝説が正しければ、僕はその騎士の血を引く存在…ということになる。本当かどうかは、もはや確かめようが無いけれどね』
「……」
ルイズの持つ虚無に続き、アルビオン王家に伝わる伝説が、まさに現実のものとなった。それも、アンリエッタの悪夢の一時の一部として。




早速襲い掛かってきたミラーナイト。スタイリッシュな動きでまわしけりを放ってくると、ゼロはその蹴りを、前転で切り抜け咄嗟に振り向き拳を突き出す。
ゼロは彼の放ってきた手刀を手で払いながら受け流すが、今度はその両手を握りゼロの腹に膝蹴りを食らわせた。腹を押さえながらもだえるゼロ。すかさずミラーナイトはゼロにつかみかかって彼を背負い投げ、ゼロは地面に叩きつけられた。
体を起こし、膝を着いた体制に整えるゼロ。すると、今度は横からガルベロスが火炎弾を放ち、ゼロに熱い一撃をお見舞いする。
「んの…!!」
相手は、ウェールズが姿を変えた存在。あまりやりすぎは可能なら控えておきたい。しかし、このまま時間をかけるのはまずい。ここは闇の空間の中、光エネルギーの消費が激しくなるのだ。
それに、新たな危機がゼロの目に飛び込む。
「ッ!シュウ!」
メフィストと戦っていたネクサスが防戦一方の状態に追いやられていたのだ。メフィストクローの斬撃を受けて倒れても、メフィストがネクサスの首元を鷲掴みし乱暴に立たせて腹や胸を殴りつけていた。
「…ッグ…!!」
ガルベロスには、目から相手を催眠状態に陥らせる能力を持つのだ。先日の戦いでガルベロスに噛まれたダメージはシュウがストーンフリューゲルで一旦眠りに着いたため癒されたはずなのだが、ガルベロスの催眠波動がその時のダメージを蘇らせているのだ。
「どうして?たかが犬に噛まれた傷程度で怯まないで、もっと俺を…楽しませてみろよ!消し炭にし甲斐がないじゃないか!」
姑息な手口で古傷をえぐっておきながらなんて言い草だろう。
高笑いしながら、メフィストはネクサスを痛めつけるのをとことん楽しみ出す。傷の激痛のせいでまともに腕を振るえない彼を、殴り、けり、光弾を打ち込み、踏みつけるなど、端から見れば、物語でよく展開される悪と正義の正当な戦いの構図など微塵もない。そこにあるのは、悪党によるただの暴力沙汰だった。



「待ってろ、今行く!」
ゼロは直ちに、両腕をL字型に組み、父親から受け継いだ必殺の光線をメフィストに向けて放った。照準は合わせた、まっすぐメフィストに飛ぶように。
〈ワイドゼロショット!〉
「デア!!」
光線はまっすぐメフィストに向かっていく。対するメフィストは、おかしいことに一歩も避けようとしていない。ゼロの発射が一瞬早かったせいで反応が遅れていたのだろうか?
しかし、そうではなかった。
「ウワアア!!」
その爆風によってダメージを受けてしまったのは、メフィストではなかった。
助けるはずだった、ネクサスのほうだった。
「え…!?」
『な、なんであいつの方に光線が!?』
動揺するゼロとサイト。確かにさっき、光線の照準をメフィストに向けていたはずだった。それなのに、光線でダメージを負ったのはネクサスの方。かえって彼をピンチに追いやってしまった。
実は、これもまたガルベロスによるものだった。奴の放つ催眠波動が、ゼロの視界を支配し、あたかも自分がメフィストを狙っているように幻覚を見せていたのだ。
呆然としているゼロの足元にミラーナイトが放ってきた光刃〈ミラーナイフ〉が飛ぶ。
「君の相手は…私だ」
「く…!!」
ミラーナイトが邪魔をしようと立ちはだかったせいで今度もネクサスへの救援は叶わなかった。やむを得ずミラーナイトと対峙するゼロ。しかし戦っているのは彼だけではない。ガルベロスも同時に相手をしなければならなくなった。
「グガアアア!!」
「く…デア!!」
真っ先に襲ってきたガルベロスに、ゼロは自ら掴みかかり、脳天にチョップを連発する。だがその隙にミラーナイトが背後からつかみかかって、彼の首を締め上げていく。たまらずゼロは首を締められた状態のまま、背中を前に倒してミラーナイトをそのまま前の方に投げる。背中を打ち付けられたミラーナイトは、すぐに体制を整え、至近距離からミラーナイフを撃つ。
「ガハァ!!」
宙を舞うも、何とか着地に成功するゼロは再び光線を、今度はミラーナイトに向けて放つ。しかし、今度はさっきとは違う現象が起こる。ミラーナイトに着弾した途端、ミラーナイトの姿がガラスのように砕け散った。
「!」
城の時と同じ、鏡の中に逃げ込まれていたのだ。すると、今度は背後からミラーナイフが飛んできてゼロの肩のプロテクターに傷を入れる。背後にはすでにミラーナイトが立っていたのだ。すぐに振り返ったゼロはエメリウムスラッシュを放つも、またしてもそれは鏡だった。光線を受けた途端にミラーナイトを映していた鏡は砕け散る。
ミラーナイトに攻撃が当たらない。まして、メフィストにもガルベロスにも、催眠波動によって誘発された幻覚のせいで当たりもしない。これでは攻撃をこちらから当てに向かっても、これでは相手にて傷を負わせることもできやしない。
「くっそぉ…!!!」
ゼロは悔しいが、完全にそう思わざるを得なかった。

――――俺たちは敵の術中に、完全にはまり込んでしまった…と。


「ミス・ヴァリエール。お怪我は…?」
ルイズのもとに駆け寄ったアニエスが、ルイズの安否を問う。
「大丈夫よ。それよりあんたこそ…」
「私は鍛えておりますし、命の危機を何度も経験した身です。お気になさらぬよう」
どうやら互いにまだ動ける状態。それは良かったのだが…次の瞬間ゼロとネクサスが同時に、メフィストとミラーナイトの攻撃を受けて同じ場所に吹き飛ばされた。
「グアアアア!!」「ウワアアア!!」
「ウルトラマンたちが…!」
やられている!しかも頭数は二対三。
ピコン、ピコン、ピコン…!
エネルギーも残り少なくなり、二人の胸の点滅が早まっている。その上攻撃も完全に封殺されてしまい、チェックメイトされている状態だった。
「なんということだ…ウルトラマンが苦戦をしている…!」
「何か…何か弱点はないの!?」
ここでじっとしていてもゼロたちが危機に晒されたままだ。ルイズは直ちに、始祖の祈祷書を取り出しそのページをめくる。何か、あの時と同じように…強力な虚無の魔法がないのか探らなくては。しかし、めくっても白紙のページしか出てこない。
いや、今のウェールズは正気を保っていないはずだ。たとえ偽者だったとしても、その変装を解く魔法があれば…!
(なんでもいい!この状況を打開できる魔法…何か出てきて頂戴!!)
ルイズは必死に願いながら祈祷書のページを開きまくる。しかし一向に攻略の1手が出てきてくれない。
「お願い…何でもいいから!!出てきてよ!!このままじゃウルトラマンがやられる!姫様も連れて行かれちゃうのよ!!」
八つ当たり気味にもなりながらも、ルイズは祈祷書のページを開き続けるが、魔の手が遂に彼女たちに降りかかってきた。
ガルベロスが、すでに二人を見下ろしていた。
「ひ…!」「っく…!」
まずい。もう今度こそ逃げられない。それでも最後にあがこうとアニエスはルイズをうす路に控えさせ銃を構える。
(私は…こんなところで、死ねないのに…!!)
アニエスは心の中で悔しい気持ちを吐きだす。


「や、やめろ!!」
遠く離れているルイズに向けて手を伸ばすゼロ。ゼロスラッガーを握り、痛みをこらえながら駆け出すゼロ。確かにルーンの効力はあるが、体がそれについていけなくなったせいかすぐにゼロは倒れてしまった。
『相棒、無茶だ!もうお前さんはかなりガタがきてやがる!そんな状態でガンダールヴの力に頼っても帰って体を痛めつけるだけでしかねえ!!』
デルフからの警告が脳裏に流れ込んできた。ガンダールヴの能力には武器を握ることで身体能力を一気に向上させる効力があるものの、同時に疲れがどっと溢れてくるというリスクも孕んでいたのだ。この最悪のタイミングでそれが発するとは、なんと言う厄日なのだろうとゼロは天を…そして一番情けない自分自身を呪いたくなる。
ガルベロスが、すでにルイズたちに向けて足を振り上げてきた。
もう間に合わない。
遠くから見ていたアンリエッタは、もう今更自分が叫んだところであの怪物がとまることがないことを悟った。ルイズの死に様を見届ける勇気は到底なく、思わず目を背けた。


そのときだった。


突然どこからか、赤く燃え上がる炎がガルベロスに被弾し、そのままルイズたちとは反対方向に吹っ飛ばす。
「「!!?」」
一体今度は何が起きたというのだ。顔を上げると、上空から突風が吹いてきた。何かがばたばたと羽ばたく音が聞こえてくる。
「はあい、ルイズ♪」
その声を聞いてルイズはぎょっとする。こんな挨拶をしてくるのは一人しかいない。そしてこの大きな生き物が羽ばたく音も。
「き、キュルケ!!それにタバサまで!!なんであんたたちがここにいるのよ!」
予想通りだった。頭上から、キュルケとタバサの二人が降りてきたのだ。
「あの制服、魔法学院の生徒か…?」
アニエスはキュルケたちの制服を見て、彼女たちもルイズたちと同じ魔法学院の生徒だと察する。
「そんなことより、お礼を言うのが先じゃない?」
じとっと細い目で見てくるキュルケにルイズは息を詰まらせる。タバサにいたっては特に気にしていない様子だが。
「…あ、ありがと」
「よろしい」
とりあえず例をいえない奴とは思われたくも無いし、実際助かったのでルイズはキュルケたちに礼を言った。
「説明すると、タバサの実家にお邪魔させてもらってたのよ。そこでしばらく泊まってそろそろトリステインに帰ろうとここを通ったら、行き成り空がタルブの時みたいになっているんだから驚いたわよ」
「後はシルフィードで周囲を観察。そうしたら、あなたたちがいた」
キュルケとタバサがここまでの自分たちのいきさつを説明を入れた。知らない間に帰省なんてしていたのかタバサは…とルイズは思った。
「それにしても、あんたいつからあんたすごい炎を出せるようになったのよ?」
さっきルイズたちを助けたような、ガルベロスを吹っ飛ばすほどの魔法、これはただごとではない。キュルケにあんな威力の炎を出せるなんて知らなかった。
しかし、キュルケはやれやれというように両手の平を返す。
「ああ、あれはあたしじゃないわよ。ま、いずれあれくらいの炎は出すつもりだけど」
「え?」
ほうけるルイズに対し、タバサが杖である方角を指す。
すると、ダークフィールドの遥かかなたの空から、赤い何かが飛んできているのが見えた。それは近づいていくうちに大きくなっていく…。






「ファイヤアアアアアアァァァァァァーーーーーーー!!!!」






とてつもない豪快な大声と共に、それ…赤く燃え上がる火球が、ミラーナイトとメフィスト、ゼロとネクサスの二組の間に割り込む形で落下した。
「…誰だ?」
落下の衝撃で巻き上がる砂煙から顔を避けるために顔の前に手をかざすメフィストが、気乗りしていたところに水を差されたかのように声を低くして言った。
その赤い火球は、人の形を形成し、炎をかたどる赤い巨人の姿に変貌する。
「お、お前は!!」
ゼロは思わず顔を上げて驚きを露にする。ネクサスも突然の乱入者を見て顔を上げていた。
その赤い巨人は、髪を掻き上げるように頭を撫で挙げ、ボウッ!と頭の炎を一瞬だけ着火させる。

「っしゃあああ!!良い子のみんなお待たせぃ!!
毎度(?)お馴染みの愛と正義を胸に抱く、炎の用心棒空賊グレンファイヤー様!!
ただいま参ッ上!!!」

遂にこの日、アルビオン王党派の敗北と同時に姿を消していた炎の空賊の一番槍にして用心棒…燃えるマグマの『グレンファイヤー』が帰ってきた。
 
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